US Market Recap

ベテラン・トレーダー、ボルセリノ氏が語る10のルール

既に伝説的S&P500トレーダーとなったルイス・ボルセリノ氏に、ある新人トレーダーが、こんな質問をした。「喧騒とする立会場では、どんな売買方法を実際に使っていたのですか?」オフィスや自宅なら、チャートを分析しながらトレードすることができる。しかし、トレーダーで溢れる立会場では、一々チャートを見ることができない。

「取引ピットでは、勢いに乗った売買が頻繁に行われます。だからと言って、順張りばかりが行われているわけではありません。私自身いつも注意していることは、現在の多数意見と少数意見を冷静に把握することです。極端な言い方をすれば、皆が空売りなら、あなたは反対に買う勇気を持たなければいけません。」逆張りの重要性を説くボルセリノ氏だが、氏には守り続けている10のルールがある。さっそく紹介しよう。

1、金を目的にするな。
儲けることばかりに気を取られ過ぎて、ほとんどのトレーダーには、綿密なトレード計画が無い。先ずチャートを分析して、はっきりとした売買ポイントを設定する。とうぜん利益目標や、損切りの位置もあらかじめ決めておかなければならない。きちんとしたトレード計画無しで、利益を上げるのは不可能だ。

2、感情をコントロールしろ。
どんなに優れたテクニカル分析をしても、実際のトレードで感情に支配されたのでは、せっかくの分析も台無しだ。感情をコントロールできなくては、トレードでの成功は望めない。

3、自分の性格に合ったトレード方法を選べ。
どんなに素晴らしい手法でも、自分の性格に合わなければ使いものにならない。ポジションがあると心配で眠れない人なら、デイトレードに徹するべきだ。

4、うぬぼれるな。
少し成功が続くと、トレーダーは自信過剰になってしまう。その結果、売買はずさんになりつならない失敗を繰り返すことになる。自信を持つのは良い。しかし、うにぼれは破綻への近道だ。

5、トレードに祈りは通用しない。
思惑が外れると、「神様、助けてください!」と祈りが飛び出てしまうものだが、頼れるのは適切なテクニカル分析だけだ。

6、損切りは素早く。
あらかじめ決めておいた損切り価格に達したら、迷わずポジションを処分すること。元の値段に戻るだろう、などといった安易な考えに支配されてはいけない。

7、毎日トレードする必要は無い。
トレーダーだからといって、毎日売買する必要は無い。厳選して、リスクの低いトレードを実行することが大切だ。

8、負けトレードを気にし過ぎるな。
トレードに負けは付き物だ。失敗した時は、必ずその原因をつきとめよう。

9、三連敗?
三回連続で負けたら、その日のトレードはそこで打ち切れ。とにかく、そんな時は、頭を冷やすことが先決だ。

10、ルールを守れ。
ルールを違反しても儲かることがある。だからといって、いい加減なトレードを続けていると必ず大きな穴を開けることになる。

ニュース利用の注意点

同じニュースなのに、なぜマーケットは違った反応を示すのだろうか?オイル価格上昇で、ダウ指数が大きく下げるかと思えば、時によっては原油の上げは無視されて、ダウ指数がラリーを展開することがある。テロ事件ニュースも同様だ。米軍トラックの破壊ニュースでマーケットが下げることもあれば、爆破事件がマーケットに全く影響しない日もある。

「多くの投資者は、適切にニュースを解釈することができません」、と語るのはマキシム・グループのバリー・リットホルツ氏だ。「ニュースで肝心なのはデータですが、投資者はヘッドラインばかりに注意を払ってしまいます。また、アナリストなどの意見を重要な情報だとカン違いしている人もいますから、どうしても投資判断が狂ってしまいます。」

それでは、どうしたらニュースを正しく活用することができるだろうか。リットホルツ氏の話を続けよう。「ニュースに関する、三つの問題点を頭に入れてほしいと思います。先ず、ニュースは決して新しい情報ではありません。当たり前だ、と言われるかもしれませんが、ニュースは過去の出来事をレポーターが調査して報道するものです。

過去の出来事は、たしかに興味深いですが、投資は将来を見通して行うものです。予想以上の収益、新製品発表などのニュースをよく耳にしますが、ほとんどの場合、株価は既に好材料を織り込み済みです。ですから、私はマーケット開始前にニュースを読まないことにしています。株価に反映済みの古い材料で、間違った投資判断を下したくないからです。ウォールストリートジャーナルを読むのは、帰りの列車内だけで十分です。

次に指摘したいのは、私たちが実際に使えるニュースが報道されることは滅多にありません。CNBCやCNNのニュースを聞いていると、まるで全てが重要に思えてしまいますが、今日のニュースは娯楽的要素が強いので注意が必要です。有益な情報が流されないわけではありませんが、直ぐ投資に役立つ物を期待するのは無理です。

三番目に挙げたいのは、ニュースもビジネスだ、という事実です。視聴者、購読者を獲得するには、大衆受けするニュースを中心に報道する必要があります。ですから、考えられないようなタイミングで信じられないニュースが飛び出します。最も顕著な例は、バブル崩壊直前にアトランティック誌が発表した、ダウ36000ドルの超強気論です。マスコミは大衆と同様に、天井で強気なり底で弱気になります。極論すれば、ニュースは逆指標として利用するべきです。」

もう一つ、リットホルツ氏はこんなことを付け加えている。「どんなにインパクトのあるニュースでも、簡単にマーケットのトレンドを変えることはできません。古い例ですが、日本軍による真珠湾攻撃で、たしかにマーケットは大きな下げを記録しましたが、これはダウントレンドという状況で起きた下げですから、上げ基調が下げ基調に転換したわけではありません。ケネディー大統領の暗殺も下げにつながりましたが、これはアップトレンド上のマーケットで起きた事件ですから、良い押し目買いの機会をつくる結果となりました。」

失敗の仕方を学ぶ?

ABCニュースが、「金持ち父さん貧乏父さん」の著者ロバート・キヨサキ氏に挑戦した。誰でもキヨサキ氏の言うように、本当に金持ちになれるのだろうか?スタート資金は1000ドル、そして制限時間は20日間の設定で、3人が実験に参加した。先ずメンバーを紹介しよう。広告会社勤務のシェリルさん、建築会社に務めるジュリーさん、そしてカウンセラーのジェームズさんだ。

集まった3人を前に、キヨサキ氏は話し始める。「あなた方の中で、誰が最も起業家としての才能があるかをテストしたいと思います。与えられた20日間で、手持ち資金の1000ドルを増やしてください。方法は、あなたが自分で決めてください。もちろん、法に違反するやり方はダメです。それから、もう一つ約束してほしいことは、だれにもABCニュースが主催者であることを言わないでください。」

説明が終わり3人が去った後、キヨサキ氏はABCニュースにこう語った。「一人も利益を上げられないかもしれませんが、それは決して不思議なことではありません。ひょっとしたら、全資金を失うこともありえるでしょう。こんなことは言いたくないのですが、ビジネスを始める人たちの90%が失敗します。ですから、私はいつもこう強調しています。きびしい現実を恐れて何もしないことは、成功を避けているのと同じです。」

シェリルさんは、非営利団体のために資金集めをすることにした。集まった資金の一部を、手数料として受け取ろうという作戦だ。ジェームズさんはキャンディーを売ることにした。箱に詰めたキャンディーを学校において、売上を学校と分けるやり方だ。ジュリーさんは、頭痛薬や胃腸薬用の自動販売機を売ることにした。自動販売機は安くない。そのため、ジュリーさんは更に自己資金の1000ドルを足すことになった。

制限時間の半分、10日が経過した。困ったことに、ジュリーさんには注文した自動販売機がまだ届かない。イライラするジュリーさんに、キヨサキ氏はこう語った。「あと10日しか残っていないのに、こんな状態では絶望的ですね。」この言葉は意外だった。ジュリーさんは言う。「キヨサキ氏は、具体的なことを何ひとつ教えてくれません。私が知りたいのは、効果的なセールス方法です。」

ジェームズ氏はわずかな利益を上げたが、その全額を慈善組織に寄付してしまった。ジェームズさんに、キヨサキ氏はこんな発言をした。「なぜそんなことをしたのですか?先ず自分が利益を確保することが肝心です。あなたは優先順序を間違っています。」シェリルさんにも、キヨサキ氏はきびしい言葉を放った。「もっと積極的に宣伝をしなければダメです。あなたのビジネスは、非常事態に直面しています。いいですか、チャンスは一度しかないのですよ。」

最終結果を見てみよう。ジュリーさんは、自動販売機を一台も売ることができなかった。キヨサキ氏は、ジュリーさんの非現実的なビジネスを批判した。ジェームズ氏は540ドルの儲けがあったが、全てを慈善組織に寄付した。シェリルさんは243ドルの利益が手元に残った。

ジュリーさんの言うように、キヨサキ氏は具体的なことを参加者に教えることはなかった。ABCニュースは、単刀直入にキヨサキ氏に質問した。「あなたの本からは、いったい何を学ぶことができるのですか?」返って来た答えはこれだ。「仕事を辞めないで、パートタイムでビジネスを始めてください。そして何度も失敗を繰り返してください。」

何を監視するべきか?ファンド・マネージャーの警告

どの株番組でも同じことが討論されている。はたして、本格的なベアマーケットが始まったのだろうか?「中国と米国経済は、やや減速気味の傾向があります。インフレをかなり心配している人たちが多いですが、私はそれほど気にしていません」、と言うのはヘッジ・ファンド・マネージャーのマーク・バウチャー氏だ。「アメリカと中国の経済成長が急ピッチで下がるのではなく、ゆっくりしたペースで修正するなら、世界経済のソフトランディングが可能です。」

これから先、株式市場は何回かの下げを展開することになりそうだが、バウチャー氏は投資者が注目すべき点をいくつか挙げている。「2006年度の投資を成功させるには、国債の監視を忘れてはいけません。下は長期国債ファンド(TLT)の月足ですが、注意を払わなくてはいけないのが、82付近を走るサポートラインです。もしこのラインが崩れるようなら、株式市場は厳しい状況に陥ることでしょう。」

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「更なるドルのブレイクダウンは、株式市場に悪影響です。ユーロ・カレンシー・トラスト(FXE)の日足で分かるように、ユーロが大きく上げています。127.49で先週の取り引きを終えましたが、135を超えるような事態が起きると、株式市場にはかなりマイナス材料になります。」

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「長期的なトレンドを判断する方法の一つとして、200日移動平均線が利用されますが、最近話題の金、オイル銘柄、そして新興成長市場が200日移動平均線あたりまで修正することも必要です。下げた後、直ぐ反発するのではなく、しばらく横ばいをしてエネルギーをためるようであれば、いっそうマーケットに好ましい環境が出来上がります。

投資者が現在しなくてはいけないことは、守りを固めることです。ここから積極的な空売りを実行するのは、もはや遅すぎます。もちろん、ヘッジという意味での空売りなら別です。

あまりに報道が誇大化されていますが、マスコミが言うような悪性インフレに、アメリカが陥る危険はありません。最近のデータを検討すると、インフレは既にピークに達したような気配が見え始めています。ですから、国債が長期サポートを維持し、ドルの下落が止まるなら、株式市場は2002年から出した利益を全て無くすほどの修正で済むことでしょう。」

マスコミが言うほどの、深刻なインフレはアメリカに存在しない。最悪な状態は既に過ぎ去っている。そんなバウチャー氏の言葉を聞くと楽観的な感じがしてしまう。しかし、氏の見方はきびしい。最後の部分で分かるように、バウチャー氏は、2002年からの上昇を帳消しにする下げを予測している。もし国債とドルが更に崩れるなら、株式市場は悪性なベアマーケットになりそうだ。

なぜ長期投資をする人が多いのか?

あなたは短期投資専門ですか、それとも長期投資が専門ですか?この質問に明確な回答ができる投資者は少ない、とコラムニストのケン・シュリーブ氏は言う。「ほとんどの人たちは、こう教えられてきたはずです。株を買ったら、長く持ち続けなさい。多少の値動きに動揺してはダメです。もし株価が半分になるようなことがあったら、迷わず買い足しなさい。全ては時間の問題です。きっと株価は元に戻るだけでなく、利益も上げることができるでしょう。」

シュリーブ氏の例で分かるように、長期投資者の欠点は、現在の株価や経済状態にあまり注意を払わないことだ。場合によっては、株は長期持てば必ず儲かる、と信じている人もいるから、持ち株のことを完全に忘れてしまっている投資家もいる。「長期投資を専門にすることは構いません。しかし、多くの人は株を必要以上に長く持ちすぎです」、とシュリーブ氏は指摘する。

どうして人々は長期投資を選ぶのだろうか?シュリーブ氏の説明に戻ろう。「最初から、きちんと投資スタイル決めて株を買う投資家はマレです。20%の儲けを狙っている場合なら、1カ月でそれが達成できることもあれば、運良く二日間で達成してしまうこともあります。ようするに、納得できる利益さえ出れば、投資期間などあまり問題にならないわけです。しかし現状は、多数の投資者が長期投資が中心だと言います。なぜでしょうか?

好例を挙げましょう。2000年のナスダック市場を思い出してください。アナリストは次々とインターネット銘柄に超強気な買い推奨を連発していました。事実、株価も面白いように上がっていました。しかし有頂天になっていた投資家には、差し迫ったバブル崩壊など予期することはできません。あまりにも割高な株価はとうとう下げ始めるのですが、ここで投資者たちはどうしたでしょうか?

普通なら、一定の損額が生じたら株を売却しますが、多くの投資者はそこで昔おしえられたことを実行したのです。株が下がったら買い足せば良い。あとは時間の問題、待てば必ず株価は回復する。もちろん、下げ相場で難平買いが成功するはずがありません。度重なる買い足しで資金も尽き、こうして長期投資者が誕生したわけです。」

たしかに、長期保有で株が元の値段に復帰することもある。しかし2000年3月、5132ドルだったナスダック指数は、今日現在まだ2169ドルだ。個別銘柄なら、2000年64ドルだったサン・マイクロシステムズは今日4ドル30セント、104ドルだったEMCコープは12ドル40セント、150ドルだったJDSユニフェーズは現在たったの2ドル87セントだ。

株を塩漬けにしないためには、どうしたらいいのだろうか?シュリーブ氏はこう語っている。「長期短期にかかわりなく、投資者はトレンドに敏感でなくてはいけません。トレンドの転換を確かめるのは簡単です。チャートに一本の、トレンドラインを入れるだけで、ダメな株をイタズラに保有することはなくなることでしょう。」

米国経済の行方を決定する今期と来期

第1四半期、米国GDP(国内総生産)は5.3%の伸びを見せたが、こんな好調もこれで終わりだ、と言うアナリストたちがいる。最近のデータによれば、製造業は冷えこみ始め、住宅市場も下向きだ。たび重なる金利引き上げ、それにオイルやガソリンなどのエネルギー価格上昇は、消費者の家計に重圧となっている。

「第1四半期のGDPは強い数値でしたが、5%台の数字を見るのは、これが最後になると思われます」、と語るのはグローバル・インサイト社のアナリスト、ナリマン・ベラベッシュ氏だ。「低迷がハッキリし始めた不動産、個人消費の低下は米国経済を減速させることでしょう。」

ドイツ銀行の、ジョセフ・ラボグナ氏は、こんな見方をしている。「+5.3%という第1四半期の結果は目覚しい成長率です。しかし、だからといって将来の見通しに楽観的になることはできません。まだ推測の段階ですが、今期のGDPは2%以下の伸びになる可能性があります。非農業部門の新規雇用者数、小売売上は下降の兆しが見えますから、米国経済の成長率は急ピッチで下がることでしょう。」

発表されたGDPを見る限り、個人消費、設備投資、そして輸出には問題がないようだが、一つ忘れている事実がある。第1四半期と、去年第4四半期の個人所得が下方修正されたのだ。アナリストたちは、最終的な手数料収入やボーナスの結果が反映されて、第1四半期は大きな上方修正になることを予想していたが、実際に公表された数字は最初に出されたものより510億ドルも下回っていた。連銀の役員たちは人件費の大きな増大を心配していたから、個人所得の下方修正は好ニュースだ。これで、少しインフレ懸念が薄れたことだろう。

2005年、消費者のサラリーは4.2%の上昇を記録した。インフレ率の3%と、1.8%増えた就業者数を考慮すると、2005年度のサラリーは事実上2004年度より少なくなったことになる。「最近までの様子を振り返ってみると、家庭収入の増大は株のキャピタルゲイン、ボーナス、それに不動産の手数料などといった特殊な収入が主でした。しかし、これらの収入が下がり始めている今日、個人所得の上昇を期待することはできません」、とロンバード・ストリート・リサーチのガブリエル・スタイン氏は述べている。

もう一つ、家庭の重要な財源になっていたのが不動産ローンの借り換えだが、これも既にあてにできない。金利引き上げ政策で不動産ローンの金利も上昇し、おまけに住宅市場は下降が始まっているから、銀行も以前のようにローンの借り換えに積極的でない。最新のデータによれば、新築住宅価格は去年より0.9%高いだけだから、インフレ率にも追いついていないわけだ。

米国は不況に襲われるのだろうか?2007年、アメリカが不況になる可能性は50/50とロンバード・ストリートのアナリストは言うが、ほとんどのアナリストは企業による積極的な設備投資、それに輸出部門の成長で極端な経済減速は避けられると予測している。「米国経済の行方を決定するのは今期と来期の結果にかかっています」、とRBSグリーンウィッチのスティーブン・スタンレー氏は強調している。

最悪の事態に備えるフォード・モーター

ふところが寂しくなると、さすがに心細いものだが、現在のフォード・モーターが正にそんな状況だ。ビジネス・ウィーク誌の報道によれば、きびしい展開が予想される向こう18カ月間に備えて、フォードは貴重な現金を節約しているという。その証拠に、5月24日、フォードは今年10月に満期となる社債保持者に、高金利の2010年と2011年に満期になる社債へ乗り換えることを説得した。

少し説明すれば、10月に満期を迎える社債総額は25億ドルにおよび、4.95%の利子が支払われていた。当然、フォードはこれで25億ドルの金が必要になるわけだが、この出費は経営の苦しいフォードはどうしても避けたい。そこでフォードが思いついた策が、現金を払う代わりに、社債保持者に他の債券への乗り換えを強く勧めているわけだ。

もちろん、社債保持者はフォードの悪化する経営状況を知っているから、10月には満期になる社債を現金化したいと思っている。こんな投資者の気持ちを変えるために、フォードが乗り換えを勧める債券は、なんと10.6%の金利支払いがある。満期になる債券は4.95%だから雲泥の差だ。

第1四半期の決算報告書によれば、フォードは210億ドルの現金を持っている。これだけあるなら、投資者に社債乗り換えを説得しなくてもよさそうだが、なぜフォードは現金節約に懸命なのだろう?原因は最近5年間で2回目になるリストラだ。

今回のリストラで、フォードは大幅な経費削減を計画している。自動車工場の閉鎖、従業員数の縮小、そして労働組合との交渉が主な内容だ。工場の閉鎖、それに従業員を解雇するには、膨大な離職手当金を払わなければならない。しかし、労働組合側はスト決行の動きを見せているから、そんなことが起きればフォードの収益に悪影響だ。

推定によれば、現在75%のフォード北米工場が稼動している。アナリストの話では、稼働率が80から85%以下になると、企業の保有する現金消費速度が大きく上昇するという。稼働率が減れば、もちろん自動車の生産数も減少するが、従業員には給料を払い続けるわけだから、アナリストが言うように現金消費速度が上がることになる。

「フォードにとって、きびしい現況ですが、これは更に悪くなることでしょう」、と投資アドバイザーのジョン・カセサ氏は言う。「今年フォードは離職手当として2億5000万ドル、それに工場閉鎖に2億2000万ドルの出費が計画されています。しかし、問題は自動車労働者組合(UAW)です。工場閉鎖反対を求めてスト決行を考えているようですが、これはフォードに致命的な打撃を与える可能性があります。」

マーケットシェア減少を防ぐために、過去6カ月間フォードは新車を発表しているが、自動車評論家やウォールストリートのアナリストは冷たい評価をしている。おまけにガソリン高も重なって、期待されたスポーツ・ユーティリティ車の売上は冴えない。暗いニュースばかりのフォード、はたしてどのくらいの投資者が、社債乗り換えに同意するのだろう。

クレーマー氏が語る下げ相場で買える銘柄

人気番組「マッド・マネー」で、ジム・クレーマー氏は「ボラティリティが今日のマーケットを支配している」、と視聴者に警告した。どういう意味だろうか?簡単に説明すれば、株価が乱高下する変動率の高いマーケットでは、損は予想以上に大きくなり、逆にうまく行った場合は思わぬ大きな利益を手にすることができる、ということになる。

マーケットに下げは付き物だが、「まだこれから大きな下落がある」、とクレーマー氏は断言する。投資者はどうするべきだろうか?クレーマー氏の回答を記す前に、投資アドバイザーが薦める一般的な方法を説明しよう。

1、株を現金化する
2000年から2003年まで続いたベアマーケットを思い出してほしい。ハイテク株は徹底的に叩かれ、50%以上下げる株が続出した。ウォーレン・バフェット氏が言うように、投資で成功する秘訣は損を出さないこと。ここは持ち株を売って、しばらく休憩するのも一案だ。

2、超保守的な投資のみを選ぶ
2000年、異常な株価収益率に気がついた投資者は、危険な株を処分して資金を債券ファンドやマネーマーケットに避難させた。結果的にこれは正解だったわけだが、保守的な投資でも、短期債券と中期債券の組み合わせで、年に10%近い利益を上げることもできる。

3、起業家へ転身
超保守的な投資が嫌なら、おもいきってビジネスを始めたらどうだろうか?ミリオネアの地位を獲得した、ほとんどの人たちは起業家だ。誰にでもできることではないが、経営コンサルタントなどに相談して、自分の可能性に賭けるのも悪くない。

4、何もしない
もちろん、これには条件がある。あなたがベアマーケットに備えたポートフォリオを既に持っているなら、何もする必要はない。一部の資金を、商品市場に回すことも重要だ。

それでは、クレーマー氏の回答に戻ろう。「どんなに下げが厳しくても、マーケットから買い手が消えてしまうわけではありません。下がるたびに、買い手を集める銘柄があるのです。自社株買い戻し、という言葉を耳にしたことがあると思いますが、下げ相場では自社株買い戻しを頻繁にする株を買うことが秘訣です。例を挙げましょう。

シティグループ(C)、タイム・ワーナー(TWX)、バンク・オブ・アメリカ(BAC)、ペプシ(PEP)、CBS(CBS)、ホーム・デポ(HD)、ニュース・コープ(NWS)、アムジェン(AMGN)、シェブロン(CVX)、テキサス・インスツルメンツ(TXN)、ジョンソン・アンド・ジョンソン(JNJ)、マクドナルド(MCD)、ノキア(NOK)、シアーズ(SHLD)」

この中で、クレーマー氏が一番気に入っているのは、最後に記されているシアーズ(小売セクター)だ。なんでも、最高経営責任者のエディー・ランパート氏は、会社収益のためならガンガン自社株を買い戻すことだろう、とシアーズをべた褒めだ。

注目される日銀の動き

世界で最も力がある銀行は日銀だ、とジム・ジューバック氏(経済コラムニスト)は言う。ヨーロッパ、アジア、米国株式市場が5月11日から大きな下方修正となったが、どうやらこれは日銀が原因らしい。ジューバック氏の意見を聞いてみよう。

「なぜこんなに株が売られたのでしょうか?5月17日、ダウ指数は214ポイントにのぼる大きな下落を展開しました。アメリカは悪性なインフレに陥る可能性がある。だから連銀は予想以上に金利を引き上げることになるだろう、といったことが株不調の原因と説明されています。

5月17日の朝、発表された消費者物価指数は+2.3%でした。危険信号の2.5%に近い数値だったので、6月の会議で短期金利が引き上げられる可能性が、35%から50%に上昇しました。もし6月に利上げが実施されると、17回連続ということになります。金利上昇は株に悪影響と言われますが、先週マーケットが売り込まれる以前時点で見ると、ダウ指数は2004年6月以来12%の伸びを記録していました。

金利が上昇すると、国債の値段が下がるのですが、国債マーケットが崩れることはありませんでした。例えば5月18日ですが、ダウはマイナス77ポイント、そしてナスダック市場は2005年11月以来の安値に落ち込みましたが、10年物国債は0.75%上がって利回りは5.07%に下がりました。

金の価格も、おかしな動きを見せました。インフレ対策として人気の金ですが、高まるインフレ懸念が売り材料になりました。5月10日、1オンス700ドルで取引されていた金は、5月19日657ドル50セントで終了しました。もし投資者が本当にアメリカのインフレを心配しているなら、この下げは納得できません。おかしな動きはドルにも見られます。連銀議長のバーナンキ氏が、インフレ抑制に失敗しているなら、ドルは更に売られたはずです。しかし事実は、5月10日ドルは110.6円、そして5月18日110.7円とほとんど変化がありません。

ここで注目されるのが日銀です。ここ2カ月間で、日銀は日本国内の銀行から約16兆円の現金を吸い上げ、貨幣供給量は10%減りました。なぜこんなことをしているのでしょうか?デフレに苦しんだ経済も上向き始め、インフレの傾向が見えてきたためです。この現金吸い上げ終了までまだ少し時間がかかりますが、終了と同時に日銀は、金利を引き上げることでしょう。

海外の機関投資家は、安い金利で日本から金を借りて、世界の市場で株を買っていました。過去12カ月で7割の伸びを見せたムンバイ市場には、100億ドルの資金が海外から流れ込んでいます。これだけの金額では、巨大なニューヨーク市場を動かすことは無理ですが、小さなムンバイを上昇させるには十分な額です。この好調なマーケットを継続させるには、新しい資金が必要ですが、積極的に日銀が現金を吸い上げている今日、日本からの資金をあてにすることができません。これが、結局ムンバイ市場が月曜に大きく下げた理由です。」

新興成長市場が好調だったのは、正に日本のおかげだったわけだが、これからは無謀な投機が減ることだろう。危険度の高い国が避けられ、安全な投資が中心になりそうだ。

アナリストも大衆の一人

バブルが弾けた2000年、いったい何パーセントの株に売り推奨が出されたのだろうか?正解は、たったの5%だ。投資者の資金を守るために、とうぜん売りが薦められるべきだったが、事実は割高なインターネット銘柄が推され続けた。50%の下落など良い方で、シエナやCMGIのように、99%の価値を失う株も続出した。

それから5年、「現状は今日もあまり変わりがありません」、とリッチ・スミス氏(フール・ドット・コム)は言う。話を聞いてみよう。

「インターネットバブルが弾けた後、新しいトレンドが生まれました。アナリストたちが、売り推奨を出すようになったのです。そこで、少し調べてみました。2000年から2004年までに、売りが推薦された株は、年平均で19%の伸びがありました。買いとホールドの格付けが発表された銘柄は、年平均で7%の上昇です。

アナリストは馬鹿ではありません。皆すばらしい学歴があります。問題は、彼らの意見が投資者に大した利益をもたらさないことです。覚えておいて欲しいことがあります。格上げ、格下げ、買い推奨などを発表するのは、セル・サイド( 証券会社)のアナリストです。証券会社は手数料収入を上げなくてはいけません。売り推奨を連発したのでは、大衆が恐れてマーケットに参入してきません。これでは、証券会社の収入が落ちてしまいます。ですから必然的に、アナリストは買い推奨が圧倒的に多くなります。

買い推奨が多いのは、手数料だけが目当てではありません。例を挙げましょう。設定は5年前です。あなたがアナリストなら、人気株サン・マイクロシステムズと、水道の蛇口メーカー、アメリカン・スタンダードのどちらに買い推奨を出すでしょうか?結果的には、地味な蛇口メーカーは3倍以上になり、人気株のサンはバブル崩壊で大暴落になりました。しかし5年前、アメリカン・スタンダードを推薦するアナリストはいませんでした。

なぜアナリストは蛇口メーカーの買い推奨を出せなかったのでしょうか?現在、アップル・コンピュータには17の買い推奨、8のホールド推奨が出ていますが、売りを薦めるアナリストは一人もいません。アップルが悪い決算を発表して、株価が急落したとしましょう。アナリストは慌てるでしょうか?もちろん、動揺するアナリストなど一人もいないことでしょう。皆が皆、買いとホールド推奨ですから、アップルに騙された、の一言で終わりです。

皆と足並みを揃えていれば安心です。当たればヒーローですが、20人のアナリストが買いを出している時、自分だけ売りを推薦することは勇気が要ります。外れたら、たぶん上司にこう言われるでしょう。「なぜ売りを薦めたのだ?皆が買っているのに、どうしてそんな馬鹿な事を言ったのだ?」

アナリストも大衆の一人です。牛は群れの中で行動する限り安全です。しかし、群れから離れた牛はオオカミの餌になってしまいます。投資で成功するためには、大衆の一部になってはいけません。カウボーイのように、少し離れた場所から、牛の大群を観察するべきです。買いのチャンスは、アナリストの売り推奨です。パニック売りが殺到し、株価は正当評価額以下に下がることでしょう。」

(出張のため、12日から23日までは有名トレーダーの談話やインタビューの一部をお届けします。)

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発行:株式会社ブレイクスキャン 監修:株式会社デイトレードネット