US Market Recap

現金より貴重な個人情報

個人情報泥棒、という言葉がよく聞かれるようになった。他人の個人情報を利用して、その人になりすまして貯金を下ろしたり、商品を購入する犯罪だ。以前は、ハンドバッグの中に入っているクレジットカードや運転免許証が狙われたが、インターネットが普及した今日、わざわざ実物品を盗む必要がなくなった。

モンスター・ドット・コムは、アメリカで最大のオンライン求人サイトだ。一々各会社に履歴書を郵送しなくても、ここを使えば手軽に複数の会社に履歴書が送れる。ABCニュースの報道によれば、現在モンスター・ドット・コムのデータベースには5千万以上の履歴書があり、この数は毎日5万以上の割合で増えているという。

履歴書には名前、住所、それに電話番号が記入されている。だから、必然的に個人情報泥棒たちは、オンライン求人サイトに目をつける。 ワールド・プライバシー・フォーラムの創始者、パム・ディクソン氏はこう語っている。「オンラインの求人サイトが、詐欺師による被害を受ける確率はほぼ100%です。個人情報を狙う詐欺師にとって、求人ウェブサイトほど魅力的なものはありません。人によっては、運転免許証番号や社会保障番号まで履歴書に記入しますから、オンライン求人サイトは貴重な情報で溢れています。」

個人情報を盗まれた、今年28才になる男性の話を紹介しよう。「オンラインで履歴書を送ってから数日後ですが、希望していた会社から電話がありました。いかにもビジネスマン、といった感じの声でした。私を海外に先ず派遣したいので、さっそく国外の指定した銀行に口座を開くように指示されました。恥ずかしい話ですが、私はマネーローンダリング(資金浄化)の犯罪組織に利用されていたのです。」

犯人グーループは、まだ逮捕されていないが、この事件後モンスター・ドット・コムのミッシェル・パール氏は、次のような発表をした。「求人内容に、小切手の現金化や銀行口座開設が条件になっているものに関しては、厳しい審査を行うことにしました。常に犯罪者たちの一歩先を行けるように、新しい個人情報泥棒対策を検討していく計画です。」

身内の者が個人情報を悪用する犯罪も増えている。家族に恥ずかしい思いをさせたくない、という理由で名前が公表されていないので、「Aさん」と呼ぶことにしよう。Aさんが個人情報を盗まれた、と知ったのは自動車ローンを銀行から断られた時だった。理由はAさんが抱える15万ドルの借金だ。

「15万ドル!?私は借金などしたことはありません。しかし、銀行員から証拠になる書類を見せられた時、私は溢れる涙を止めることができませんでした。15万ドルの借金をしたのは、私の母だったのです。まだ私が8才の頃、母は私の社会保障番号を使って、何枚ものクレジットカードを手に入れていたのです。どう考えても、こんなことをした母が信じられません。」

ABCニュースによれば、子どもは絶好のターゲットだという。上記Aさんの実例が示すように、子どもが個人情報を盗まれたことを発見するのは、かなりの年数が経過してからだ。このような被害を防止するために、現在議会では18才以下の未成年者に発行された社会保障番号の監視法案が検討されている。

さて、ここでまたAさんに戻ろう。母親のおかげで傷ついてしまったクレジットレポート(信用報告書)。これを直すには、かなりの年月がかかる。だが、壊れた母親との関係を修復するには、それ以上の年月がかかることだろう。

巨額な現金は悪材料!?

もう急成長は望めない、といった収益懸念。それにヤフーやマイクロソフトの巻き返しなどを主な理由にして、グーグル叩きが流行っている。「ここまで大きく下げた後、グーグルの悪口を言うのは不公平かもしれません。私自身、グーグルに関しては間違った見方をしていた一人です。なにしろ、グーグルの新規公開株を避けるように勧めていたのですから」、と語るのはハルバート・ダイジェストのマーク・ハルバート氏だ。

既に多くの意見が発表されているが、ハルバート氏は、もう一つグーグルには注目することがあると言う。さっそく説明を聞いてみよう。「ほとんど話題にならないことですが、グーグルは80億ドル以上の現金を持っています。それは良い事だ、と皆さん言われますが、これだけ多額な資金があれば、グーグルは積極的な買収などで、収益を更に向上させることができます。ようするに、膨大な現金はグーグルの大きな武器になるはずです。」

問題は最後の部分、「武器になるはずです」だ。ここでハルバート氏は、1986年、アメリカン・エコノミック・レビューに発表された論文に触れる。ハーバード大学名誉教授、マイケル・ジェンセン氏が書いたものだが、巨額な現金は企業経営に悪影響する、と結論している。ハルバート氏の話に戻ろう。

「ジェンセン教授は、企業が必要以上の現金を抱えると、企業経営の効率が鈍ることを指摘しています。豊富な現金が手元にあると、会社は正しいビジネス環境を把握することができなくなります。反対に、いつも現金を必要とする会社は、絶えず金融市場やビジネストレンドに注意を払っていますから、つまらない間違いを犯すことはありません。」

ここで思い出すのが、ガッカリな決算発表後に、グーグルの財務責任者が語った言葉だ。「思っていたより税率が高くなってしまい、税金の支払いが収益に悪影響となりました。」これだけ金がある会社だから、事前に超一流の会計士を何人も雇うことで、こんなつまらないミスは防げた。あるアナリストも言っていたが、これは明らかにグーグルの落ち度であり、適切な現状把握努力を怠っていたようだ。

ジェンセン教授は、もう一つこんなことを挙げている。企業の現金は大切に使われるべきものだが、金があり過ぎると、経営者は馬鹿らしいプロジェクトに手を出すようになるという。これを防ぐには、どうしたら良いだろうか?手っ取り早いのは、有り余る余剰資金を配当金として、投資者に還元してしまうことだ。

ところでグーグルは、次にどんな計画をしているのだろうか?ハルバート氏を引用しよう。「バロンズ紙によれば、グーグルはNASAからの協力を得て、無重力環境でのスポーツを考えているようです。ひょっとしたら、これは大ヒットするかもしれません。しかし、それはジェンセン教授が警告する、馬鹿らしいプロジェクトかもしれません。」なるほど、どちらにしても、まだグーグルから目が離せないようだ。

アメリカ人が犯しやすいお金の過ち

「お金を貯めるためには、つまらないミスを避けることが大切です」、とパーソナル・ファイナンスの専門家、スージー・オマーン氏は言う。「今年、投資をする計画が無くても、これから挙げる事項を守って、経済的なヘマを犯さないようにしてください。」

1、クレジットカードの借金を返済するために、自宅を担保にして金を借りないこと。
これは最悪の場合、自宅を失う結果になる可能性がある。クレジットカードは物件などを担保にして金を借りるわけではないから、金融機関は借り主に強制的に何かを売らせて、借金を取りたてることができない。しかし自宅を担保にして金を借りてしまうと、状況は一変してしまう。毎月きちんとローンの返済をしていれば問題は無いが、もし返済が大幅に遅れると、金融機関に家を取り上げられてしまう。

2、自分の401K(確定拠出型年金)から金を借りないこと。
401Kには課税前の収入が割り当てられるが、ここから借りた金は課税後の収入で返済することになる。そして、最終的に退職して401Kから金を引き出すと、これは課税対象になる。だから、401Kから金を借りることは、税金を二度払うようなものだ。

3駐車違反やスピード違反の罰金は直ぐ払うこと。
財政難の市が多い今日この頃、罰金は市町村の重要な財源になっている。たった25ドルの駐車違反の罰金を無視していると、市はさっそく違反者を小売業信用調査所に報告する。正にブラックリストに載るわけだから、自動車ローンや不動産ローンに申し込んでも、許可が下りない事態が発生してしまう。

4、子どものために生命保険を買わないこと。
生命保険の目的は一つ。それは扶養家族のためだ。父親だけが働いている家庭なら、父親が生命保険を買うことは納得できる。だが、収入が無い子どもに頼っている家族など存在しないのだから、子どもを生命保険に加入させることは金の無駄だ。

5、学生ローンは月々着実に返済すること。
たとえ個人破産のような苦しい状態に陥っても、学生ローンが免除されることはない。また、月々の支払いが遅れると、給料が差し押さえられることがあるから、十分に注意したい。

6、金利支払いローンを使って住宅を購入してはいけない。
金利を払うだけの住宅ローンだから、普通の住宅ローンのように借りるのが難しくなく、資金的に余裕のない人たちが、よくこのローンを利用する。このやり方で30年ローンなら、ようするに30年間利子だけを支払う。元本は全く減っていないわけだから、30年後にまとめて元本を払うことになる。よく不動産セールスマンは、10年後には、あなたの収入は増えているはずだから、その時点で金利支払いローンから普通のローンに乗り換えれば良い、と客を説得する。言うまでもないが、10年後のことは誰にも分からない。ひょっとしたら失業しているかもしれない。住宅を買うなら、一般的なローンだけを使うことだ。

7、資金の10%以上を一つの銘柄だけに集中させないこと。
思い出してほしいのは、破綻したエンロンだ。多くの社員は401Kで、自社株だけを買っていた。もちろん、会社の破綻と同時に401Kの価値はゼロになった。どんなに有望に見える銘柄でも、それだけに全資金を投入するのは極めて危険だ。

以上7項目を紹介したが、共通して言えることは、常識的判断の重要さではないだろうか。

トウモロコシは次世代のエネルギー?

「トウモロコシの先物は爆発的な上昇になる可能性があります」、とCKフューチャーズのクリス・クラフト氏は言う。一般教書演説でブッシュ大統領が約束したように、米政府は代替エネルギー開発予算を22%増やす。そこで注目されるのが、クラフト氏が強気のトウモロコシだ。

食用以外の使い道として、トウモロコシからガソリンに替わる、エタノールを造ることができる。製粉化されたトウモロコシは水と混ぜられ、発酵プロセスへと進んで行く。発酵されたトウモロコシは度重なる加熱工程を経て、最終的に純度99.5%のエタノールに姿を変える。

面白そうだ。ひょっとしたらクラフト氏の見方どおり、トウモロコシは大幅上昇になるかもしれない。しかし、アメリカン・エンタープライズ・インスティチュートのケビン・ハセット氏は、こんなことを語る。「コーネル大学とカリフォルニア州立大学バークレー校の研究によると、トウモロコシからエタノールを造るために必要なエネルギーは、エタノール自身が持つエネルギーを29%も上回っています。」これでは非効率的だ。もう少しハセット氏の話を聞いてみよう。

「オイルやガソリンがどんなに値上がりしても、エタノールは経済的な代替エネルギーになることはありません。トウモロコシからエタノールを造るには、大量なオイルが要ります。将来、新テクノロジーがオイル無しでエタノール製造を可能にするかもしれませんが、現代の技術では単なる国家予算の無駄使いです。もう一つの問題は大気汚染です。エタノールとガソリンがミックスされると、ガソリンだけで走る車以上に排気ガスがひどくなります。ですから、環境を破壊するエタノールは、私たちの社会に必要ありません。」

割高な製造そして環境汚染、こんなエタノールになぜ米国政府は金を使うのか?ハセット氏を引用しよう。「アイオア州やイリノイ州などの、トウモロコシ生産州から選出された議員が原因の一つです。政治家にとって代替エネルギー予算は、自州に現金を引き込む最大なチャンスです。また、エタノール開発の大手ADM社(アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド)からの政治献金も忘れてはいけません。2002年、イリノイ州選出デニス・ハスタート氏(下院議長)、トム・ハーキン上院議員(アイオア州選出)などの著名議員は、ADM社からの献金を受け取っていました。」

OPIS社のオイル・アナリスト、トム・クローザ氏の話を付け加えよう。「誰も語らないことですが、エタノール製造者は信じられない利益を手に入れています。エタノールを1ガロン造るには1ドル15セントのコストがかかり、これは多ければ2ドル70セントで販売されます。1バレルは42ガロンですから、単純計算すると(2.70 - 1.15=1.55, 155x42=65.1)、1バレルあたりの利益は65ドル10セントです。もちろん、輸送費や保険などを考慮すると儲けは50ドルから60ドルになると思われます。」

ここで、もう一度ハセット氏に戻ろう。「10年以上も政府からの資金援助があったにもかかわらず、いまだに経済的なエタノールは開発されていません。エタノールは詐欺のようなものです。トウモロコシ生産州が、国民から税金を奪い取っているだけです。」

利回りは米国経済を予測する?

4.68%、4.58%、そして4.55%。どれが30年物国債利回りだろうか?正解は、一番低い4.55%が30年物、4.58%が10年物、そして最も高い4.68%が2年物国債利回りだ。普通なら、長期な物ほど利回りが高くなるから、現在のアメリカ国債市場には、逆イールド現象が起きているわけだ。

利回りの逆転現象は、不景気の前ぶれになる、と一般的に言われる。短期金利で金を借りて、長期金利で消費者に金を貸す銀行には、明らかに逆イールド現象は悪影響だ。しかし、ジョン・スノー氏(財務長官)、それに連銀を去ったばかりのグリーンスパン氏によれば、逆イールド現象は悪化する米国経済を示すものではなく、海外からの旺盛な投資結果だ、ということになる。

新連邦準備理事議長、バーナンキ氏も、海外からの膨大な余剰資金が、いまだかつて無い勢いでアメリカ国債市場に流入している、と同様な見解だ。

2年物と10年物利回りが逆転したのは2005年12月、5年ぶりの出来事だ。2000年に起きた逆イールド現象は、たしかに不景気の警報となり、連銀の積極的な金利引下げ政策が始まった。過去30年間を振り返ると、利回り逆転現象が米国経済冷え込み警告にならなかったのは、1998年(アジア経済危機)の時だけだ。

「歴史的に見れば、現在の利回りは危険信号です。もちろん心配になりますが、これが不景気の前ぶれかは、まだ分かりません」、と投資戦略家のピーター・カーディロ氏は言う。ワイス・ペック・アンド・グリーア社のトム・ジラード氏は、こう語る。「金融機関が高利益を上げることは、今後さらに難しくなります。ですから、銀行は積極的にローンをすることができなくなるでしょう。」

アクション・エコノミクス社のマイケル・エングルンド氏は、現在の利回り状況を気にする必要は無いと言う。「長期国債と短期国債の利回りを単純に比較するのは間違いです。正しい状況を把握するためには、利回りの平均値を使う必要があります。月平均値で利回りを比べると、イールド逆転現象は、まだ起きていません。」

JPモルガンの、アンソニー・カリダキス氏を引用しよう。「これは典型的な逆イールド現象です。だからと言って、それが米国経済の減速を予測しているわけではありません。今回の逆転は、米国経済のファンダメンタルズが原因ではなく、テクニカル的要素が引き起こしたものです。ですから必要以上に、利回りだけに注意を払うのは間違いです。」

経済は冷え込む、冷え込まない、と意見は分かれるが、多くのアナリストはデービッド・ゴールドマン氏(キャンター・フィッツジェラルド社)に賛成だ。「国債市場は、連銀に明確なメッセージを送っています。連銀は短期金利を上げ過ぎました。マーケットは、金利の引き下げを要求しています。」

マイクロソフトを投資対象から外せ!?

1999年12月31日、マイクロソフトは52ドル53セントで取引を終了した。2001年4月30日の終値は30ドル48セント、そして現在26ドル台で推移している。「もうマイクロソフトはダメなのでしょうか?」、とそんな質問をする投資者が増えている。たしかに、2005年度のグーグルやアップル・コンピュータの急成長を見たら、心配になっても仕方ないだろう。

投資アドバイスコラムで知られるマット・クランツ氏は、こんなことを述べている。「2001年3月以来、マイクロソフトは比較的に高額な配当金を払い続けてきました。それに、2003年2月には1株が2株に分割されています。単に株価だけでなく配当金も考慮すると、マイクロソフトは2001年から2%伸びたことになります。」

5年間で2%。これではどんなに気の長い人でも悲観的になってしまう。やはり、マイクロソフトは見込みがないのだろうか?「先ず、リスク・リワード比を検討する必要があります」、とクランツ氏は指摘する。「配当金も含めて、1986年から今日までのデータを基に、マイクロソフトの幾何平均値を計算してみました。その結果分かったことは、マイクロソフトのリスク値は51.8です。この数字が意味するのは、株価が94.1%の上昇、または9.5%の下落が今年有りえるということです。」

次に考慮したいのは収益率だ、とクランツ氏は言う。「多数の投資者は、株価収益率(PER)を使って、株が割安か割高かを計ります。現在の株価収益率を確かめるだけでなく、過去5年間の株価収益率と比較してみることも大切です。アナリストの意見を総合すると、マイクロソフトは向こう5年間、毎年12%の収益増が予測されています。妥当な数字だと思います。現にマイクロソフトは過去4年間、毎年13.6%の伸びを記録しています。このアナリストが割り出した12%を使って計算すると、マイクロソフトは44ドルになるまで買えます。」

なるほど、なんとなく買っても良さそうな雰囲気だが、爆発的な上昇は無さそうだ。もう一つ、クランツ氏の見方を付け加えておこう。「最も保守的な投資を1、そして最も危険な投資を5とすれば、マイクロソフトは2です。ですから、かなり保守的な投資になりますが、マイクロソフトは今年、ウインドウズの新バージョンを発表します。これが発端となって、収益上昇に大きな弾みが付くことも考えられます。

スタンダード・アンド・プアーズ社のアナリストは、好調なサーバービジネスと、順調な家庭向け娯楽製品売上を理由に、今年マイクロソフトの収益は10%上昇することを予測しています。現在、投資者に人気があるのは小型株です。もし人気が大型銘柄に移るような事態が起きれば、アナリストはマイクロソフトに買い推奨を出すことでしょう。」

引退しても影響力抜群のグリーンスパン氏

1月31日を最後に、連銀を去ったグリーンスパン氏が、早くも話題になっている。火曜日の夜、リーマン・ブラザーズは著名な投資家たちを集めて、マンハッタンで内密な会議を開いた。そこにグリーンスパン氏は、来賓講演者として招待されていた。

報道によれば、グリーンスパン氏は米国住宅市場に関しては悲観的だが、全般的にはアメリカ経済について強気な見方をしている。更に氏は、ウォールストリート関係者が予想している以上に、連銀は金利引き上げを継続する可能性があることを語ったようだ。

ブルームバーグからは、次のようなグリーンスパン氏の言葉が発表されている。「執拗に低い長期金利が、連銀の経済対策を妨げている。長期国債利回りが不動産ローンの金利、そして住宅ローン借り換え金利を決定するが、現在の利率はまだ低レベルであり、相変わらず住宅ローンの借り換えが続いている。」

こんなニュースを聞いた投資者たちは、さっそく国債を売った。その結果、10年物国債は5/32下落となり、利回りが4.59%に上昇した。しかし、この4.59%という利回りは、2004年6月、連銀が短期金利引き上げを開始した頃と同じ水準だ。

全く予期しなかったグリーンスパン氏の発言は、新連邦準備理事議長、バーナンキ氏を無視した軽率な行動だ、という非難の声が上がっている。「バーナンキ氏がどう思ったかは分かりませんが、これは内密な会議ということですから、誰かがマスコミに漏らしたわけです。ですから一概に、グリーンスパン氏を責めることはできないと思います」、とムーディーズのジョン・ロンスキー氏は言う。

ミラー・タバックの投資戦略家、トニー・クレシェンジ氏は、こんな感想を述べている。「マンハッタンの会議におけるグリーンスパン氏の発言は、決して新しいものでありません。1月31日、連邦公開市場委員会後に公表された声明文と、ほぼ内容は一致しています。2月15日には、バーナンキ氏が新議長として初めて議会で証言をします。注目するなら、グリーンスパン氏ではなく、この証言の方です。」

内密の会議で、グリーンスパン氏は金利引き上げがまだ継続される可能性を語ったが、何パーセントまで上昇するかは明言しなかった。ジョン・ロンスキー氏の見方によれば、短期金利は5%まで上がり、そこで金利引き上げサイクルは終了するらしい。ということは、5月が最後の金利引き上げになるわけだ。

もう一つロンスキー氏の意見を記しておこう。「予期せぬ下落となった第4四半期のGDP(国内総生産)は、第1四半期、5%から6%の大きな伸びを記録することでしょう。」金利不安を割り切って、株投資者たちの積極的な買いを期待したい。

ここで質問。リーマン・ブラザーズは、講演料として、いったいいくらグリーンスパン氏に払ったのでしょうか?
解答:25万ドル(約2950万円)、と推定されている。

没収された品物はどこへ行く?

世界貿易センターが襲われた2001年9月11日を境に、空港での持ち物検査が厳しくなった。塵も積もれば山となる、の言葉どおり、今日までアメリカの国際空港で没収された物品は膨大な量になる。腐る物や、危険な薬品類は直ぐ処分されることになるが、ハサミ、ライター、ポケットナイフなどには価値があるから、捨ててしまうのはもったいない。かと言って全て保管したのでは、いくら場所があっても足りない。当然な成り行きとして、没収品は売られることになる。

実際に販売を担当するのは州政府だ。ペンシルバニア州で没収品販売の責任者を務める、ケネス・ヘス氏はこう語っている。「売れ残る物は一つもありません。去年の12月には、1万7000ドル以上の売上がありました。それに、毎月5000ポンド(2265キロ)近い品物をイーベイでも販売しています。」なんと、オンラインオークションのイーベイが利用されていたわけだ。ならイーベイは買いかな?おっと、これでは話がそれてしまう。

ヘス氏は5000ポンドという重さを使った表現をしているが、氏の手元に空港から届くのは、ハサミやポケットナイフが詰まった箱、箱、そして箱だ。「2004年のことですが、スイス・アーミー・ナイフが500個入った箱を、イーベイで売ったことがあります。カリフォルニアに住む買い手が、595ドルで競り落としましたが、これは没収されたナイフに付けられた最高記録です。」

「品物は全て売り切れます」、とアーカンソー州のジェームズ・スミス氏も言う。「物によっては2回、3回のオークションが必要になることがありますが、必ず売れます。もともとタダで手に入れた物ですから、何度もオークションにかけたからといって、州が損をすることはありません。」スミス氏がオークションを利用するようになったのは、次のようないきさつがある。「最初は、没収品を公立の小学校や図書館、それに市役所などに寄付していました。皆さん喜んで受け取ってくれましたが、今ではハサミと言っても断られるだけです。どうやら、アーカンソー全州民にハサミが行き渡ったようです。」

メリーランド州は、インターネットを一切使用しない、昔ながらのやり方で販売している。没収されたハサミやナイフは、箱に詰め込まれ(約22キロ)、ジェサップ市にある物置に運ばれる。そこで一箱50ドルで販売されるわけだが、この方法で毎月5箱から20箱ほど売れるようだ。箱の中にはハサミより少し貴重な物を混ぜて、お客さんたちに、良い買い物をした、と思ってもらえるように工夫がされている。

さて、今年も没収品ビジネスは繁盛するだろうか?2005年12月22日、機内持ち込み品規制が緩和された。そのため、刃の長さが4インチ(約10センチ)までなら機内に持ち込むことができるようになった。更にドライバー、レンチなどの工具(17.8センチまでの長さ)も許可され、空港での没収品は減りそうだ。

私有化の利点

喧嘩しないで、お兄ちゃんと仲良く分けなさい!皆さんも子どもの頃、母親からそんな注意をされたことがあると思う。一つしかない物を自分だけで独占しないで、他の人と共有し、わかち合うことの大切さを、子どもに教えようとしているわけだ。

共有、わかち合う、道徳的な観念だが、今日のアメリカ社会を見ると、共有者の人数が多くなるほど、共有されている物がいい加減に扱われる傾向がある。(アメリカだけの現象ではないかもしれない。)一番分かりやすい例は公衆トイレだ。緊急事態でどうしようもない場合は仕方ないが、とにかくアメリカの公衆トイレは汚い。

ジョージ・メイソン大学のラッセル・ロバーツ氏(経済学部教授)は、こんな発表をしている。「私的所有物(私有財産)は、不正使用されたり、破壊されることは、先ずほとんどありません。壊されたり、乱暴に扱われるのは、皆が使用する公共物です。逆説的な言い方をすれば、全ての人が自由に使える物は、誰の物でもありません。自分の物ではないわけですから、とうぜん大切にしよう、などという気持ちは起きません。」

ヨーロッパには、公衆トイレとプライベート・トイレ(私有物)がある。アメリカと同様に、公衆トイレは汚れているが、私有物であるプライベート・トイレは清掃が行き届き、とてもきれいだという。たしかにプライベート・トイレは有料だが、明確な所有者が存在するため、常に気が配られているわけだ。

山火事も、私有地ではなく、政府の所有する森林地帯で発生しやすい。キャンプファイヤ、不注意な花火などが山火事の原因になるが、たいがいそんなことは公立公園内で起きる。しかし、同じ森林地帯でも、私有地となると話は全く違う。政府の所有する森林は単なる木だが、私有地の森林は材木になる貴重な財源だ。将来の商品だから、キャンプファイヤや花火の餌食になるわけにはいかない。だから警備員を雇って、いつも怠りなく監視をするわけだ。

とここまで書いてくると、全ての公共物を私有化することは有意義のように思える。現に、この私有化のアイディアがアフリカの象を救っている。政府の所有するジャングルで、象を狩猟することは禁じられている。しかし、高い値段で売れる象牙を狙って、密猟者たちが後を絶たない。そこで、こんな解決方法が実施された。ジンバブエ、ウガンダ、そしてケニア政府は、村民たちに象狩猟ライセンスを1頭あたり1万ドルで販売する権利を与えた。

結果的には、この象殺し許可証販売が、密漁を大幅に減少させた。何故だろうか?理由は、村民たちに1万ドルの1部が手に入るからだ。もう象は昔のように、単なる象ではない。家庭を支える重要な収入源になったわけだから、勝手に密猟者たちに殺させるわけにはいかない。もちろん、収入になるからといって、無闇に象の頭数を減らしてしまったら商売にならない。今や象は村民の私有物なのだ。

パリと石炭

ブッシュ大統領の、一般教書演説には何も新しいものがなかった。だから狙いは石炭銘柄だ、と人気マーケット・コラムニスト、ジム・ジューバック氏は言う。正確には、大きな声で「石炭!」と強調している。「もうかなり上がってしまっている、と思われるかもしれませんが、エネルギーセクターの中で、石炭が長期的に一番有望です。」

なぜ石炭なのか?一般教書演説を振り返ってみると、大統領は石油に替わるエネルギー開発のために、2006年度予算を22%増やすことを約束した。「政治家が、具体的なパーセンテージを示した時は要注意です」、とジューバック氏は指摘する。さっそく氏に、22%増が持つ意味を説明してもらおう。

1、環境を破壊しない石炭エネルギー開発のために、更に2億1800万ドルが支給される。
2、石炭から炭酸ガスを取り出す研究のために、更に5400万ドルが割り当てられる。
3、ハイドロゲン燃料開発予算が、2億3600万ドル増額される。
4、更に8300万ドルが、太陽エネルギー開発に支給される。
5、風力エネルギー開発予算が、3900万ドル増える。
6、工場の廃棄物を、エタノールに変える研究予算が5900万ドル増額される。

こう説明されると、多額な金がエネルギー開発に向けられる、と思ってしまうが、「これだけの金額では、13兆ドルに及ぶアメリカ経済に何の影響も与えることはできません」、とジューバック氏は語る。

もう一つ注目すべき点として、ジューバック氏はこんなことを挙げている。「大統領は中東からの石油輸入量を7、5%減らすことを目標にしていますが、2025年までにそれを実現することを目標にしています。ひじょうに長期的な計画です。ですから、現状のエネルギー開発ポリシーが直ぐ変わることはありません。ようするに、今までやってきたことが、これからも続くだけの話です。現状維持が継続する限り、エネルギーセクターで最も伸びるのは石炭株です。」

石炭を利用した発電所には、高質な蒸気タービンが必要になる。ベア・スターンズ社の調べによれば、蒸気タービンの需要が爆発的に増大するという。単に石炭を利用した発電所だけでなく、オイルを使った発電所も含めると、向こう5年から10年以内に、40%の発電所が新タービンに取り替える必要があるようだ。

40%、大きな数字だ。どの銘柄を買ったら良いだろうか?タービンならゼネラル・エレクトリック(GE)、と多くの投資家は考えるが、このセクターのアナリストはアルストム社を推奨している。聞いたことがない銘柄だが、上場されているのはパリの証券取引所だ。業績不振に悩んだアルストム社は、2003年、パトリック・クロン氏を最高経営責任者に抜擢し、収益状況が大きく好転した。

アルストム社はあらゆる種類の発電所にタービンを販売しているが、主要マーケットは石炭を使った発電所になる。ベア・スターンズのレポートによれば、アルストム社は蒸気タービン業界のリーダーであり、収益も向こう5年間、毎年20%以上の成長が期待できるようだ。取引されているのはパリの証券取引所。少し買うのが面倒になるが、面白そうな銘柄だ。

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