US Market Recap

インフレより怖いもの

米国短期金利は予想以上に上がる。それが大手銀行、証券会社のアナリストが出した結論だ。「たしかにインフレ懸念はあるのですが、マーケットはそれを無視し続けてきました。しかし、ここに来て、投資心理に変化が見られます」、と語るのはウィンダムファイナンシャルのポール・メンデルソン氏だ。今週から本格的な決算シーズンが始まるが、メンデルソン氏は、更にこう付け加える。「企業は、上昇するエネルギーコストに、これ以上耐えるのは難しくなってきました。製品の値上げに踏み切るところが増えることでしょう。」

ロイターの報道によれば、14人の著名アナリストは、少なくともあと三回の金利引き上げを予測している。これは現行3.75%のフェデラルファンズが、4.5%になることを意味し、一ヶ月前に出された4.25%、という予想を上回っている。ゴールドマンサックスのジャン・ハットジウス氏は、「連銀の態度は明白です。金利引き上げ政策が、そう簡単に終わることはありません」、と述べ、金利が4.5%で止まらない可能性を示唆している。

しかし、今日のアメリカはインフレよりも怖いものを抱えている、と経済コラムニストのマーシャル・ローブ氏は言う。その結果、2006年、米国経済は不景気に陥ることもあるらしい。「財政浪費が、米国経済を大きく減速させることになるでしょう。連邦政府の赤字は、一世帯あたり45万ドルにもおよぶのです。毎年平均で、3%から4%の経済成長のあったアメリカですが、2006年に同様な伸びを期待するのは無理です。」

財政浪費という言葉をローブ氏は使っているが、これは大統領の不適切な国家予算の割り当て方を指しているようだ。「イラク再建のためにアメリカは、2005年の終わりまでに、2000億ドル以上の金を使うことになるでしょう。更に大統領は、ハリケーン被害のあった州に、約1500億ドルの援助も実行しようとしています。これで連邦政府の負債額は、7兆3000億ドルから8兆2000億ドルに跳ね上がることでしょう。金利の上がり続ける今日、政府は膨大な赤字を抱えているのです。経済学者でなくても、これがどんな結果になるかは想像できると思います。」

お先真っ暗な話だが、ローブ氏によれば、上昇する金利の影響を受けて、不動産バブル破裂も近いようだ。値上がりの大きかった物件だけに、下げ方は2000年に襲った株式ベアマーケットに匹敵する可能性もあるらしい。とにかく、節約と適切な投資で赤字の穴埋めが先決だが、今のアメリカ、全く具体的な対策が無い。まだ先になるが、ブッシュ大統領の共和党、このままだと中間選挙は大きく負けそうだ。

株投資最高の武器

プルーデンシャル証券が、テクニカルリサーチ部門の閉鎖を発表したのは先週のことだった。広報担当のジム・ゴーマン氏は、現在の米国株式市場環境、そして変化する顧客ニーズが閉鎖の原因、と説明している。おかげで、人気テクニカルアナリスト、ラルフ・アカンポラ氏が失業してしまったが、これでプルーデンシャル証券は、ファンダメンタルズだけで株を分析することになった。

チャートやインディケーターを使って株を分析するテクニカルアナリシスを嫌う投資家もいることは事実だが、テクニカルリサーチ部門が存在しない証券会社では、適切なマーケット分析をすることはできない。アカンポラ氏が有名になった理由は、1997年、ダウ指数1万ドルを、だれよりも先に予測したからだ。(その時ダウは7200ドル台だった。)

ここで紹介したいのが、テクニカルアナリシスのベテラン、ロバート・コルビー氏だ。早速、氏の言葉を引用しよう。「今日でも、多数の投資者はファンダメンタルズを重要視する傾向があります。ファンダメンタルズを利用することで、安く買って高く売ることが可能と考えているようですが、彼らのしていることは正反対です。正当評価額より現在の株価は低いから買いだ、そんな事を言って買いに走るのですが、株価はますます下がる一方です。どんなに魅力的なファンダメンタルズでも、トレンドを無視していたのでは利益を上げることはできません。」

一口にテクニカルインディケーターと言っても、MACD、ストキャスティクス、RSI、モメンタム、と数多くある。はたして、どれが一番使いものになるのだろうか。コルビー氏の意見を聞いてみよう。「たとえば人気のある200日移動平均線ですが、これは今日でも投資にとても有効な移動平均線です。買いは200日移動平均線の上にある銘柄だけに限る、こんな単純なルールを守るだけで、いつも大きなトレンドに乗ることができます。」

さらに氏の分析結果によれば、5日エクスポネンシャル移動平均線が、株投資最高の武器だ。5日エクスポネンシャル移動平均線を利用した投資家は、単に買って持ち続ける投資家の利益を76万6千倍も上回った。また、出来高の上昇度を分析するだけでも、2万4000倍の利益を得ることができた。テクニカルインディケーターを無視した株投資などありえない。しかしプルーデンシャル証券は、こともあろうにテクニカルリサーチ部門を廃止してしまったのだ。

米国小売業界、クリスマスシーズンに赤信号!?

まだ10月だ、と言われるかもしれないが、米国小売業界はクリスマスシーズンの売上を心配している。主な小売銘柄を見てみると、ホームデポは7月の頂点から13%の下落、ウォルマートは7月の高値から15%の下げ、そしてターゲットもホームデポと同様な動きを示し、投資者たちも小売業界には悲観的な態度を表している。

クリスマスの売上が懸念されるのは、オイルの値段が大きく上がり、燃料費が各家庭に負担となり始めているためだ。そろそろ冬がやって来る。灯油の値段も上昇しているから、間違いなく、今年の暖房費は昨年を大幅に上回ることだろう。おまけにガソリンも高い。これでは出費が重なるばかりで、クリスマスプレゼントどころではない。

「ちょっと待ってください、その考え方はあまりにも短絡的です」、というのは経済ジャーナリストのマイケル・ブラッシュ氏だ。「確かに消費者は、ガソリンスタンドへ行く度に、値段を見て溜め息をついていることでしょう。しかし実際は、燃料費が消費者に与える影響は、さほど大したものではありません。ガソリン代、灯油代などで出費がさらに10%増えたとしても、それは単に6.1%の手取り収入にすぎません。」

エコノミストのエド・ヤーデニ氏は、こんな見方をしている。「エネルギー価格の上昇は一部の業界、特に航空会社に打撃を与えることは目に見えています。一般消費者ですが、影響を受けるのは低所得家庭です。ですから低価格商品を専門に扱う、ローエンド小売業者の売上が落ち込むことになるでしょう。低所得家庭を除けば、現在のエネルギー価格は全く問題にならないと思います。」

ガソリンやオイルが思ったほどの悪影響でないなら、小売株は買えるのだろうか。ここで考慮しないといけないのが、個人消費を支えてきた不動産バブルだ。物件が値上がっているから、銀行からは簡単に金を借りることができる。その借りた金で、車や大画面のデジタルテレビが購入されてきたわけだが、ヘッジファンドマネージャーのビル・フレッケンスタイン氏によれば、不動産マーケットは6月が天井になった可能性があるという。

なら、小売銘柄には手を出さない方がいいのだろうか。今は待つのが正解だと思う。小売セクター指数は、下げ基調の見本のような日足チャートだ。とにかくトレンドラインが突破できるまで、焦らずに様子を見たい。

企業生産性と大リーグプレーオフ

ワールドシリーズへの出場権をかけて、火曜から大リーグのプレーオフが始まった。水曜の試合ではシカゴ・ホワイトソックスの井口選手が逆転3ラン本塁打を放ち、あと1勝でリーグ優勝決定シリーズに進出できる。以前は野茂選手の姿しか見られなかった大リーグだが、松井選手のいるヤンキースを、日本から応援している人たちもいることだろう。

さて人気のプレーオフだが、CNNの報道によれば、これは企業側にとって一時的に嬉しくないイベントのようだ。振り返ってみると、火曜の第一試合、セントルイス対サンディエゴは開始時間が午後1時9分だった。そして同日の第2試合、レッドソックス対ホワイトソックスは夕方の4時9分に始まった。「問題なのは、プレーオフの試合が会社の就業時間と重なっていることです」、とチャレンジャー・グレイ&クリスマス(人材派遣会社)のジョン・チャレンジャー氏は言う。

理屈は高校野球と同じだ。地元チームの試合は、たとえ仕事中でも見たい。テレビがダメでも、上司の目を盗んで、インターネットで試合経過を10分おきに確かめることだろう。これでは仕事がはかどらない。チャレンジャー氏によれば、プレーオフのために仮病をつかった欠勤や早退、社内でのテレビ観戦などで会社の生産性が低下する。金額にすれば、企業側は約2億2500万ドル相当のダメージを受けるようだ。

もう少しチャレンジャー氏の話を聞いてみよう。「さきほど、試合と就業時間が重なるのが問題、と言いましたが、勤務時間後の試合も会社側に影響を与えます。たとえば、ロサンゼルス・エンゼルス対ニューヨーク・ヤンキースの第2戦は、ニューヨーク時間の夜10時9分が開始時刻です。ということは、試合の終わるのは午前2時頃です。」多くのヤンキースファンは、スポーツバーや友人宅でビールを飲みながらゲームを見ることだろう。自宅に着くのは、たぶん3時過ぎだ。完全な寝不足は明らかだから、間違いなく生産性は落ちるはずだ。

最後に、チャレンジャー氏からの断りを記しておこう。2億2500万ドルの企業が受ける被害は、プレーオフの開催される8つの都市だけを考慮して計算された数字だ。年間を通じれば、これら8都市からの総合生産高は1兆6000億ドルにのぼり、プレーオフが与えるダメージは、ほとんど経済に影響をおよぼすことはない。「全ての人が野球ファンではありません。ファンが仕事をサボっても、ファンでない人たちが、十分に穴埋めをしてくれます。数週間プレーオフが続かない限り、アメリカ経済が低下することはありません」、ということだ。

金は800ドルを超える!?

金は先週、ここ17年間の高値を突破した。と言うと、猫も杓子も金買いに奔走しているように思われるが、実際はとても静かだ。正確に言えば、アメリカのマスコミは金をほとんど話題にしない。なぜ大衆は金に飛びつかないのだろうか。グリーンブックインベストメントの、ジョン・マークマン氏はこう語る。「一般に金と言うと、ネックレスやコイン、それに金庫に保管されている金塊などが想像されます。今日のように不動産が好調なときは、なかなか金に人気が集まりません。」

しかし、金の値段が現在の1オンス468ドルを更に大きく上回った場合はどうだろう。きっと毎晩、テレビのニュースで報道されることになるだろう。それだけでなく、新聞の一面記事、雑誌の表紙に載るかもしれない。こうなれば大衆が動き始め、速いテンポで金は一時的な天井をつける。「向こう12ヶ月から36ヶ月間ほどになると思いますが、たとえ米国の金利引き上げ政策が終わっても、金の上昇は続くはずです。ただでさえ取引高の少ない金ですが、ヘッジファンドなどの大きな資金が流入し、金は1オンス800ドルを超えることでしょう」、とマークマン氏は言う。もっと氏の話を聞いてみよう。

「金の真の価値を理解することは簡単なことではありません。金は生活必需品でもなく、株のように株価収益率を使って、現在の値段が割高か割安かを判断することもできません。以前は金が上昇するとドルは逆に下がったのですが、最近はこの公式が崩れ、金はドルといっしょに上がっています。

金は稀な物だから価値がある、と言う人がいますが、それは正確ではありません。金に価値があるのは、その供給量に限りがあるからです。また歴史を振り返ってみると、金には通貨としての役割がありました。たとえばですが、テロリストが全米の銀行コンピュータシステムを破壊したとします。おかげで人々は口座から現金を引き出すことができません。そんな時でも金貨を持っていれば、食料を売ってくれる店があるはずです。」

結局のところ、金の値段は需給関係が決定するわけだが、個人投資家には直接先物市場で金を売買するより、金鉱株を買う方が無難だろう。小型株ならGolden Star ResouresとAgnico Eagle Mines、大型株ならNewmont Mining、Barrick Gold、それにPlacer Domeが有名だ。個別銘柄投資を避けたいなら、Fidelity Select Goldのようなミューチュアルファンドもある。さて、肝心な買いのタイミングだが、マークマン氏は今すぐ買うのではなく、次回の下げで買うことを薦めている。

円買い47%、円売り32%

先月5日、108円76銭だった米ドル/円相場だが、現在114円27銭で取引されている。ドル高になった理由として、ハリケーン・カトリーナがアメリカ経済に与える影響はごく限られていること。そしてシカゴ購買指数やISM指数を見て分かるように、下向きになると思われた米国製造業が、逆に予想以上の成長を示していること。更に短期的なドル買い理由としては、11月と12月に金利引き上げの可能性を示唆するフェデラルファンズ先物市場が挙げられる。

ドル買いを推奨するアナリストが多いことは言うまでもないが、ブルーンバーグ社の調べによると、47%におよぶ世界の主要銀行や証券会社のストラテジストは円買いを薦め、32%が円売りを薦めているという。特に「持続可能性が高い景気回復」、という3日に発表された日銀総裁の見解は、ディーラーたちの円に対する見方に変化を起こさせたようだ。リーマンブラザースのジェームズ・マコーミック氏は、「円は十分に下げ切ったと思います。日本経済も、順調な回復が始まったようです。あとは非正統的なゼロ金利政策の終わりを待つだけです」、と述べている。

47%の数字で分かるように、円買いは圧倒的主流意見というわけではない。「ここから円が買われたとしても、それは長続きしないでしょう」、とドイツ銀行のトレバー・ディンモア氏は言う。「たぶん円は、このレベルで横ばいすることになると思います。長期的に見れば、円は更に下がるはずです。たとえ一時的に円が上昇したとしても、日本の主要投資機関は米国債に資金を移すことでしょうから、どちらにしても円安方向に動くと思います。」

円買いか、それとも売りかで迷う人たちでも、話題が日本株になると態度は急変する。アイコンアジアパシフィックファンドのスコット・スナイダー氏を引用しよう。「現在の東京株式市場は、台湾に次ぐ割安市場です。株価収益率と金利に注目してください。経済回復の進む日本ですが、日銀総裁の話を聞く限り早急な金利引き上げはありません。現状のゼロ金利が継続されるわけですから、日本株はまだまだ上がります。オイル高が日本市場を崩す、そんな見方もありますが、それは日本の実情を知らない人の意見です。日本ほど節エネが徹底している国はありません。」

最後にスナイダー氏は、こんな注意をしている。「日本株が好調だからといって、日本株だけに投資をするミューチュアルファンドを買ってはいけません。大切なことは、日本も含めてアジアの国々に投資をするミューチュアルファンドを買うことです。これなら日本が下げても、他のアジアマーケットがクッションになります。」たしかに絶好調の東京市場、いつになったら消費者信頼感は上がるのだろう。

自動車売上ダウン、人気上昇の自転車

オイル高、ガソリン高、ハリケーン・リタ、そんな心配に関係なく、アメリカの製造業は大きな伸びを見せた。9月分のISM指数は59.4と発表され、単に予想の52を上回っただけでなく、ここ13ヶ月で最高のレベルを記録した。これでインフレ懸念が更に高まり、マーケット関係者たちは金利引き上げ政策が続行される、と確信したようだ。

予想外だったISM指数とは逆に、予想どおりの結果だったのは先月の自動車販売数だ。高いガソリンの影響を直接受け、ゼネラルモータースの売上は25%の減少、そしてフォードモーターは19%ダウンとなった。特に不調が目立ったのは、ガソリン消費の激しいSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)だ。実例を挙げれば、フォード社のエクスペディションは、去年の同時期と比べるとマイナス60%という、大きな落ち込みになった。

さて、日本車の売れ行きはどうだったのだろうか。トヨタモーターは10.3%売上増となり、特に良かったのは約2倍の伸びを見せたハイブリッドカーだ。ニッサン・ノース・アメリカは+16.4%を記録し、アルティマの売上が好調だった。SUV不振という業界トレンドに逆らって、パフファインダーは売上を倍増させている。アメリカン・ホンダの自動車販売数は+11.7%と発表され、快調な伸びを見せたのは、36.9%増のシビックセダンシリーズだ。

ヨーロッパの車はポルシェがマイナス9%、BMWグループは+1.6%、そしてメルセデスベンツが1パーセントの上昇だ。パッとしない米国自動車売上の中、二桁成長の日本車は、明らかに米国消費者の心をつかんでいる、と言うことができる。

売上なら、日本車を大きく上回る乗り物がある。四輪ではなく二輪、しかしエンジンは無い。AFP通信の報道によれば、アメリカにおける最近一年間の自転車売上数が、車の売上数を抜いた。もちろん車の総売上金額とは比較にならないが、自転車の売上総額は60億ドルにおよぶという。ツール・ド・フランスで7回の栄冠を勝ち取った、アメリカ代表のランス・アームストロング選手もこの自転車ブームの原因となったと思われるが、やはり急騰するガソリンが大きな原因だろう。通勤に自転車を使う人が増えているというから、これで少しは肥満問題が解決するかもしれない。

第4四半期、米国資金は日本へ向かう

第4四半期のマーケットが始まる。ここまでを振り返って、アメリカの一般投資家たちは、あることに気がついたことだろう。二つのハリケーン、値上がりの続くオイル、ガソリンが大きな話題になった第3四半期だが、アメリカ株に投資をするミューチュアルファンドは平均で4.3%の伸びを見せた。しかし、米株以外に投資をするインターナショナルファンドは11.7%の上昇だ。

先週発表されたデータによれば、アメリカ株中心のミューチュアルファンド総額は3兆1800万ドルにおよび、インターナショナルファンドは8180億ドルほどだという。圧倒的に米株ファンド投資額が、国際株ファンドを上回り、一般投資家たちは海外マーケットの成長を十分につかんでいない。

「これからは多数の個人投資家が、海外株式市場へ資金を移すことでしょう」、とリッパー社のドン・キャシディ氏は言う。第3四半期、最も優秀だったのは、+28.5%の伸びを見せた中南米諸国に投資をするラテンアメリカファンドだ。次は金鉱銘柄を狙った国際ゴールドファンド(+20.9%)、そして+19.7%の好結果を出した日本株ファンドへと続く。アメリカ市場を復習すると、第3四半期ナスダックは+4.6%、ダウ指数は+2.9%だ。ファンド別なら、成長企業を中心に買うグロースファンドは+6.1%、そして中型株ファンドが5.5%増となっている。

個別ミューチュアルファンドの成績を見てみよう。トップの座に輝いたのはプロファンズ・ウルトラジャパン。+41.5%という高リターンだ。2位は+36.6%のINGロシアファンド、そして+35%のプロファンズ・プレシャスメタルズが3位につけている。成績が最も悪かった3つのファンドは、全て米国株ファンドだ。アメリカンヘリテージグロースファンドはマイナス16.7%、フロンティアエクイティがマイナス13%、そして11%減のインターネット・インフラストラクチャーホールダーズへと続く。

さて、あなたがアメリカ人投資家なら資金をどこへ移すだろうか。私は日本へ資金が向かうと思う。最後に経済コラムニスト、ジョン・ワゴナー氏の意見を紹介しよう。「時間はかかりましたが、小泉内閣は着実に銀行の建て直しに成功しています。デフレの解決はまだですが、最近15年間で初めて東京の不動産が値上がっています。東京株式市場も活気が戻り、予測される企業利益を考慮すれば、まだ一般アメリカ人投資家が東京マーケットに参加できる余地は十分に残っています。」

ハリケーン・リタとインド

アウトソーシングと呼ばれる外部委託が当たり前の時世になった。おかげで職を失った、と憤慨する人たちが増えているが、企業側から見れば経費削減につながる重要な一対策だ。外注の行き先は、何と言ってもインドが圧倒的に多いが、AP通信からこんな報道があった。

テキサスに本拠地を置く、イフェクティブテレサービス社は、インドにコールセンターを設けて顧客サービスを行っている。コスト削減の一環として、米国企業は顧客サービス部門を、イフェクティブテレサービスのような会社に外注することが多い。

インドのイフェクティブテレサービスに勤務するマドハビ・パテルさんは、米国クレジットカード会社の顧客サービスを担当している。こんな物を買った覚えはない、請求書は間違っている、カードを失くしてしまった、そんな苦情や相談に応じるのがパテルさんの仕事だ。そしてハリケーン・リタが起きた。

ハリケーンに備えて、上陸が予想される州民のために、ハリケーン情報センターが急きょ設置されたのだが、何とその仕事を任されたのはパテルさんの所だった。総勢240名が働くパテルさんの職場へ、遠いアメリカから助けを求めて電話が殺到する。「救助隊はいつ来るのですか」、「近くの避難場所をおしえてください」、「近所のガソリンスタンドは、どこも売り切れでガソリンがありません。どこに行ったら手に入りますか」、「妹が行方不明です、、、」

もちろん、アメリカ人たちは電話がインドにかかっていることなど知らない。正確な情報さえ提供できれば会社の場所など問題ない、と言われる方もいると思うが、はたして何の支障も無かったのだろうか。ハリケーン情報センターの責任者の話によれば、2時間におよぶ説明会で、従業員には十分な情報が渡されたという。

突如のハリケーンで残業の続いたパテルさんだが、最後に彼女の言葉を記しておこう。「とても良い勉強になりました。チームワークの大切さをあらためて学んだだけでなく、困っている人々を助ける喜びも感じることができました。しかし世の中の人たちは、こんな私たちの働きがあったことなど全く知りません。」

アメリカ株式市場、3つの買い材料

9月も大詰め、あと3ヶ月で2005年度のマーケットが終了する。1月、1213ドルでスタートを切ったS&P500指数は、現在1220ドルを示し、たった0.5%の上昇というアクビの出そうな展開だ。もちろん、11回連続の短期金利引き上げ、高騰するオイル、ガソリンを考慮すれば、マーケットは健闘している、と言うこともできる。

9ヶ月間たいした動きを見せなかったマーケットだが、ポートフォリオマネージャーのジョン・マークマン氏は、こんなことを言う。「S&P500指数は、アメリカを代表する500の企業で構成される指数ですが、今年の状況は去年とよく似ています。2004年、S&P500は1111ドルで始まり、9月の終わりには1110ドルでした。小型株指数のラッセル2000は556ドルで2004年をスタートし、558ドルで9月を終えました。残りの10月から12月ですが、小型株指数は15%の上昇、そして大型株指数のS&P500は9%の伸びを記録しました。」

はたして、今年も去年のようなラリーがやって来るのだろうか。力強い上げは期待できないようだが、マークマン氏は5%程の上昇を予測している。3つの要素が買い材料になるらしいが、さっそく氏に説明してもらおう。

1、予想を上回る企業収益

3ヶ月前、アナリストはS&P500指数に属する企業の収益は、年間ベースで15.1%増、という見方を発表した。しかし、トムソンファイナンシャルが指摘するように、実際はそれ以上の17.9%の成長になりそうだ。エネルギー銘柄、特にオイル会社の収益は+29%から+56%が見込まれ、ハリケーンが悪影響になった保険会社や銀行収益も21%程の上げとなるだろう。

2、更なる上昇が期待できるエネルギー株

高騰するオイル価格は既に織り込み済み、だからオイルなどのエネルギー銘柄は避けるべきだ、といった声が聞かれるが、そう簡単に結論するのは早すぎる。利益を確保するために、オイル会社は顧客と相談して向こう6ヶ月、1年間といった形でオイル価格を設定する。だから今でも40ドル台の安い値段で取引をしている顧客がいるわけだ。現在の高いオイル価格が決算に繁栄されるのはこれからだから、まだエネルギー銘柄には上昇が望める。

3、新投資テーマの登場

アップルコンピュータのiPod nanoでも分かるように、新製品は株価を動かす大きな原動力になる。今、ファンドマネージャーたちが注目しているのは、IPTV(インターネットプロトコールテレビジョン)と呼ばれる新技術だ。テレビ映像シグナルが、ファイバーオプティックを通して各家庭に届くわけだが、これが実現するとテレビ産業は一大改革になる。豊富な番組をいつでも見れるだけでなく、好きな番組を簡単にメールすることも可能になる。企業生命をかけて、電話会社とケーブルテレビ会社は激しく競い合うことだろう。

残り3ヶ月、どうやら勝負はこれからだ。

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