US Market Recap

出来高の見直し

なぜトレーダーはトレンドに逆らうのだろうか?株価は抵抗線を突破して、明らかなブレイクアウトなのに、どうして素直に買えないのだろうか?もっと悪いのは、こんなことも起きる。思惑が外れて、持ち株が下げ始める。株価はサポートラインで下降が止まらず、結局ブレイクダウンしてしまう。迷わず損切らなくてはいけないのだが、こんな時に限ってヘンな理屈が頭を支配する。「今売るのは馬鹿げている。マーケットメーカーの罠にはまってはいけない!そろそろ反発が来るに決まっている。」ここで、ぜひ耳を傾けたいのが投資心理研究の第一人者、ブレット・スティーンバーガー氏の言葉だ。

「基本に戻ってください。出来高の重要性を、もう一度見直してほしいと思います。出来高は、トレーダーや投資者が持つ株価に対する意見の表明、と言い換えることもできます。例えば狭い値幅で動いていた株が、大きな出来高を伴って上放れしたとしましょう。これは、トレーダーが株価の一段高を受け入れた、という意思表示です。もう一つ例を挙げましょう。骨董品を、オークションで売ることを考えてください。買い人気がついて、値段が上がっている時は、価格がまだ正当な水準に達していないことを示します。

株式市場にも、オークションに似たルールが適用されます。売り手と買い手がぶつかり合って、その時点における正当株価が決定されるわけです。株価が大きな出来高を伴って、一方的に上げが続く時は、明らかに買いが優勢なわけですから、売りと買いのバランスが完全に買い方に傾いています。その逆に、出来高を増大させて一方的な下げなら、売り手にバランスが傾いているわけです。」

出来高の重要性について、著書「マインド・オーバー・マーケット」の中で、ジェームズ・ダルトン氏はこう記している。「出来高ほど、マーケットの状況を正確に表す指標は存在しない。たとえ上げ基調が明らかなマーケットでも、出来高の増大を伴わないなら、その上げ基調を深追いしてはいけない。」スティーンバーガー氏の話に戻ろう。

「ブレイクダウンなのに損切れなかった、と言うトレーダーに私は、よくこんな質問をします。ブレイクダウンをした時、出来高はどう動きましたか?ほとんどの回答は、値動きだけに気を取られていたので、出来高は見ていなかった、というものです。出来高は、株価に対するトレーダーや投資者の意見です。ブレイクダウンに大きな出来高が伴っているなら、これはトレーダーが株価の下げを認めた、ということです。完全に状況が変わったのですから、ここは素直に損切らなければいけません。」

トレンドに逆らうのに似ているが、ブレイクアウトを期待して買う人たちがいる。売り手と、買い手の株価に対する考え方が明確になる前に買うわけだから、これも賢明なやり方ではない。先を読むことは無意味ではないが、実際に行動を起こすのは、確かなシグナルが出てからだ。そうでないと、長い横ばいに巻き込まれることもあるから気をつけたい。

税金のプロが犯した税金のミス

まだ1カ月以上残っているが、そろそろ税金の確定申告が気になる頃だ。たとえ給料以外の収入が無い人でも、所得税申告書に、間違い無く書き込むのは骨が折れる。住宅ローンの利子、教会などの団体への寄付、それに医療費やベビーシッターに払った金などは所得から控除できるから、やはり専門家からのアドバイスが欲しくなる。そんな要望にこたえてくれるのが、H&Rブロックだ。

スーパーマーケットの隣、ショッピングセンターの中、そんな人通りの多い場所にH&Rブロックは事務所を構える。個人納税者にアドバイス、申告書の作成、そして書類の提出までやってくれるから利用者の数は多い。

金曜(24日)、ニューヨーク証券取引所に上場されるH&Rブロックは、8.65%の大幅下落になった。報道によれば、H&Rブロックは2004年度と、2005年度の決算報告書をやり直さなくてはいけない。何故か?報告書には会計ミスがあり、そのためH&Rブロックは税金を3200万ドル(37億4400万円)過少支払いしていた。

税金の専門家が、税金の間違いを起こしていたのでは話にならない。これでは、株を投げたくなっても仕方ないだろう。CBSニュースや多くの報道機関が指摘していることは、H&Rブロックが抱えている法的トラブルが、今回の税金過少支払いにつながったものと見られている。

H&Rブロックは、誤解されやすいローンプログラムが問題になり、集団訴訟されていた。誰でも税金の払い戻しは、今直ぐにでも受け取りたいと思うものだ。こんな客の気持ちを利用して、H&Rブロックは客にローンをすることで高金利を稼いでいた。もう少し説明しよう。

例えば、Aさんには3000ドルの払い戻しが見込めるとしよう。このAさんに対して、H&Rブロックのアドバイザーは、こんな提案をする。「国から払い戻しの小切手が送られるには数ヶ月かかります。しかし、この金額全部を2、3日中に受け取る方法があります。」こんなふうに持ちかけられたら、興味を持つ人が多いことだろう。

ようするにH&Rブロックが、Aさんに3000ドルを貸して利子を取るわけだが、金利は超割高の40%から700%だ。これが集団訴訟になった経緯なのだが、2005年12月21日、H&Rブロックは訴訟解決策として、6250万ドルを支払うことに同意した。

これで一件落着、と思ったがH&Rブロックの法的トラブルは消えない。2月15日、カリフォルニア州検事総長事務局は州法と連邦法違反で、H&Rブロックを訴えた。検事総長事務局によれば、高金利ローンのほとんどは低所得家庭がターゲットになり、そしてこれはローンであるにもかかわらず、H&Rブロックは払い戻し、という表現を使っていた。

H&Rブロックが大きく下げた理由のもう一つは、この税金ミスニュースと前後して発表された、ガッカリな第3四半期の収益だ。どちらにしても、確定申告まで1カ月と少し。こんな状況では、H&Rブロックの客は大きく減ることだろう。

ポール・マッカートニーとミューチュアルファンド

「ミューチュアルファンドは馬ではありません」、と投資者に警告するのは、経済コラムニストのチャック・ジャフィー氏だ。ナスダックとニューヨーク証券取引所に上場されている個別銘柄数は6500以上あるが、ミューチュアルファンドの数も、それに負けない。証券マン=ファンドセールスマンの今日この頃だから、長期投資の主流はミューチュアルファンド、と言っても言い過ぎではない。

ジャフィー氏が指摘するのは、あまりにもつまらない情報を基に、米国投資者はミューチュアルファンドを選んでいることだ。もっと説明してもらおう。

「結論を先に言っておきましょう。大切なことは、ピッチャーの投げるボールだけに集中することです。皆さんは、ツール・ド・フランスで7回優勝した、ランス・アームストロング選手の名前を聞いたことがあると思います。アメリカン・センチュリー・インベストメントは、アームストロング選手と組んで、リブ・ストロングファンド、という新ミューチュアルファンドを発表しました。

アメリカン・センチュリーはコマーシャルの中で、投資者にアームストロング選手の強いイメージを徹底的に強調します。それだけではなく、癌患者や教育施設のために、アメリカン・センチュリーは毎年寄付することもほのめかされています。なかなか説得力の高いコマーシャルです。しかし、既にバランスのとれたファンド投資をしている人なら、わざわざリブ・ストロングファンドに資金を移す必要はありません。

リブ・ストロングファンドは5月から購入することができますが、若い投資者の獲得が焦点になっています。このファンドだけあれば、アームストロング選手のように首位でゴールインできる。ようするに、他のファンドと組み合わせなくても、完璧に老後の資金が貯まる、というわけです。

アメリカン・センチュリーは、たしかに優秀なファンド会社の一つです。リブ・ストロングファンドは好成績なファンドになる可能性もありますが、その逆になることもありえます。現在コマーシャルを通して、アメリカン・センチュリーがしていることは、投資者から信用を獲得することです。そのために利用されているのが、自転車王のアームストロング選手です。

アームストロング選手はチャンピオンですが、投資のチャンピオンではありません。ですから、ミューチュアルファンドと、アームストロング選手を結びつける理由は全く有りません。もし万が一、ウォーレン・バフェット氏がコマーシャルであるファンドを推薦するなら、そのファンドは間違いなく買いです。」

有名人を起用してのコマーシャルは、何も今始まったばかりではない。映画スターが「おいしい」、と言えばそのコーヒーの売上が上がるように、知名度が高い人の力は絶大だ。余談になるが、フィデリティーは誰を使ってミューチュアルファンドを宣伝しているかご存知だろうか。中年世代に圧倒的な人気の、ポール・マッカートニー氏だ。

高い授業料

トム・ディロンさん(19才)には、既に5万2000ドル(608万4000円)の借金がある。そしてこの金額は、最終的に15万ドル(1755万円)を超えることになるらしい。ディロンさんは、コネチカット大学薬学部に通う学生だが、15万ドルは、大学と大学院授業料のために借りる学生ローンの総額だ。

1月31日、連銀は14回連続の短期金利引き上げを実施した。2004年の6月から金利上昇が続いているわけだが、これは学生ローンにも影響を及ぼしている。連邦政府が出資する学生ローン金利は、7月1日、6.8%に引き上げられる。その結果、利率はここ5年間で最高のレベルに達する。これで学生は、高い授業料に閉口するだけでなく、金利の返済にも悩まされるわけだ。

高額な学生ローンの借金は、大学卒業後の社会生活に、様々な弊害を起こす原因になる。例を挙げれば、学生ローンの返済を優先させるため、老後のための投資ができない。結婚資金が貯まらず、独身生活が長引く。住宅購入が困難になる。子どもの教育資金用の貯蓄ができない。

バージニア・カレッジ・セービング・プランの、ダイアナ・キャンター氏はこう語る。「卒業後は社会人として、旺盛なチャレンジ精神が必要なのですが、多額な学生ローンの支払いがあるため、どうしても消極的な生き方になってしまいます。自分で商売を始めて起業家になりたい、という願望があっても、月々の借金支払いを済ませると、手元には大した額の金が残りません。ですから、少ない資金を守ろうという気持ちが生まれ、起業家の夢を捨てることになるのです。」

ヘザー・ブシェイ氏(エコノミスト)の調べによれば、1981年、学生が毎年夏休みに仕事をすれば、授業料の三分の二を稼ぐことができた。だから、夏休み以外にもパートで働けば、学生ローンを利用する必要は、全く無かったわけだ。今日の学生は、毎日フルタイムで働いても、州立大学の一年分に相当する授業料しか貯めることができない。

こうなると両親が当てにされるが、住宅ローン、自動車ローン、クレジットカードの支払いなどに追われ、子どもの教育費まで手が回らない。多くのファイナンシャル・プランナーは、こんなアドバイスを親たちにする。「子どもは学生ローンを利用することで、授業料を借りることができます。しかし、老後の生活代は借りることができません。子どもの教育は重要ですが、自分たちの老後用投資を犠牲にしてはいけません。」

在学中に学生ローンを気にする学生は、ほとんどいない。ローン=借金、という公式が現実味を帯びるのは、大学の卒業後だ。返済が立て続けに遅れるようなことが起きれば、連邦政府は給料を差し押さえることができる。運悪く自己破産のような事態に陥っても、学生ローンは帳消しにならない。とにかく払い終わるまで、連邦政府は借り主を追いかけるわけだ。

貿易赤字、財政赤字、自動車ローン、住宅ローン、学生ローン、そしてクレジットカード。正にアメリカは赤字大国だ。

ビジネスプレゼンテーションを成功させる10の条件

ビジネスマン、キャリアウーマンなら会議でレポートを発表しなければならない時がある。同僚や上司を前にして、説得力のある力強い発表をしたい、と思うのは誰でも同じだ。しかし、ビジネス・コミュニケーションのコーチとして知られるカーマイン・ガロ氏によれば、たとえどんなに内容が素晴らしくても、10の悪い癖のおかげで、プレゼンテーションは台無しになってしまう。さっそく、10の悪い癖を紹介しよう。

1、ノートやメモを読むだけの発表
出席者と効果的なコミュニケーションをするには、持参したノートを単に読み上げるようなプレゼンテーションをしてはいけない。時々メモに目を落とすのは問題ない。だが、一字一句全て朗読してしまっては、聞き手を退屈させるだけだ。プレゼンテーションの名人、スティーブ・ジョブズ氏(アップル・コンピュータ最高経営責任者)は、メモが無くても発表できるように、長時間かけてプレゼンテーションの練習をしていることを覚えておいてほしい。

2、出席者と視線を合わせることを避ける
相手と視線を合わせること無しで、有効なコミュニケーションをすることは不可能だ。多くのプレゼンターは壁、天井、床、机などを見ることはあっても、肝心な聞き手の目を見ることができない。発表時間の90%は、出席者と視線を合わせることが必要だ。もちろん、相手を睨むのは逆効果になってしまう。

3、不適切な服装
見るからに安物と分かるスーツ。ほこりをかぶった靴。シワの目立つシャツ。服装はイメージを作り上げる重要な要素だ。

4、目ざわりな動作
意味も無く手をブラブラさせたり、やたらと右へ左へと歩き回るのは聞き手に不愉快になることが多い。できればプレゼンテーションをビデオに撮って、自分の動きを復習しよう。

5、準備不足
ここで言う準備不足は内容ではなく、プレゼンテーションの練習不足のことだ。ただレポートを、何度も黙読するだけでは意味が無い。実際に声を出して、身振り手振りをまじえて練習することが大切だ。スティーブ・ジョブズ氏を挙げたが、シスコの最高経営責任者ジョン・チェンバーズ氏も、プレゼンテーションの練習熱心で有名だ。

6、直立不動
兵隊のように直立したまま、全く動かない人がいる。これでは堅苦しい。適切なジェスチャーは、プレゼンテーションに弾みを付けることを覚えておこう。

7、スライドに書かれていることを全部読み上げてしまう
当たり前のことだが、聞き手も読むことができる。しかしプレゼンターは、そんな常識を忘れ、自分でスライドに書かれていることを全て読み上げてしまう。スライドの利用は効果的だが、それはグラフや表に使われるべきであり、あまり多くの文字が入っているものは避けたい。

8、長時間話し過ぎ
18分を過ぎると、聞き手は注意力が散漫になる。30秒で話せることを、5分もかけて説明するのは馬鹿げている。

9、刺激的要素が足りない
聞き手をエキサイトさせることができないプレゼンテーションは失敗だ。聞き手は初めと終わりを覚えている傾向があるから、話の切り出しと締めくくりには、刺激的な内容を盛り込もう。

10、結論に創造的刺激が無い
できれば意外な結論で、聞き手をアッと言わせたい。意外性は、聞き手の心に長く残るものだ。

米国投資者を狙う10の罠

2006年、アメリカの投資者には、どんな罠が待ち受けているのだろうか。北米証券業管理職協会が発表した、10のよく使われる手口を紹介しよう。

1、親近感を利用したセールス
同じ大学を卒業した。同じ教会に出席している。子どもが同じ小学校に通っている。様々な理由を使って、セールスマンは投資者に接近する。例えば、1995年にABC大学を卒業された皆さんに限り、1年目の保険料20%割引で生命保険に加入できる、といったものだ。こんな場合は、次の質問に答えてほしい。もし、母校の名前が記されていなくても、この生命保険に加入するだろうか?

2、頻繁すぎる売買回数
証券会社に口座を100%任せると、こんなことが起きやすい。手数料稼ぎのために、必要以上の売買がされるわけだが、おかしい、と思ったら直ぐ証券会社に問い合わせることだ。担当者だけでなく、上司にも状況を説明することを忘れないようにしよう。客の口座で、証券会社が頻繁すぎる売買をすることは禁止されている。

3、株式指数に連動する定期預金
株が好調なら利子も上がるが、反対なら利子はゼロだ。普通の定期預金は元本が保証されているが、この定期預金には元本保証が無い。

4、インチキなオイル投資
ここには膨大なオイルが眠っている、といった売り文句で投資者を募るが、最初からオイルなど無いから完全な詐欺だ。オイル投資には、いい加減な話が多いから注意したい。

5、個人情報泥棒
使っている銀行や証券会社から、パスワードやユーザーネームなどの個人情報確認のメールが来たら気をつけよう。金融機関は、メールで個人情報を求めることは無い。

6、外国の銀行からの誘い
高い定期預金利子が約束されているが、海外からの勧誘は先ず断るのが無難だ。こんな質問をしてみよう。何故わざわざ私に、外国から誘いが来たのだろう?

7、暴騰銘柄を保証する株ニュースレター
どうしてそんな貴重な情報を他人に教えたいのだろうか?信じられないような成績が自慢されていたら、インチキはほぼ間違いない。

8、損を取り返してあげます
投資詐欺にあった人のために、資金を取り返してあげます、と被害者に近づく詐欺師が多いので気をつけたい。

9、高金利約束手形への投資
金利が高ければ高いほど、投資が危険になることを覚えておこう。手形は、どの金融機関が発行したものだろうか。元本は保証されているだろうか。よく調べよう。

10、現金自動支払機への投資
ショッピングセンターなどに現金自動支払機を設置して、1回の引き出しで約2ドルから4ドルの手数料を得るのが目的になる投資だ。業者が現金自動支払機の取り付けから集金までやってくれるのだが、場所はかなり遠方であることが多い。だから実際に自分で設置された機械を見に行くことはないから、これも詐欺投資の可能性が高い。

裸で空売り

米国株の空売りが、最近やりにくくなった、と言うトレーダーの声が増えている。たしかに、アップティックルールという規制があるから、株価が下落している時には空売りができない。逆に株価が上昇している時には、買い制約など無いから、アップティックルールは評判が悪い。

しかし今回、空売りがスムースにいかないのは、アップティックルールが原因ではない。問題はnaked (裸)shorting(空売り)だ。順を追って説明しよう。

チャートソフトウェアで有名なだけでなく、デイトレーダーに人気の、トレードステーション証券に全米証券業者協会(NASD)から「空売りルール違反」の通達があった。取調べの対象になったのは2004年度に起きた、約200件におよぶ不法な空売りだ。その結果、トレードステーション証券には罰金が科されるようだが、金額などの詳しい内容は、まだ全米証券業者協会から発表されていない。

トレードステーション証券だけが狙われたわけではない。NASDは去年から、証券会社における、違法な空売りを広く捜査中だという。ここで明確にしておかなければいけないのは、正当な空売りに対するNASDの見方だ。「空売りは、株式市場の抑制と均衡を保つ重要な要素の一つだ。例を挙げれば、空売りは不正な企業を暴露する有効な手段になる。」

空売りを成立させるには、対象になる株を、ブローカーから先ず借りなければならない。それが済んだ時点で、はじめて空売りが可能になる。しかし、トレードステーション証券が行ったnaked (裸)shorting(空売り)は、肝心な最初の部分を飛ばしている。ようするにnaked shortingというのは、実際に株を借りずに、トレーダーたちの空売りを許可することだ。naked shortingは、需給バランスを崩す要因になるから、株価を必要以上に下落させてしまう、と批判するアナリストも多い。

トレードステーション証券だけに限らず、ほとんどの証券会社は、シティグループやゴールドマン・サックスのような大手証券会社から空売り用の株を借りる。トレードステーションの話によれば、2004年度に起きたとされる違反取引は、ベア・スターンズから正規に株を借りた後で発生したようだ。

もしそれが事実なら、悪いのはトレードステーションではなく、ベア・スターンズの方になる。名前は公表されていないが、内部事情に詳しいマーケット関係者は、こう語っている。「ゴールドマン・サックスやベア・スターンズにとって、空売り用の株を貸すことは良い収入になります。ですから、naked (裸)shorting(空売り)と分かっていても、それを無視することが多いのです。」

お分かりいただけただろうか。最近空売りがスムースにいかないのは、取調べや罰金を恐れて、大手証券会社が、空売り用の株を貸すことに慎重になったからだ。

空売りに関する、こんな報道もある。オーバーストック・ドット・コムの最高経営責任者、パトリック・バーン氏はロッカー・パートナーズ(ヘッジファンド)を訴えた。理由は、違法なnaked (裸)shorting(空売り)を利用して、ロッカー・パートナーズは、オーバーストック・ドット・コムの株価暴落を企んでいる、というものだ。

少し違った商品市場への参加方法

相場師「森玄」が登場する「赤いダイヤ」は、小豆をテーマにした梶山季之氏の人気小説だ。壮烈な仕手戦物語を読むのは楽しいが、商品市場には暗い話が多い。単に財産を失っただけでなく、自殺してしまった人たちもいる。おかげで、商品市場はギャンブルよりも始末が悪い、というイメージが中々消えない。

こんな事実がある。2005年、米国株式市場の尺度になるS&P500指数は4.9%の上昇だった。しかし、大豆は+12.1%、砂糖+22.1%、それに退屈な綿でさえ5%の伸びを記録した。株よりも成績が良いなら、商品市場へのうまい参加方法はないものだろうか?そんな質問をする、株投資者たちが最近増えている。

好調な商品市場の一因は、世界経済の急伸だが、特に中国の成長が際立っている。2005年度、アメリカのGDP(国内総生産)は+3.5%だったが、中国はほぼ10%増の+9.9%だ。これだけの急成長だから、中国が需要するオイル、鉄、銅、綿などの原燃料が大幅に増えている。

需要が急騰しているなら、生産を増大させれば良いわけだが、オイルや金属はそう簡単にことが運ばない。新しい油田や鉱山の開発には、かなりの年月と多額な費用が必要になる。だから、既に3年間に及ぶ上げが展開されているエネルギー、金属市場だが、アナリストたちはまだ強気な姿勢を崩さない。

最も直接的に商品市場へ参加する方法は、商品先物口座を開設することだ。株と違って、商品先物は期限付きだから、もしトウモロコシの12月限を買った場合なら、必ず期限前に売ってポジションを整理することが必要だ。もう一つ注意したいのは、先物取引には、口座資金以上の損を出す可能性がある。トウモロコシの先物を1枚買うには、たった338ドルの資金が口座にあれば良い。しかし、トウモロコシが1セント下がっただけでも、口座資金は50ドル減ってしまう。正にこれが、商品市場に悲惨な話が多い主要原因だ。

直接商品を買うのは、あまりに危険が高すぎる。そこで注目されているのが、商品先物専門のミューチュアルファンドだ。株にもミューチュアルファンドがあるように、プロに資金を任せて利益を上げることが狙いになる。エネルギーや金属にアナリストが強気であることを上記したが、それらに焦点を合わせたファンドに次のようなものがある。

USグローバル・グローバル・リソーシズ:先月の成績は+5.8%。5年間では+329%。
RSグローバル・ナチュラル・リソーシズ:先月は+2.2%。5年間では+211%。
IVYグローバル・ナチュラル・リソーシズ:先月は+7.6%。5年間では+194%。
ヴァン・エック・グローバル・ハード・アセット:先月は+3.9%。5年間では+168%。 

商品ファンドの欠点は、多くの会社が、ヘッジファンドのように高額な最低資金(10万ドル)を要求することだ。それでは、一般投資家はどうしたらいいだろうか?投資コラムニストの、ジョン・ワゴナー氏はこんな提案をする。「株価収益率を考慮すると、これは危険性の高い投資であることを、最初に断っておきます。商品先物が取引される、シカゴ商品取引所は、ニューヨーク証券取引所に上場されているので、株を買うことができます。ですから、これは商品ブームをテーマにした、投資方法の一つです。」

人気上昇中、天候先物市場

先ず天気予想。月曜のニューヨークは晴れ時々曇り。最高気温は37度、そして最低気温は28度だ。まるで真夏のような温度だが、アメリカは華氏だから、摂氏に直すと最高は2度、そして最低はマイナス2度になる。これで寒さを感じていただけるだろう。

昔の子どもたちは、ゲタを蹴り上げて天気を占った。首尾よく歯を下に着地なら晴れ。ひっくり返って、歯が上になってしまったら雨だ。天気に興味があるのは、子どもだけではない。大人だって、高価なレーダーや人工衛星を使って、正しい予測に力を入れている。

天気予報を単に聞き流すだけでなく、これを使って儲けることができないだろうか?意外と知られていないのが、天候相場の存在だ。ギャンブルのような話かもしれないが、1999年以来、シカゴ・マーカンタイル取引所では、天候をベースにした先物が取引されている。2000年には、たった87枚(コントラクト)しか出来高がなかったが、2001年は131枚、2002年は4446枚、そして2005年は86万7000枚に上昇した。

金額に換算すれば、2004年22億ドルだった取引高は、2005年360億ドルに達し、約16倍の成長ぶりだ。ファースト・エナーキャストの、アグベリ・アメコ氏は、こう語っている。「天候に左右されない企業はありません。多かれ少なかれ、皆なんらかの影響を受けます。ですから、天候の先物はリスク回避対策として有効です。」

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)によれば、米国経済の20%が、直接天候に結びついているという。農業従事者にとって、天候は致命的なダメージを与えることがある。ビルの建設も、竜巻などに襲われたら大変だ。先週のように、大雪が続けば小売店の売上は下がる。ハリケーンのおかげでオイルが急騰したが、シカゴ・マーカンタイル取引所のアラン・ショーンバーグ氏は、エネルギー業界にとって、天候先物は必需品だ、と指摘する。

取引されている天候先物は、気温(華氏)が基本になる。アメリカ国内の市だけでなく、対象になるのは世界29市の気温だ。気温指数にはHDD(暖指数)と、CDD(冷指数)の二つがある。1ポイントが20ドルに相当し、もしHDD指数の11月限が208なら、この価値は4160ドルになる。

ヘッジファンドも、天候先物を利用している。予想以上に冷え込んだ12月、春のような1月、そして今月は大雪だから、天然ガス市場が大荒れになった。12月13日、天然ガスは15ドル55セントの高値を記録したが、今日の値段はたったの7ドル15セントだ。普通なら口座に大きな穴が開いてしまうが、天候先物が適切に危険を回避してくれたわけだ。

ベテラン先物トレーダー、ケビン・カー氏は、こんな見方をしている。「個人トレーダーは、いつもホットなマーケットを探しています。きっと天候先物市場は、多くの個人トレーダーを集めることになるでしょう。」アメコ氏(ファースト・エナーキャスト)も、5年以内に天候先物市場は、天然ガス市場と同程度の規模になることを予測している。誰にも身近な天候、はたして株のような人気商品になる日が来るのだろうか。

ここから3月27日までが面白くなりそうなマーケット

連銀はあと何回金利を引き上げるつもりなのか?議会で証言するバーナンキ氏(連邦準備理事会議長)に向けられた、率直な質問だ。「あと2回で終了です」、とは言わなかったが、バーナンキ氏はこう回答した。「短期金利に関しては、二つの間違いが起きる可能性があります。一つは上げ過ぎてしまうこと、もう一つは中途半端な上げで止めてしまうことです。」

ケンタッキー選出の、ジム・バニング上院議員が指摘したことだが、長期にわたる行き過ぎな金利引き上げで、連銀は米国を不景気にしてしまったことが何度かある。だから今回も同様な悪結果になるのでは、とバーナンキ氏に疑問を投げた。「実は、私も同じ心配をしているのです」、と言ってくれたら面白かったが、実際は全面的に前議長グリーンスパン氏の方針を肯定して、更なる利上げが必要であることを示唆した。

ほとんどのアナリストやエコノミストは、3月27、28日の連邦公開市場委員会で、短期金利は4.75%に引き上げられることが確実と読んでいる。それほど米国経済は強く、悪性インフレの危険があるのだろうか?最近の状況を見てみよう。

1月の小売売上は2.3%の上昇を記録し、アナリストが予想していた+0.9%を大幅に上回った。クリスマスセールが期待された12月は、たった0.4%増という冴えない結果だった。度重なる金利引き上げが効き始め、いよいよ経済は冷えこみ方向、と結論したエコノミストも多かったが、1月の売上がそんな見方を打ち消してしまった。また、1月の小売売上を去年の同時期と比べると、なんと10%の上昇だ。個人消費は衰えるどころか、更に弾みがついたわけだ。

2005年第4四半期GDP(国内総生産)は、予想外に少ない+1.1%だった。しかし、アナリストたちはこの数字が、2月28日に上方修正される可能性があると言う。最初に発表された数値には、明らかに全てのデータが含まれておらず、+2%以上の修正になることもありえるようだ。2006年第1四半期のGDPは、既に2005年度の第4四半期を上回ることが予測されているから、上方修正の有無はどうでもいいことかもしれない。

バーナンキ氏も議会で、米国経済は着実健全に成長している、と証言しているから、3月の利上げは間違いなし、そして5月の利上げは、ほぼ確実といったところだろう。ここで注目されるのが、去年の終わり頃2006年度後半に経済冷えこみを予想していた多くのアナリストが、見方を上向きに変更してきたことだ。そのため株式市場に対する考え方もやや強気になり、極端な悲観論が聞こえなくなっている。

バーナンキ氏が言うように、米国経済が健全な伸びを示しているなら、株は買える。現に、利上げが悪影響になる金融銘柄が先を見越したように積極的に買われている。バーナンキ氏の証言も終わり、上記したように次の連邦公開市場委員会は3月27日だから、まだ1カ月以上先の話だ。おまけに決算シーズンも終了しているから、投資者たちは割り切って買うことができる。もちろん、1カ月という条件があるから長期投資に向いたマーケットではない。売り叩かれた金鉱株、オイル株の反発狙い。あるいは、エネルギー価格下落で好調な運送運輸株買い。面白そうな1カ月になりそうだ。

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