US Market Recap

上げ相場が見えなかった投資者たち

なんでいつもこうなのだろう、と経済コラムニストのチャック・ジャフィー氏は溜め息をつく。「株式市場は天井を形成しているかもしれない今日、テレビでは何に投資するべきかが盛んに討論されています。雄牛の群れは、とうに目の前を走り去ったのですが、今になってやっとマスコミはブルマーケットに気がついたようです。」

えっ、米国市場はブルマーケットだったの?と言う人のために、ジャフィー氏はこんな説明をしている。「過去3年間を振り返ってみましょう。ほぼ全ての株式指数は、2003年3月に底打ちになりました。それ以来、小型株指数のS&P600は120%の上げ、大型株指数のS&P500は70%の上昇です。以前記録した5000ドルには、まだほど遠いですが、ナスダック指数も2003年から80%以上の伸びです。」

投資アドバイザーの、クレッグ・キャラハン氏はこう述べている。「今回のブルマーケットは、90年代のブルマーケットとは違った性格です。90年代は、収益が無くても、成長株というだけで株価は暴騰しましたが、今回は収益の裏付けがあります。エネルギー銘柄が大きく上げましたが、収益も同様な伸びですから、株価が正当評価額から、かけ離れすぎるという現象は起きていません。」

ブルマーケットは、市場全体が超割高にならない限り終了しない。キャラハン氏の意見が正しければ、既に3年が経過する上げ相場には、まだこれからも上昇する可能性が残っている。ジャフィー氏の話に戻ろう。

「現在のマーケット状況を正しく理解することの重要性は誰でも分かっていますが、問題は投資者の心理状態です。熱狂的な90年代のブルマーケットに比べれば、今回の上げは単なる安値からの反発、といった程度にしか見えません。特に90年代のインターネット株を経験した人なら、過去3年間の上げ相場には、何の魅力も感じなかったことでしょう。」

投資心理を研究する、リチャード・ガイスト氏もジャフィー氏に賛成だ。「多くの投資者は、現在のブルマーケットを認めることができません。確かに株式市場は3年間の上げが続いていますが、投資者たちの口座残高は、まだ90年代のレベルまで回復していません。せめて口座残高が元通りになれば、ブルマーケットを信じることができたのですが、現状では上げ相場という実感がわきません。ですから、大衆はサインを待っているのです。最近テレビでは、株の話題を取り上げることが多くなっています。これを買い出動サイン、と受け取る個人投資家が増えることでしょう。」

ガイスト氏は、株式市場の下方調整が近いことを強調しているが、更にこう付け加える。「もし、これから買うのでしたら、過去3年間で大きく上げた銘柄は避けるべきです。一銘柄だけに集中投資するのではなく、資金を分散させることも大切です。」

コーナーストーン・ウェルス・マネージメントの、レス・ナンバーグ氏の意見も記しておこう。「株で儲けた、という話を聞くようになったら、用心しないといけません。歴史を見ると、個人投資者たちは既に大きく上がった物だけを買う傾向があります。それでも最初のうちは利益が出るのですが、常に割高な物ばかりを追いかける結果になってしまいます。」

90年代のブルマーケットは、あまりにも強烈だった。まるでスペースシャトルが発射するような勢いだったから、やはり今日のマーケットでは物足りなさを感じてしまう人が多いのだろう。どちらにしても、上げが3年続いたことは事実だ。ガイスト氏が言うように、そろそろありそうなプルバックに警戒したい。

飛行機と昇格

マーシー・スミスさんが会社を辞めたのは、飛行機恐怖症が原因だった。USAトゥデイによれば、2年前、スミスさんはフィラデルフィアでの会議に出席するため、アトランタで飛行機に乗った。席についたところまでは良かったのだが、やはり怖くてたまらない。結局パニック状態に陥ってしまい、スミスさんは飛行機から逃げ出してしまった。

CNN、ギャラップ社、そしてUSAトゥデイの調べによると、27%の成人が飛行機に乗ることに何らかの恐怖を感じ、9%が極度の恐怖を感じる、と回答している。飛行機恐怖症のために、多くのアメリカ人が昇給のチャンスを逃しているのは事実だが、企業側も被害を受けている。本当ならAさんを重要な商談に送りたくても、Aさんの飛行機恐怖症がそれを許さない。代わりにBさんを起用することになるが、Aさんほど専門知識が無い。これでは、商談が難航する可能性がある。

2001年9月11日、テロリストにハイジャックされたジェット機が、ニューヨークの世界貿易センターに体当たりした。この事件を境に、飛行機での旅に不安を感じる人が増えたが、こんな事実もある。「9月11日以前は、上司に飛行機恐怖症を打ち明ける人は、ほとんどいませんでした。しかし、テロを理由にすることで、飛行機恐怖症は正当化され、遠方への出張を簡単に免れることができるようになりました」、と不安障害協会のジェリリン・ロス氏は言う。

トニー・コーンハイザー氏も、飛行機恐怖症に苦しむ一人だ。氏はスポーツ・ジャーナリストだから、場所がどこであろうと、競技場に行かなければならない。ニューヨーク、ダラス、シカゴ、とフットボールの試合を追うこともあるようだが、コーンハイザー氏は、会社から特別に手配されたバスで移動している。飛行機ならロサンゼルスからニューヨークまでは約5時間15分ほどだが、バスだと4日はかかるから大変だ。

ジェリリン・ロス氏は、全ての飛行機恐怖症に悩む人たちは、精神医などの専門家に相談することを勧めている。絶対に治るという保証は無いが、カウンセリングやセラピーを繰り返すことで、ほぼ90%の人たちが、飛行機に乗れるようになるようだ。

ジョンズ・ホプキンズ大学のアラン・ラングリーブ氏によれば、飛行機恐怖症が仕事に支障を来たさない限り、専門医が利用されることはない。「このビジネス会議に出席しなかったら昇進できない。大事な社員教育だから、行かないと会社での地位が危なくなる。皆そんな切羽詰った状況になって、初めてカウンセラーに会う決心をします。」

さて、ここで話を戻そう。飛行機から逃げ出したスミスさんは、上司にこう連絡した。「航空会社の手違いで、フライトはオーバーブッキング状態でした。私の予約も取り消されてしまい、会議に行くことができませんでした。」結局これで、スミスさんと会社の関係がギクシャクしてしまい、辞表を提出することになったわけだ。その後スミスさんは、カウンセリングやセラピーを受けて、現在は違う業界で仕事をしている。まだ飛行機は怖いようだが、もうパニック状態に陥ることは無くなった、とスミスさんは言う。

不動産業界冷えこみがアメリカを不況にする?

ニック・バヨニス氏が、不動産セールスマンを辞めたのは1年前だ。ロサンゼルスの住宅は、過去4年間で140%以上の急騰だから、高収入を夢見て多くの人たちが不動産業界に転職した。しかし、金利上昇で住宅市場は下降が始まり、2月のロサンゼルス地域住宅売上数は、ここ5年間で最低の水準に落ち込んだ。「永久に不動産の好調が続く、とは思っていませんでしたが、本当に良いタイミングで辞めることができました」、とバヨニス氏は言う。

住宅市場の下向きが顕著になった今日、単に不動産セールスマンだけに限らず、多数の不動産関連職が減少しそうだ。USAトゥデイによれば、過去4年間で最も新規雇用が多かったのは不動産関連企業であり、2005年末現在、9.8%に当たる労働者人口が不動産関連企業に就業している。

まだどの程度、米国住宅市場が落ち込むかは分からないが、アメリカを不況から救った不動産だけに、この業界の長期低迷は米国経済に悪影響だ。先月、ワシントン・ミューチュアルは、10の不動産ローンセンター閉鎖を発表した。このため、2500人が職を失う結果となった。去年の11月には、アメリクエスト(不動産ローン会社)も1500人の人員削減を実施している。

ウェルズ・ファーゴー銀行の、スコット・アンダーソン氏はこう語る。「不動産業以外からの雇用創出が伸びないと、アメリカ経済は2007年に不況に襲われる可能性があります。雇用創出率の低下は、個人消費下落に結びつきますから、企業利益も最終的には減少です。」

先月発表された中古住宅販売件数は、5カ月連続の下落となった。住宅建築会社のKBホームズやトール・ブラザーズも、新築住宅需要が減少していることを認めている。エコノミストの見方によれば、今年の住宅販売数は去年のレベルを8%ほど下回ることになりそうだ。

不動産セールスマンのほとんどが、手数料収入に頼っているが、今年は厳しい年になることが予想されている。全米不動産業協会のデータによると、住宅市場が上向きなら、経験が2年までの新人セールスマンの平均手数料収入は年間で12852ドルある。(それ以上の経験年数がある場合は47187ドル)アメリカには、現在260万の不動産セールスマンがいるというから、生存競争も激しくなりそうだ。

ワシントン・ミューチュアルやアメリクエストの例で分かるように、住宅売上が下向きだから、不動産ローン業者も辛い状況だ。レストラン経営をやめて、2002年、不動産ローンブローカーに転身した、トニー・ガウチャー氏の話を聞いてみよう。「住宅は異常な勢いで売れていました。たとえ住宅を購入しない人でも、低金利でしたから、住宅ローンの借り換えが盛んでした。しかし、毎月のように引き上げられた金利のおかげで、去年の夏から不動産ローンビジネスは完全に干上がってしまいました。」

こう書いてくると、アメリカ不動産はお先真っ暗のようだが、JPモルガンのアンソニー・チャン氏は、米国不動産が暴落することはないと言う。住宅市場は下降が既に始まっているが、商業用ビル建築は逆に伸びている。また、存在する25%の住宅ローンは利率変動型だから、完全にローン借り換えビジネスが無くなってしまったわけではない。どちらにしても、投資者たちは金利引き上げ政策終了を待つ今日この頃だ。

24時間トレードは意味が無い!?

早朝3時から夕方4時まで(ニューヨーク時間)、計13時間の株トレードが実現する可能性がある。ニューヨーク証券取引所は、既に報道されているように、ロンドン証券取引所の買収に乗り出した。ナスダックもロンドンに興味があるようだから、ニューヨークはボヤボヤしていられない。国際化する証券市場に備えて、フランクフルト証券取引所とパリ証券取引所の合併も計画されているようだ。

今日、国際大型企業の株は世界の取引所で売買できる。例えば、ニューヨークマーケット終了後、IBMに悪材料が出ると、早速ホンコン市場でIBMが大きく売られる。あまりにも下げが急激なら、ニューヨーク市場が始まる前に、IBMは底打ちになる可能性があるから、トレーダーたちは、ロンドン市場でIBMに買いを入れる。アメリカでは、深夜勤務の社員がIBMの異変に気がつき、ファンドマネージャーに連絡する。起こされたマネージャーは、ロンドンやパリに電話をしてIBMの買いを命ずる。しかし、ニューヨークがロンドンの買収に成立すれば、アメリカのファンドマネージャーは、海外支社を通さなくても、簡単にIBMが買えることになる。

合併や買収で、大きな国際証券取引所が誕生するば、単に13時間だけでなく、為替のように株も自宅から24時間トレードすることができる。今では、オンライントレードなど当たり前になっているが、10年前にオンライントレードを利用する個人投資家は少なかった。これと同様に、24時間の株トレードも、近い将来当然になるかもしれない。

マジェスティック・リサーチ社の、ダグ・アトキン氏はこう語っている。「24時間トレードを実現するための、テクノロジーは既に存在しています。理論上、国際的な証券取引所はロンドンや東京で取引されている株を自宅から簡単に売買することが可能になりますが、現実的な問題は、はたしてどの程度そんな需要があるかということです。」

24時間トレードは意味が無い、という人たちは次のような点を指摘する。今日、アメリカには時間外取引があるから、本当に売買したければ寄付きまで待つ必要はない。だが現実には、時間外取引の出来高は通常取引の2%にも満たない。だから、たとえ24時間トレードが実現しても、積極的な利用者は現れない、というわけだ。

米国の証券業界は、24時間トレードにあまり乗り気ではない。ニューヨーク証券取引所は、開始時間を1時間早めることを提案しているが、証券会社からの賛成が得られない。ニューヨーク時間の9時半に取引が始まるが、これは西河岸の朝6時半だ。1時間早まれば、社員は5時半前に出勤しなくてはいけない。現行の6時半でも早すぎるのに、5時半などもってのほかだ。

それなら1時間早めるのではなく、終了時間を1時間延ばして5時にするのはどうか?このアイディアも人気がない。特に、ニューヨーク証券取引所の職員が大反対だ。なんでも、ビュッフェ付きの最終列車(コネチカット州グリーンウィッチ行)は4時45分だから、1時間の延長は不都合ということらしい。24時間トレードは、やはり意味が無いのだろうか?

ハリケーンと材木需給

世界的なカカオ豆不足だ、と経済コラムニストのケビン・カー氏は言う。カカオ豆は、ココアやチョコレートに欠かせない原料だが、アジア太平洋諸国でチョコレートの人気が急上昇している。毎年25%の割合でチョコレート需要量が増えているようだが、最も伸びているのが毎年30%増の中国だ。

既にチョコレート製造業者は砂糖の値上がりに直面しているが、今度は肝心なカカオ豆生産者が、アジアでの需要に追いつきそうもない。オイル、ガソリン、セメントなどの大量消費で知られる中国だが、いよいよチョコレートも主要消費リストに入ったようだ。

カカオ豆の60%は西アフリカで生産されるが、政府からの補助金が大幅に削られ、カカオ豆以外の農作物に切り替える農業経営者が続出している。また、ブラック・ポッド病と呼ばれる菌がまん延し始め、カカオ豆の生産量に大きな悪影響を与えそうだ。

これだけ需給がアンバランスなのだから、カー氏は商品市場でのカカオ買い、そしてハーシーズ(HSY)のようなチョコレート会社への投資を提案している。

需給という言葉で思い出すのが、2005年8月、メキシコ湾岸州を襲ったハリケーン・カトリーナだ。破壊された家屋数は30万にも及ぶから、住宅建築会社が忙しくなる。柱や床には木材が使われるから、注目は材木先物市場だ、という声が多かった。

それから6カ月の月日が流れたが、材木市場が急騰した、というニュースは未だに聞こえてこない。なぜ材木は上がらなかったのか?ナショナル・フューチャーズ・アドバイザリー・サービスのジョン・パーソン氏はこう語る。「メキシコ湾岸州の再建は長期計画です。一斉に全ての地域で建築が始まるわけではありませんから、急激に木材の需給バランスが崩れることは起きません。また、直ぐに家を建てたくても、多くの被害者は保険会社や政府との交渉に難航し、いつ資金が手に入るかが分からない状態です。」

ハリケーンが材木市場に影響を与えなかったのだから、材木市場を動かす一番の要因は何だろうか?「北米で木材需要を左右するのは住宅着工数です」、とランダム・レンクス社のジョン・アンダーソン氏は言う。米国住宅市場は冷えこみが始まり、木曜に発表されたデータによれば、2月の住宅着工数は7.9%減だった。

不動産が下向きになった今日、積極的に材木を買うトレーダーは少ない。アナリストのジム・ワイコフ氏の説明を聞いてみよう。「現在の材木市場はベアマーケット、と言うことができます。しかし、もし300ドルを割ったとしても、そこから更に大きな下落は無いと思います。どちらかと言えば、これからは300ドルと380ドルの間で動く、横ばい相場になりそうです。」

カカオ、材木、どちらも商品市場で売買できるが、株式市場と商品市場の決定的な違いは何だろうか?著名トレーダー、ラリー・ウィリアムズ氏の言葉を記しておこう。「私たちは株が無くても生きて行けます。しかし、大豆、オイルなどの商品には本物の需要と需給が存在します。大袈裟な表現をすれば、商品市場は本物のマーケットです。」

卵子提供者と株

卵子を提供する大学生が増えている。もちろん、女子大生ならだれでも良いというわけではなく、優秀な成績、そして平均以上の容姿などの条件が付く。USAトゥデイによれば、1回の卵子提供で2000ドルから1万ドル(23万4000円ー117万円)が手に入るから、学費稼ぎの一手段として学生の間で人気が上がっている。

アメリカで不妊治療ビジネスが誕生してから、約30年が経過した。今も変わらないが、このビジネスで最も重要な事は、卵子提供者を獲得することだ。しかし、インターネットが発達した今日、卵子提供者探しがより活発になった。「私たちは、赤ちゃんを売買しているのです」、とハーバード大学教授、デボラ・スパー氏は現状の改革を呼びかける。まるで卵子がネット上でオークションされているような状況だから、スパー氏は厳しい規制を提案している。

卵子を提供する場合、先ず提供者は健康診断に合格しなければならない。肉体的そして精神的な問題が無い、と判断された後、提供者は約1カ月間ホルモンを増強させるための注射を受ける。その結果、1回で10から15の卵子摘出が可能になる。

デボラ・スパー氏が主張するように、卵子提供は生命にかかわる事だけに、単にビジネスと割り切ることができない。倫理的な問題でもあるから、感情的な議論にもなりやすい。とにかく簡単に結論が出ないのだが、とうとう政府も動き始めた。

先日、アリゾナ州下院議会は、卵子提供者に対する支払金の禁止を可決した。まだ上院からの認可が必要だが、共和党のボブ・スタンプ氏は、こう述べている。「不妊治療業界は、若い女性を利用しているだけです。多くの学生は、多額の学生ローンという借金があります。そんな弱みに、業者たちはつけこんでいるだけにすぎません。」

さて、現在どんな卵子提供者が一番求められているのだろうか?正解はアジアの女性だ。例えば、クレッグズリスト(オンライン・サイト)には次のような募集がある。「求む。21才から25才のアジア女性。身長は155センチ以上。トップレベルの学校成績必須。報酬は1万ドル。」

中年の男性は、残念ながら卵子提供者になることはできない。だが、不妊治療産業ブームに乗ることはできる。さっそく人気株番組「マッド・マネー」の司会者、ジム・クレーマー氏の意見を聞いてみよう。

「不妊治療と聞いて直ぐ思いつくのは、ニューヨーク証券取引所に上場されているセロノ社(SRA)です。不妊治療だけが専門の会社ではありませんが、セロノはジュネーブに本拠地を置くバイオテクノロジー企業です。ウォールストリートのアナリストたちには人気の無い銘柄ですが、セロノの収益は着実に成長しています。魅力的な会社ですから、買収ターゲットになる可能性もありえます。」

先進国のほとんどは、卵子提供者に対する支払金は違法だ。米国と国境を共有するカナダも、卵子提供者は支払いを受け取る事が禁止されている。そんな状況だから、報酬を目当てにカナダからアメリカに若い女性が殺到しているという。

鳥インフルエンザと豚肉

アラバマ州で狂牛病が報告された。そしてこのニュース直後、農務省は鳥インフルエンザに対しての準備を、本格的に進めていることも報道された。狂牛病や鳥インフルエンザは、単にレストランだけの問題ではない。サンダーソン・ファームズは鶏肉製造加工業者だが、今年に入ってから株価は33%の下落だ。牛肉鶏肉製造加工業者のタイソンも22%程安くなっているから、投資者は胃が痛むことだろう。

全ての肉類がダメなわけではない。現に、豚肉ソーセージで有名な、ボブ・エバンズの株価は1月から28%の上昇だ。去年ナスダック市場で取引が始まった、豚販売業者プレミアム・スタンダード・ファームズは13%の伸びを見せている。

AP通信によれば、「そろそろ渡り鳥の季節ですから、向こう数カ月間以内に、米国の鶏が鳥インフルエンザに感染する可能性があります」、と国土安全保障長官のマイケル・チャートフ氏は語っている。また、アラロン・トレーディングのモルガン・ペイスリー氏は、こう警告する。「鳥インフルエンザは、本当にアメリカを襲うだろうか、というのは正しい質問ではありません。鳥インフルエンザの鶏への感染は時間の問題です。」

世界保健機関の資料によると、2003年以来、鳥インフルエンザが人間に感染したことは175回あり、96人が死亡している。米国の歴史を振り返ってみると、人間への感染を防ぐために、1983年から1984年の間に1700万羽の鳥が殺された。これに費やされた経費は6200万ドルに及んだ。(実際に殺された鶏の数は不明)

アメリカは世界最大の鶏肉生産国であり輸出国でもあるから、鳥インフルエンザの発生によって受ける経済的ダメージは大きい。「鶏に鳥インフルエンザがうつるような事態が発生すれば、アメリカの養鶏業は壊滅の可能性があります。鶏だけでなく豚肉も取り扱っている業者は生存できますが、鶏だけに頼っている業者は生き残ることが難しいと思います」、とペイスリー氏は言う。

アメリカは、デンマークとカナダに次いで、世界第3位の豚肉輸出国だ。2005年、アメリカは110万トン(史上最高)の豚肉を輸出し、輸出量は15年連続で伸びている。

既に狂牛病で牛肉は不安な状態だから、実際に鳥インフルエンザが鶏に感染なら、米国内での豚肉需要は爆発的に増大することだろう。となれば、上記したボブ・エバンズやプレミアム・スタンダード・ファームズは、まだまだ上がるのだろうか?そして、サンダーソンとタイソンは暴落するのだろうか?アナリストたちの意見を要約しよう。

2003年の狂牛病騒動では、マクドナルドやアウトバック・ステーキハウスが投げられた。マクドナルドと同業のウェンディーズも売られたが、2003年5月20日に売った人たちは後悔したことだろう。なぜなら、ウェンディーズは2003年、37%の上昇を記録している。

タイソンとサンダーソンは既に悪材料が織り込まれ、株価はほぼ下げるところまで下げている。割安な株価だから、S&P社のアナリストはタイソンに買い推奨を出している。

ボブ・エバンズが買われているのは、狂牛病や鳥インフルエンザが真の原因ではない。アメリカでは、豚肉が生産されすぎ値段が安い。これは豚肉ソーセージメーカーのボブ・エバンズに好都合であり、高利益につながったわけだ。

埃をかぶった有望銘柄

物置に埃だらけになったタイプライターがあった。隣には、カセットテープレコーダーや白黒テレビもある。更に奥を見れば、3カ月と乗らなかった自転車、大学時代に使った教科書、それに古雑誌に古新聞、なぜ捨ててしまわなかったのだろう。スペースを無駄にしているだけだ。まるでゴミの山だが、はたしてこの中に価値ある物が埋もれている可能性があるのだろうか?

「株の世界にも、物置と同様な事が起きます」、と言うのは投資コラムニストのリック・ムナリズ氏だ。証券取引所に上場されている、全ての銘柄が注目されているわけではない。理由は様々あるが、いったん投資者に嫌われてしまうと、その銘柄は忘れ去られ、物置の古新聞のように蜘蛛の巣に覆われてしまう。しかし、だからといって埃をかぶった株は投資対象にならない、と断言することもできない。ムナリズ氏の話を聞いてみよう。

「株式市場の歴史を振り返ってみると、見捨てられていた株が復活することは頻繁に起きています。ですから、人々から見向きもされず低迷が続く株は、単に次のチャンスを待っているだけです。

忘れ去られている株には二つの特徴があります。先ず、現在の株価が帳簿価額以下で取引されています。もう一つは、予想される一株利益をもとに計算された株価収益率は16以下です。今日、これら二つの条件を満たす銘柄は66ありますが、4つ紹介しましょう。

PCコネクション(PCCC):2005年度は、ガッカリな内容でした。売上は7%の上昇でしたが、一株利益は逆に33セントから18セントに減少です。現在の株価収益率は15.6ですが、来年度の収益予想を使って出した株価収益率は10です。PCコネクションが上向くには、IT関連製品の売上上昇が鍵です。

ペリー・エリス(PERY):株価収益率は9.2のかなり低い水準です。男性用スポーツウェア専門店、と聞いたら冷たいものが背筋を走るかもしれませんが、ペリー・エリスは着実に成長しています。

ボーダフォン(VOD):大手携帯電話サービスのボーダフォンですが、1999年以来、一株利益は赤字が続いています。経営陣の手腕を疑問視する人たちもいますが、キャッシュフローは健全な状態です。また、買収される可能性もありますから注目したい一銘柄です。

REXストアズ(RSC):大手ベスト・バイと同業種の家電小売業者です。REXストアズは、小さな市や町を中心に224の店舗があります。株価純資産倍率はかなり魅力的ですから、ベスト・バイによる買収もあるかもしれません。

人気が無いだけで、その株をゴミと判断するのは早すぎます。どんなに埃をかぶった株でも、それに価値を見出すことができるなら、恐れずに投資することです。忘れないでください。大化けする株は、最初から人気があったのではありません。ゴミの中から宝を掘り出すのは、長期投資の大きな楽しみです。」

注:上記4銘柄は買い推奨ではなく、ムナリズ氏が提案する投資アイディアであることを強調しておきたい。

ソーシャル・ネットワーク・サイトはビジネスにならない!?

人に言えない事を日記に書いたのは、インターネットが発達する前の子どもたちだ。現代の子どもは、親にも兄弟にも知られたくない秘密を、マイスペース・ドット・コムで公表する。シャノン・サリバンさん(14才)も、マイスペース・ドット・コムを頻繁に利用する、ソーシャル・ネットワーカーの一人だ。

しかし、シャノンさんは大きな誤りに気がついた。楽しみながら、色々な情報をマイスペース・ドット・コムで他の人たちと交換してきたが、シャノンさんは、あまりにもプライベートな事をサイトに載せていた。自分の本名だけでなく、顔写真、住所、生年月日、それに電話番号も公開してしまったから、誰でもシャノンさんの家に行くことができる。「私は自分をとても危険な状態においてしまいました。テレビのニュースで、多くの性犯罪者が、マイスペース・ドット・コムのようなソーシャル・ネットワーク・サイトにアクセスしている、と報道しているのを見ました。怖くなったので、私はマイスペース・ドット・コムに載せた全情報を削除しました。」

ソーシャル・ネットワーク・サイトやブログは、性的犯罪、個人情報泥棒などに悪用されてしまうことがあるが、当然それ以外にもブログが注目される理由がある。例えば、多くの大学は学生たちのブログを監視している。キャンパスで起きる問題の一つに、未成年者の飲酒がある。どの寮で何時にパーティーがある、といった情報はブログで発表されるから、キャンパスポリスは見逃すことができない。 

サラリーマンも、ブログに書く内容は注意した方が良い。ビジネス・ウィーク誌によれば、社員のブログを監視する企業が増えている。実際の社名は挙げられていなかったが、社員を採用する際、就職志望者のブログを調べる企業も存在するようだ。

ソーシャル・ネットワーク・サイトには、毎日膨大なアクセス数があるから、本格的なビジネスに発展できるかもしれない。そんな訳で、ニュース・コープはマイスペース・ドット・コムの親会社を5億8000万ドルで買収した。ソーシャル・ネットワーク・サイトの収入源は広告だが、フォーレスター・リサーチ社のクリス・チャーロン氏は、こんな事を語る。「多くのスポンサーは、ソーシャル・ネットワーク・サイトに広告を出すことに消極的です。マイスペース・ドット・コムのコンテンツは、利用者たちによって作られたものです。ですから内容は多岐多様です。これでは、どの程度広告効果があるのか全く見当がつきません。」

ジュピター・リサーチ社の、ネイト・エリオット氏も悲観的な意見だ。「マイスペース・ドット・コムの利用者に共通して言えることは、サイトに対する忠誠心が無い、ということです。ようするに、とても移り気なのです。一つのソーシャルグループに参加しても、そこに長居することは先ずありません。それに、もっと刺激的な新しいソーシャル・ネットワーク・サイトトが出来れば、直ぐ皆そちらへ行ってしまいます。また、サイトの登録者数を信用するのも間違いです。登録しただけで、全く利用しない人たちが多く存在することも事実です。こんな状況では、広告主は躊躇してしまいます。」

明確なビジネスモデルが存在しないソーシャル・ネットワーク・サイトは、宝くじのようなものだ、とポール・ケドロスキー氏(ベンチャー・キャピタリスト)は言う。「現時点では、ソーシャル・ネットワーク・サイトの将来性に漠然と期待しているだけです。早く誰かが買収してくれないだろうか、これが投資者の本音です。」

あなたはパーマブル、それともパーマベア?

どんなに周りが弱気になっても、いつも強気な投資者がいる。上げ相場はブルマーケット、そして下げ相場はベアマーケットだが、いつも強気な投資家はパーマブルと呼ばれる。二つの単語、パーマネント(永久的)とブル(強気)の合成語だ。あなたはパーマブルだろうか?パーマブルの相場観を見てみよう。

1、マーケットが下がる度に、「これは健康的な修正だ」、と宣言する。
2、横ばいマーケットは、次の上昇相場に備えての休憩だ。
3、企業の収益が、アナリストの予想を下回っても心配することはない。重要なのは、来期の収益に向上が見込めるかどうかだ。
4、自分の持ち株を、「買い」から「売り」に格下げするアナリストは全て間違っている。
5、予想より悪い経済指数発表に拍手喝采する。なぜなら、これで連銀の金利引き上げ政策が終わるからだ。
6、超弱気なアナリストや、エコノミストの意見を歓迎する。マーケットの底では、弱気論が主流になるから、上昇相場開始が近い。
7、持ち株の10%下落は悪いニュースではない。これは、絶好な買いチャンスだ。
8、マーケットの下落は、株の価値を理解できない売り手の責任だ。
9、オイルが60ドルに下がり、これで株が上がると判断する。
10、たとえ逆にオイルが70ドルに高騰し、株式市場に悪影響になっても、マーケットは打たれ強いと自分に言い聞かせる。

パーマブルの反対は、常に弱気なパーマベアだ。パーマベアの相場観を紹介しよう。

1、マーケットが上がる度に、「これは不健全な投機熱だ」、と結論する。
2、どんなに強いチャートパターンを見ても、それは下げ相場における一時的なラリー、と判断する。
3、強気アナリストに対する反論者として、よく株番組に招かれる。
4、強い経済指数はマーケットに悪材料になる。なぜなら、それは金利引き上げにつながる。弱い経済指数も、マーケットに悪材料だ。なぜなら、それは不況を予測している。
5、横ばいは、更なる下落の前に訪れる。
6、ニクソン大統領が、金本位制度を廃止したことを、今でも苦々しく思う。
7、空売りは気にならないが、株を買うと眠れなくなる。
8、1987年の暴落がとても懐かしい。
9、「売り」から「買い」への格上げは、株の分析を知らないアナリストのすることだ。
10、アナリストの発表する強気論は、マーケットにマイナスだ。だれでも天井では強気だから、下げ相場は近い。
11、株価の10%上昇は、大きな空売りチャンスだ。
12、マーケットの上昇は、何も分かっていない素人投資家の責任だ。
13、両親が株の話をしたら、それはマーケットが天井にある証拠だ。
14、だから両親の買った株は、全て空売り対象だ。

さてここで、空売りで有名なヘッジファンド・マネージャー、ビル・フレッケンスタイン氏が語る、空売りの心得を記しておこう。

1、とかく空売りは批判されやすい。しかし、企業による誤魔化しを発見したなら周りからの圧力に屈してはいけない。
2、大衆の持つ強気心理を過小評価してはいけない。
3、連銀の政策には十分注意を払うこと。

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