US Market Recap

会社資金の無駄使い

8.45%。これは、先日3万人の従業員削減計画を発表した、ゼネラル・モータース(GM)の株式配当利回りだ。一株に対して2ドルの配当金だから、GMは約11億ドルを株主に毎年支払っていることになる。2年以内に倒産の確率が半々と噂されるGMだけに、アナリストや自動車労働組合は、この高額な配当金中止を訴えている。

中国での売上見通しが上向きになったことで、GM株は最近少し反発を見せたが、事実はここ5ヶ月間で50%近い下げだ。この大幅な下落が配当利回りを押し上げ、ダウ銘柄ではGMの8.45%を上回る株は一つも無い。二番目に率が良いのはAT&Tの5.22%、三番目はVerizonの5.08%、4位はMerckの4.99%、そして5位はAltriaの4.34%だから、いかにGMが破格か分かっていただけると思う。

工場の閉鎖で多くの従業員が犠牲になるのだから、企業側は配当金の支払いを当然中止するべきだ、という労働組合側の主張に、リック・ワゴナー氏(最高経営責任者)はこう答えている。「配当金は、四半期毎に開かれる役員会議で、全ての関連事項を十分検討した上で決定します。」具体的な回答を避けたわけだが、バンク・オブ・アメリカのアナリスト、ロン・タドロス氏はこんな見方をしている。「11億ドルにおよぶ配当金は、約半分に減らされることでしょう。そうすることを以前から期待していましたが、今となっては少し遅すぎるような気がします。」

更に、このような意見もある。モーニングスター社のジョッシュ・ピータース氏によれば、近々ミューチュアルファンドによるGM株売りがありそうだという。「ここまでのGMの収益と配当金を比較してみると、あまりにも配当金が大きくなりすぎています。これはファンドマネージャーにとって心配材料です。それに、ただでさえGMは現金が必要なのに、11億ドルも配当金に回すことは納得できません。どちらにしても、配当金目当てでGMに投資をするのは間違いです。こんな高額な配当が継続できる見込みは無いのですから。」

今ここでGM株を買うのは、金の無駄使いだろうか。デービッド・ヒーリー氏(バーナム証券)の話を聞いてみよう。「配当金の支払い中止は、もうある程度、現在の株価に織り込まれていると思います。実際にそのニュースが発表されたとしても、ここから大きく下げることは無い筈です。もちろん、経営陣が正しい方向へ動き始めた、と取る人もいるわけですから、一時的な株価上昇も考えられます。」

ということは、底値拾いを試す価値があるのだろうか。もう一度、モーニングスター社のピータース氏を引用しよう。「GMでは役員、労働組合、それに部品メーカーが優先されることはあっても、株主が優遇されることはありません。たしかに誰もが配当金の中止を予想しています。それにGMの経営陣は、ウォールストリートから全く信頼されていないことも皆承知です。しかし、実際に配当金を取り止めることは、経営陣がウォールストリートの見方が正しかったことを認めるだけです。これでは株は下がります。」

口座を襲った悪夢

この銘柄さえなければ今年の成績はプラスだった。投資家なら、一度はそんな悪魔のような株に悩まされることがあるだろう。米国の投資家たちは、いったいどんな銘柄で口座に大きな穴を開けたのだろうか。ビジネスウィークが報道した、2005年度版悪夢の銘柄リストをさっそく紹介しよう。

1、クリスピー・クリーム・ドーナツ
華麗な飛躍を見せていた株価は完全に焦げついてしまった。今年12ドル25セントでスタートを切った株価は、今日5ドル付近で低迷している。ピークは2003年半ばに記録した40ドル台だ。あれから数々の訴訟、不審な決算報告、それに売上の減少と続き、全く良いところが無い。企業再建スペシャリストを雇ってみたが、お手上げの状態だ。現在クリスピー・クリーム・ドーナツは、最高経営責任者を探している。

2、テイザー・インターナショナル
電気ショック銃で知られるテイザー、製品は違うが話はクリスピー・クリーム・ドーナツと共通点がある。毎日のように話題になったテイザーは、かつてウォールストリートの花形株だった。今日たった7ドルの株価は、11ヶ月前32ドル50セントで取引されていた。転落の原因は、安全なはずの電気ショック銃が、人の命を奪ってしまったのだ。警察でも使われていた製品だったが、ニュースがニュースだっただけに、売上は急落となった。おまけに、決算報告書にも疑わしい点が発見され、証券取引委員会からも目をつけられてしまった。

3、バイオジェン・アイデック
開発していた薬品が、患者の脳に致命的な損傷を与え、正にバイオテクノロジー銘柄の悪夢が現実化してしまった。薬の販売は即刻中止され、株価は67ドルから35ドルに暴落した。それから株は45ドルまで回復しているが、問題になった薬品に対して、まだ食品医薬品局からの認可はおりていない。

4、メルク
大手製薬会社メルク、関節炎の治療薬が心臓病の原因になってしまった。そんな副作用を知りながら販売を続けていた、との疑いが浮かび、多くの患者から告訴される結果になった。裁判がいつ終わるかは、今のところ全く見当がつかない。

5、ファニー・メイ
驚いたことに、二年の期間にわたって偽った決算報告書を発表していた。これがアメリカ政府支援の、住宅投資そして融資会社の実態なのだから呆れてしまう。証券取引委員会から、2004年度からの決算再報告を要求されているが、まだ書類は提出されていない。

さて、最後に質問しよう。今年、投資者から最も持てはやされた株は何だろうか。200ドルから400ドル台に成長したグーグル、と思われるかもしれないが、正解はアップル・コンピュータだ。iPodの成功例から分かるように、アナリストのクリス・ジョンソン氏は、今のアメリカでアップルほど革新的な会社は存在しないと言う。

初値399ドル、高値5100ドル

ゲームファン待望のXbox360が、ついに店頭に並んだ。しかし、開店前からどの店にも長い列ができ、あっと言う間に売切れてしまった。値段は399ドル、円に換算すると約4万7千円だ。これが高いか安いかは別として、ビジネスウィークの報道によれば、マイクロソフトにかかったコストは470ドルにおよぶという。だから、1台売れると71ドルの損が出るわけだ。

なぜ損を覚悟で販売するのだろうか。狙いは何と言っても、2006年に販売が開始されるPS3が現れる前に、強敵ソニーから、出来る限りのマーケットシェアを奪うことだ。利益は2007年まで出なくても構わない。マイクロソフトの広報担当者はこう語っている。「2006年度は±0になれば良いと思っています。ゲーム機だけでは赤字ですが、ゲームソフトウェアや他の付属品を合わせることで、損益はトントンになる筈です。」

はたしてXbox360は、ソニーを倒すことができるだろうか。399ドルを払ってまで買う価値がある製品だろうか。フォーチュン誌でシニア・エディターを務める、ピーター・ルイス氏の意見を聞いてみよう。「約400ドルという高価な値段、まだ数の乏しいゲーム、それに高速インターネットも必要です。ですから、Xboxはコンピューターに詳しい人にはヒットすることでしょう。」

CNNでコンテンツ開発をするクリス・モリス氏の話を紹介しよう。「良い製品ですが、ベストではありません。大のゲームファンなら、Xbox360を買うことは、もうかなり前に決めていたことです。ゲーム通の地位を保つためには、買わないことなどありえません。それでは、一般の消費者も通に混じって、さっそく買った方が良いでしょうか。答えは簡単です。発売の初日に、店へ行く必要はありません。」

どちらにしても売り切れの続出、好調なスタートだ。ところが、せっかく手に入れたXbox360を、もう手放す人たちがいる。場所は、オンラインオークションのイーベイだ。最初は650ドルほどで売買が成立していたようだが、22日の昼前には、何と5100ドルの値がついた。これでマイクロソフトの新しい戦略が決まった。小売店をやめて、イーベイで売ればいいのだ。(笑)

1バレル100ドルは夢物語?

7ヶ月前のことだった。ゴールドマンサックスのアナリストは、1バレル105ドルのオイル価格を予想した。テロ活動、中東政治情勢、それにハリケーン、まったく不安定な状態だったから、オイルの急騰は、ほぼ間違いないかに見えた。しかし、8月の71ドルをピークに、現在オイルは58ドル台で推移している。100ドルは単なる感情的な意見だったのだろうか。

「1バレル100ドルは、短期的な予想ではありません。オイルがそこまで上昇するためには、オイル設備がテロリストによって、壊滅的な打撃を受ける必要があります」、とワコビア社のジェーソン・シェンカー氏は語る。「100ドルという価格ですが、これは極めて起きる確率の低い事件を基にたてられた、大げさな予想です」、とストラテジック・エネルギー社のマイケル・リン氏は付け加える。

思い出してほしいのは、アメリカの海底油田地域を襲った3つのハリケーンだ。カトリーナ、リタ、そしてウィルマの被害から、オイル産業はまだ完全に回復していない。重要なオイル供給ラインが閉鎖されてしまったのにもかかわらず、オイルは100ドルに達することはなかった。二桁から三桁にオイル価格が暴騰するには、三つのハリケーン以上の災害が要るわけだ。

しかし、ファースト・エネキャスト・ファイナンシャル社、アグベリ・アメコ氏の見方は変わらない。「1バレル100ドルは、いずれやって来ます。時間の問題です。次のハリケーンシーズン、あるいは大きな地政的突発事件が、オイルを100ドルに上昇させることでしょう。テロ懸念があるかぎり、オイル価格は常に100ドルへの射程圏内にあると言えます。」

リサーチアナリスト、ダン・ハッセー氏は、こんな警告をする。「オイルの供給量に注意を払わなくてはいけません。現在、全世界には1兆バレルのオイルがあります。その60%は政治不安が付きまとう中東です。ハリケーンが証明したように、アメリカのオイル供給にも弱点があります。最大の産油国はサウジ・アラビアですが、大きく伸びる需要量を考えると、あと73年でサウジのオイルは空になるでしょう。」

ここで注目されるのが次世代エネルギーだが、最後にハッセー氏の言葉を記しておこう。「オイルに代替するエネルギーが開発されたら、本当にオイルの需要ば無くなるのでしょうか。生物体燃料などが研究されていますが、オイルに比べると割高です。2年から5年後に、大きな世界的経済成長が予測されていますが、それまでに低価格な代替エネルギーは間に合わないことでしょう。」

ゼネラルモータース、悪材料は出尽くした?

会社再建を目指して、ゼネラルモータース(GM)は北米12の工場とサービスセンター閉鎖計画を発表した。このため、少なくとも3万人の従業員が解雇され、GMは約27%の従業員を失うことになる。解雇の結果、年間で70億ドルのコストが削減できるようだが、いつGMが黒字転換できるかの目途は立っていない。

「この計画が発表されることは、既に皆が予期していたことです。しかし、これは、あまり積極的な会社建て直し計画ではありません」、とUBS証券のアナリスト、ロブ・ヒンクリフ氏は言う。6月、GMは2万5千人の解雇を予定だったから、今日出された数字は、それを5千人ほど上回っている。だが、自動車労働組合との契約があるため、GMは2007年の9月まで従業員を解雇することができない。

報道されているように、医療保険や年金コストがGMの業績不振を作り上げたことは事実だが、何と言っても問題は肝心な車が売れない。ニューヨークを襲ったテロ事件後、GMは画期的な金利0%自動車ローンを導入した。もちろん、消費者の反応は素早く、売上は史上最高に達した。経済学者たちも、GMは米国経済を不況から救った、と称賛した。

しかし、皮肉なことに、0%自動車ローンがGMの売上低迷原因の一つになってしまった。このローンプログラムが終了すると、GMの売上は極端な減少になった。通常のセールス方法では、他社と競争できなくなってしまったのだ。「今無理して買うことはない。次の0%ローンまで待とう」、こんな形で消費者は、0%ローンに匹敵する大胆な条件を要求するようになった。

最近の例では、社員割引セールがある。6月から9月まで、だれでもGMの自動車を社員と同価格で購入することができた。当然、消費者はGMディーラーに押し寄せ、売上は一時的な大幅上昇になった。おかげで在庫一掃に成功し、セールスマンは忙しい日々が続いた。だが、社員と同様な値段で車を売っても会社の収益は伸びない。結局GMが証明できたのは、割引プログラムでは会社を再建できないということだ。

1980年、GMは米国自動車マーケットの43.8%を握り、圧倒的な強さを見せていた。今日もGMはナンバー1だが、数値は18.8%に下落している。明らかに過去25年間、GMは着実に勢力を衰退させていた。やはり首位の座は、そう簡単に譲るわけにはいかない。そこで、1週間ほど前、GMはこんな発表をした。名前はレッドタグセール。来年の1月3日まで、コルベットなど一部の車種を除いて、だれでもGMに部品を納める子会社の社員と同様な値段で、2005年と2006年型の車が購入できる。ようするに、社員割引の復活だ。

あなたは何型の投資家?

あなたはA型、それともO型、と聞かれれば、直ぐ血液型のことだと分かる。それでは次の質問。あなたはNT型、それともDT型?たぶん、何のことかサッパリ見当がつかないことだろう。正解は、個人投資家のタイプだ。キャノン・トレーディング副社長、イアン・マイヤー氏によれば、投資家には大きく分けると4つのタイプがあるという。さっそく話を聞いてみよう。

「ダイエット、と一口に言っても、種類は一つだけではありません。人それぞれ状況が違うように、全ての人に同じダイエット療法は使えません。株や先物の取引でも同様なことが言えます。あなたは短気な投資家でしょうか、それとも気長にジックリと機を待つ方でしょうか。投資日誌をつけることは大切です。それは、あなたの投資家タイプを知る重要な手がかりになるからです。タイプが分かれば、あなたに合った投資方法を見つけることができます。4つのタイプを説明しましょう。

1、NT型

この質問に正直に答えてください。あなたは本当に株式投資に向いていると思いますか。株にリスクは付き物です。必ず利益が出る保証はありません。そんなリスクを冒してまで、株を本当にやりたいですか。もし答えがイエスでも、次の質問にノーなら、あなはNT型です。あなたには、投資用の資金が十分にありますか。大きな損を出しても困らない資金がありますか。NT型の方々には、株式投資を勧めません。

2、PT型

ここで買い、と分かっていても引き金が引けない、あるいはドタバタと良さそうな銘柄なら直ぐ買ってしまう。これはPT型です。ようするに、確立した売買ルールが無いため引き金が引けない、あるいは気まぐれに銘柄から銘柄へと乗り換えてしまうのです。PT型の人はマーケットの基礎を勉強して、適切な投資方法を身につけることが先決です。あとは自分のルールに従って、長期投資を実行してください。

3、DT型

自分のルールどおりに売買をし、ある程度の成績も上がっているのですが、どうもユックリとした投資ペースに性格が合わない。長期で儲けるよりも、短い時間で利益を得たい。時間外取引に大きな興味がある。そんな方なら、デイトレードに挑戦してみることが考えられます。デイトレーダーだからといって、毎日頻繁に売買する義務はありません。基本は同じです。自分のルールに従って、チャンスのある時だけ売買するのです。

4、ST型

デイトレードはしたくない、かといってPT型のような長期投資もしたくない。そんな人はST型です。株には、数日間のサイクルで動いているものが多くあります。先ず、狙った銘柄の現在の位置を把握する必要があります。サポートラインが近いでしょうか、それともレジスタンスレベルが目前でしょうか。こんなレジスタンスとサポートを利用するだけでも、数日間のサイクルをつかむことができます。」

最後に、一つ付け加えよう。あなたがDT型だからといって、デイトレードだけに限ることはない。事実、DT型とST型を使いこなす人たちは多い。

迫る黒い金曜

来週木曜は感謝祭、家族揃ってお決まりの七面鳥を食べる。さて、ここで質問。アメリカで最も多くの七面鳥を生産している州はどこでしょうか。正解はミネソタ州。全米で毎年生産される七面鳥は約2億6300万羽だが、そのうちの18%がミネソタ産だ。2位はノースカロライナ州、3位アーカンソー州、4位ミズリー州、5位バージニア州、そして6位カリフォルニア州へと続く。

問題は感謝祭翌日の黒い金曜(ブラックフライデイ)だ。オカルト的な響きだが、この日クリスマスショッピングシーズンが正式に始まる。各小売店は朝早くから店を開け、営業は深夜まで続く。黒い金曜だけの特別なセールも用意され、クリスマスシーズンの売上を占う重要な長い一日だ。狙いをつけた商品を目指して、殺気だった女性たちが店に押しかける。(どんな男性でも、あの気迫には勝てない。)正にブラックフライデイなのだ。

小売業者は、黒い金曜にどんな企画をしているのだろうか。二つ見てみよう。先ず大手サムズ・クラブ。開店時間は、なんと早朝5時だ。メニューは発表されてないが、全ての客に無料で朝食が配られるそうだ。

格安価格で勝負する、ターゲットにも少し変わった作戦がある。タダの朝食ではないが、有名人がモーニングコールしてくれるのだ。お客さんが起きてくれないことには話にならない。前日は大いに飲んだり食べたりだから、だれだって金曜は寝坊したくなる。興味深いのは、有名人とはだれのことだろう。当然モーニングコールは録音だが、スーパーモデルのキャロリン・マーフィー、カントリーシンガーのブラッド・ペイスリー、それにセサミストリートでお馴染みの、カーミット・ザ・フロッグが予定されている。モーニングコールの申し込みは、来週水曜からターゲットのホームページでできる。

ショッピングセンター協会のデータによると、2004年、買い物客が最も多かったのはクリスマス直前の土曜日、そして二番目がブラックフライデイだ。具体的な数字で示せば、去年のブラックフライデイの週末には、1億3300万人が商店街に殺到した。はたして、来週はどうなるだろうか。小売業者の心配は、エネルギーコストが消費者に与えた影響だ。最近のガソリン値下がりは朗報だが、暖房用の灯油や天然ガスが大きく値上がっている。

さて、最後になったが、ブラックフライデイの本当の意味を記しておこう。殺気だった、喧嘩腰の買い物客が押し寄せるから黒い金曜と呼ばれるようになったわけではない。既に述べたが、感謝祭の翌日から一斉にクリスマスセールが開始される。ようするに儲かる季節が来るわけだ。儲けは店の収益になり、簡単に言えば黒字(ブラックインク)になる。これが黒い金曜の本当の意味だ。

実績が物を言うビジネス倫理講師

大きな社会問題となったエンロンのおかげで、2002年、米国企業改革法が成立した。別名サーベンス・オクスリー法とも呼ばれ、エンロンのような不正会計を防ぐことを主眼に、企業が書類を改ざんしたり破棄することを重罪に定めた。そのため、企業でのビジネス倫理教育が義務付けられ、倫理産業という新分野が誕生した。AMRリサーチ社の調べによれば、今年度米国企業は、ビジネス倫理教育に約61億ドルを割り当てたという。

ゴルフを習うなら、プロに指導してもらうのが良い。空手なら、黒帯の先生から手ほどきを受けたい。なら、どんな人がビジネス倫理の講師として最適だろうか。さっそく人気講師を紹介しよう。名前はマーク・モルゼ、以前ZZZZ・ベスト・カーペット・クリーニング社で最高財務責任者を務めた。この肩書きだけなら何と言うこともないが、氏には暗い過去がある。約1億ドルを顧客と銀行から騙し取り、1980年代、モルゼ氏は5年の日々を監獄で暮らしている。

「毎年60回ほど、ビジネス倫理の講師として、企業だけでなく大学やFBIに招かれています」、とモルゼ氏は語る。講師料は少なくても500ドル、多ければ1万ドルに達する。「昔は株投資などで不正を犯すと、証券取引委員会から民事訴訟を起こされたものです。しかし今日、状況は変わり、単に訴訟だけでなく何百万何千万ドルという多額な罰金が科されます。これが、私のビジネス倫理講師業を忙しくさせたようです。」

映画をご覧になった方も多いと思うが、「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」はペテン師が主人公だ。モデルになったのがフランク・アバグネール氏、正真正銘の詐欺師だった。言うまでもなく、アバグネール氏のビジネス倫理セミナーは大繁盛だ。「年間で35回くらいセミナーをしていました。しかし不正会計が多発し、今では毎年100回以上のセミナーをしています。」

前科者からビジネス倫理講師、いったいどうやって彼らは大きく変身することができたのだろうか。ウォルター・パブロ氏に聞いてみよう。「監獄から出た後、何度か入社面接をしましたが、前科のある私を雇ってくれる所はありませんでした。しかし、ある会社での面接で、こんなことを言われました。「君を雇うことはできない。だが、我が社の社員たちを教育してほしい。」これが、私のビジネス倫理教育講師業のスタートになりました。」正に失敗を生かした成功例だ。

悲観的になり始めた米国不動産関係者

アメリカで最もホットな不動産市場、それはアリゾナ州の州都フェニックスだ。ここ一年間で55.2%の値上がりだから、異常なブームと言うしかない。第2位はフロリダ州オーランド+44.8%、そして3位はケープ・コーラルフォート・マイヤーズ+42.5%(フロリダ州)だ。だが、アメリカの住宅価格は9月にピークを打った、そんな意見が広がり始めている。

火曜、全米不動産業協会から147の住宅市場を調査した結果が発表された。それによると、69の市場は過去12ヶ月間で10%以上の伸びを記録し、値下がりが起きたのは、たった6地域だけだった。第2四半期から第3四半期にかけて、住宅価格は平均で3.8%の上昇があったが、第1四半期から第2四半期は+10.4%だったから、明らかに値上がりスピードが鈍っている。

ここで、ナショナルシティー(不動産銀行)のエコノミスト、リチャード・ディカサー氏の話を聞いてみよう。「先週発表された、トール・ブラザース(住宅建築業)からのニュースが同業者に大きな影響を与えました。トール・ブラザースは高級住宅を専門にしていますが、2006年度の住宅需要を下方修正しました。また、住宅価格の値上がりも、今までのようなペースではなく、もっとおだやかな速度を予想しています。こんなトール・ブラザースの見方ですから、他の住宅建築業者も、やや悲観的になったようです。

新築住宅の売上状況は、既に陰りが見えます。現在売りに出されている新築住宅件数は、ついに50万件を超えました。こんなレベルに達したことは、アメリカ不動産史上初めてのことです。これが意味することは、住宅を売りに出しても、直ぐ売れないということです。実際の数字を示せば、今アメリカで新築住宅を売るには、平均で4.1ヶ月の時間が必要です。」

米国不動産は暴落するのだろうか。全米不動産業協会がメンバーの意見調査をしたところ、ほとんどのメンバーは来年度の伸び率は約5%と回答している。ひょっとしたら、+5%は希望的観測かもしれない。もう一度、ディカサー氏を引用しよう。「2005年度の第4四半期は1.7%ほどの下落になると思われます。その後は横ばい状態が2007年まで続くでしょう。」どちらにしても、二桁の成長率は過去の物となったようだ。

株投資は女性に任せろ!?

男性ファンドマネージャーと、女性ファンドマネージャーを比べたら、どちらの方が優秀だろうか。こんな質問をするのは、経済コラムニストのマシュー・リン氏だ。証券業界で活躍する女性が増えていることは確かだが、まだまだ男性が圧倒的に多い。この現状に挑戦するかのように、女性だけを顧客対象にしたファンドを開始した女性がいる。リン氏の話を続けよう。

「男女の戦いを宣戦したのは、ロンドンの女性ファンドマネージャー、ニコラ・ホーリック氏です。今回ホーリック氏は、ブラムディーン・アセット・マネージメントの一部門としてブラムディバを開設しました。ここでは、裕福な女性の資金だけが特別に運用されます。この新部門を発表した時ですが、ホーリック氏は女性ファンドマネージャーの方が、男性ファンドマネージャーより優れている。なぜなら、女性は男性のように、つまらないエゴが無い、といった意見を述べています。」

本当に女性の方が、男性より株式投資の才能があるのだろうか。リン氏は興味深いエピソードを紹介している。「メリルリンチは、千人の投資家(人数は男女半々)を使って投資実験をしたことがあります。その結果分かったことは、女性の方が、男性より間違いが少ないのです。女性は男性のように、一銘柄に集中投資することはありません。また、女性は男性より損切りが早く、頻繁に銘柄を乗り換えることもしません。男性は損切りが遅いだけではありません。利食いのタイミングにも大きな問題があります。ホームランを打つことばかり考えてしまうので、ほどほどのところで利食うことができません。ですから、折角の儲けが台無しになるだけでなく、最終的には損を出してしまうのです。」

メリルリンチ以外にも、似た統計がイギリスで発表されている。10万人の投資家から得た、今年1月から5月までの投資結果を見てみると、女性の成績は+17%、男性は11%増だった。なぜ女性の方が好結果だったのだろうか。アンスバシャー社で、投資ストラテジストを務めるティム・プライス氏は、こう説明する。「男性はあまりに自信過剰です。売買回数も多すぎます。正に攻撃的な男性ホルモンが裏目に出たわけです。」

手っ取り早い結論は、女性にファンドマネージャーの地位を譲れ、ということになるが、それではあまりにも短絡的すぎる。男性は、ファンドマネージャーをやめる必要はない。リン氏の言葉を借りれば、男性は大投資家として有名な、ウォーレン・バフェット氏を見習えばよいのだ。バフェット氏は長期投資を信条とし、頻繁な売買や銘柄の乗り換えをしない。なるほど、バフェット氏は女性的な投資方法をマスターしていたようだ。

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