C6のときの担当だったN氏が退社されるというので、 久しぶりにシトロエンのディーラーへ。
だがあいにく、朝早かったので、まだ出社されていなかった。
なわけで、ショールームで暇そうに待っていたら、NewC3に試乗しますか?
買わないことはわかっていての、うれしいお誘いだ。
ショールームには一台だけカクタスが展示されていた。
もちろん一台だけの現物の売り物。
売れたらおしまいだという。
室内はとてもお洒落。
ボディサイドにはC4カクタスのようにエアバンプが備わる。
指で押すとプニプニとヘコむ。
シトロエンは一族総エアバンプ化するのだろうか?
これが一番人気の色だという。
旅行カバンのストラップをモチーフにしたインナードアハンドル。
見た目がユニークで、手触りや使い勝手も良い。
これはインテリアが全部黒のバージョン。
地味だけど、それでもおしゃれ。
アクセントで使用されている素材の使い方やデザインのセンスがいいので、安っぽさを感じさせないのはさすが。
ステアリングには本革が使われ、太さや握り心地もよく、そのあたりはさすがシトロエン。
200万円台前半のモデルなので、シートの位置調整はすべて手動の機械式。
高さの調節もできる。
背もたれの角度調整(リクライニング)はダイアル式。
ステアリングコラムは、上下と伸縮の両方向に調節可能。
日本に導入される新型C3は右ハンドル、そしてAT仕様のみ。
座るとシートの居心地が良く素晴らしい座り心地だ。
「これぞまさにシトロエン」というイメージどおりのシートだった。
C3の外寸は全長3996×全幅1749×全高1474mm、ホイールベースは2540mm。
兄弟車に当たる現行「プジョー208」とほぼ一緒。
シトロエンのBセグメントカーだから、フォルクスワーゲンでいえばポロに相当する。
だがエクステリアは個性的。
シトロエンC3シャイン デビューエディション(FF/6AT)
コンパクトカーの最適解
振動・騒音面でも、もはや4気筒ユニットにヒケを取らない実力を示す。率直なところ、組み合わされる6段ATの出来栄えは"可もなく不可もなく"という水準にとどまるが、3気筒であることのネガを意識させず、終始1.2リッターとは思えない力強さを感じさせるこの心臓は、「出色の出来栄え!」と絶賛するしかないものなのだ。
シトロエンC3(FF/6AT)
個性的とはこういうことだ
思いの外柔らかくお尻が沈み込んだ時の小さな驚き。ふかっとソフトに沈む大ぶりのシートクッションの感触は、どこか昔のシトロエン、それも「BX」以前の車を思い起こさせる。「C4カクタス」のシートもソフトだったが、このC3のほうが懐かしい。もうこれだけで、この車が他とは違う場所にいることが分かる。
これは試乗車のインテリア。
エアコン関係の操作はツルリとしたパネル。
オーディオはAM・FMラジオのほか、スマートフォンなどとのUSBポートもしくはBluetooth接続機能のみ。
走り
エンジンは3気筒1.2リッターターボ。
最高出力は110ps(81kW)/5500rpm、最大トルクは205Nm(20.9kgm)/1500rpm。
アイドリング時の振動は、最初4気筒かと思ったほど。
振動はほぼ皆無で音も静か。
3気筒と聞いて驚いた。
3気筒は特有の振動が出やすいはずだが、これはすごい。
それだけにアイドリングストップの後のエンジン始動が相対的に大きく感じる。
3気筒を意識させられるのは、このときくらいだ。
低回転からの加速では、独特のバイブレーションがペダルに伝わってくる。
だが「ある種の味」といえるたぐいのもので、決して不快ではない。
C3の車重は車検証上で1160kgとボディサイズのわりに軽い。
なので、アクセルを踏むとスペック以上に軽快に加速する。
2000rpmを超えれば十分なトルクがあり、6000rpm手前あたりまで、割と軽快に吹ける。
だが、燃費のためだろうか、変速機がエンジンを1500rpm前後に保とうとするのだ。
そのため、ちょっと味気ない感触なのが惜しい。
だがドライブモードをSモードにすると、その回転数を外れて2千回転近くになるので俄然快適になる。
このエンジンは新型スズキ スイフト RStの1.0L 3気筒ターボ(102ps、150Nm)より断然パワフルだという。
アウディ Q2の1.0L 3気筒ターボ(116ps、200Nm)に匹敵するらしい。
「M235」の感触が体に残っているためだろうか、全開加速でも特に強力なパンチは感じない。
だが普段使いでのパフォーマンスは十分だ。
アイシンAW製の横置6速トルコンAT(EAT6)は、トヨタのCVTとは大違い。
あのズルズル感とは違ってとてもダイレクト感があり、変速マナーもこの日の試乗時間内では特に問題なし。
乗り心地
シートの座り心地を含め、路面のショックを「いなす」感覚はまさにシトロエン味。
柔らかくしなやかな感じで、全体のタッチは軽めで、なかなか気持ちのいい走行感だった。
路面からのノイズやバイブレーションを含め、室内は共振が増幅されるような、いやな振動がないのも加点ポイントだ。
値段を考えると、実に立派。
自動ブレーキつきだというが、短い試乗時間では試すことができなかった。
そのブレーキの踏み心地だが、特に問題ない踏み心地は自然で特に気になる点はなかった。
あえて言えば止まり際にかけて、少しサーボが強くなる感じはする。
だが、すぐに慣れるレベルだ。
総評
この車は特別に速くもなければいわゆるスポーティーでもない。
さらにいえば、豪華でもなく最先端の技術が搭載されているわけでもないのだが・・
個性的なデザイン、カラーリング、走りなどを全部ひっくるめ、車両価格は上級グレードでも239万円。
日本のマーケットでも十分に競争力のあるシトロエンではないだろうか。
とにかく乗り心地・ハンドリング。加速減速という、大事な3要素のバランスがとてもいい。
特に突出した性能はない。
だがこの自然でバランスの良いドライビング感覚は、運転が好きな人には、好ましいものとして映るはず。
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おまけ
「Progressive Hydraulic Cushions(プログレッシブ・ハイドローリック・クッション)」なる新形式のサスペンションが発表されている。
シトロエンを象徴する独自の油圧サスペンションシステム「ハイドラクティブ」は、「魔法のじゅうたん」のような乗り心地を提供することで有名だ。
だがハイドラクティブは高コストであることなどから、現行C5を最後に廃止されてしまった。
そのためハイドラクティブに変わる新機構として開発されたのが、このプログレッシブ・ハイドローリック・クッション(ハイドロクッション)。
シトロエンはハイドロニューマチックサスペンションで世の車好きを熱狂させた。60年の歳月を経てハイドロサスに引導を渡すのは、プログレッシブハイドローリッククッションだ。(Citroen wowed car-loving ladies and gents with the hydropneumatic suspension. More than six decades later, this type of suspension will be put to rest by progressive hydraulic cushions.)
シトロエンがプログレッシブハイドローリッククッションとアドバンストコンフォートプログラムを解説(Citroen Progressive Hydraulic Cushions & Advanced Comfort Program Explained)
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記事を読む限りでは、ハイドロクッションは、サスペンションユニット(スプリングとダンパー)の上下の両端に1個ずつ装着されるという。
これは、その名に「Progressive」とある通り、サスペンションのプログレッシブ効果(路面からの入力の大きさに応じて弾性力を変化させる仕組み)を生み出す機構のようだ。
つまり、 良好な路面で弱い入力の時はハイドロクッションは働かず「魔法の絨毯」のようなソフトな乗り心地。
しかし柔らかいだけでは容易に底付きして快適性が損なわれるため、荒れた路面などで強い入力があるとサスペンション両端のハイドロクッションが動作してショックを吸収するのだという。
普通の自動車でも不等ピッチスプリングやリンクの採用によって多かれ少なかれプログレッシブ効果を生み出しているらしいが、シトロエンのハイドロクッションは、20の特許技術によって低コストで実現しているとのこと。
ハイドロクッションは2017年後半のリリースを目指して開発中だという。
これがC3に採用されれば鬼に金棒?!(笑)