US Market Recap

インフレの心配は要らない!?

もうこれ以上金利を上げないでほしい、と8割の米国消費者がギャラップ世論調査に答えている。残念なことに、連銀の金利政策には、まだ何の変化も見られない。新任の連邦準備理事会議長が就任するまで、あと二回の連邦公開市場委員会がある。だからグリーンスパン氏は、短期金利を4.5%まで引き上げることができるわけだ。

火曜の利上げ後に発表された声明書には、累積的に上昇するエネルギーと他のコストは、更なる物価上昇の原因になることが考えられる、という一文がある。こんな心配が消えるまで、連銀は金利を上げ続けることになるが、ここで最近目立ち始めた物価の動きを見てみよう。

エネルギー価格と言えば、筆頭に来るのがオイルとガソリンだ。アメリカエネルギー情報局のデータによれば、8月、1バレルあたり70ドル85セントまで急騰したオイルは、現在59ドル85セントで取引されている。9月、1ガロン3ドル7セントだったガソリンも、今日は2ドル48セントまで下落している。ビジネスウィーク誌の調べによれば、ほとんどのエコノミストは、オイル価格が50ドル台に落ち着くことを予想しているようだ。

住宅バブルと騒がれてから、かなりの月日が経つ米国不動産マーケットだが、いよいよ冷え込みが始まった。9月に販売された新築住宅の中間価格は21万5700ドル、と発表され、これは8月の22万8800ドルを下回った。また、売りに出されている新築住宅数が史上最高の49万3000件に達し、需要の低下が表れている。「中古住宅の在庫量も増加しています。ここ3ヶ月間ですが、多くの住宅は値下げをしないと売ることができません。住宅市場の下降が始まったようです」、とアナリストのディーン・ベイカー氏は言う。

もうインフレを心配する必要はなくなったのだろうか。「まだ安心は早すぎます。たとえばガソリンですが、これは株と同じです。どんなに強い株でも、休みなしで上がることはありません。必ず利食いによる、一時的な下げがやって来ます。再上昇は、売り物が完全に終わってからです」、と経済ジャーナリストのジム・ロジャース氏は説明する。

たしかに、去年と比べればオイルもガソリンも値上がっている。12回連続の金利引き上げで、クレジットカードの利子は18%を超えた。これでは肝心なクリスマスセールが危ない。そんなわけで、大手小売のウォルマートは、大幅な値下げを発表した。HPパビリオン・ノートブック・コンピュータが398ドル、HPフォトスマート・デジタルカメラが98ドル88セント、それにコーヒーメーカーが4ドル24セントなどだ。当然、他の小売店も値下げに踏み切ることだろう。有難い、今年のクリスマスプレゼントには、あまり金を使わずに済みそうだ。

一大転換期に立つデル

無敵のデル、いつも単独首位だったデル、それは昔の話になろうとしている。世界最大のPCメーカーとして、全力疾走を続けたデル、いよいよ燃料補給が必要になったようだ。月曜のマーケット終了後、デルは投資者が嫌うニュースを発表した。第3四半期の決算は、売上そして収益の両方が予想以下の結果になる、という下方修正だ。

「デルに限らず、これだけ大きな企業が高成長を続けるのは難しいことです。デルの成長率低下は、当然の成り行きだと思います」、とTCWグループでファンドマネージャーを務めるジェーソン・マックスウェル氏は言う。氏の運用するファンドは2900万株のデルを保有しているが、デルをずっと監視し続けてきただけに、今回の下方修正ニュースには驚いていない。重要なことは、これからのデルの伸び率が、S&P500指数の上昇率を上回ることができるかだ。

最近のデル経営姿勢を疑問視するアナリストは多い。収益目標を達成するために、大幅なコスト削減を実施し、それが顧客サポートサービスや製品品質の低下に結びついている。「企業成功の鍵は、顧客を常に満足させることです。優先させるものを間違えると、問題は雪ダルマ式に増えていくことでしょう」、とマックスウェル氏は付け加える。

10月10日のビジネスウィークには、こんな報道がされている。「全ての顧客を満足させることは不可能だが、デルのカスタマーサポートに不満を訴える消費者が増加している。2004年、商事改善協会に届け出のあったデルに関する苦情は前年度を23%上回った。今年も苦情が増え、現時点で2004年度を5%ほど超えている。また、ミシガン大学の調べによると、デルの顧客満足度指数は業界平均の74にあたり、これは2004年度から6.3%下がっている。(アップルコンピュータの顧客満足度は81で業界のトップ)」

品質の低下は明確に表れている。二つのデスクトップ機種、GX270とGX280のキャパシタに欠陥が見つかり、これが第3四半期の決算に3億ドルの被害を与えている。欠陥キャパシタの搭載されたコンピュータが、実際にどれくらい販売されたかは分からないが、作業中に突然、電源が切れてしまうというから大変だ。キャパシタの他にも、不要になった在庫部品が1億5000万ドルの損になるらしい。辞めた重役が、ビジネスウィークのインタビューで、こう語った。「デルは芸を一つだけできる子馬のようなものです。今のデルには革新的なアイディアはありません。」

ヘッジファンドの心配事

期待の11月ラリーは展開されるだろうか。行方の鍵を握るイベントが、今週二つある。筆頭は火曜のFOMC(連邦公開市場委員会)だ。既に11回連続の金利引き上げだが、今回も0.25ポイントの利上げが予想されている。注目は、金利引き上げ政策が終わりに近いかどうかのヒントが得られるかだ。金曜日は、アメリカ経済のバロメーター、雇用統計が発表される。非農業部門新規就業者は+12万5000人、失業率は前回と同様の5.1%、そして時給は+0.2%が見込まれている。

11月のマーケットラリーを望んでいるのは、個人投資家だけではない。ニューヨークタイムス紙の報道によれば、いつも好成績で有名なヘッジファンドが、10月、大きな損を出したようだ。オイル株に代表されるエネルギー銘柄が主な投資対象だったようだが、このセクターは予想以上の下げになってしまった。利益を確定するために、多数のヘッジファンドがオイル銘柄を売ったようだから、これが自分たちの首を絞める一因になったわけだ。

ヘッジファンドに投資する目的は、リスクを回避(ヘッジ)して、高い利益を得ることにある。だから、ヘッジファンドマネージャーは、マーケットの動きに関係なく安定した好成績を上げなければならない。しかし、10月にヘッジファンドのしたことはリスクの回避ではなく、エネルギーセクターの下落に飲み込まれてしまった。「どのファンドも買う銘柄が同じ物ばかりです。優秀な競争相手に便乗して儲けようとするのですが、少しの下げでマネージャーたちは、簡単に動転してしまいます」、とロバート・チャップマン氏(ベテランファンドマネージャー)は言う。

大手ファンドは5%から10%の穴を開けたらしいが、これが一つの心配の種になっている。ほとんどのヘッジファンドは、解約は年に一度しかできない。時期は年末が一般的で、申し込みの受付は11月から始まる。ヘッジファンドのリーダー、と呼ばれるアティカス・キャピタル(80億ドル運用)でさえ、10月には9%の資金を失っている。もし、各ファンドに解約が殺到なら、期待の年末ラリーに水が注されてしまう。

10月、特に成績が悪かったのは、アクティビストファンドと呼ばれる種類のヘッジファンドだ。これらのファンドは投資対象になっている企業の経営陣に積極的に働きかけ、会社資産の売却などを奨励して株価上昇を狙う。上記したアティカス・キャピタルもアクティビストファンドの一つであり、銅生産会社、フェルプス・ダッジへの集中投資が裏目に出てしまった。約4%の株を買い占めたらしいが、フェルプス・ダッジは、10月、10%の大幅下落だ。

ヘッジファンドも投資だから浮き沈みがある。ヘッジ・ファンド・リサーチ社のデータによれば、10月の成績を含めても、ヘッジファンドは平均+7.4%の利益を出しているという。もちろん、普通のミューチュアルファンドのような規制がないヘッジファンドは、投資結果を公表するところが少ない。最後に、ヘッジファンドコンサルタント、サンドラ・マンツキー氏の言葉を記しておこう。「ヘッジファンドに投資するなら、今はとても良いタイミングです。エネルギー銘柄には、大きな伸びが期待できます。」

気になる統計

+1.4%、これが過去30年間の平均だ。2005年のマーケットも、あと2ヶ月でお仕舞い。クリスマスラリーを待望しておられる方も多いことだろう。ストック・トレーダーズ・アルマナック社の統計によれば、11月のマーケットは年間12ヶ月を通して、月別で2番目という好成績をあげている。

上記の+1.4%は、過去30年間、S&P500指数が記録した11月の平均伸び率だ。同時期のダウ指数は+1.3%、そしてナスダック指数は+1.9%だから、これでどのマーケットを狙うべきかが分かる。もう一つ、アルマナック社からの統計を付け加えよう。過去14回の大統領選挙を振り返ってみると、選挙翌年の11月に下げたことは、たった3回しかない。

「マーケットは先週底を打ったと思います。投資者たちは、かなり悲観的になっていますから、ラリーが起きやすい下地が出来上がっています」、とウィーデン&カンパニーでリサーチアナリストを務める、スティーブン・ゴールドマン氏は言う。しかし、氏はこんな警告もしている。「国債市場を見てみると、10年債の利率が上昇し、ここ6ヶ月間で最高の水準に来ています。金利や高い灯油などのエネルギー価格は、株式市場に大きなチャレンジになるでしょう。」

早速だが、11月1日にはFOMC(連邦公開市場委員会)が予定されている。0.25ポイント(25ベーシスポイント)の利上げが予想され、短期金利は4%になる、というのが大方の見方だ。最近のタカ派的な連銀関係者の意見で分かるように、金利引き上げは11月で終わりになる可能性は低い。フェドファンズ(短期金利)先物市場を参考にするなら、マーケットは12月と1月にも金利引き上げを予測している。

最後に、少し気になるデータを記しておこう。たしかに11月は2番目に成績が良い月なのだが、それにはある前提がある。年末ラリーは、1月から10月までの伸び率に大きく影響される。最初の10ヶ月間の上昇率が10%以上なら、強い年末ラリーが期待できる。しかし10ヶ月間の伸びが4%以下なら、大したラリーを望めない。ここまでのS&P500指数を見てみると、ほぼプラスマイナス0だから、クリスマスラリーは控えめなものになりそうだ。

オレンジジュース新高値、これはハリケーンの影響?

正確な数字は分からない、しかし大きな被害があったはずだ。そんな理由で、オレンジジュースの先物は、1ポンドあたり1ドル19セントを記録し、1998年12月の高値を突破した。全米8割のオレンジはフロリダで生産され、ハリケーン・ウィルマは、かなりの打撃を与えたらしい。「ダメージを受けたことは間違いありません。しかし、はっきりした損害額が分かるのは、あともう1、2週間先になるでしょう」、とベーシック・コモディティーズのケビン・シャープ氏は言う。

オレンジ生産者も、シャープ氏と同様な発言をしている。ハリケーン・ウィルマが襲ったフロリダ州南部には、ヘンドリー郡とコリアー郡の2大オレンジ生産地がある。オレンジ協会の発表によれば、停電や通信網の破壊が原因となり、まだ多くの農園と連絡がつかない状態だが、ここまで分かった範囲でも、約15%のオレンジの木が吹き飛ばされたようだ。

「問題なのは、ハリケーンの被害ではありません。シトラスキャンカーの蔓延です」、とオレンジ協会のケイシー・ペース氏は語る。シトラスキャンカー、柑橘類癌腫症と呼ばれるオレンジを蝕むバクテリアだ。このバクテリアは、主に風と雨によって運ばれ、去年のハリケーンシーズン頃から頻繁に見られるようになった。ペース氏によれば、去年フロリダは、シトラスキャンカーで約40%のオレンジを失っている。

米農務省のデータによると、フロリダは1億6900万箱のオレンジを去年生産した。これはペース氏の言うように、前年度を40%下回る生産量だ。はたして今年はどうなるかだが、農務省は去年を12%上回る、1億9000万箱を予想している。CKフューチャーズのクリス・クラフト氏は、「ハリケーンは去年の生産量を減らしただけではありません。暴風雨は木にストレスを与え、一本の木に実るオレンジ数を減らす原因にもなっています」、と述べている。

ハリケーンの被害は大きいが、それは一時的なものだ。しかし、シトラスキャンカーは、そう簡単に消えない。オレンジの木を醜く変形させ弱らせるシトラスキャンカーには、今のところ治療方法が無い。オレンジ協会のペース氏によれば、一旦シトラスキャンカーに感染すると7年間の月日が無駄になる。消毒のため2年間土地は使えなくなり、苗木が成長するには更に5年の月日がかかる。溜め息の出そうな話だが、あとは季節外れの寒さが来ないことを祈るばかりだ。

業績悪化とトイレの使用時間

48分。これは自動車労働組合の契約書に記されている、従業員が一日で許可されているトイレの使用時間だ。デトロイト・ニュース紙の報道によると、フォード・モーターは次のようなメモを、ミシガン州ウェイン市の工場に勤務する従業員に配布した。「多数の従業員が、規定されている一日48分までのトイレ使用時間を守ることができない。無駄な時間がトイレに費やされ、そのため生産に悪影響が出ている。」

更にメモには、自動車産業界の厳しい競争が強調され、管理職者は従業員のトイレ使用時間を監視することも書かれている。早速、こんな反論が出ている。「売上が下がったのは経営陣の責任です。私たちのトイレ使用時間には、何の関係もありません。」先週発表された決算によれば、第3四半期、フォードは1億9100万ドルの赤字だった。まさか、この損額全てがトイレ使用時間が原因とは思われない。

さて、48分が長すぎるかどうかは別として、株と言えば、長期投資型の人が多い。できれば、あまり知られていない有望な成長株を発掘して、安いところで買い込みたい。やがてアナリストもその銘柄を発見し、買い推奨が連発される。テレビや新聞でも話題になり、大衆がドッと買いに押し寄せる。株価は棒上げ状態になり、簡単に2倍になってしまう。こう上手く話しが進んだら最高だ。

大きく伸びそうな、長期投資用の株を見つけるには、6つのルールがある、とフール・ドット・コムのトム・ガードナー氏は言う。「投資者なら、ピーター・リンチという名前を聞いたことがあると思います。リンチ氏の本は100万冊以上売れてますから、氏の投資方法をご存知の方も多いはずです。しかし、問題なのは、多くの投資者はリンチ氏の方法を応用していません。私の守っている6つの投資ルールも、リンチ氏の考え方が根底にあります。」

それでは、6つのルールを紹介しよう。

1、小型成長企業に的を絞ること。リンチ氏はこう説明する。「大型優良銘柄が、そう簡単に2倍3倍になることはない。大幅上昇が期待できるのは小型株だ。」もちろん、バランスシートのしっかりした会社であることも忘れてはいけない。

2、速い成長スピード。売上や一株利益は、年間20%から30%以上の伸びがあること。

3、ありふれた会社名、退屈な製品、見捨てられた業界。好例はマスコ・コーポレーションだ。マスコと聞いても、何の会社か見当がつかない。マスコは水道の蛇口ハンドルを作る会社で、大衆を魅了するだけの話題性がない。もちろん、アナリストからも見捨てられた業界だ。だが、株価は100倍以上になっている。

4、まだ大手証券会社のアナリストによるレポートが無いこと。

5、インサイダーによる買い、自社株買戻しがあること。

6、一銘柄だけに集中投資しないこと。

リンチ氏の本は、「ピーター・リンチの株で勝つ」というタイトルで販売されている。

迷うファンダメンタルズ中心主義の投資者たち

マーケットは揉み合いが続いている。今月末で会計年度が終わる大手ミューチュアルファンドが多く、月末ラリーを期待している投資者もいるが、思ったように上がらない。かと言って、売り手が喜んでいるわけでもない。こんな状況だから、普段はファンダメンタルズだけの人たちも、なんとか方向性をつかもうと、テクニカルアナリストの意見を聞くことになる。

「もしS&P500指数が1168、そしてナスダック指数が2025を割ると、米国株式市場はベアマーケットに入ります」、と語るのはシェイファーズ・インベストメント・リサーチ社のクリス・ジョンソン氏だ。「今、一般個人投資家がしなければいけないことは、慎重な持ち株の検討です。処分するべきものは直ぐ売り、次回の買いチャンスに備えて、十分な現金を口座に蓄えておくことが必要です」、と氏は付け加える。

ファンダメンタルズ中心主義の投資家は、とにかく迷っている。金利引き上げ政策は既に8回の裏まで来ている、と信じていたが、度重なる連銀関連者の意見からは延長戦しか読み取れない。決算シーズンも大詰めとなったが、ほとんどの企業は予想以上の収益を発表している。しかし、グーグルなどの一部を除いて、株価は全く好反応を示さない。そんなわけで、大局的な立場から見た現在のマーケット、そして予想される今後の動きなどを、さらにジョンソン氏に聞いてみよう。

「最初に指摘したいのは、マーケットは長期サポートレベルをテストしています。ナスダック指数とS&P500指数は、20月移動平均線の位置にあり、テクニカルアナリシスを重視する投資者や投機家が買っているわけです。ベアマーケットを避けるためには、両指数とも現在の位置から下落することは許されません。」正にサポートライン上で、売り手と買い手が綱引き状態になっているわけだが、ジョンソン氏はこんなことを言う。「数週間前と比較してみると、強気から弱気に転向する投資者が少し増えています。これは買い手に不利になりますが、今の膠着状態が最終的にどう動くかが、次の数ヶ月間のマーケット方向を決定する大きな要素になります。」

予想は好きでない、と言うジョンソン氏だが、今後の動きについて最後に語ってもらおう。「20月移動平均線が上昇している限り、マーケットはアップトレンドです。しかし、現在の20月移動平均線は上向きに陰りが見え、ダウントレンドに方向転換しそうです。既にダウ指数は20月移動平均線を割っています。同様なことがナスダックとS&P500に起きれば、即刻持ち株を処分し、空売りに専念するだけです。」

ハロウィーンを見守る小売業者

10月31日はハロウィーンだ。コスチュームで変装した子どもたちが、チョコレートやキャラメルを目当てに、各家庭のドアを叩く。CNNの報道によれば、今年人気のコスチュームはダースベーダーとバットマンだという。もちろん、子どもに混じって変装姿で近所を練り歩く大人もいる。ここで質問。大人たちが最も好むコスチュームは何でしょうか?正解は、子どもと全く同じだ。「スターウォーズをテーマにした衣装は、根強い人気があります」、とバイ・コスチュームズ・ドット・コムのハレム・ゲッツ氏は言う。

子ども、大人、もう一つ忘れていた。ハロウィーンに参加するのは人間だけではない。家族の一員、犬たちも変装行事に加わる。ハレム・ゲッツ氏を、もう一度引用しよう。「今年のハロウィーンの特徴は、ペット用コスチュームの売上が大きく上がっていることです。去年と比較すると、約120%の上昇です。」

コスチューム、チョコレート、キャラメル、いったいアメリカ人は、どの程度の金をそれらに費やすのだろう。全米小売業協会からのデータを紹介しよう。53.3%の消費者はコスチュームを購入し、平均コスチューム価格は31ドル88セント(約3600円)だ。コスチュームとキャラメルやチョコレートを合わせると、売上は33億ドルにのぼり、去年の売上高を5.4%上回ることが予測されている。

ハロウィーンで最も金を使う世代は、18才から24才の若者たちだ。金額に直せば、一人あたり50ドル75セントの出費になり、これは去年の額を30%も上回っている。クリスマスセールを占う意味で、ハロウィーンの売上は小売業者にとって重要だ。ガソリンやエネルギー価格の値上がりで、悲観視されていたハロウィーンセールだが、小売店オーナーたちは、ほっと一息ついていることだろう。

さて、子どもはチョコレートで満足だが、大人はそうはいかない。練り歩きに疲れた後は、家に帰って冷たいビールだ。そこで、最後にビールの話題を紹介しよう。ビールメーカーのクワーズ・ブルーイングは、ガソリンの代用になる、エタノールの生産を開始した。ビール製造後に残った廃棄物を、約2時間精製することでエタノールができるらしいが、ガソリン高に目をつけた面白いビジネスアイディアだ。

平均深度1メートル、あなたは歩いてその川を渡るべきか

マサチューセッツ大学教授、ナシム・ニコラス・タレブ氏には、株トレーダーというもう一つの顔がある。著書Fooled By Randomnessは14ヶ国語に翻訳され、単にウォールストリートだけでなく、氏を信奉するビジネスマンは多い。また、エンピリカ社の会長を務めるタレブ氏は、投資家たちの資金運用も行っている。

さて、ここで氏の投資理念を明確に表す実験をしてほしい。用意するものは1枚のコイン。先ず、どちらを表にするか、裏にするかを決めよう。50回のコイン投げをするわけだが、表が出たらA、裏だったらBの要領で、1回投げ終わる度に記録してほしい。実験を始める前に、あなたの予想も書いておこう。1回目はA、2回目はB、3回目もB、そんな具合に予想を紙に書きとめるのだ。

あなたの予想と、実験結果を比較してみよう。予想の方が実際の結果より、もっとランダム(無作為)だったのではないだろうか。タレブ氏を引用しよう。「私は人間の作った予想リストと、実際のコイン投げ結果を簡単に見分けることができます。一般的に、予想リストにはA、A、A、A、といった長く同じ物が連続することはありません。」言い換えれば、現実には20回連続で裏が出ることもあり、ランダムな事象結果は意外とランダムに見えないものだ。

それでは、コイン投げと株投資を比較してみよう。もしあなたが、15回連続で表を出したとしよう。16回目は裏になるだろうか、それともまた表だろうか。確率は半々、しかし、あなたは自分には表を出す才能がある、と思い込むかもしれない。「ある投資家が、10年連続で好成績を上げたからといって、11年目もうまく行くとは限りません。同様なことが、企業の収益や経済についても言えます。過去の結果は、決して将来を予測しているわけではありません」、とタレブ氏は言う。

このように、タレブ氏の投資スタイルは、予測できない事態を想定することが基盤になっている。個別銘柄オプションを頻繁に利用するタレブ氏の手法は公表されていないが、氏はこんな例を挙げている。「現在60ドルのオイルですが、三年後は400ドルになっているでしょうか、それともたったの10ドルでしょうか。もちろん、そんな極端な数値を考えている人たちはいませんから、オプションを活用するわけです。」今まで見た白鳥が全て白だったからといって、黒い白鳥はいない、と結論できない。もう一つ、最後にタレブ氏を引用しよう。「川の平均深さが1メートルなら、その川を歩いて渡らないことです。」

まだ見えないセクターローテーション

投資者たちは、総立ちの拍手大喝采でグーグルの好決算を称賛した。339ドル90セント、+12.1%、で終了ベルを迎え、見事な高値の更新だ。グーグルがナスダック市場にデビューしたのは14ヶ月前、株価は85ドルだった。次々と新アイディアを発表し、収益は驚くペースで上昇している。こんな状況だから、アナリストたちは早速グーグルの目標株価を引き上げている。例を挙げれば、UBS証券は375ドルから430ドル、そしてファーストアルバニーは363ドルから450ドルに新ターゲットを設定だ。

決算シーズン真っ最中のアメリカ、S&P500指数に属する企業の160社が既に決算発表を終えている。110社はアナリストの予想を上回り、25社は予想以下、そして残りの25社は予想どおりだった。テクノロジー銘柄だけに焦点を合わせると、20社は予想以上の収益、5社は予想と一致の伸び、ガッカリな結果だったのはインテルの1社だけだ。しかし、これらのアップビートな決算報告にもかかわらず、肝心なマーケットは前向きな反応を示さない。正に投資者は、悪材料だけに注意を払っているわけだ。

多くの心配事を抱えたマーケットだが、ストック・トレーダーズ・アルマナック社の統計によれば、10月のマーケットが苦しいと、11月は一転反発ラリーが起きやすいという。「月末から来月にかけて、マーケットが上昇することは十分に考えられます。現在のマーケットは極度に売られ過ぎなレベルにあり、季節的にも、ここからは買い手が有利になる時期です」、とウィンダム・ファイナンシャル社のポール・メンデルソン氏は言う。

はたして年末ラリーは本当に訪れるのだろうか。メンデルソン氏は、更にこう付け加える。「一つ問題があります。マーケットの主役、ファンドや機関投資家から、まだサインが見えないのです。マーケットが上がるためには、成績の悪いセクターに属する株を売って、その資金を有望なセクターに移す必要があります。これがセクターローテーション、と呼ばれるものですが、今のところ明確な動きを機関投資家から読み取ることができません。」

金利、インフレ、エネルギーコスト、これらが積極的なセクターローテーションを阻んでいる理由だが、今週は重要な週になりそうだ。火曜には住宅販売数が発表される。不動産冷え込みを懸念する声が聞こえるようになった今日この頃だが、アナリストたちは年間ベースで住宅売上は、729万件から720万件への下落を予想している。さらに火曜には、消費者信頼感指数も控えている。木曜は耐久消費財、金曜は最も注目される第3四半期のGDP(国内総生産)がある。今年のマーケットも、残すところ2ヶ月と少し。ウォールストリートにサンタクロースは現れるだろうか。

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