なんでいつもこうなのだろう、と経済コラムニストのチャック・ジャフィー氏は溜め息をつく。「株式市場は天井を形成しているかもしれない今日、テレビでは何に投資するべきかが盛んに討論されています。雄牛の群れは、とうに目の前を走り去ったのですが、今になってやっとマスコミはブルマーケットに気がついたようです。」
えっ、米国市場はブルマーケットだったの?と言う人のために、ジャフィー氏はこんな説明をしている。「過去3年間を振り返ってみましょう。ほぼ全ての株式指数は、2003年3月に底打ちになりました。それ以来、小型株指数のS&P600は120%の上げ、大型株指数のS&P500は70%の上昇です。以前記録した5000ドルには、まだほど遠いですが、ナスダック指数も2003年から80%以上の伸びです。」
投資アドバイザーの、クレッグ・キャラハン氏はこう述べている。「今回のブルマーケットは、90年代のブルマーケットとは違った性格です。90年代は、収益が無くても、成長株というだけで株価は暴騰しましたが、今回は収益の裏付けがあります。エネルギー銘柄が大きく上げましたが、収益も同様な伸びですから、株価が正当評価額から、かけ離れすぎるという現象は起きていません。」
ブルマーケットは、市場全体が超割高にならない限り終了しない。キャラハン氏の意見が正しければ、既に3年が経過する上げ相場には、まだこれからも上昇する可能性が残っている。ジャフィー氏の話に戻ろう。
「現在のマーケット状況を正しく理解することの重要性は誰でも分かっていますが、問題は投資者の心理状態です。熱狂的な90年代のブルマーケットに比べれば、今回の上げは単なる安値からの反発、といった程度にしか見えません。特に90年代のインターネット株を経験した人なら、過去3年間の上げ相場には、何の魅力も感じなかったことでしょう。」
投資心理を研究する、リチャード・ガイスト氏もジャフィー氏に賛成だ。「多くの投資者は、現在のブルマーケットを認めることができません。確かに株式市場は3年間の上げが続いていますが、投資者たちの口座残高は、まだ90年代のレベルまで回復していません。せめて口座残高が元通りになれば、ブルマーケットを信じることができたのですが、現状では上げ相場という実感がわきません。ですから、大衆はサインを待っているのです。最近テレビでは、株の話題を取り上げることが多くなっています。これを買い出動サイン、と受け取る個人投資家が増えることでしょう。」
ガイスト氏は、株式市場の下方調整が近いことを強調しているが、更にこう付け加える。「もし、これから買うのでしたら、過去3年間で大きく上げた銘柄は避けるべきです。一銘柄だけに集中投資するのではなく、資金を分散させることも大切です。」
コーナーストーン・ウェルス・マネージメントの、レス・ナンバーグ氏の意見も記しておこう。「株で儲けた、という話を聞くようになったら、用心しないといけません。歴史を見ると、個人投資者たちは既に大きく上がった物だけを買う傾向があります。それでも最初のうちは利益が出るのですが、常に割高な物ばかりを追いかける結果になってしまいます。」
90年代のブルマーケットは、あまりにも強烈だった。まるでスペースシャトルが発射するような勢いだったから、やはり今日のマーケットでは物足りなさを感じてしまう人が多いのだろう。どちらにしても、上げが3年続いたことは事実だ。ガイスト氏が言うように、そろそろありそうなプルバックに警戒したい。