8.45%。これは、先日3万人の従業員削減計画を発表した、ゼネラル・モータース(GM)の株式配当利回りだ。一株に対して2ドルの配当金だから、GMは約11億ドルを株主に毎年支払っていることになる。2年以内に倒産の確率が半々と噂されるGMだけに、アナリストや自動車労働組合は、この高額な配当金中止を訴えている。
中国での売上見通しが上向きになったことで、GM株は最近少し反発を見せたが、事実はここ5ヶ月間で50%近い下げだ。この大幅な下落が配当利回りを押し上げ、ダウ銘柄ではGMの8.45%を上回る株は一つも無い。二番目に率が良いのはAT&Tの5.22%、三番目はVerizonの5.08%、4位はMerckの4.99%、そして5位はAltriaの4.34%だから、いかにGMが破格か分かっていただけると思う。
工場の閉鎖で多くの従業員が犠牲になるのだから、企業側は配当金の支払いを当然中止するべきだ、という労働組合側の主張に、リック・ワゴナー氏(最高経営責任者)はこう答えている。「配当金は、四半期毎に開かれる役員会議で、全ての関連事項を十分検討した上で決定します。」具体的な回答を避けたわけだが、バンク・オブ・アメリカのアナリスト、ロン・タドロス氏はこんな見方をしている。「11億ドルにおよぶ配当金は、約半分に減らされることでしょう。そうすることを以前から期待していましたが、今となっては少し遅すぎるような気がします。」
更に、このような意見もある。モーニングスター社のジョッシュ・ピータース氏によれば、近々ミューチュアルファンドによるGM株売りがありそうだという。「ここまでのGMの収益と配当金を比較してみると、あまりにも配当金が大きくなりすぎています。これはファンドマネージャーにとって心配材料です。それに、ただでさえGMは現金が必要なのに、11億ドルも配当金に回すことは納得できません。どちらにしても、配当金目当てでGMに投資をするのは間違いです。こんな高額な配当が継続できる見込みは無いのですから。」
今ここでGM株を買うのは、金の無駄使いだろうか。デービッド・ヒーリー氏(バーナム証券)の話を聞いてみよう。「配当金の支払い中止は、もうある程度、現在の株価に織り込まれていると思います。実際にそのニュースが発表されたとしても、ここから大きく下げることは無い筈です。もちろん、経営陣が正しい方向へ動き始めた、と取る人もいるわけですから、一時的な株価上昇も考えられます。」
ということは、底値拾いを試す価値があるのだろうか。もう一度、モーニングスター社のピータース氏を引用しよう。「GMでは役員、労働組合、それに部品メーカーが優先されることはあっても、株主が優遇されることはありません。たしかに誰もが配当金の中止を予想しています。それにGMの経営陣は、ウォールストリートから全く信頼されていないことも皆承知です。しかし、実際に配当金を取り止めることは、経営陣がウォールストリートの見方が正しかったことを認めるだけです。これでは株は下がります。」