US Market Recap

米国消費者の知恵

毎週日曜だけ、ロサンゼルス・タイムズを買う人たちがいる。記事を読むためではなく、大量に折り込まれている広告が目当てだ。10ページ、20ページなどという半端な広告ではない。朝日新聞(朝刊)を10部くらい重ねた厚さだから、ロサンゼルス・タイムズの日曜版は、バラバラにならないように、しっかりと紐で結えられている。

これだけの広告量だから、一通り見るだけでも結構な暇つぶしになる。真剣な人たちは、単に目を通すだけでなく、広告に付いているデパートやスーパーマーケットの割引券を切り取るから、正に半日作業になるらしい。国は違っても、良い品物を安く手に入れたい消費者心理は、日米共々変わりは無い。

あの店が安い、という場所情報も重要だが、もう一つ覚えておきたいのが「いつ」に相当する時間的要素だ。株を例にすれば、良い銘柄でも買いのタイミングが遅れてしまえば利益が減ってしまう。それと同様に、電気製品も間違った日に買うと割高になる。ここで賢い米国消費者が語る、正しい買い物のタイミングを紹介しよう。

航空券:安い航空券を見つけるのは意外と手間がかかる。割引航空券専門のウェブサイトも多いが、出発日や時刻を変えるだけで料金も大きく動くから、なかなかおいそれと思ったような航空券が手に入らない。しかし、そんな悩みも水曜日に航空券を買うことで解決することができる。

アメリカの航空会社は、毎週水曜に空席状況を発表するため、チケットを買うなら水曜が一番良いようだ。また、航空券は少なくとも出発の2週間以上前に買う方が割安になる。最も割高になるのは、出発日の14日から7日前になるから、もし2週間前に購入が不可能ならギリギリになるまで待った方が良い。

テレビ:クリスマスなどの大きな休日前にテレビは安くなる傾向があるが、アメリカでテレビを買うなら4月だ。なぜ4月なのだろうか?テレビと言えば「ソニー」が最高、と思っている人が多いだけに、日本製品に対する信頼度が高い。日本企業の営業年度は3月で終わるところが多く、4月から新型テレビが発売される傾向がある。そのため4月には、旧型テレビが安売りされることになるわけだ。

オモチャ:これもクリスマスシーズンに安売りされるが、Eトイズ・ドット・コムのシリア・ギランド氏によれば、子供にオモチャを買うなら8月だ。夏本番の8月にはオモチャが安くなる。水鉄砲、浮き袋、水中メガネ、玩具店ではプールに関連した品物を中心に売上アップを狙うから、店のスペースを空けるために他のオモチャが大幅割引になるようだ。

日本でテレビを買うのも、アメリカのように4月が最適なのだろうか?

ベテラントレーダーが語る5つのルール

勝利、敗北、ブレイクイーブン。30年のトレード経験、そしてシカゴ商品取引所メンバーとして活躍したジョン・モールディン氏は、こんなことを語っている。「トレードで最も大切なことは、自分で決めたルールに従って売買することです。損をするのは、いい加減な理由をつけてルールを破るからです。」さっそくモールディン氏の、トレードルールをいくつか紹介しよう。

ルール1:どんなことがあっても、損が出ているポジションの買い増し、売り増しをしないこと。

「投資資金を無くす確実な方法は難平買いです。買い足しをして損失を平均化し、回復しようとする。もっともらしい理論ですが、これは先ず成功しません。そんなに簡単に損が取り戻せるなら、ロングターム・キャピタル・マネージメントが破綻することはなかったでしょう。

どうしても買い増しをしたいなら、儲けが出ているポジションだけに限ることです。株価が上がる度に買っていくのです。永久に上昇することはありませんから、一番最後に買った株に損が出たら、持ち株を全て処分するのです。この買い足し方法は、売りのタイミングを知るのに役立ちます。」

ルール2:傭兵になれ。

「買いばかりに固執したり、売りだけに徹する必要はありません。トレーダーは金で雇われた傭兵です。強い方に付けば良いのです。状況が変わり、自分が不利になったら、早々に相手側に乗り換えることが肝心です。ジェシー・リバモアも、強気弱気を主張するのではなく、勝者はどちらなのかを見極めることの重要性を指摘しています。」

ルール3:安く買って高く売ることを目標にしてはいけない。

「高く買ってより高いところで売る。それが正解です。割安割高などとよく言われますが、いったい何が根拠になるのでしょうか?好例を挙げましょう。ノーテルは1980年代たった1ドルでしたが、2000年90ドル弱まで上げました。当たり前ですが、90ドルに到達するには、10ドル、30ドル、50ドルを通過する必要があります。高いものが更に高くなっていったわけです。私達には、適切に割高割安を判断することはできません。」

ルール4:ブルマーケットでは買いに徹せよ。ベアマーケットなら売りに徹せよ。

「急激な上昇の後、持ち株を処分し直ぐ空売りを試す人がいます。しかし、ブルマーケットでそんなことをするのは危険です。高値圏で揉み合い、更なる上昇になることが多いですから、いきなり空売るのではなく、一時的に中立姿勢の立場をとることが大切です。既に述べたように、私達に正確な割高判断はできません。マーケットはいつも行き過ぎになるものです。高いものはもっと高くなり、安いものは更に安くなります。」

ルール5:トレード方法は簡単で分かりやすいこと。

「難しい理論を応用したトレード方法が脚光を浴びますが、トレード方法は簡単なものほど役にたちます。複雑な方法は、トレーダーを迷わせる原因になります。しかし、簡単明瞭な手法なら的確な判断が素早くできます。ある有名なトレーダーは、抵抗線と支持線を使うだけで確実に利益を上げています。多額な金を払って、分かりにくいトレードソフトを買う必要はありません。エレガントなトレードは、簡単な手法だけが可能にします。」

二つの心配事

一月の相場は強い。しかし、金曜の株式市場は投資者たちを大きく動揺させた。ダウ平均は213ドル(1.96%)の下げとなり、今月の上げ幅を吹き飛ばしただけでなく、マイナスに転落してしまった。出来高は50日平均を35%上回り、単なる利食いというよりも狼狽売りだ。

何故こんな下げ方をしたのだろうか?上昇するオイルが原因だ、という意見があるが、下の日足チャートを見てほしい。

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オイル指数だが、たしかに急騰するオイル価格と同様に上げが続いていた。しかし、注目は金曜の引け方だ。瞬時高値を記録したが、失速してしまった。ローソク足の実体はほとんど無く、上に長く伸びた尻尾が目立つ弱気な形だ。イランやナイジェリア情勢、それにテロなどのニュースに大きく左右されるオイルだが、この終了を見るかぎり月曜には利食いがありそうだ。

もし本当に月曜からオイルが下げたとしよう。株式市場には好材料だが、問題はオイルの押し目買いを狙う投機家だ。乗り遅れた人たちは、十分な下げを待つことができるだろうか。浅い修正で積極的な買い手が登場なら、株式市場の回復に水を注されてしまう。どちらにしても、オイル市場の監視が必要だ。

もう一つ気になるのは、マーケットリーダーが崩れてしまったことだ。株式市場には、いつも牽引車が存在する。これが叩かれてしまえば、自然と他銘柄へ被害が広がって行く。リーダー株、グーグルが投げられてしまった。約9%の極端な下げだ。下は日足だが、サポートレベルだけでなく、心理的に重要な400ドルを割ってしまった。

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ブレイクダウン、そしてパニック売りの見本チャートだが、グーグルに関する気がかりな報道があった。ご存知のように、グーグルはサーチエンジンだ。だから多数の人々が訪れて、車、音楽、不動産、スポーツ、映画、と多岐多様なテーマが検索される。

いったい誰がどんなことを検索しているのだろうか?もし政府に、あなたがグーグルで何を調べているかが筒抜けなら、それでもグーグルを使うだろうか?ブッシュ政権は、グーグルに召喚令状を発した。ユーザーたちが、何を検索しているかを司法省に報告しろ、というものだ。プライバシーの侵害を理由に、グーグルはブッシュ政権の要求を受け入れる意思がないことを、早速発表した。

プライバシーが侵害されてしまっては、言論情報の自由が脅かされてしまう。違反ポルノを取り締まることが、今回の召喚令状という運びになったようだから、政府側の言い分も理解できる。既にブッシュ大統領は、テロ対策の一手段として、裁判所の許可無く電話盗聴をしていたことが問題になっている。これも米国の安全にかかわることだから、プライバシーの侵害とはいえ、大統領を100%悪いと言うことはできない。悲しいことだが、少数犯罪者のために国民からプライバシーが奪われてしまったようだ。

バフェット氏が避ける5つの項目

フール・ドット・コムのリチャード・ギボンズ氏によれば、大投資家ウォーレン・バフェット氏には、二つの鉄則があるという。第一は、決して損を出さないこと。二番目のルールは、第一のルールを守ることだ。このやり方でバフェット氏は400億ドル以上の利益を手に入れたが、損を出すなと言われても、具体的にはどうしたらいいのだろうか?

ギボンズ氏を引用しよう。「人々はバフェット氏がこれを買った、あれを買ったと話題にします。資金を減らさないためには、バフェット氏がどんな株を避けるかを探る必要があると思います。」というわけで、バフェット氏が嫌う銘柄の共通点をいくつか見てみよう。

1、一か八かに賭ける企業:業績の向上を狙って、無謀な博打にでる企業がある。当たれば満塁ホームランになるが、失敗なら会社は大打撃を受ける。例はボーイング社だ。ライバルのエアバス社は、スーパー・ジャンボ機を発表した。既に150機の注文を受け、好調なスタートを切った。一方ボーイングは市場調査の結果、小型機787製造に踏み切った。もし、この判断が間違いなら、ボーイングの収益は極端な減少になるだろう。

2、研究開発だけに頼る企業:好例はボーランド・ソフトウェアだ。90年代、Turbo Pascal、Paradox、dBase、それにQuattro Proの開発で脚光を浴びたボーランドだが、マイクロソフトが全てを変えてしまった。現在もボーランドは存在するが、15年前の面影は無い。対照的なのが、大手小売のコストコ・ホールセールだ。ディスカウント店だから、研究開発などしないが、今日も快調なビジネスを展開している。

3、巨額な債務を抱える企業:大量な負債があったのでは、現金を有効に使うことができない。債権者への支払いが優先され、配当金など期待できない。最悪な場合は倒産だ。

4、不審な経営陣:株主を犠牲にして、自分たちの利益だけを求める経営者なら、そんな企業に投資してはいけない。分かりやすい例は破綻したエンロンだ。あなたが投資する企業に、次のようなことが顕著なら警戒した方がいい。いつもバラ色なニュースばかりを発表する。経営陣のボーナスやストックオプションが、同業種企業と比較すると破格に良い。収益が減ると、その理由はいつも外的要素であり、自社には何の落ち度も無いことを主張する。

5、常に資本投資が要る企業:代表的な例はエネルギー会社だ。新しい油田を求めるオイル会社は、掘削機などの設備投資が絶えず必要になる。コノコフィリップスは2004年、95億ドルを設備投資にあてた。これは5年間で51%も上昇している。最近のオイル高で設備投資が話題にならないが、オイル価格の下落が始まれば状況は一変だ。もうひとつ、半導体企業も頻繁な資本投資を要求されることを付け加えておこう。

経営者が語る黄金律

トップ経営者として活躍するビジネスマンたちは、どんな人生哲学を持っているのだろうか?業界をリードする49人の信条が、ビジネス2.0誌に載っている。早速いくつか紹介しよう。

ウォーレン・バフェット氏(バークシャー・ハサウェイ、最高経営責任者):大投資家として知られる氏は、毎日こんなことを心がけている。「朝、目を覚ましたら、今日は何をしたいかを直ぐ考えることです。そして、今日自分のしたこと全てが、明日の朝刊に載ると想定してください。きっと違った生き方ができることでしょう。」

アンディ・グローブ氏(インテル、最高経営責任者):「被害妄想の無い経営者は生きのびることができない。これが私の信じている言葉です。ようするに、マーフィーの法則です。うまく行かなくなりうるものは何でも、うまく行かなくなる。これが基本ですから、被害妄想無しで企業経営はできません。」

リチャード・ブランソン氏:「部下が失敗したら、第二のチャンスを与えよ、をモットーにしています。企業のリーダーとして成功するためには、どうしたら部下たちの能力をフルに発揮させることができるかを、常に考える必要があります。失敗を一番悩むのは、失敗した本人です。上司は必要以上に、部下の失敗を責めてはいけません。

私にはこんな思い出があります。たしか7才か8才の頃です。父親の机から盗んだ金を持って、近くのキャンディー屋に行きました。しかし、不審を感じた店主に捕まってしまい、父親が店によばれました。「息子さんが、こんなに沢山のお金を持ってきましたが、本当にあなたがあげたのですか?」これを聞いた父は怒りました。もちろん、私が盗んだことは承知です。「あなたは人の息子を泥棒呼ばわりする気ですか!」その後、私は二度と盗みをしたことがありません。」

ジェラルディーン・レイボーン氏(オキシジョン・メディア、会長):氏の信条は、「競争相手の成功を妬むな」だ。「テレビ業界は、いつも他のネットワークのことを気にしています。高い視聴率を上げるには、ヒット番組が必要です。ある番組が他のチャンネルで大人気だからといって、似た番組を制作しても失敗するだけです。私もそれで痛い目にあっています。競争相手を調べるのは、どこに盲点があるかを探るためです。相手の真似をするためではありません。」

ポール・プレスラー氏(ギャップ、最高経営責任者):「自分の直感を信じろ。この大切さを伝説的なビジネスマン、バーニー・ルミス氏から学びました。ルミス氏も他の経営者のように様々な情報を検討するのですが、時々ルミス氏が会議で下す最終判断は、皆の意見と正反対なのです。何故あのような決定をしたのですか?会議後、そんな質問を氏にすると、「直感だ」、の答えが返って来ました。私は優秀なアドバイザーの意見をいつも聞いていますが、最終的な判断は自分の直感が決め手です。」

クレッグ・ニューマーク氏(クレッグズリスト、創立者):「間違いを全て同様にあつかってはいけない。それが大切です。人から間違いを指摘されたら、すぐ否定してはいけません。会社を始めた頃ですが、私は不適格な人たちを雇ったために、とても苦しい思いをしたことがあります。自分に経営能力が欠けていることを痛感しましたが、おかげで優秀な最高経営責任者を雇うことができました。」

有機食品を買う理由

有機栽培。この表示で野菜は高くなる。普通の野菜より高価なのだから、とうぜん体に良いと思われるが、どうやらそうでもないらしい。「現在の科学では、有機野菜が普通に栽培された野菜より、人体に大きな好影響を与える、ということは証明できません」、とカリフォルニア州立大学デービス校のクリスティーン・ブルーン氏は言う。

殺虫剤を使わないのは、有機栽培の一条件だが、これも大した意味がないようだ。ブルーン氏によれば、普通に栽培された野菜に付いた農薬は微々たる量であり、米国消費者が農薬のために健康を害している、という事実は無い。

科学的に有機野菜の持つ特別な利点は証明されていないが、野菜だけに限らず、有機食品の売上が上がっている。マーケット・リサーチ・ドット・コムからのデータを紹介しよう。2004年、有機食品の総売上は154億ドルにのぼり、2003年の128億ドルを20%上回った。更に、マーケット・リサーチ・ドット・コムによれば、2009年の売上は323億ドルに達することが予測される。

現在アメリカには、3つの有機食品シールがある。もし野菜に「100%有機栽培」のシールが貼られていれば、これは2002年、農務省によって定められた条件を全て満たしている。100%が抜けて、単に「有機栽培」なら、95%の条件が揃っている。95%未満、70%以上なら「有機食品原料使用」、のシールが貼られる。

コンシューマリポーツ誌の調べによると、有機食品は普通の食品より50%高い。なぜこんなに割高になるのだろうか?もう10年以上も昔になるが、環境を破壊しない農業が、有機野菜誕生の発端になった。殺虫剤を使用しないだけなら事は楽だが、栽培用の土や肥料も自然なものを使わなくてはいけないから手間がかかるわけだ。

格べつ体に良いわけでないなら、有機食品を無理して買う必要はあるのだろうか?「フルーツや野菜は、有機栽培されたからといって栄養分が優れていることはありません。普通に栽培された野菜も、有機野菜と同等です」、と米国栄養士会のキャサリーン・タルマッジ氏は言う。マサチューセッツ大学のファーガス・クライズデール氏を引用しよう。「有機食品を絶賛する根拠はありません。しかし、有機食品で気が休まるのでしたら買うことを止めません。」

人体に与える悪影響ではないが、有機食品はこんな弊害を起こしている。有機食品イコール健康食品のイメージが定着し始め、低所得家庭の主婦たちが後ろめたさを感じているようだ。子供のために、体に良い有機食品を買ってあげたい。しかし、有機食品ばかりで食卓を飾ったら家計がなりたたない。

ブルーン氏の言葉を付け加えよう。「有機食品を買えないことに、罪悪感を感じる必要はありません。普通の食品で十分であることを知ってほしいと思います。有機栽培の欠点は、定められた厳しい栽培方法が逆効果になっています。例えば、遺伝子の組み換えです。この組み換えを取り入れさえすれば、作物から自然に発生する毒素を、大幅に減らすことが可能になります。」 どうやら有機食品は、あまりに自然という言葉にこだわりすぎるようだ。

人口と投資判断

年間45回。一カ月に直せば3.75回だ。ブルームバーグからの報道だが、コンドームで知られるデュレクス社が、41カ国の31万7000人を対象に性生活の統計を取った。それによると、平均的な日本人は、年間に45回のセックスをするという。

45回は多いのか、それとも少ないのだろうか?最も活発なのがギリシャの138回。日本の三倍だ。総合して言えることは、アジアの国々におけるセックス回数は西洋諸国に劣り、最下位を含めて下9位は全てアジアの国々だ。ちなみに、アジアでセックスが一番多いのはタイ。年間平均97回というから、日本のほぼ二倍に相当する。

どの程度デュレクス社の統計が信頼できるか分からないが、東洋ではなぜセックスの回数が少ないのだろうか?ストレスや狭い住宅事情が原因だ、という人たちもいるが、アジア最大の経済国家日本は人口減少が顕著になり始めている。

2005年、日本では死亡者数が出生者数を上回った。出産率の低下、それに厳しい移民規制にも影響され、1899年以来初めて日本の人口が減った。人口減少が大きく加速することは考えられないが、この傾向はゆっくりとしたペースで進み、簡単に逆転させることは難しいようだ。

人口統計が投資判断に使われることは滅多にないが、ジム・ロジャース氏は(ジョージ・ソロス氏とヘッジファンド共同設立)こんなことを語っている。「先進諸国の中で日本の出産率は最低です。この状況が継続すれば、経済を支える就業者の数が減り、とうぜんですが納税者数も減少します。さらに国家債務の支払いにも支障をきたすことになりそうですから、日本株の比重を増やすことは考えていません。」

ウィリアム・ぺセック氏(経済コラムニスト)も、ロジャース氏に賛成だ。「現在日本には、約800兆円の国家債務があります。これを返すためには納税者たちからの協力が要りますが、人口が減ってしまっては一人当たりの負担が大きくなるだけです。テクノロジーが埋め合わせになる、という見方もあるようですが、労働人口の縮小はGDP(国内総生産)の低下を引き起こす可能性もあります。」

日本はどうするべきか?いきなり政府が大量な移民を受け付けることは無いから、何とか女性たちを説得して2人以上の子供を生んでもらうことだ。と言ってもキャリアウーマンの活躍する今日、そう簡単に女性が、たとえ一時的でも、職から遠ざかることなど期待できそうにない。

ここでぺセック氏は、こんな皮肉を言う。「もしデュレクス社の統計が正しいとすれば、日本人はほとんどセックスをしない国民です。これは人口減少より、もっと大きな問題です。政府が真剣に、この人口問題に取り組まない限り、現在回復中の経済も長続きすることはないでしょう。」早速、ぺセック氏に反論メールを書こうと思う。

やっと株に目を向ける個人投資家

米国不動産投資家たちは思案している。住宅市場が冷え込み始め、ここで不動産に資金をつぎ込むことは賢明でない。安全確実に行くなら、4.13%の定期預金という手もあるが、やはり妙味に欠ける。どこに資金を移すべきか?南カリフォルニアの不動産で、大きな利益を上げたブルース・マクマイケン氏は、こんなことを語る。「不動産が、いきなり大暴落になるとは思いませんが、今年は株投資を考えています。まだ多くの割安株を掘り出すことができるはずです。」

PNCファイナンシャルのジェフ・クライントップ氏によれば、去年の終わり頃から、個人投資家たちの株に対する関心度が高まっているという。特に先週、ダウ指数が瞬時1万1000を突破したニュースは、更に投資家たちを刺激する結果になった。

振り返ってみれば、2000年3月、ナスダック指数は5132ドルの新高値を記録した。しかし翌月、インターネットバブルがはじけ、2002年10月には1108ドルにまで落ち込んでいた。この間、マクマイケン氏が投資していた南カリフォルニア不動産は2倍以上の伸びとなり、本格的な不動産ブームが訪れたわけだ。

全米不動産業協会の発表によれば、2006年度の住宅販売数は4.4%減が予想されている。また、住宅建築数も去年を6.6%下回るようだ。2005年、中間住宅価格は12.9%の上昇だったが、今年は5.1%ほどの伸びになるらしい。どちらにしても、積極的な不動産投資時代は終わった。

ベビーブーマーたちが60才になる。退職後のために、不動産やそれに関連したミューチュアルファンドに金を入れていたが、新しい投資先を見つけなければならない。普通なら大企業の社債が選ばれるのだが、倒産が噂されるゼネラルモータース、そして破綻してしまった大手先物ブローカー、レフコの件もあるから社債投資に尻込みしてしまう。それなら国債、という手もあるが、利回り逆転現象が起きているから不安になってしまう。

「残されたものは株しかありません」、とクライントップ氏は言う。「2001年から今日まで、S&P500指数に属する銘柄は、平均で46%の成長です。しかし、株価収益率は逆に22.2から13.8に下がっています。」投資者は、人気株に集中する傾向があるから、必ずしも割安株に資金が集まるとは限らない。だが、間違いなく個人投資家は株式市場に戻り始めている。現に、マンハッタンのEトレードに足を運ぶ投資者数は、去年の同時期を50%上回っているそうだ。2006年は株、さぞ証券会社が喜んでいることだろう。

天然ガスの運命は天候が決める

野も山もみな一面に弱気なら、阿呆になって米を買うべし。これを逆にすれば、皆が強気なら買うな、ということになる。正にそれを実証することが起きた。

棒上げ状態だった天然ガスが、ここ一ヶ月で40%以上の暴落になった。2005年8月と9月、アメリカを襲ったハリケーン・カトリーナとリタは、メキシコ湾岸州に大きな被害を与えた。これは天然ガス生産量を16%減少させる結果となり、12月3日、天然ガスは100万英サーマルユニットあたり15ドル78セントの新高値を記録した。

今月12日、天然ガスは8ドル90セントで取引を終了し、去年7月以来の安値となった。だが、一年前の同時期と比較すると、まだ3ドルほど高い位置にある。「メキシコ湾岸の大打撃がありましたが、最悪な事態は避けることができました」、とファースト・エネキャストのアグベリ・アメコ氏は言う。季節外れな暖かい気候が備蓄量の不安を無くし、これが天然ガス売りの一因になった。

実際に発表された数字を見てみると、12月30日現在、天然ガス備蓄量は10億立方フィート上昇という、冬には考えられない伸び方だった。ティム・エバンス氏(IFRマーケット)の話によれば、1年前の同時期の備蓄量は880億立方フィートの下げ、5年前はなんと1280億立方フィートの大幅減になったという。

こんな状況に関係なく、家庭用暖房費は4割近い値上がりだ。暖冬異変で、あまりヒーターを使わないのだから、4割高は許せない、という声も聞こえてくる。「先物市場価格が、消費者の暖房費に反映されるには時間がかかります」、とガス会社は説明しているが、皆あまり納得できないようだ。

「よほどの寒波に長期間襲われないかぎり、天然ガスは6ドルに向かって下げて行くでしょう」、とアナリストのマイケル・アームブラスター氏は言う。更にグランディック・パブリケーションズのピーター・グランディック氏によれば、トレーダーたちはそろそろガソリンに焦点を合わせるため、天然ガス相場は既に終わっている、という見方をしている。

ここで、また上の言葉に戻りたい。野も山もみな一面に弱気なら、阿呆になって米を買うべし。弱気ムードが漂う天然ガス市場。ここで買っている人たちは、どんな根拠があるのだろうか。理由はハリケーンだ。2006年も去年と同様に、多くのハリケーン発生が予報されている。どちらにしても、天然ガスの運命は天候が握っているようだ。

2006年は宗教株が行ける!?

ハリウッドが不調だ。なぜ人々は映画館に足を運ばなくなったのだろう?派手な銃撃戦、超迫力な爆発シーン、高速道路に繰り広げられるカー・チェイス、高度な技術を使った特殊効果。しかし、そんなものに大衆はすっかり飽きてしまったようだ。

CNNで映画業界を担当するポール・ラ・モニカ氏には、こんなメールが聴取者から送られている。「ハリウッドは現状を全く把握していません。ですから、大衆が何を求めているかが分からないのです。例を挙げれば、家族が皆揃って観れる映画を、ハリウッドはほとんど制作しません。アクション物やセックスばかりに重点がおかれ、最も大切なストーリーがおろそかにされています。」

低迷を打破するために、今年ハリウッドは少し違ったテーマを取り入れるようだ。ラ・モニカ氏を引用しよう。「最近のアメリカには、あるトレンドが起き始めています。宗教を取り扱ったものが売れるのです。ですからハリウッドは、宗教を題材にして、映画産業の好転を試みることでしょう。」

先月から上映が始まった「ナルニア国物語」は、宗教をテーマにした映画の一例だ。原作者はクリスチャン作家のCSルイス氏。全7巻の大作だが、ディズニーが映画化した。ボックス・オフィス・モージョー社の調べによれば、ナルニアは既に2億5000万ドルのチケット売上を記録している。

「ナルニアは宗教色が強すぎる。こんな映画はヒットしないだろう。」封切り前は、そんな意見も聞かれた。しかし、結果はディズニーに大きな収益をもたらせた。少し古くなるが、宗教映画の可能性を実証したのは、メル・ギブソン監督の「パッション」だ。アメリカ国内だけで3億7000万ドルの売上があり、これは2004年度、第3位の成績だ。

「パッション」、「ナルニア国物語」、次は何だろうか?5月、ベストセラーになった「ダ・ヴィンチ・コード」がソニーのコロンビア映画から封切られる。主演はトム・ハンクス、そして監督はロン・ハワードだ。まだ数ヶ月先の話だが、今から大きな期待が寄せられている。

この宗教ブームに投資できないだろうか?もう一度ラ・モニカ氏の言葉を記そう。「トーマス・ネルソン社は、聖書やキリスト教関連書籍の出版社です。2005年度は10%以上の伸びでしたが、これは一般の出版社を上回る成績です。セーラム・コミュニケーションズは、キリスト教音楽を中心にしたラジオ局です。今年の収益は33%増が見込まれています。」宗教ビジネス、単なる一時的なブームだろうか?

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