US Market Recap

外国人に頼るアメリカ、ドルの将来はどうなる?

先ず、ドル/円の週足チャートを見てほしい。

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2005年一月、101.67円の安値をつけたドルは、そこが起点となって上昇が始まった。2005年12月の121.39円を境に、急激なドル売りがあったが、長期的なアップトレンドは崩れていない。なぜドルが買われたのだろうか?大きな理由は、14回連続の短期金利引き上げだ。

このままドルの上昇は続くのだろうか?アメリカが抱える、巨額な貿易、財政赤字を考慮すると、どうしてもドルに対して強気になれない、と多くの経済学者たちは言う。膨大な赤字のおかげで、大量のドルが外国人たちの手中にある。赤字の穴埋めをするには、どこかから金を借りる必要がある。だから国債を発行することになるのだが、米国内には大した国債需要が無いから、必然的に外国人を頼ることになる。

11月、財務省から発表されたデータを見ると、外国人で最もアメリカの国債を保持するのは日本だ。その額は6830億ドルにおよび、そして2位の中国へと続く。外国人からの投資を得るためには、低金利ではダメだ。現在の米国金利引き上げサイクルは外国人には魅力的だが、一般米国消費者には嬉しくない。住宅ローン、自動車ローン、それにクレジットカード金利が上昇し、これはアメリカ経済を減速させる要因になる。ここでアメリカ経済が失速すると、外国人も困ってしまう。米国へ品物を輸出しても、消費者がパンク状態では話にならない。

約15%のドル下落を予測する、ムーディーズ社のジョン・ロンスキー氏はこう語る。「ドル上昇が続く、と安心するのは大きな間違いです。ドル大幅下落の危険性があります。」スタンダード・アンド・プアーズ社の、デービッド・ワイス氏は、次のように述べている。「2005年、アメリカの貿易赤字は、2004年の6680億ドルを上回る8170億ドルでした。こんなに膨大な赤字を抱える国の通貨が、これ以上上昇することはありえません。」

もし本当にドル高が終わる可能性があるなら、個人投資家はどう対処したら良いのだろうか?経済コラムニスト、ジョン・ワゴナー氏の意見を聞いてみよう。「インタレスト・レート・オブザーバーのジェームズ・グラント氏は金投資を勧めています。通貨の価値が下がる時は、金に資金が流入するからです。

もし直接金投資ができないのでしたら、ドルが下がると値上がりするミューチュアルファンド、Rydex Weakening Dollar fundがあります。このファンドは、ドルが1%下がると約2%上昇する仕組みになっています。ドルには弱気だが、ユーロが上がる、と思うのでしたらEuro Currency Trustが適しています。」

しかし、最後にワゴナー氏はこう付け加えている。「米国の貿易赤字は今日始まったことではありません。もうかなり長いこと、経済学者たちはドル急落を警告しています。この警報が現実となるのは、まだ先のことかもしれません。経済学者の無視を勧めているのではありません。ごく一部の投資資金は、常に金などに回しておくことが大切だと思います。」

キーワードはボラティリティ

ウォールストリートの投資戦略家たちは、滅多に短期投資を語ることはない。そんな中で、ジョン・マークマン氏は例外だ。効果的な短期投資をするための秘訣を、マークマン氏はこう説明する。「先ず、銘柄数を絞らなくてはいけません。現在、ファンダメンタルズが好転している企業だけに、焦点を合わせることが肝心です。無料サイトにあるようなチャートではなく、信頼できるチャートも必要です。次に勇気、そして、損を出しても直ぐ気分転換ができなくてはいけません。」

長期株投資では順調に利益を上げているのだが、短期投資はどうも上手くいかない、という人が多い。なぜだろう?マークマン氏を引用すれば、短期投資で良い結果が出ないのは、長期投資用の情報を使って投資するためだ。もっと話を聞いてみよう。

「私たちが、通常考慮する買い材料は長期的な要素です。これは短期投資に適用できません。長期投資で重要なことは、将来の収益伸び率を検討して、現在割安な銘柄を選択することです。しかし、短期投資の場合は、どの銘柄に異常に積極的な買い手が集まっているかを見つけ出す必要があります。単に今日、買い人気があるだけではダメです。少なくとも、向こう2週間以上買いが続きそうな銘柄を選ばなくてはいけません。」

なるほど、私たちが短期投資で失敗するのは、使う情報が間違っていたわけだ。価値のある株を安く買う、という考え方ではなくて、現在需要の高い銘柄だけに狙いを絞る。こう言ってしまえば簡単に聞こえるが、具体的には、どうやってそんな銘柄を探すのだろう?また、マークマン氏に登場してもらおう。

「割安株ではなく、キーワードはボラティリティ(変動性)です。タイミングは、割安株専門のファンドマネージャーから、成長株狙いのファンドマネージャーに株が移動する時点です。」買い条件として、氏は次の数項目を挙げている。

・マーケット全体の流れが上向きであること。
・銘柄の属するセクターが強いこと。
・小型と大型株を比べて、現在どちらの需要が高いかを調べること。
・新高値を記録し、ここ数日間の利食いが起きていること。
・株価上昇は、出来高の増大を伴っていること。
・できれば、高値圏で横ばいが続き、そこからブレイクするものを選ぶこと。
・ファンダメンタルズもしっかりしていた方が、大きな伸びが期待できる。

さっそく上記事項に当てはまる銘柄を調べてみた。上位5つを記しておこう。もちろん、これは買い推奨ではなく、単なる一アイディアだ。
1、ファニチャー・ブランズ・インターナショナル(FBN)
2、シカモア・ネットワークス(SCMR)
3、ザーリンク・セミコンダクタ(ZL)
4、レイジーボーイ(LZB)
5、スティルウォーター・マイニング(SWC)

これは参考までにだが、銘柄を探すにはバーチャート・ドット・コムが役に立つ。His Vol(ヒストリカル・ボラティリティ)をクリックして、上から順番にチャートをチェックしていくと面白いだろう。

 

グーグルの敵は税金!?

第4四半期収益は+82.4%。しかし、一株利益がアナリストの予想に満たなかったため、水曜、グーグルは401ドル78セント、7.14%安で取引を終了した。こう書くと暴落のように聞こえるが、寄付きは389ドル86セントだから、開始ベルと同時に買った人は一日で約3%の利益を得たことになる。

グーグルの意外な決算に慌てたのは投資者だけではない。目標株価500ドルで分かるように、多くの証券会社はグーグルに買い推奨を出していたから、寄付き直後さっそく押し目買いを訴えるアナリストが続出した。「この下げ幅は正当化できるものではありません。明らかに狼狽売りです。グーグルは確実に広告収入を伸ばしているだけでなく、ライバルのヤフーからも市場を奪っています。今日の下げは買いのチャンスです。」これがアナリストたちの言い分だ。

この下げで、一人のアナリストが見直された。名前はスコット・デビット。スタイフェル・ニコラス社のアナリストだ。実はデビット氏、先月18日にグーグルの売り推奨を発表していた。その日グーグルは444ドル91セントで終了だから、水曜の引け時点で+9.6%だ。正に読みが当たったわけだが、決算発表後、氏は次のようなメモを顧客に送っていた。

・同業者ヤフーに見られた収益の伸び悩みはヤフーだけに限られた問題ではなく、サーチエンジン業界全体に当てはまる。今回発表されたグーグルの決算は、この見方が正しかったことを証明している。

・グーグルの急成長期は、既に過ぎ去ったと思われる。長期的に展望すれば、サーチエンジンは高成長分野だ。これからもグーグルがリーダーの地位を保つことが予測されるが、株価はしばらく横ばいになるだろう。

・現時点でグーグル買いを薦めることはできない。買うなら300ドル台の中間あたりが妥当と思われるが、実際の買いタイミングやグーグルの収益見通しは、後ほど発表したいと思う。

・グーグルの売り推奨、そして正当株価400ドルに変更はない。

デビット氏に賛成するアナリストは、こう語っている。「これから、本格的な春がやって来ます。季節的要因になりますが、春そして夏はサーチエンジンの利用者が減る傾向があります。ここで振り返ってほしいのは、グーグルが決算を発表する前の株価430ドルです。ファンダメンタルズ的な立場から分析すると、430ドルを正当化するには、毎年グーグルの売上は108%上昇する必要があります。」

アナリストの意見だけではなく、肝心なグーグル側の話を聞いてみよう。「予想以下に終わった一株利益ですが、これは税金の支払いが大きな原因です。普通なら30%ほどの税率なのですが、海外業務の拡張にともない、今回の税率は41.8%に上がってしまいました」、と最高財務責任者は説明している。

早速あるアナリストが、通常の税率で一株利益を計算し直したら、1ドル82セントという結果が出た。予想されていたのは1ドル77セントだから、確かに税金がグーグルの利益を削ってしまった。だからといって、グーグルに同情するアナリストはいない。「税金はビジネスコストの一部です。適切に税率の予測ができなかったのは、完全にグーグルの落ち度です。」

一度成功したら止められないインフォマーシャル

あまりにも出来すぎた話だ。ウソに決まっている、と思うのだがインフォマーシャルには説得力がある。単なるテレビショッピングとは違って、30分間ジックリと一つの商品を見せられるのだから、騙されたつもりで買ってしまう人も多いことだろう。

ケビン・トルードー氏、と聞いても、ほとんどの人は誰のことか分からない。しかし、頻繁に放映される深夜過ぎのインフォマーシャルのおかげで、アメリカ人なら一度は氏の顔を見たことがあるはずだ。「製薬会社が、私たちの健康を考えていると思ったら大間違いです。真実は正反対です。製薬会社には、本当に効く薬を開発するつもりなど、全くありません。」今晩も氏は、テレビの画面を通じて消費者に訴える。

2005年、トルードー氏は2200万ドル(25億7000万円)を投じて、2000時間の放映時間を買った。いったい氏は、何をインフォマーシャルで売っているのだろうか?製薬会社を非難するくらいだから、健康に関するものであることに間違いはない。トルードー氏が毎晩売り込んでいるのは、あらゆる病気を治す方法を説明した本だ。既に500万冊を売り切り、6カ月連続でベストセラー、売上は上々だ。

自然療法だけで、癌や糖尿病は治る。磁気マットレスに寝ることで、多発性硬化症(MS)は治療できる。鬱病を克服したいなら、毎日トランポリンの上で飛び跳ねろ。白い服を着用することで、多くの病気から身を守ることができる。こんな形で、さまざまな治療方法が延々と続く。

はたして、この本は信用できるのだろうか。ABCニュースは、こんな報道をしている。トルードー氏には前科がある。先ず一回目は銀行から金を騙し取る詐欺、そして二度目は顧客のクレジットカード悪用だ。刑期を済ませ出所すると、トルードー氏は記憶力のエキスパートとして、インフォマーシャルに登場する。だが、内容が連邦取引法に違反していたため、番組は中止になった。

もちろん、そんな事で諦めるトルードー氏ではない。直ぐにテレビに復帰して、貼るだけで痛みが消えるテープ、そして癌を治すカルシウムの発売を開始した。言うまでもなく、これも法律違反だから、番組はキャンセルされ、氏には200万ドル(2億3400万円)の罰金が科せられ、二度と同じ商品を売ることを禁止された。

現在ベストセラーになっている本は、たとえ内容がデタラメでも、連邦取引法に違反しない。いい加減な治療方法かもしれないが、トルードー氏の販売しているものは本(情報)であり、米政府は言論の自由を認めている。専門家の話によれば、本の90%はデタラメであり、残りの10%は既に常識となっている情報だという。

500万冊も売れた本だから、とうぜん被害者が出始めている。ある女性は、自然療法が原因で突然ひどい発作に襲われ、ある腫瘍に悩む男性は、本のおかげで腫瘍が更に大きくなってしまった。9割9分の苦情は、自然療法に効き目が無いことを訴えるものだが、同時に、こんなインフォマーシャルを信じた自分が馬鹿だった、とも付け加えられている。

一つ書き忘れたことがある。トルードー氏が売っているのは本だけではない。本の購入者には氏のホームページが紹介され、499ドル(5万8000円)でライフタイムメンバーになれるそうだ。ライフタイム?何か死刑を言い渡されたような雰囲気だ。

さようなら、ミスター・グリーンスパン

2006年1月31日、連邦準備理事会議長、アラン・グリーンスパン氏の18年にわたる務めが終わった。物価上昇率を低く抑えたことが、氏の最も大きな業績だ、とアナリストたちは言う。就任早々ニューヨーク株式市場を襲った暴落、二回の不景気、インターネット株に浮かれた90年代後半、そして不動産市場の冷え込みが顕著になった今日、グリーンスパン氏はバーナンキ氏に議長の座を譲る。

連邦準備理事会議長が、さも米国経済の船長であるかのように説明する人たちがいるが、議長にそこまで大きな力はない。ロジャー・イボットソン氏(エコノミスト)の言葉を借りれば、連邦準備理事会議長は電車の運転手に似ている。だから大雑把な言い方をすれば、議長にできることはスピードを上げること、そして下げることの二つしかない。もちろん電車だから、ブレーキを踏んだからといって、直ぐにスピードが落ちるわけではない。

電車は、あらかじめ敷かれたレールの上を走る。ここで右折したいと思っても、レールが無ければ運転手にはどうすることもできない。ようするに、連邦準備理事会議長にできることは、線路上を走るアメリカ経済のスピードを、短期金利を操作することで、減速させたり加速させることだ。繰り返しになるが、高速で走る電車に急ブレーキをかけても直ぐ止まらないように、過熱した経済も一度や二度の金利引き上げでは冷えこみを期待することはできない。

単に金利を調整するだけの話なのだが、経済に大打撃を与えることもある。グリーンスパン氏の前任、ポール・ボルカー氏は良い例だ。インフレ鎮圧に成功した、とボルカー氏を称賛する人もいるが、その結果アメリカは深刻な不況に陥り、失業率は大恐慌以来の高水準に達した。この辛い経験が、連邦準備理事会議長を船長と同一視することになったのかもしれない。

さて、ここで、引退するグリーンスパン氏に関する雑学的質問をしよう。

1、グリーンスパン氏の好きな野球チームはどれ?
A、ボストン・レッドソックス
B、サンフランシスコ・ジャイアンツ
C、ワシントン・ナショナルズ
D、ニューヨーク・メッツ

2、連邦準備理事会議長になる前、グリーンスパン氏はある企業のコマーシャルに出演したことがあるが、それはどこの会社?
A、IBM
B、アップル・コンピュータ
C、CBS(テレビネットワーク)
D、ディズニー

3、氏が40年代、バンドで演奏した楽器は何?
A、クラリネット
B、トロンボーン
C、トランペット
D、バス楽器

正解:1、以前はメッツファンだったが、現在はナショナルズファン(C)。
2、アップル(B)。
3、Aのクラリネット。ピアノも弾くことができるそうだ。

適切な言葉を選ぶ重要性

あまり物事をはっきり言い過ぎると大変なことになる。いったん口から飛び出た言葉を、引っ込めることはできない。これが株と何か関係あるのだろうか。投資心理研究の第一人者として知られる、ブレット・スティーンバーガー氏の意見を紹介しよう。

「たとえ言論の自由なアメリカでも、言ってはならことがあります。たとえば、あなたが住宅を買おうとしているとしましょう。間違っても、不動産セールスマンに、こんなことを言ってはいけません。「周囲に黒人家族が住んでいる所は困る。最近アメリカに来たばかりの、移民者の多い場所もご免だ。上流階級の白人だけが住んでいる場所で物件を探してほしい。」これでは、あなたが単なる人種差別主義者であることを告白しているだけです。

ですから、あなたは不動産セールスマンに、こう頼むべきです。「極めて治安の良い、安全な地域で家を探してください。子供の教育はとても重要ですから、家の近くには優秀な先生が揃った、トップクラスの小学校があることも条件に入れてください。」これで、ほぼ確実にあなたの求めている住宅が購入できることでしょう。

もう一つ例を挙げましょう。小学校3年生のあなたの息子が、学校で6年生から嫌がらせを受け、つかみ合いの喧嘩になりました。その結果あなたの息子は、6年生の顔面にパンチをあびせて、前歯を一本折ってしまいました。さっそく担任の先生から、あなたは学校に呼び出されます。その時、間違っても、あなたはこんなことを言ってはだめです。「私は息子を、真の男になれるように教育している。上級生と喧嘩して勝った息子を、私はとても誇りに思う。」

あなたは嫌でも、黙って担任の先生の言うことを聞かなくてはいけません。そして、もう二度とこのようなことを起こさないように、家に帰ったら息子を厳重に注意する、と約束するべきです。もちろん、家に帰ったら息子にニッコリと微笑んであげれば、それで十分です。

株や先物トレードにも、同様なことがあてはまります。ある為替トレーダーから相談を受けた時のことです。中々利益を上げることができない、と言うので私はこう質問しました。「ニューヨークとロンドンの寄付き直後を比較した場合、損が出ているのはどちらの方ですか?」

これは相手を侮辱する、最低な質問でした。このトレーダーの回答が、「私はニューヨークの時間帯だけでトレードしている」、というものだったから、私の質問が間違っていたわけではありません。結果的には、私の質問は全く質問ではなく、私の意見を明確に言っただけにすぎなかったのです。

為替トレーダーは、私の質問をこう解釈したはずです。「為替トレードで成功するためには、ニューヨークとロンドンの両方の時間帯でトレードする必要がある。」現に、この相談の後、二度とこの為替トレーダーから電話がかかってくることはありませんでした。」

損が続くと、どうしても悩んでしまう。そんな時こそ、自問自答する言葉は慎重に選ばないといけない。どうやったら適切な言葉を、自分に発することができるだろうか?スティーンバーガー氏は、次の原則をいつも頭に入れておくことを推薦している。「苦しんでいる時は、常に慰めになる言葉を選び、有頂天な時は、戒めの言葉を選ぶことです。」これを聞いたら、有名なセリフを思い出した。「タフじゃなければ生きていけない。しかし、タフなだけでは生きている資格がない。」

息を呑むマーケット関係者

これだけ材料があれば、一波乱あってもおかしくない。マーケット関係者には、忙しい一週間になりそうだ。最大の関心事は、火曜(31日)にやってくるFOMC(連邦公開市場委員会)だ。14回目の金利引き上げになることは誰も疑わないが、会議後の声明文が徹底的に分析されることだろう。

先週金曜に発表された、第4四半期米国GDP(国内総生産)は、予想に満たなかっただけでなく、ここ3年間で最低の成長率、+1.1%だった。さっそく財務長官、ジョン・スノー氏はこう記者団に語った。「発表されたGDPは、2005年度の強い米国経済が、正確に反映されていないようです。今回の数値を、あまり重要視するのは間違いです。第4四半期だけに限られた特殊要因が、GDPを下落させたと思われます。」

スノー氏ほど楽観的でない、バーナード・バウモール氏(エコノミック・アウトルック・グループ)の意見を紹介しよう。「2005年の最終段階で、アメリカ経済は大きく減速しました。引力の法則は健在です。米国消費者は、大きな借金を抱えています。上昇する金利、高いガソリンやオイルが好影響であるはずがありません。おまけに、消費者の貯蓄率は0です。GDPが下がって当然です。」

一方、金曜のマーケットは弱いGDPニュースを歓迎した。ダウ指数は+0.90%、ナスダック指数+0.93%、そしてS&P500指数は+0.78%だった。米国経済の失速は、金利引き上げを完全に終了させる、と解釈したわけだ。「予想を下回ったGDPに、投資家たちは歓声をあげました。1月31日の利上げが、金利引き上げサイクルに終止符を打つ可能性があります」、とJPモルガンのアンソニー・チャン氏は言う。

GDPが衰えた原因は何だろうか?自動車と航空機の不調が、一番のマイナス材料となったようだ。ボーイング社でのストは航空機発送を遅らせ、社員割引の廃止は自動車の売上を大幅に後退させた。「自動車業界が不調なことは、別にめずらしいことではありません。意外だったのは、政府があまり軍事関連物資を購入しなかったことです。イラクでの戦争が終わりになり、政府は軍事費の調整をしているようです」、とエコノミストのデービッド・ワイス氏は述べている。

アナリストたちの、もう一つの見方を付け加えておこう。「+1.1%のGDPは無視です。それは既に去年の話です。31日のFOMC(連邦公開市場委員会)ばかりが注目されていますが、今週の金曜には雇用統計が発表されます。暖かい冬の影響もありますが、強い雇用状況が明瞭になることでしょう。結局またインフレ懸念がマーケットに戻り、投資者たちは失望することでしょう。31日のFOMCで、金利引き上げが最後になることはありません。」今週の相場は荒れそうだ。

多数派のファンダメンタリスト、少数派のテクニシャン

「心配で眠れない夜が続いています」、と語るのはナイト・キャピタル・グループのラルフ・アカンポラ氏だ。ベテランアナリストとしてファンの多い氏だが、今年ダウ指数は、20%の大幅下落になる可能性があると言う。悲観論者が少ないだけに、さすがにアカンポラ氏の意見は目立つ。ほとんどのアナリストの見方は、次の三人に要約される。ゴールドマン・サックスのアビー・コーエン氏、シティ・グループのトビアス・レブコビッチ氏、そしてリーマン・ブラザースのヘンリー・ディクソン氏は、それぞれ+10%という今年のマーケット成長率を予測している。

少数派のアカンポラ氏に賛成するのは、スタンダード・アンド・プアーズ社のマーク・アーベター氏と、モルガン・スタンレーのリック・ベンシグナー氏だ。アーベター氏は、10%から20%の下げを予想し、ベンシグナー氏は今年の中頃に大きな下げがやって来る、と強調する。

ベンシグナー氏、アーベター氏、そしてアカンポラ氏の三人に共通する点は何だろうか?答えは、三人ともテクニカルアナリストだ。古い言い方をすれば罫線師、ということになる。テクニカルアナリストは、ファンダメンタルアナリストのように、収益、売上、キャッシュフローといったことを一切考慮しない。テクニカルアナリストにとって重要なのは、株や指数の値動き、出来高、移動平均線、そしてストキャスティクスなどのオシレーターから得られる情報だ。

楽観的なファンダメンタルアナリスト、悲観的なテクニカルアナリスト。はたしてどちらが正しいか、ということは問題にならない。皆が強気な時に、アカンポラ氏のような意見は貴重だ。ひょっとしたら、テクニカルアナリストの言うことは本当かもしれない。そんな疑問が投資者の中に芽生えれば、次の買いにもっと慎重になるはずだ。

テクニカルアナリストが活用する一つに、周期(サイクル)がある。今年、特に注目されているのが、大統領選挙サイクルだ。大統領の任期二年目は、米国株式市場が低迷する傾向がある。今年、ブッシュ大統領は二期目の二年目を迎える。1970年以来、1986年を除いて、任期の二年目はいつも株が下がった。1962年、1974年、そして2002年にベアマーケットが訪れたが、これも大統領任期の二年目だ。

もう一つサイクルの例を挙げよう。上げ相場が始まったのは2002年の10月だから、既に39カ月が経過している。そろそろ終わりが来てもおかしくない頃だ。なぜなら、大二次世界大戦以来、平均的なブルマーケットは39カ月で幕を閉じている。「最近のマーケット内容は悪化しています。新高値、新安値を記録した銘柄数を二年前と比べてみると、マーケットは明らかに上げ基調の最終段階に入っています」、とアーベター氏は言う。

ボラティリティ指数という、マーケットと正反対の動きをする指数がある。現在の数値は12.4を示し、過去13年間を振り返ると、こんなに低いレベルに達することは滅多にない。投資者たちが安心しきり、マーケットが天井近辺にある時ボラティリティ指数は極めて低い数値を示すから、ここからの積極的な買いは控えた方が良い、というのがテクニカルアナリストの見解だ。

よく眠れない、と心配するアカンポラ氏だが、こんなことを付け加えている。「今年中に起きる大きな下げは、マーケットを4年来の安値に落とすことでしょう。しかし、そこが最高の買い場になります。とにかく今はあまり動かないで、十分に資金を蓄えてください。」なるほど、アカンポラ氏は短期的な弱気論者だが、長期的には強気な姿勢だ。

何を基準に買うのか、ロバート・キヨサキ氏の提言

「桐一葉、落ちて天下の秋を知る。読者よ、二年有半に亘っての進撃一路から退却の時期は近づいた。」これは昭和28年2月11日、独眼流の異名を持つ石井久氏(江戸橋証券創立者)が株式新聞に載せた警報だ。強気な独眼流が、ごく少数意見の弱気に転じた。さすがに当たり屋の相場観だけに、完全に無視することができなかった。まるで氏の記事がキッカケになったようにマーケットは下げ始め、3月5日、東京市場はスターリン暴落に襲われた。

話をアメリカに移そう。「金持ち父さん貧乏父さん」の著者、そして不動産投資第一人者として知られるロバート・キヨサキ氏は、2005年夏、米国不動産冷えこみを警告した。株のような急落は無いが、水曜に発表された中古住宅販売数はアナリストの予想に満たなかっただけでなく、3カ月連続の下落となった。キヨサキ氏が住宅市場を低迷させた犯人とは思わないが、不動産セールスマンから「商売の邪魔をするつもりですか!」、と非難のメールが殺到したそうだ。

火曜日、キヨサキ氏はこんなことを語っている。「値段が上がっているから買おう、と不動産投資家は言います。ようするに、値段の動きに焦点をおいているわけです。ここで考えてほしいことがあります。デパートに行ったとしましょう。商品はどれもこれも値上がりしています。よし、高くなっているから買おう。あなたはそんな判断をするでしょうか?

他の例を挙げましょう。あるスーパーマーケットが、全商品25%割引セールを実施しました。店内は買い物客で大混雑です。しかし、不動産や株式市場が25%割引セール(一般的には暴落と呼ばれる)をすると、買い手はほとんど現れません。

私の推測ですが、投資者の90%は値動きだけに注意を払い、肝心な価値を考慮していません。これは「大馬鹿理論(より馬鹿論)」です。説明しましょう。20万ドルで物件を買ったとしましょう。もちろん、儲けることが目的ですから25万ドルで売ることを計画します。不動産市場は割高ですが、投資者の全てが賢いわけではありません。ですからあなたは、物件を25万ドルで買ってくれる愚か者を待つわけです。

不動産市場が暴落するなら、それは絶好の買いチャンスです。売り手はとにかく物件を処分することだけに集中しますから、物件の価値などまるで頭にありません。完全に捨て鉢状態ですから、買い手はかなり有利な条件で、きっと正当評価額以下で物件を手に入れることができるはずです。暴落は大衆を強烈な悲観論者に変えますが、こんな時に買う勇気を持つことが重要です。

私は今、1990年代の終わりに、金を1オンス275ドルで買ったことを思い出しています。アナリストは、金をゴミ扱いしていました。しかし現在、金は500ドル以上で取引されています。興味深いことに今日、同じアナリストたちは口を揃えて金投資を推奨しています。」

値動きではなく、価値を重視しろ、というキヨサキ氏だが、氏は更にこう付け加える。「ウォーレン・バフェット氏は、潮が引いた時、だれが裸で泳いでいたかが分かる、と言います。それが現在のアメリカ不動産状況です。既に下降が始まっていますが、まだ多数の投資者が裸で泳ぎ回っているようです。」

注:江戸橋証券は現在、立花証券として営業している。

情報量と判断力

コーラは何種類あるかご存知だろうか?コカコーラとペプシコーラの二つだけで十分だ、と言う人もいるが、フール・ドット・コムのロビン・ギーリー氏によれば、世の中には少なくとも20種類以上のコーラがある。ここで疑問になるのは、選択肢の数と売上だ。

実際にこんなテストが、カリフォルニア州のスーパーマーケットでおこなわれた。一口にジャムと言っても、ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリー、と色々ある。そこでこのスパーマーケットは、日によって販売するジャムの種類数を変えてみた。ある日には6種類のジャムを棚に並べ、ある日には24種類のジャムを置いた。

結果はどう出ただろうか?6種類だけ販売した日と、24種類を販売した日を比べたら、ジャムの売上が良かったのはどちらの日だろうか?24種類は、圧倒的に6種類の選択数を上回っている。豊富な選択数は、ジャムの売れ行きに好影響となっただろうか?

6種類だけ並べた日には、店を訪れた36%の客がジャムを買った。24種類が置かれた日は、買い物客のたった3%がジャムを買った。多種類のジャムを取り揃えることは、売上にはマイナスだったわけだ。ブリンクの著者、マルカム・グラッドウェル氏はこう説明する。「あれもこれもと選択肢が多すぎると、私たちは適切な判断ができなくなります。大量な情報は私たちの判断能力を麻痺させ、けっきょく何も選択せずに終わってしまうのです。」

現在アメリカには、7000種類のミューチュアルファンドがある、とロビン・ギーリー氏は言う。7000!?豊富どころか、これでは種類が多すぎて、どれに投資するべきかが分からない。正に判断能力の麻痺だ。一々丹念に調べていたら、どんなに時間があっても足りない。7000、本当に恐れ入る数だ。

情報の集めすぎは株投資にも悪影響だ。よくこんな話を聞く。「O社の収益はここ6カ月で30%も上がっています。新製品の売上は絶好調ですし、来年はヨーロッパに進出するようです。現在の株価ですが、月足チャートはまだ下げ基調です。週足は上げ基調ですが、日足チャートは横ばいです。60分足チャートにも大したトレンドは見れませんが、15分足チャートは素晴らしいアップトレンドです。」これでは迷ってしまう。

チャート分析について、一つ付け加えておこう。アレキサンダー・エルダー氏は、著書「投資苑」の中でこう注意している。「5分足、30分足、日足、月足、と多くのチャートを見てはいけません。分析ばかりに時間をとられ、肝心なトレードができなくなってしまいます。使うチャートは2つで十分です。日足で売買する人は日足と週足の組み合わせ。5分足のトレーダーなら、その5倍にあたる25分足でトレンドを確認します。」やはり、物事シンプルな方が分かりやすい。

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