US Market Recap

アメリカに不法滞在者は何人いるのか?

国境を完全に封鎖しろ!不法滞在者を強制送還せよ!政府は新しい機関を設けて、海外からの労働者をもっと厳しく監視するべきだ。中間選挙を控えて、移民が今アメリカで大きな話題になっている。不法滞在外国人が、そんなにアメリカ社会に悪影響を与えているのだろうか?

議会で移民法の改正が討論されているが、エコノミストたちは、こんなことを指摘している。たとえ移民規制がおだやかなものであったとしても、それは多くの業種に影響を与えることになりそうだ。特に建築や農業は、賃金の安い海外労働者に頼っているから、移民規制はコスト増大につながる。もちろん、新規制が実施されれば、不法滞在者に取り上げられていた仕事がアメリカ市民に戻るのだから、失業者がある程度減ることだろう。

JPモルガンのチーフ・エコノミスト、アンソニー・チャン氏はこう述べている。「不法就労者が、アメリカ市民から職を奪っている、とよく耳にしますが、たしかに一定の職種にはそういうことがあるようです。しかし、多くの不法滞在者が就いている職は低賃金ですから、ほとんどのアメリカ市民が避ける職業ばかりです。」

とかく移民問題になると、感情的になってしまう人が多いが、今のアメリカには肝心なことが分かっていない。アナリストやエコノミストは、不法滞在者が米国経済に与えている影響を簡単に調べることは不可能を主張するだけで、それ以上先に話が進まない。もし全ての雇主が米国市民と、合法的に滞在する人だけを雇ったら、それは国内総生産にどう影響するだろうか?政府に支払われる所得税も増えるはずだ。しかし、スタンダード・アンド・プワーズ社のデービッド・ワイス氏によれば、そのような数値を弾き出すことは無理だと言う。

先ず、アメリカ政府は正確な不法滞在外国人数をつかんでいない。これでは計算しようにも、何も計算できない。アナリストの推測によれば、現在アメリカには900万から2000万の不法滞在者がいるようだが、これでは幅がありすぎて使いものにならない。

移民研究センターは、もっと厳しい移民法の必要性を説いている。最近出された報告書によると、2000年3月から2005年3月までの間に創出された雇用の、たった9%がアメリカ市民に行ったようだ。「9%という数字だけを見ると少なく感じますが、これを正しく理解するには、2005年までの強い米国経済を把握する必要があります。新しいビルやオフィスが次々と建築されましたから、当然それに伴って多数の清掃員や駐車場係員などの仕事が生まれたわけです」、とハワード・へイギ氏(労働省)は説明する。

現在、890万人に及ぶアメリカ市民が仕事を探している。「もし本当に政府が国境を封鎖し、不法就労者の取り締まりを徹底するなら、平均労働賃金は上昇することでしょう。しかし、雇用者側は高い賃金を払って、米国市民を採用するでしょうか。たぶん、アウトソースが活発になり、わざわざアメリカ市民を雇うことはないでしょう」、とアンソニー・チャン氏は述べている。

移民の国アメリカ、いよいよ本格的に移民法を改正する時が来たようだ。

4月、期待される大型優良株

4月だ。新しい四半期が始まった。過ぎ去った第1四半期を振り返ってみると、S&P500指数は+3.8%を記録し、これは1999年以来の好成績だ。ダウ指数は+3.6%、そしてハイテク銘柄の多いナスダックは6%の上昇となった。

多くのアナリストやエコノミストは、今年後半の米国株式市場に悲観的な意見を発表している。しかし短期的には、まだ買い手が優勢になるようだ。「第1四半期は、なかなか良い結果だったと思います。もちろん、第1四半期の上げを見ただけで、今年全体が上昇マーケットになると単純に結論するのは間違いです。2006年度全体を考慮すると、S&P500指数は、一桁台の成長になると思われます。一桁と言っても1から9までありますが、かなり低い一桁台になることでしょう」、とチーフ・インベストメント・オフィサーのラム・コルーリ氏は言う。

短期的に上昇マーケットが続く理由を、ライフタイム・ファイナンシャル・サービスのポール・レビーン氏はこう説明している。「執拗な金利引き上げが続いていますが、連銀は同時にマネーサプライ(通貨供給量)も増やしています。また、下降が始まった住宅市場も株に好条件になります。不動産投資家たちは、物件を売って得た現金を株式市場へ移動させることを考えています。また、季節的な要因もあります。月の初めや、四半期が開始する第1週めには401K(確定拠出型年金)の資金が大量に株式市場へ流入します。」

ストック・トレーダーズ・アルマナック社の統計によると、ダウ指数にとって4月はラッキーな月だ。1950年以来、平均すると、ダウ指数は4月に1.8%の上昇を記録している。逆にナスダックとS&P500指数は、あまりパッとしないようだから、買いは大型ブルーチップ銘柄に絞った方が良さそうだ。

注目の雇用統計が、今週金曜に発表される。アナリストの意見を総合すれば、熱過ぎず冷た過ぎずの結果になりそうだから、インフレ懸念が一時的にマーケットから消えるかもしれない。

今月の中旬から、いよいよ決算シーズンが始まる。かなり強い収益が報告されるようだから、これもマーケットに好材料になる可能性がある。トーマス・ファイナンシャルは、第1四半期の収益が、去年の同時期を11.3%上回ることを予想している。これが実現すると、11四半期連続の二桁上昇になる。

「企業収益はプラス材料です。問題は10年物国債です。上昇が続く利回りに衰えは見えず、5%に差し迫っています。これは、いつ金利引き上げ政策が終了するかが分からなくなってしまったためです。金利引き上げサイクルが、完全に終了しない限り、企業収益ニュースだけでは買い材料になりません」、とコルーリ氏は語る。

レビーン氏も、こう付け加えている。「また上昇が始まったオイル価格が、株式市場に水を注す可能性があります。先週、金市場が大きく上げましたが、これは投資者たちの強いインフレ懸念の表れです。」

一般的なアナリストの意見を記しておこう。「次のFOMC(連邦公開市場委員会)は5月ですから、まだ先の話です。それまでに、決算だけでなく様々な経済指数が発表されます。マーケットの上げ基調は崩れないと思いますが、かなり荒れることが予想されます。」

あなたのアップルコンピュータ知識に挑戦

アップルコンピュータが誕生してから30年になる。狭いガレージから始まった会社が、今や世界に影響を及ぼす企業になっているのだから、夢は大きい方が良い。ところで、皆さんはどの程度アップルコンピュータをご存知だろうか?さっそくビジネスウィークが出題する、アップルクイズに挑戦してみよう。

1、1976年秋、まだアップルコンピュータはガレージ(自宅の車庫)を本拠地にしていたが、この時点でアップルコンピュータを買収しようとした企業はどれ?(正解は一番下を参照)

A、IBM
B、ナショナル・セミコンダクタ
C、コモドア・ビジネス・マシーンズ
D、NCR

2、アップルコンピュータの初代最高経営責任者は誰?

A、スティーブ・ジョブズ氏
B、マイク・マークラ氏
C、スティーブ・ウォズニアク氏
D、マイケル・スコット氏  

3、スティーブ・ジョブズ氏の兄弟姉妹で、有名な小説家になったのは誰?

A、モナ・シンプソン氏
B、ダン・ブラウン氏
C、トム・クランシー氏
D、アン・タイラー氏  

4、マッキントッシュ開発チームを作ったのは誰?

A、スティーブ・ジョブズ氏
B、マイク・マークラ氏
C、ジェフ・ラスキン氏
D、スティーブ・ウォズニアク氏  

5、未来を予想する最高の方法は、自分で未来を創り上げることだ、と言ったのは誰?

A、ジーン・ルイス・ガッセー氏
B、スティーブ・ジョブズ氏
C、アラン・ケイ氏
D、ジョン・スカリー氏  

6、1985年、アップルコンピュータのコマーシャルに出演した政府関係者は誰?

A、ロナルド・レーガン氏
B、アラン・グリーンスパン氏
C、ウォーレン・バーガー氏
D、ジェラルディン・フェラーロ氏

7、スティーブ・ジョブズ氏、そしてスティーブ・ウォズニアク氏はアップルコンピュータの創始者だが、実はこの二人、アタリ社のためにゲームを作っている。そのゲームとは何?

A、スペースインベーダー
B、Galaga
C、パックマン
D、ブレイクアウト

8、スティーブ・ジョブズ氏は、何回タイム誌の表紙に載った?

A、2回
B、5回
C、7回
D、6回

9、スクルージ・マクダックとは何のこと?

A、スティーブ・ジョブズ氏の長説教がありそうなことを伝える、社員間での暗号。
B、ピクサーが制作した、発表されなかった短編映画のタイトル。
C、Macに初めて登場した画像。
D、これからピクサーが制作する映画のタイトル。

1、正解はC。
マイケル・マロン氏によると、コモドア・ビジネス・マシーンズは、オーナーのスティーブ・ジョブズ氏に10万ドルの買収額を提示した。

2、正解はD。スコット氏は、フェアチャイルド・セミコンダクタの重役だった。

3、正解はA。

4、正解はC。

5、正解はC。この言葉は、まだケイ氏がゼロックスにいるころ言ったようだ。

6、正解は、最近連邦準備理事議長を辞めたアラン・グリーンスパン氏(B)。

7、正解はD。

8、正解はDの6回。

9、正解はC。このキャラクターは、ディズニーが作ったドナルドダックの叔父さん。

グーグルは浮動株数が少なすぎる!?

そんな大金を何のために使うのだろうか?木曜、巨大サーチエンジン会社グーグルは、500万株に及ぶ自社株売りを発表した。既に80億ドルの現金を保有するグーグルだから、この自社株売りが完了すると、現金総額は100億ドルに膨れ上がる。

「たぶん、グーグルは企業買収のために、巨額な資金が必要なのだ。」「そうじゃない、金利が上昇しているから、単に利子稼ぎをしたいだけだ。」とにかく、掲示板、チャットルームでは議論が盛んだ。

なぜグーグルは、自社株売りに踏み切ったのだろうか?パシフィック・クレスト証券のスティーブ・ワインスタイン氏は、こう語っている。「私は、グーグルからの説明で納得しています。他の人気銘柄に比べると、グーグルの浮動株数は少ないのです。ですから、今回の自社株売りは投資者への配慮です。」

4月3日(月)から、グーグルはS&P500指数の一銘柄として取引が開始される。多くのファンドマネージャーは、S&P500指数を構成する銘柄を中心に投資するから、これからグーグルの需要はいっそう高くなる。またプログラムトレードも、S&P500指数の銘柄が狙われるから、グーグルの値動きは更に荒っぽくなることだろう。

ようするにグーグルは、月曜までにS&P500指数仲間入りの準備を済ませたかったようだ。「今回の自社株売りは現金目当てではありません。グーグルにとって、20億ドルなどいつでも簡単に出せる金です」、とワインスタイン氏は言う。

グーグルがS&P500指数に組み入れられることは、3月23日の取引終了後発表された。翌24日、ある興味深い出来事が起きた。スタイフェル・ニコラスのアナリスト、スコット・デビット氏がグーグルの格付けを、「ホールド」から「買い」に引き上げたのだ。だからどうした?と思われるかもしれないが、デビット氏は大のグーグル嫌いで有名だ。何故ここでグーグルを買う気になったのだろう?少し説明を聞いてみよう。

「収益0でスタートしたグーグルは、たった7年で収益60億ドルの企業に成長しました。同様な結果を達成するために、マイクロソフトは10年の年月が必要でしたから、これは超急成長と言うしかありません。サーチエンジン業界でグーグルは60%の市場を握り、第2位のヤフーは25%ですから、グーグルは圧倒的な強さです。

資金も豊富ですから、グーグルはトップクラスの人材を確保することができます。それにライバル会社からも、優秀な人材がグーグルに流入しています。これからも、次々と画期的なアイディアが発表され、単なるサーチエンジン会社ではなく、グーグルは世界的な情報ネットワーク企業に変身して行くことでしょう。」

もう一つ、デビット氏は、こんなことを指摘している。ほとんどの企業は四半期の収益見通しを発表するのだが、グーグルは一切そういった発表をしない。一株利益や売上予想をしなければならないアナリストにとって、正にグーグルはやりにくい企業だ。プロにも難しいのだから、一般投資家にとって、グーグルは不親切な会社、と言うこともできる。どちらにしても、月曜からグーグルは米国を代表する、S&P500指数の一員だ。

世界的な不動産ブーム

まだ購入するつもりですか?そんなヘッドラインが目に飛び込んで来た。エコノミスト誌の報道によれば、現状では、住宅を買うよりも借りた方が割安になるという。2002年、世界住宅指数は生温い状態だったが、今この指数は多くの国々で沸騰している。更に付け加えれば、既に住宅市場の冷えこみが始まった国もある。

最も極端な下落を見せたのはオーストラリアだ。2003年、住宅価格は19%の上昇だったが、2005年第4四半期、この数値は+2.7%に落ち込んだ。コモンウェルス・バンク・オブ・オーストラリアの発表によれば(実際に売れた価格ではなく、契約書にサインした時点での価格が使われている)、2005年、平均住宅価格は7%の減少となり、地域別ではシドニーが16%の大きな下げとなった。最近また利上げが実施されたばかりだから、住宅市場は更に冷えこみそうだ。

イギリス住宅市場も、去年の夏から下向きになっている。2月終了時点で過去1年間を計ると+10%の結果なのだが、2005年7月から2006年2月で見るとマイナス20%だ。特定地域の物件だけが下げているのではなく、イギリス全体が不調のようだ。

今年に入りスローダウンが報告される米国住宅市場は、2005年、平均住宅価格は11.2%の上昇だった。特に伸びたのは、+20%のカリフォルニア州とワシントンDC地区だ。前連邦準備理事議長、アラン・グリーンスパン氏は不動産バブルを懸念していたが、全米不動産業協会の調査によれば、25%の物件は投資目的で買われ、オーナーが住むために購入されたわけではない。

ヨーロッパ大陸に目を移そう。フランスの平均住宅価格は16%増、そしてスペインがプラス17%だ。イタリア、スウェーデン、それにベルギーは10%以上の上げだったが、ドイツは下げている。ユーロ地域全体では、平均住宅価格は12.5%の上昇になり、ヨーロッパ中央銀行の金利政策に影響しそうだ。

オーストラリアとイギリスで住宅市場が冷え込んでいるのは、住宅価格が上がり過ぎ、初めて購入する人たちには困難な水準になってしまったためだ。しかし、借りる場合なら家賃はわずかに上がった程度で、地域によっては下がっている所もある。

エコノミスト誌は「家賃利回り」、という耳慣れないものを計算しているが、アメリカ、イギリス、スペイン、ニュージーランド、それにオーストラリアでは、家賃利回りが3.5%に満たない。これでは不動産ローンの利子以下だから、事実上家賃収入は利益になっていない。特にシドニーの家賃利回りは1%ということだから、オーナーは赤字に近い状態らしい。

それでは、サンフランシスコで80万ドルの住宅を購入して、毎月2000ドルで貸したとしよう。毎年家賃を3%の割合で値上げしていくと、7年後(固定資産税、不動産ローンも考慮)オーナーは12万ドル余分に支払っていることになるから、買うよりも借りた方が割安と結論することもできる。低金利時代なら別だが、金利が上昇しているアメリカやヨーロッパでは、住宅が割高になったようだ。

今年も歴史は繰り返す?

今年度後半、米国経済は減速する、という見方が強まってきた。ということは、持ち株を早々に全て処分した方が良いのだろうか?アメリカ株式市場の歴史をガイドにするなら、向こう6カ月間は舗装されていない道を運転することになるが、その後には強力なラリーが期待できる。

「人によって投資目的が違うように、短期投資型の人もいれば、長期投資専門の人もいます。全体的な相場観を持つことは構いませんが、それだけでポートフォリオ内容を極端に変えてしまうのは間違いです。たしかに、次の数カ月間は難しいマーケットになる可能性がありますから、目標株価に達した物を利食うのは悪くないアイディアです。これで重要な現金が手に入りますから、夏の終わりに予期される底での買いに備えることができます」、とクラーク・キャピタル・マネージメントのハリー・クラーク氏は言う。

ここで過去の様子を振り返ってみよう。大統領の任期二年目は、株式市場が低迷する傾向がある。2006年は、ブッシュ大統領の二期目の二年目だ。更に、スタンダード・アンド・プアーズ社の調べによれば、大統領任期二年目の第2四半期と、第3四半期が特に悪い。

1945年から2005年までの結果を紹介しよう。大統領任期の二年目の第1四半期、株式市場は平均で0.8%の上昇があった。第2四半期はマイナス2.0%、第3四半期は2.2%減、そして第4四半期は+7.6%だ。これが今年も繰り返されることになると、第2四半期が始まる4月から、第3四半期が終了する9月まで、マーケットは下向きになる。そして、秋には嬉しい上げ相場が待っているわけだ。

逆に最も調子が良いのは、大統領任期の3年目だ。第1四半期は+7.5%、第2四半期は+5.3%、第3四半期は1.9%増、そして第4四半期はプラス2.8%だ。

大統領の任期に関係なく、毎年第3四半期は成績がパッとしない。どうしてかお分かりになるだろうか?第3四半期は、7、8、9月の三カ月だから夏休みシーズンだ。機関投資家や、ファンドマネージャーはゴルフコースやヨットの上だから、マーケットは必然的に閑散としてしまう。

今年も歴史は繰り返すのだろうか?米国市場がブルマーケットに入ってから、既に3年が経過した。こんなデータがある。過去100年間で、ベアマーケットは3.3年に1度の頻度で訪れている。とすれば、そろそろ下げ相場が来ても、おかしくない頃だ。「2002年の10月から上げ相場が続いていますが、ほとんど大したプルバックが無いまま、ここまで来てしまいました。例えばS&P500指数ですが、10%以上の下方修正は、最近3年間で一度もありません。ですから、どこかで今までの上げを消化する期間が必要です」、と投資戦略家のサム・ストーボール氏は述べている。

大きな崩れを出すことなく、マーケットが高値圏を維持してこれた理由の一つは、金利引き上げ政策がそろそろ終わる、という仮定があったからだ。しかし、火曜の利上げ後に連銀から発表された声明には、更なる金利引き上げが示唆され、あともう一回で利上げは終わるという一般論が揺らいでしまった。金利、インフレ、経済の減速、やはり下げ相場の準備をした方が良さそうだ。

どんなアナリストの意見に注意を払うべきか?

次はどの業種が注目されるだろうか?下の週足チャートで分かるように、オイル価格の急騰が主な原因となって、エネルギー・セクターが、過去2年間大きな上昇を展開した。

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上昇波動に最初から終わりまで乗るのは難しいが、どうやったら次の人気セクターを見つけることができるのだろう?こんな時、いつもヒントを与えてくれるのが、投資アドバイザーのハリー・ドマッシュ氏だ。さっそく話を聞いてみよう。

「どの株を買うべきか、といった個別銘柄選択が重要視されますが、投資で成功するためには、先ず適切なセクターを選ぶことから始まります。例えば、ここ数年間では平均以下のオイル銘柄が、トップクラスの出版銘柄を上回る好成績を出しています。ですから、下降基調にあるセクターではなく、強いセクターの銘柄を買うことが大切です。

上昇率に違いは生じますが、同セクターに属する銘柄は、株価の動き方がよく似ています。何と言っても同じ業種ですから、企業Aに好都合な条件は、ライバル会社にも良い結果をもたらすことになります。」

ミューチュアルファンドや機関投資家は、多くのアナリストを使ってマーケットを絶えず監視している。次のマーケットテーマをつかむには、どの業種から資金が逃げ出し、どこへ流入しているかを、いち早くつかむ必要がある。情報が揃ったら、あとは将来性の無いセクターから資金を引き上げて、次の主役セクターに資金を移動させるだけだ。これがセクター・ローテーションと呼ばれるものだが、個人投資家にとって肝心なのは、早期段階でセクター・ローテーションに気がつくことだ。ドマッシュ氏の話を続けよう。

「一口にセクターと言っても、そのセクター内の全銘柄が一斉にファンドによって買われるわけではありません。最初に買われるのは、ごく限られた数銘柄だけです。ですから私たちは、特異な動きを示す銘柄に注意を払わなくてはいけません。」

特異な動き、とドマッシュ氏は言うが、これは株価の推移ではなく、ファンダメンタルズに関する二つのことだ。
1、ウォールストリートのアナリストが大幅に収益や売上を上方修正している。
2、最近の収益や売上が、実際にアナリストの予想を大きく上回っている。

ドマッシュ氏によれば、大手証券のアナリストが意見を極端に上方修正すると、ほとんどの場合、株価はつられたように上がる。「もう一つ忘れてはいけないことは、いったん収益が上昇修正されると、他社のアナリストも後を追って、上方修正発表をする傾向があります。」

さて、それでは上記2つの条件に当てはまる上位200銘柄を見てみると、面白いことが分かる。半導体と言えば現在低迷中のセクターなのだが、半導体銘柄に対するアナリストの強気意見が目立つ。実際に名前を挙げれば、クレデンス・システムズ(CMOS)、アシスト・テクノロジーズ(ASYT)、それにウルトラテック(UTEK)などがある。

逆にアナリストの弱気意見が多いのは、インターネット・インフォメーション・プロバイダ、そしてインターネット・ソフトウェア関連だ。例を挙げれば、アプティマス(APTM)、ホームストア(HOMS)、シャンダ・インターアクティブ(SNDA)などだ。

銘柄を選ぶ方法として、ジェームズ・アルチャー氏(投資アドバイザー)は、こんなことを付け加えている。「インフレ懸念、貿易赤字など不安材料の多い今日このごろですから、経済にあまり左右されない業種を選ぶことも大切です。H&Rブロック(HRB)は好例です。経済が落ち込んでも人々は税金を免れることはできません。H&Rブロックは、税金のアドバイスから申告書作成まで全てやってくれますから、経済の浮き沈みに関係なく伸びが期待できます。問題は、現在ニューヨークから告訴されているので、実際に買うのは、判決が出てからになります。」

ある投資家の調査結果

安い所で買って高く売る。それとも、高く買ってより高い所で売る。どちらの方法が儲かるだろうか?そんな質問をするのは、個人投資家のトマス・ブルコースキー氏だ。「私は2000年から2002年のベアマーケットも含めて、高値を更新した勢いのある株だけを中心に投資してきました。多くの人たちは、私のやり方があまりにも危険だと言います。」世の中には、割安株イコール安全という考え方があるが、それは事実だろうか?ブルコースキー氏の話を続けよう。

「1991年から2005年までのマーケットを調べた結果、こんな事が分かりました。ブルマーケットの場合ですが、年間安値からまだ上げが3割以下の株がブレイクアウトすると、平均で38%の上昇がありました。逆に年間高値からの下げ幅が3割以下の株がブレイクアウトすると、36%の伸びがありました。

3割という設定ではあまり結果に差がないので、もっと数字を低くして1割で調べてみました。これもブルマーケットでの例ですが、年間安値から上げ幅が1割以下の株が上放れすると、平均上昇率は42%でした。そして、年間高値から下げが1割以内の株が上放れすると、平均で36%の上昇がありました。

ブルマーケットだけでは全体像がつかめませんから、ベアマーケットでも同様にデータを集めてみました。年間安値から上げが3割以内の株がブレイクアウトすると32%の上昇があり、年間高値から下げが3割以内の株がブレイクアウトすると伸び率は23%でした。年間安値から上げが1割以内の株が上放れすると、平均上昇率は36%、そして年間高値から下げ幅が1割以内の株がブレイクアウトすると23%の上げがありました。」

安値圏ブレイクアウトに、やや軍配が上がりかけているが、ブルコースキー氏は、こんな調査もしている。「ブレイクアウトの失敗率を調べてみました。ブル、ベアマーケットの両方を含めた数字になりますが、年間安値から上げが1割以内の株が上放れした場合、上昇率が20%以下になる確率は23%ありました。年間高値から下げ幅が1割以内の株を見ると、上昇率が20%以下になる確率は40%でした。」

自分の調査結果に、さすがにブルコースキー氏は驚いたようだ。「単なる机上論だ、と反論される方もいると思いますが、安値圏にある株が、一転反発するところで買うのが最も効果的です。チャートパターンとしては、ダブルボトム(二番底)が分かりやすいと思います。また、安値圏でのMACDやRSIの動きには注意を払う必要があります。株価が安値をつけても、逆にMACDが上がるようなら、これはディバージェンスと呼ばれる現象ですから、買いチャンスが近いサインです。」

安値圏で買うと言っても、下落中の株に手を出してはいけない。先ず下げのストップを確認し、ブルコースキー氏が指摘するように、二番底のようなチャートパターンが出来上がるのを待つことだ。よくアメリカ人が口にするが、落下中のナイフを受け取ろうなどと試みてはいけない。

(ブルコースキー氏のレポートは、トレード専門誌でよく見かける)

チャートの中のチャート、それはキャンドルスティック

チャートと言えば、日本ではローソク足チャートが主流になる。しかし、アメリカでは下のようなバーチャートだ。

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全体的な流れは、バーチャートでも確認することはできるが、何かシックリしないものを感じられるのではないだろうか。それとも、慣れてしまいさえすれば、チャートの種類などどうでもよいことだろうか?

証券業界で25年以上の経験がある、スティーブン・ビガロウ氏はローソク足(キャンドルスティック・チャート)の大ファンだ。15年前にローソク足を発見したというから、氏はアメリカでいち早くローソクチャートを取り入れたパイオニア的存在だ。

いったいキャンドルスティックのどこに、ビガロウ氏は引かれたのだろう?氏の話を聞いてみよう。「株式投資の秘訣を、かなり長いこと探し続けてきました。手法に関する本やレポートは、全て読み尽くしたことでしょう。しかし、キャンドルスティックが、一大転換点になりました。ローソク足には、売買のタイミングが明瞭に表れます。ブルマーケット、ベアマーケットは関係ありません。もちろん、ローソク足は株だけに限らず先物市場にも使うことができます。」

ローソクチャートを見慣れた私たちにとって、ビガロウ氏の意見は新鮮な響きがある。氏の話を続けよう。「米相場の時代から、日本ではローソクチャートが使われていたようです。アメリカで一般的なバーチャートと、ローソク足の決定的な違いは何でしょうか?バーチャートの場合、高値と安値ばかりが注目されますが、ローソクチャートは始値と終値に最大の注意が払われます。」

投資心理という言葉があるように、株式市場は投資者の感情に左右される。この大衆心理も、ローソク足には明確に表示される、とビガロウ氏は言う。「キャンドルスティックを観察することで、感情的になった大衆を理解することができるだけでなく、それをトレードに利用することが可能になります。とにかく、先ずキャンドルスティックの読み方を身につけなければいけません。ローソク足は長期投資、スイングトレード、そしてデイトレードにも効果的に活用することができます。」

ここで思い出すのが、アメリカにローソクチャートを紹介したスティーブ・ニソン氏だ。もう15年以上も前の話になるが、先物市場アナリストとしてシアソン・リーマン・ハットンに勤務していた氏は、分析にローソクチャートを利用していることを、同僚や上司に打ち明けたことはなかったという。しかし今日、多くのトレーダーは氏に感謝のメールを送っている。ニソン氏のセミナーや本を通して、米国トレーダーたちは「同時」、「はらみ」などの新しい知識を得た。

ローソク足の利点について、ニソン氏はこう語っている。「バーチャートに応用できる物は、全てキャンドルスティックに適用できます。それだけではなく、ローソクチャートには独特な売買シグナルがあります。同時は既に有名ですが、かぶせ足、切り込み線など例は豊富です。ローソクチャートの最も優れている点の一つは、バーチャートよりも反転シグナルがハッキリと表れることです。」

さて、もう一度ローソクチャートの本を読み返してみよう。

ハワイへ出稼ぎ?

先ず質問から始めよう。アメリカで、最も失業率の低い州はどこだろうか?正解は、観光客に人気のあるハワイだ。1月、全米の失業率は4.7%と発表されているが、ハワイは約半分の2.4%だった。低迷する自動車産業に従事する人には羨ましい話だが、AP通信によれば、現在ハワイは労働者不足に直面している。

企業やビジネスオーナーは、様々な好条件を提示して、人材獲得に必死のようだ。実例を挙げよう。ファースト・ハワイアン・バンクは雇用時に払う支度金を倍にしただけでなく、スポーツクラブの会員券も提供している。サクセス・アドバタイジング社の、べス・ブッシュ氏はこう語る。「職探しをしている人たちにとって、ハワイは夢のような州です。どんな人でも、ほぼ間違いなく簡単に仕事を見つけることができます。」

こんな状況だから、会社側は苦労して雇った社員を失いたくない。昇給、特別手当、そして超過勤務時間には割増賃金を払うなどして、社員の機嫌を取っている。

シングルマザーのジョエル・ブランチさん(27才)も、良い条件で就職することができた一人だ。毎週火曜と木曜に仕事を休むことが認められたから、大学へ通学することに全く支障が無い。「子どもと過ごす時間、それに大学のスケジュールに合った仕事を探していましたが、去年の8月、ジョージズ・アビエイションに就職が決まりました。既に昇給もあり、とても満足しています。」

果物をミキサーでジュースにした、スムージーを販売するジャンバ・ジュースは、こんな求人広告を出した。「支店長求む。契約金1万ドル(117万円)。」この契約金を採用時に受け取るには、会社側に最低3年間の労働期間を約束する必要がある。

「社員の採用、そして保持することがとても困難な状態です。どの会社も創造的な方法を使って、社員のニーズに対応しています」、とファースト・ハワイアン・バンク人事部のアイリス・マツモト氏は言う。

なるほど、ハワイなら直ぐ職が得られそうだ。この際、思い切って行ってみよう、と決心される方もいるかもしれないが、その前にいくつか考慮することがある。住宅市場が過熱しているから、なかなか手頃な価格の物件が見つからない。それなら家を借りよう、ということになるが家賃もやたらと高い。景気が良いから、とうぜん人が集まり、道路はいつも混んでいる。それに年間を通じて観光客も多いから、ハワイ住民にとって交通渋滞は悩みの種だ。

とにかく労働者不足のハワイだから、企業はリストラ関連ニュースに敏感だ。こんな報道がある。デルモンテ社のパイナップル工場は、2008年に閉鎖されることが決まった。この情報をつかんだシェラトン・ホテル・ワイキキは、700人の工場従業員をさっそく将来採用した。

ここで、もう一つ質問。こんな好景気は、はたしていつまで続くのだろうか?

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