1250億ドル。これは2005年、米国消費者が家庭用電化製品購入に使った金額だ。テレビ、コンピュータ、携帯電話、次々と新モデルが発表されるから、買っても直ぐ古くなってしまう。新品が手に入れば、使い古したテレビは要らない。捨てるのも気が引けるから、物置にしまったり、慈善団体に寄付することになる。
しかし、ABCニュースの報道によれば、慈善団体にとって、古いコンピュータなどの電気製品は貰っても迷惑なだけだ。実例を挙げよう。有名な慈善団体、サルベーション・アーミー(救世軍)に不要なコンピュータを寄付しようとすると、断られることが多い。たとえ受け取ってくれたとしても、最終的にはゴミ箱行きになる。
廃品所に山積みとなった家電製品はどうなるのだろうか?あまり気にする人はいないが、平均的なコンピュータのモニターには約2200グラムの鉛が含まれている。更にコンピュータには、環境汚染になるカドミウムや水銀も入っているから始末に悪い。
一般消費者には適用されていないが、法律上、企業はコンピュータなどの環境破壊につながる電気製品を、単にゴミ箱に捨てることが禁止されている。だから専門の回収業者を使うことになるのだが、実はこの回収業者に問題がある。
本来なら業者は、廃棄された電子機器を解体して、部品をリサイクルする。だが、大手回収業者、ボブ・グラビン氏は、こんなことを語る。「回収業者のほとんどは、本来するべき業務を怠っています。部品がリサイクルされるのは20%ほどです。残りの80%は、こっそりと海外に送られているのです。」
実は、グラビン氏も廃品電子機器を中国へ送っていた。「実際に現地へ行って、自分の目で信じられない光景を見るまで、私は廃棄されたコンピュータなどを中国へ送り続けていました。」信じられない光景とは何だろうか?廃品の山に集まった農民たちは、コンピュータから部品付きのボードを抜きとり、それをフライパンの上でボードが溶けるまで熱する。これで半導体が手に入る。
次に、強力な酸を使って半導体から目当ての微々たる金を取り出す。この工程で使った危険な酸、溶かされたボード、そして不要な部品は全て近くの川に投げ捨てられる。中国には、厳しい環境保護法がないから、農民たちが逮捕されることはない。
アメリカのゴミが、結果的に中国を汚しているわけだが、うまい解決方法はあるだろうか。ヨーロッパが手本になるかもしれない。ヨーロッパでコンピュータを買うと、要らなくなったコンピュータは、製造者が引き取ってリサイクルすることが義務付けされている。どちらにしてもリサイクル観念の低いアメリカ、問題解決には時間がかかりそうだ。