US Market Recap

危険な投資アドバイザー

アメリカンドリーム、という言葉がある。家を買って、良い車を運転し、子どもには最高の教育を与え、そして老後は快適な隠居生活をおくる。そんな夢なら私たち日本人も持っているから、ジャパニーズドリーム、と言うこともできる。こんな統計がある。約50%の働くアメリカ人の預金高は2万5000ドル(282万5000円)以下であり、20%の人たちには全く預金が無い。これではアメリカンドリームを実現できない。

何故このようなことになってしまったのか。「それは間違ったアドバイスに従ったからです」、と言うのは「金持ち父さん貧乏父さん」の著者、ロバート・キヨサキ氏だ。先ず、この間違ったアドバイスを紹介しよう。「一生懸命働いて、こつこつ金を貯め、借金はしないで優良株やミューチュアルファンドに長期投資しろ。」一見すると適切なアドバイスに思われるのだが、キヨサキ氏の話を少し聞いてみよう。

「2000年から2003年の株式市場の暴落で、何百万という多数のアメリカ人は、7兆から9兆ドルの金を失ってしまいました。しかし現実は単に資金を無くしただけでなく、ほとんどの人たちは、二つの経済ブームに乗ることができなかったのです。二つのブームというのは不動産と商品市場ですが、アドバイザーたちは全くこれらのブームを、個人投資家たちに知らせることができなかったのです。間違ったアドバイスを繰り返しただけでなく、現在の投資テーマをつかめなかったのですから、これ以上悪い話はありません。」

今では5年連続でベストセラーリストに入る「金持ち父さん貧乏父さん」だが、元々は自費出版だった。言うまでもないが、どの出版社もキヨサキ氏の本は売れる見込みゼロ、と判断したからだ。何故予想に反してベストセラーになったのだろうか。キヨサキ氏はこう語る。「本の人気の秘密は、金持ちが何故さらに金持ちになるかが説明されているからだと思います。読者の方々は、時代遅れのアドバイスの危険性を理解してくれたことでしょう。」

キヨサキ氏の話を聞いていたら、「人の行く裏に道あり花の山」、という相場の格言が頭に浮かんできた。人と同じことをしていたのでは儲からない。それよりも大衆の逆を行け、というわけだが、こう書いたら「投資苑」の著者、アレキサンダー・エルダー氏を思い出した。チャートと言えば、日足や週足ばかりが利用されるが、何故そうしなければいけないのだろうか。それらを使ったら確実に利益が上げられるからだろうか。チャート無視を勧めているのではない。たまには見方を変えて、45分足チャートなどどうだろうか?違ったものが見えるかもしれない。

アメリカ人が持つ六の心配事

お金に関することで、あなたが最も心配していることは何ですか、とマネー誌は1000人の働くアメリカ人に尋ねた。圧倒的に多かった回答は、自分が死んでしまった場合、残された家族は経済的に大丈夫だろうか、という不安だった。そんな時のために生命保険があるのだが、実際に加入しているのは就業者の約50%ほどだ。

突然の死よりも起きる確率が高いのは、交通事故や病気などが原因となり、働くことが不可能な体になってしまうことだ。こういった事態に備えて身体障害保険があるが、これに加入している人たちは30%にも満たない。長期闘病生活には多額な医療費が必要になる。統計によれば、このような状況に陥った家庭の半数は、破産申告をすることになるという。

株式市場の暴落が、二番目に多かった返答だ。2000年の5132ドルをピークに、現在ナスダック市場は2100ドル台で横ばいしている。90年代の派手な高リターンに慣れてしまった投資者にとって、マーケットの下落はあまりにも大きすぎた。ある年に暴落が起きる確率は2%程度だが、バンガード社の調べによれば、半分以上の個人投資家が、いつも暴落を気にしている。

第三の心配事はアメリカ経済の破綻、四番目は外部委託(アウトソーシング)による失業、そして不動産バブルへと続く。第六番目は個人情報の盗難による詐欺だが、実はハリケーン・カトリーナ以来この犯罪が増えている。洪水の被害を受けた家屋から、クレジットカードの請求書や証券会社からの報告書などを盗み出し、他人の口座から金を騙し取ることが狙いだ。

そろそろ決算シーズンがやってくるが、ハリケーン・カトリーナが、ある言い訳に利用されている。エイボンと言えば化粧品の会社だが、ハリケーンとガソリン高を理由に2005年度の収益を下方修正した。たしかに戸別訪問販売員にとって高いガソリンは痛い。しかし、アナリストのアリス・ロングレイ氏が指摘するように、エイボンの業績不振が始まったのはカリーナ以前のことだ。USAトゥデイの報道によれば、既に78社がハリケーンを理由に収益減少の警告を出している。どうやら今回の決算報告は、注意して読む必要がありそうだ。

三つの罠

トレーダーとして成功するためには、三つの壁を克服する必要がある、と語るのはブレット・スティーンバーガー氏だ。氏は単にトレード心理の研究で有名なだけでなく、20年のトレード歴も持ち合わせる。さっそく、三つの壁について説明してもらおう。

「最初に挙げたいのは完全主義です。これは特にトレードを始めたばかりの人たちに多いのですが、あまりにも非現実的な利益目標を設定する傾向があります。トレーダーたちはよく、「買いのタイミングが遅すぎた」、とか「20セント儲けそこなった」、などと口にしますが、これらの本当の意味は何でしょうか。要するに彼らは、今日の安値で買って、今日の高値で売れなかったことを嘆いているのです。その結果、こんな言葉で自分を責めるようになります。俺はいったい何をしているのだ。トレードの才能が無いのかもしれない。完全主義は捨てなくてはいけません。

エゴはトレーダーに大きな悪影響を及ぼします。株売買の目的は利益を出すことなのですが、エゴに邪魔をされると、自分の正当性が優先され、トレード利益は二の次になってしまいます。本当なら直ぐ損切りをすることが適切な行動でも、自分の間違いを認めたくないために、株を処分することができません。それだけではなく、更に買い足しをして損額をいたずらに大きくしてしまうトレーダーもいます。

もう一つトレーダーの陥る罠は自信過剰です。少し連勝するとウヌボレが生じ、トレード執行がいい加減になってきます。自分の売買ルールを無視してのトレードですから、儲かるわけがありません。どんなに勝ちが続いても、冷静に状況を判断しなければいけません。なぜ買うのか、勝算はどの程度あるのか、どこで損切りをするのか、といったことをトレードの前に必ず決めておくことが重要です。」

スティーンバーガー氏には20年のトレード歴があることを上記したが、最後にトレード成功の秘訣を氏に語ってもらおう。「素早いパターン認識がトレードに最も重要な要素です。パターンを適切に認識できるようになるためには、マーケットと長時間つき合うしかありません。トレーダーが成功できない一番の理由は、マーケットにドップリとつかることができないからです。短期間で成功しようと思ってはダメです。」

静かな買い手、騒々しい売り手

選択は二つ、売りと買いだ。模様眺めを含めれば三つになるが、最終的には買いと売りしかない。もちろん株の話をしているわけだが、ウォールストリートに代表される証券業界も、単純に買い手(Buy Side)と売り手(Sell Side)の二つに区分できる。二者の決定的な違いは何だろうか。「一方はとても静かですが、他方はいつも声高々に叫んでいます」、と言うのはロバート・グリーン氏(ブリーフィング・ドット・コム)だ。

株も商品だから、だれかに買ってもらわないことには話にならない。商品を売るためには、それなりの宣伝が必要だ。グリーン氏にウォールストリートのからくりを説明してもらおう。「インベストメントバンカーにとって、株は単なる製品でしかありません。分かりやすい例はIPO(新規公開株)です。IPOの目的は企業を証券取引所に上場させることですが、仕事はそこで終わるわけではありません。

上場後は活発な売買が必要になりますが、ここで役立つのが証券会社のリサーチ部門です。売上の見通し、一株利益の予想だけでなく、経営陣の実績なども評価されるわけですが、決定的なのはアナリストが発表する格上げや格下げです。このようにIPOから始まって、格上げや格下げに従事するのは売り手(Sell Side)証券会社です。ですから営業を担当する証券マンは、Sell Side最前線の仕事です。」

買い手(Buy Side)とはだれのことだろうか。一般個人投資家は株を買うわけだから、私たちが買い手だろうか。ここで言うBuy Sideとは専門家だけに限定されている。だから、ヘッジファンドやミューチュアルファンドが買い手の代表になる。もちろんファンド会社にもアナリストはいるが、彼らは決して「買い推奨」や「売り推奨」などの意見を世の中に表明することはない。一つ付け加えれば、Sell Sideの証券会社にもファンドマネージャー(Buy Side)がいる今日この頃だが、法律で二者の癒着は禁じられている。

Buy SideとSell Sideは敵対しているわけではない。正確に言えば共存することが最も重要だ。もう一度、グリーン氏に説明してもらおう。「ミューチュアルファンドは膨大な量の売買をしますが、これはSell Sideの証券会社を通して行われます。なぜならSell Sideの証券会社には、大口取引を効果的にこなす技術と実績があります。Sell Sideの証券会社は、ミューチュアルファンドやヘッジファンドに株を買ってもらわなければ生存することはできません。二者の共存がなくては、ウォールストリートの繁栄はありえないのです。」

最後に一つ質問しよう。アナリストの数は、どちらが多いと思われるだろうか。Sell Sideの証券会社だろうか、それともBuy Sideのミューチュアルファンド側だろうか。正解はBuy Sideの方だ。数で勝るBuy Sideはいつも沈黙、逆に少ない方のSell Sideは威勢がよい。株は金融商品、株価は動くものではなく、動かされる性質があるわけだ。

社長は神様?

勤務時間中に会社を抜け出しストリップ劇場へ向かう。しかし運悪く上司に見つかり、首になってしまった。厳しすぎる処置だ、と思われるかもしれないが、この場合ならどうだろう。日曜の午後、ストリップ劇場で二時間ほど暇つぶしをする。翌日出社すると、さっそく上司に呼ばれ解雇を言い渡されてしまった。理由は昨日ストリップ劇場へ行ったからだ。休日に何をしようと会社には関係無い、と反論したのだが、社風に合わない人には辞めてもらうしかない、それが会社の言い分だ。現実離れしたような話だが、実はそれと似た話がアメリカで起きている。

ハワード・ワイヤーズ氏は、(ABCニュース報道)、ヘルスケア関連の会社を経営する、今年71歳になるビジネスマンだ。こんな会社を経営するくらいだから、ワイヤーズ氏にとって健康管理は最大の関心事であり、社員にも健康的な生活スタイルを奨励している。単に自分だけがウエートトレーニングで汗を流すだけでなく、ワイヤーズ氏は社員のためにもトレーニングコーチを雇った。もちろん強制することはしないが、定期的にコーチを訪れて運動する社員には、月々特別に110ドルのボーナスが支払われる。「とても素晴らしいプログラムだと思います。社長自ら率先して、私たち社員の健康面に気をつかってくれているのです。」、とミンディー・ティラボスキさんは言う。

正に健康マニア社長なのだが、ある日ワイヤーズ氏はこんな発表をした。「君たちの中にはタバコを吸う人がいる。会社の出費を調べてみて分かったのだが、喫煙者は余分な医療保険の負担を会社にかけている。言うまでもないが、タバコは非健康的な悪い癖だ。もしこの会社で働き続けたいと思うなら、即刻タバコをやめてほしい。これは勤務時間中だけに限らず、君たちのプライベートな時間も含めてだ。」更にワイヤーズ氏は、ランダムに社員から血液を採取して、ニコンチン検査をする計画があることも付け加えた。

約200人の社員で埋まった部屋は、社長の発表に騒然となったという。「15ヶ月の時間をやるからキッパリとタバコをやめるように。それが出来ないなら首だ。そんなことを言われて騒がない方がおかしいです。明らかに法律違反です!」、とアニタ・エポリトさんは憤慨する。しかし事実は、ワイヤーズ氏の言った事は会社の所在する州の法律を犯していない。年齢、性別、人種、そして身体障害などを理由に社員を解雇するのは違反だが、タバコなら許される。最終的には24人の喫煙者のうち、20人は禁煙に成功した。

タバコをやめることのできなかった4人は、社長の言ったとおり首になったが、上記のエポリトさんもその一人だ。「私は会社に大きな貢献をしてきました。社長は会社の経営者です。神様じゃありません。社長の態度は間違っています。絶対に間違っています。」現在エポリトさんは失業保険で暮らしているが、一方の健康マニア、ワイヤーズ社長の態度は更にエスカレートしたようだ。太りすぎは様々な病気の原因になる。社員食堂の一角には、体重計が設置されたらしい。タバコ、体重計、その次は何だろうか。社員に菜食主義でも押し付けるのだろうか。

企業イメージ格上げを狙うマクドナルド

イメージチェンジを狙って、マクドナルドの新しいコマーシャルが放映される。といっても、もっとお客さんに来てもらおう、といった内容ではない。アメリカではマクドナルド=給料が安い、職として将来性が無い、昇給は望めない、などといった見方が大衆に定着してしまっている。だから当然な結果として、長期的にマクドナルドで働く人は少なく、どうしても高校生のパートタイマーが中心になってしまう。こんな企業イメージを変えよう、というのが新コマーシャルの目的だ。

ロイターの報道によれば、このコマーシャルには、ロサンゼルスオリンピックで金メダルを取った、カール・ルイス選手が起用される。何故カール・ルイス選手なのか?理由は少なくとも二つある。先ず、マクドナルドのM字型のマークだが、あれはゴールデンアーチと呼ばれている。金メダルはゴールドだから、ゴールデンとゴールドを結びつけて勝者のイメージを強調する。カール・ルイス選手が、生まれて初めて働いた場所はマクドナルドだったそうだ。勝者が最初に選んだ仕事はマクドナルド。社会への第一歩は、マクドナルドから始まる、というわけだ。

こんなコマーシャルは、マクドナルドが初ではない。大手小売店、ウォルマートも同様な企業イメージに苦しんだ前例がある。単に給料の不満だけでなく、多くの従業員は、医療保険や年金制度の不十分さを訴えていた。そこでウォルマートはコマーシャルを使った。生き生きと微笑みながら働く従業員の姿が映し出され、見るからに明るい職場、といった雰囲気が伝わってくる。

話をマクドナルドに戻そう。ジョブ(JOB)は仕事や職、という意味だが、マックジョブ(McJob)という俗語がある。マックはビッグマックで分かるようにマクドナルドを指しているが、マックジョブを辞典で引くと、こんな説明が出てくる。「給料の低い出世見込みの無い仕事。」これにはマクドナルドも参ったことだろう。

記者会見の席で、カール・ルイス選手が言ったことを記しておこう。「私がマクドナルドで働いたのは16歳のときです。チームワークと、テキパキと仕事をする重要さを学びました。とにかくスピードが大切です。もし数秒遅れていれば、金メダルは取れないように、ノロノロしていてはお客さんに渡す前に、フレンチフライは冷えてしまいます。」はたしてマクドナルド、スピーディーに企業イメージを一新できるだろうか。

プログラムトレード入門

あと5セント下がったら損切るしかない、と半分諦めていると、突然SP500指数が跳ね上がった。何が起きたのだろう。チャートを見ても、別に重要なサポートラインにぶつかり反発しているわけではない。とにかく良かった。この指数の思いがけない回復で、持ち株が上昇し始めた。トレーダーならそんな経験をされた事があると思うが、マーケットを襲ったプログラムトレードに助けられた可能性大だ。

大手証券会社のコンピュータによって執行されるプログラムトレードだが、先ずその定義を説明しよう。プログラムトレードとは、15以上のSP500指数に属する銘柄を同時に買い(または売り)、その総額が100万ドル以上になる取引の事だ。プログラムトレードは、ダウ指数の上げ下げ幅によって執行が制限される。実際の数値は各四半期ごとに調整されるが、ダウ指数が210ポイント以上動いている時はプログラムトレードが出来ない。

HLキャンプ社のハンク・キャンプ氏によれば、ニューヨーク証券取引所の総出来高の約60%は、プログラムトレードによるものだという。特にUBS証券のプログラムトレードが圧倒的に多く、その次がリーマンブラザース、モルガンスタンレー、ファーストボストン、ゴールドマンサックス、そしてメリルリンチと続くようだ。

それでは、23年間プログラムトレードを研究しているキャンプ氏に、もう少し話してもらおう。「プログラムトレードの仕組みがよく分からなくても構いませんが、SPプレミアム指数を理解することが大切です。この指数には先行指数的な要素があり、これを正しく利用することで、マーケットの次の動きを予測することができます。もちろん、プレミアム指数からも、プログラムトレードの入るタイミングを、ある程度読むことができます。ですから、私はプレミアム指数に勝る指数は無いと思います。

プレミアム指数は株価のように証券取引所から出されるものではなく、それぞれのデータ会社が計算し、投資者に配信しています。簡単にプレミアム指数を説明すれば、これはSP500先物指数と、SP500キャッシュ指数の差額です。た易く計算できそうな指数なのですが、データ会社によって数字がまちまちになり、明らかに間違った数値を配信している会社もあります。ですから注意しないといけないわけですが、コムストック社からは良いデータが出されています。」

実際のプレミアム指数の使い方は「企業秘密」、ということで教えてくれないキャンプ氏だがヒントがある。プログラムトレードは、SP500先物指数とSP500キャッシュ指数が離れすぎている時に起きやすい。だから3分足や1分足などのチャートで、SP500先物指数、SP500キャッシュ指数、そしてSPプレミアム指数を監視するわけだ。そんなことをしているヒマは無い、と言われる方なら、下のホームページが参考になるかもしれない。
http://www.indexarb.com/

デイトレードから長期投資に応用できる窓

6時起床、6時15分朝食、そして7時の電車で会社へ向かう。毎日繰り返される日課だが、こんなお決まりの手順を踏むことが株トレードにも重要だ、とマネーマネージャーのブランドン・フレデリクソン氏は言う。同じことの繰り返し、と言うと退屈なかんじがするが、これが生活に一定のリズムをつけることになる。

フレデリクソン氏はデイトレードから長期投資まで手がけているが、氏の一日は先ずニュースをチェックすることから始まる。窓(ギャップ)を積極的に利用する氏のデイトレード方法は、格上げや格下げ、それに収益予想などのニュースに大きく影響される。小さなギャップでは大したトレードはできない。だから当然、大きなギャップになりそうなニュースを中心に探すわけだ。(ギャップトレードなら馬渕氏のGapper’s Eyeを参照してほしい)

長期投資には、収益、売上、新製品、経営陣などのファンダメンタル的な要素も考慮するが、ここでもギャップが大切になる。ギャップは買い手と売り手の極端なアンバランスを表し、ギャップ一つがトレンドの転換点になることも珍しくない。だからフレデリクソン氏は大きなギャップだけに注目するわけだ。

マネーマネージャーという職業柄、どうしてもファンダメンタルズが重要視されてしまうが、チャートについて氏はこう語っている。「頭に拳銃を突きつけられて、チャートを取るか、それともファンダメンタルズを選ぶか、と脅されたらファンダメンタルズを取ると思います。しかし、チャートが無いと売買タイミングがつかめません。ですから両方欲しいのが本音です。」

チャートの利用方法について、フレデリクソン氏は次のような注意点を挙げている。「ストキャスティクス、MACD、RSIなど多種の指標がありますが、これらはトレードの弊害になります。機械的な売買をするなら別ですが、特に初心者は指標利用には気をつけなければいけません。大切なのは値動きと、値動きが作り上げるチャートパターンです。そして出来高も売買プレッシャーを見るために役立ちます。」

指標嫌いの氏だが、氏が一つだけ気にいっている指標がある。それを最後に紹介しよう。リンダ・ブラッドフォード・ラシュキ、という有名なトレーダーが使っているデイトレード方法に、ショートスカートというものがある。モメンタムを利用したやり方なのだが、これにはケルトナーバンド、と呼ばれる指標が必要だ。ケルトナーバンドは、一見するとボリンジャーバンドに似ているのだが、値動きの勢いを把握するのに便利らしい。

ベーブ・ルースとトップファンドマネージャー

ある大手企業が、20人のファンドマネージャーを使って、会社の資金を株で運用させた。一定期間が過ぎ、途中経過を報告させたところ、一つ腑に落ちない事が出てきた。最も優れた成績を上げたファンドマネージャーは、勝率が極めて低いのだ。ポートフォリオ全体の上昇率は文句無い。しかし、一つ一つ銘柄を調べてみると、下げ銘柄数が上げ銘柄数を、はるかに上回っている。何故こんなことが起きたのか、早速会社側はファンドマネージャーに説明を求めた。

「当たる確率はさほど重要なことではありません。大切なのは、当たった銘柄が、どの程度大きく伸びるかです。4社の株を買ったとしましょう。当然なことですが、3銘柄の損を小さく抑えて、残りの1銘柄で大きく儲けることができれば良いわけです。確かに個々の銘柄だけで見れば、3対1で下げの勝ちですが、ポートフォリオ全体はプラスになります。」

負け数が目立っても株で勝てる。三振が多くても、ベーブ・ルースのようにホームランを重要な場面で打てれば、株の世界で十分生き残ることができる。しかし、このやり方は言うほど楽ではない。1979年、ダニエル・カーンマン氏とアモス・トバルスキー氏は、こんな発表をしている。「利益と損が与える心理的影響は、圧倒的に損が利益を上回ります。比率にすれば約2.5対1です。」違った言い方をすれば、投資者はたとえどんなに損額が少なくても、心理的にはかなり大きなダメージを受けるということだ。

悪い打率で株の世界で勝つためには、強力な精神力が要求される。一つ一つの損で傷ついていたのでは、ベーブ・ルースにはなれない。「ベーブ・ルースは天才、そんな人と自分を比べるのは間違いだ」、と言われるかもしれないが、ベーブ・ルースは714本の本塁打を確かに打ったが、1330回の三振も記録している。一々三振する度に気を落としていたのでは、714本の偉業は達成できなかったはずだ。

スランプで全く打てない時、ベーブ・ルースは記者たちに、こんなことを言った。「相手ピッチャーが気の毒だね。これだけ打てないのだから、そろそろホームランがガンガン出る頃だ。」これが天才と凡人の違いだと思う。トレーダーたちもよく言うが、株は技術2割、精神力8割の世界だ。自分のルールに従って負けたのなら、必要以上に気を落とすことはない。繰り返すが、ベーブ・ルースは1330回も三振をしたのだから。

金人気の秘密、それは日本経済

金に人気が集まっている。ここで言う金とはカネのことではなく、ゴールドのことだ(念のため)。話はいきなりそれるが、昔の学生たちはカネが無くなり困り果てると、「ゲルピン」という言葉を使ったそうだ。ドイツ語でカネはゲルト、危機は英語でピンチと言う。なんと英語とドイツ語の合成語だったわけだが、なかなか上手い表現だ。

下はゴールド指数の日足チャートだ。9月9日にブレイクアウトして、ここのところ3連勝と調子が良い。金は普通の経済状態なら、まず人気化することはない。インフレ対策が主な金を買う理由だから、投資者たちは物価高を予想しているわけだ。

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金が買われる、ある具体的な理由を、アルスタッドキャピタル社のマイケル・アルスタッド氏に説明してもらおう。「10回連続の金利引き上げで分かるように、連邦準備理事はインフレと戦っていますが、ここで日本に目を移してみましょう。第1四半期の日本国内総生産(GDP)は5.3%の成長を記録し、そして第2四半期は3.3%の伸びでした。世界第2位の経済国家は、確固とした二期連続の成長を示したのです。また先日の選挙は小泉首相の大勝利となり、国内改革政策はこれからも進んで行くと思われます。個人消費も順調な伸びを見せ、雇用状況も好転しています。ですから当然、企業も設備投資に力を入れ始めています。

日本=デフレの公式を直ぐ想像する投資者が多いですが、その公式は過去のものになろうとしています。世界的なデフレ傾向の原因となった日本経済ですが、2005年の終わりまでにはインフレの兆しが見えて来るはずです。もう一度言いますが、世界第2位の経済国家がインフレに転ずるのです。それは正に、巨大な焚き木が炉の中へ投げ込まれのと同じです。

日本経済が本格的に上昇を始めたら、どれくらいのオイルを消費すると思いますか。日本はオイル資源ゼロ、という事実をご存知ですか。これが金人気の秘密です。金価格が、ここ17年間の高値をつけましたが、全く不思議なことではありません。日本経済の成長は、世界的なインフレ懸念に結びつくのですから。」

火曜日はFOMC(連邦公開市場委員会)だが、ハリケーン・カトリーナの後とはいえ、11回連続の金利引き上げを信じる人が多い。ジョン・ハンコック社のオスカー・ゴンザレス氏によれば、「高騰するオイル価格は周知のことですが、結果的にはカトリーナはインフレの原因になります。政府は膨大な予算をルイジアナの再建に割り当て、これは建築関連を中心に、アメリカ経済向上材料になります。ですから、やがて物価高という状況へ変わっていくことでしょう。」どちらにしても、FOMCを控えるかぎり、しばらく模様眺め、といったところだろう。

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発行:株式会社ブレイクスキャン 監修:株式会社デイトレードネット