US Market Recap

医師の収入は下げ基調?

医師たちの収入が減っているという。経済レポーター、クリステン・ゲレンシャー氏の調べによれば、1995年から2003年までの間に、医者たちの手取り収入は平均で7%下がった。他の専門職と比較してみると、弁護士やエンジニアの収入は、逆に7%上がっている。

なぜ米国医師たちの手取り収入が落ちたのだろうか?最大の原因は、メディケア(高齢者向け医療保険制度)、そして個人向け健康保険会社からの払い戻しが減ったためだ。(注:アメリカには日本のように、国民全員が加入できる医療保険制度が無い。そのため、国民は民間の医療保険サービスに加入することになる。ただし、65才以上の高齢者や身体障害者には公的医療保険制度があり、これがメディケアと呼ばれている。)

もちろん、手取りが減ったからといって、医者が経済的に困っているわけではない。2003年度の平均手取り年収は20万3000ドルだから、円に換算すると2354万円だ。普通以上の暮らしができることは間違いないが、下げ基調が見え始めた医師収入は、アメリカに将来的な問題になる、とゲレンシャー氏は言う。説明を聞いてみよう。

「心臓病専門医、それに循環器専門医などのスペシャリストの収入は問題ないのですが、ファミリー・ドクターと呼ばれる内科や小児科の開業医の収入が10%以上も下がっています。こんな状況ですから、医師はスペシャリストへの道を選ぶことになり、かかりつけの医者であるファミリー・ドクター不足になる可能性があります。」

開業医の手取り収入減少が著しいのは、医療過誤保険料が急騰しているためだ。そのため、毎月の経費を抑えることが優先され、看護婦の数が制限されるだけでなく、新医療機器導入にも消極的になってしまう。とうぜん、診療の質も低下するわけだ。

ラリー・フィールズ医師はこう語る。「ファミリー・ドクターたちは経費の節約に必死です。医療過誤保険料金は上がり続ける一方ですから、最高の経費節約方法は開業医を辞めることかもしれません。医者の使命は患者を治療することです。しかし、今日の状況は開業医を起業家に変身させてしまい、医師たちは肝心な治療ではなく、経営のことばかりを考えるようになってしまいました。」

フィールズ医師はケンタッキー州で開業しているが、更にこう付け加える。「私たちの厳しい現状を知った医学部の学生たちは、次々と開業医への夢を捨てています。私自身、口述録音をやめて自分で診療記録を作るようにしました。こんなことでも、年間で2万ドルほど節約できます。」医学部学生の多くは、大きな学生ローンという借金がある。これで、ますます開業医は少なくなりそうだ。

フォーカス、フォーカス、フォーカス

ベテラントレーダー、ラリー・ウィリアムズ氏が少し変わったことを言った。もう引退してしまったが、プロバスケットボール界の問題児として有名だった、デニス・ロッドマンという選手がいた。腕はイレズミだらけ、それにイヤリングの数も、一つや二つではなかった。マイケル・ジョーダンというスーパースターもチームにいたが、とにかくロッドマンは目立った。

「トレーダーとして成功したければ、ロッドマンのようになりなさい」、とウィリアムズ氏は言うのだ。もちろん、腕にイレズミを入れて、髪の毛を派手に染め、それぞれの耳に複数のイヤリングをつけることを推奨しているわけではない。(異端トレーダーのイメージ作りには役立つかもしれない。)しかし、ロッドマンから私たちは学ぶべきことがあるようだ。ウィリアムズ氏の話を聞いてみよう。

「本やセミナーを通して、多くのトレーダーに効果的な売買手法を紹介してきました。さまざまな質問のメールや、セミナー受講生の方々から直接話を聞いて分かったのですが、単に手法を学ぶだけではトレーダーとして成功できないようです。いったい何が欠けているのでしょうか?

ロッドマンは、ショーマン的要素も多分に持っていましたが、間違いなくバスケットボール・プレーヤーとしてもスターと呼べる選手でした。なぜでしょうか?有名な話ですが、まだロッドマンが大学にいたとき、コーチはこんなことを忠告したそうです。「攻撃を考える必要は全く無い。お前は守り(ディフェンス)だけに徹しろ。」正にこの言葉が、一流ディフェンス・プレーヤーとしてのロッドマンを築き上げたのです。

これも引退した選手ですが、ボー・ジャクソンという、プロ野球とプロフットボールの両方をプレーしたスポーツマンがいました。しかし、彼はロッドマンのようにスターになることはできませんでした。二つのプロチームに属するという華やかな生活でしたが、いったいジャクソン選手にとって、どちらのスポーツが専門だったのでしょう?ロッドマン選手のように、一つのことだけに集中(フォーカス)した方が良かったのではないでしょうか?

これも古い話ですが、私が1万ドルの資金を110万ドルに増やしたときを振り返ってみると、私はロッドマン選手のように一つのことだけ、ようするにトレードだけに集中(フォーカス)していました。釣り、ゴルフ、野球観戦、旅行、そんなことは一切しませんでした。四六時中、トレードのことばかり考えていました。たしかに、家庭生活をおろそかにしてしまいましたが、結果的には大きな利益を手に入れることができたのです。」

ここで一つ思い出した。相場師として活躍した、近藤信男氏はこんなことを語ったそうだ。「俺は相場師だ。相場に生き、相場に死ぬ。相場以外のことに手を出すのは、すべて邪道だ。」

危険シグナルの発見方法

せっかく上手くいっていた投資が、著名アナリストの悲観的な意見で、大きく下げてしまうことがある。小さな損なら取り戻すことができるが、一つの銘柄であまりに大きな穴を開けてしまうと、精神的なダメージから立ち上がるのも大変だ。「致命的な傷を負わないために、危険信号をいち早く察知することが大切です」、と言うのは「アナリストを首にしろ!」の著者、ハリー・ドマッシュ氏だ。少し話を聞いてみよう。

「最近、プラトロニクス社は30%という極めて大きな下げを記録しました。直接的な原因は、6月で終了する四半期の収益が、下方修正されたためです。しかし、12月締めの決算報告書をよく調べた人なら、今回の下方修正がある程度予期できましたから、大きな損を出すことはなっかたことでしょう。」

決算報告書と言われても、いったいどこを見たら良いのだろうか?会計士のような専門的な知識が無くても、危険シグナルを見つけることは可能なのだろうか?ドマッシュ氏の話に戻ろう。

「先ず指摘したいのが粗利益です。会社が製品を売ると儲けになりますが、粗利益はリサーチや開発コスト、それに税金などが考慮されていません。粗利益が上昇する原因には、生産コストの低下、または製品の値上げの二つがあります。理由はどちらでも構いません。重要なのは、粗利益の大幅上昇は、収益の上方修正につながります。

粗利益減少は、製造コストの上昇やマーケットシェア維持を狙った製品の値下げが原因で起きます。これら二つの要素は、将来の収益懸念になりますから、粗利益の異常な減少は危険信号です。

粗利益は、損得計算書を利用することで、簡単に計算することができます。粗利益を比較するときは、季節的な要因を考慮して、前年度の同時期と比べることが重要です。(粗利益=業務粗利益/売上)

プラトロニクス社を使って説明しましょう。2005年度、12月締め四半期の粗利益は45.5%でした。2004年の同時期は53.1%でしたから、プラトロニクス社の粗利益は7.6ポイント(53.1ー45.5)の下落です。粗利益が2ポイント以上下げているときは要注意です。」

粗利益の次に気をつけたいのが売掛金勘定だ。どんなに売上が伸びていても、実際に相手側からの支払いを受け取らなければ何の意味も無い。顧客との良い関係を保つために、故意に長めの支払い期間を与える場合もあるが、相手側に支払い能力が欠けていることもある。だからドマッシュ氏は、バランスシートを検討して、売掛金勘定が売上に占める比率を確かめることを勧めている。もしこの比率が、前年度を20%以上上回るようなら注意したい。

もう一つの警報はキャッシュフローだ。「純利益が上昇しているにもかかわらず、キャッシュフローが減っているなら、空が曇り始めたと思ってください」、とドマッシュ氏は言う。決算報告書は味気無いかもしれないが、粗利益、売掛金勘定、そしてキャッシュフローの動きには、目をとめる価値がありそうだ。

金利上昇で狙える銘柄

不安定な株式市場、いったい何を買ったら良いのだろうか?連銀は上げ過ぎになるまで、金利引き上げを終了させることはない。だからアメリカは不景気に陥る。そんなことを言うアナリストが多いから、なおさら銘柄選びが慎重になってしまう。

トレンドは投資者の友達、という言葉があるように、昔から大局的な流れに乗った投資が薦められている。今日のマーケットで明らかなのは、上昇する金利だ。金利上昇で有利なものは何だろうか?

ここで目につくのが、CNNニュースのヘッドラインだ。Million-dollar investors prefer cash、ということだから、お金持ちの投資者は現金を選んでいることになる。誤解を防ぐために記しておきたいのは、現金化といっても資金の全てではなく、約2割相当の金額だ。それでは、現金の行き先を見てみよう。

期限の制約が無く、いつでも引き出し自由、と便利なのが、マネーマーケット・ファンドだ。例えば、トランスアメリカのプレミア・キャッシュ・リザーブ・ファンドには4.91%、そしてチャールズ・シュワブのバリュー・アドバンテージ・マネーファンドには4.66%の利回りがある。

安全な短期国債利回りも悪くない。3カ月物は4.8%、6カ月物は4.93%、そして1年債が4.96%だ。最高に長い30年物国債は5.19%、また10年物は5.15%だから、短期利回りと長期利回りに差はほとんど無い。

満期前に引き出すと違約金を払うことになるが、銀行の定期預金も人気だ。オンライン・バンキングの活用者が増えている今日この頃だから、各銀行も良い利回りを表示して、新規客の獲得に精を出している。3カ月定期ではUFBダイレクトが4.94%、6カ月はコルス銀行の5.23%、12カ月定期もコルス銀行が5.37%という高い利回りを提示している。

それでは、どんな銘柄が狙えるだろうか。経済コラムニスト、ジム・ジューバック氏はこう語っている。「ソフトウェアの会社には、製品のサイクルがあります。新バージョンの発売が近くなると、既存バージョンのソフトウェア売上が大きく下がります。

アドビシステムズ(ADBE)が、正に今このサイクルに達しています。6月15日に発表された決算は予想を下回り、今年度の収益が下方修正されました。アクロバットとウェブマネージャーの新ソフトウェアは2006年の第4四半期に発売が開始され、フォトショップの新バージョンは2007年の春発売が予定されています。」

6月15日の決算がそうだったように、新ソフトウェアが発表される前の決算は、アナリストの予想以下になる傾向があるという。ガッカリな数値を見て、アナリストは収益予想を下方修正したが、これはアドビシステムズにとって好都合だ。ハードルが下がり、予想収益を達成しやすくなった。新バージョンの売れ行きが好調なら、次々とアナリストは格上げを発表することだろう。

高齢化社会が生み出す買いセクター

毎日8000人のアメリカ人が60才の誕生日を迎えている。ベビーブーム世代の人々が、次々と退職の年齢に近づいているわけだ。さっそく、こんな心配の声が聞こえてくる。「世界的に株が不安定な今日、ベビーブーマーたちは、老後資金を守るために、株を一斉に売ってこないだろうか?」

ベビーブーマーとは、1946年から1964年の間に生まれた人たちをさし、約7820万人がこの世代に属する。医学の発達や、生活水準向上が主な原因となり、ベビーブーマーだけに限らず、アメリカ人の平均寿命は1960年の69.7才から77才に上がっている。2000年には3500万人だった65才以上の人口も、2030年には約7200万人に達することが予測されている。

ペンシルバニア大学教授、ジェレミー・シーゲル氏は警告する。「アメリカ社会は、いまだかつて無い速度で、高齢化へと進んでいます。これは確実に、株式市場に悪影響を与えることになるはずです。場合によっては、50%近い下落があるかもしれません。」

ベビーブーマーたちは、401k(企業年金制度)を利用して、多額な金額の株を保有している。退職後は、とうぜん定期的に株を売って生活資金に割り当てることになるから、市場には毎月大量な売り物が押し寄せることになる。だから株の需給バランスが崩れてマーケットが低迷する、というのがシーゲル氏の要点だ。もう少し説明を聞いてみよう。

「年金基金にも、ベビーブーマーからの売り注文が大きく増えることでしょう。株の売りが増大しても、それ以上の買い手があれば問題はありませんが、高齢化社会では、どうしても労働者人口が減りますから、買い圧力も減少してしまいます。」

もちろん、全てのマーケット関係者がシーゲル氏のような悲観的な見方をしているわけではない。高齢化は悪材料ではなく、買い材料になる、というアナリストが多い。たとえば、もっとも分かりやすいのがヘルスケア・セクターだ。高齢者に多い手術に、人工股関節置換がある。これには整形外科用インプラントが必要になるから、アナリストはジマー・ホールディングズ(ZMH)を薦めている。

退職後には時間がたっぷりある。旅行の機会が増えることだろう。旅先にラスベガスが選ばれることが多い、と専門家たちは予想しているから、ホテルとカジノを経営するハラス・エンターテイメント(HET)が狙いのようだ。

もう一つ、シーゲル氏に反対するロビン・ブルックス氏(国際通貨基金)の意見を記しておこう。「高齢化社会が株安につながる、と直ぐ結論するのは間違いです。アメリカで、90%の株を保有しているのは、全人口の10%に満たない極めて裕福な人たちです。401Kの株が売られて、株が大きく下がる、という考えがありますが、平均的なベビーブーマーの持つ株は4万4000ドルほど(500万円)です。9割の株を保有する、超リッチな人々は、老後のために持ち株を売る必要などありません。」

欲と恐怖以上に恐ろしいもの

株価は、欲と恐怖によって動かされる。よく聞く言葉だが、トレード心理の研究で有名なブレット・スティーンバーガー氏は、もう一つトレーダーに大きな影響を与える要素を指摘している。「欲と恐怖より危険な感情、それは自信過剰です。自信過剰になったトレーダーは、必要以上に大きなリスクを平気でおかし、自ら損を招いているのです。」

エレン・ランガー氏のリサーチによると、成功という経験は、たとえそれがコインの裏表を当てるようなものであっても、私たちに自信を与えるという。本当に自分の技術によって良い結果を出しているのなら問題は無いのだが、単なる偶然や運で勝ちが続く時が怖い。ギャンブルの場合、全くの素人が3回連続でブラックジャックに遭遇することがある。単に幸運に恵まれただけにすぎないのだが、本人は自分の技術が勝ちを呼び込んだ、と勘違いしてしまう。これが自信過剰を生み、無謀な賭けにつながるわけだ。スティーンバーガー氏の話に戻ろう。

「トレーダーとギャンブラーの行動に違いはあるのでしょうか?数々の実験は、両者に違いが無いことを証明しています。テレンス・オディーン氏は、こんな結果を発表しています。トレーダーに自信があればあるほどトレード回数が頻繁になり、損額は一般のトレーダーより大きくなります。もちろん、頻繁な売買は手数料の払いすぎにもなります。ロンドン・ビジネス・スクールからのレポートも、オディーン氏の結論と一致しています。トレーダーが自信を持てば持つほど取引回数が増え、そして損額も自信に比例して増大していくのです。

自信を得るためには、正しいマーケット分析と適切な判断が不可欠になります。こんなデータがあります。これは、インベスターズ・インテリジェンス社からですが、株式市場はほとんどの場合、はっきりしたトレンドが無く、レンジ内で推移しています。しかし、7割以上のトレーダーたちは、マーケットの動きには関係なく、「強気」、「弱気」といった方向性を決めつけて常にマーケットを見ています。

この「強気」と「弱気」について、ハーシ・シェフリン氏はこう語っています。「トレーダーが最も強気になるのは、マーケットが天井に達した時だ。トレード経験が浅いほど、天井で積極的に買う傾向がある。」同じ現象は、オプション市場にも観察できます。マーケットが下がると思ったらプットを買い、上がると思うならコールを買います。5日連続でマーケットが下落すると、プット買いが極端に増えます。しかし、これは完全に間違いであり、5日めの下げではコール買いが儲かる、という統計があります。

自信を持つことは大切ですが、自信過剰はトレードに悪影響です。良いトレード方法を思いついた時は、先ずその成功率を調べてください。過去のデータを使って、バックテストをするのです。実績の裏づけがある方法だけでトレードすることが肝心です。」

米国株式市場クイズ

アメリカは本格的なベアマーケットに入る可能性がある、と警告するアナリストが増えている。そこで、ベアマーケットをテーマに、早速いくつか質問しよう。(正解は一番下を参照)

1、米国株式市場は、過去100年間、どんな頻度でベアマーケットが訪れたでしょうか?

A、3.3年に一度
B、6.6年に一度
C、9.9年に一度

2、テクノロジーの著しい発達、それに国民の暮らしが豊かになった今日、1960年以来ベアマーケットが訪れる頻度が減っている。

A、たしかに減っている。
B、逆に頻度は上がっている。

3、最も長かったブルマーケットはどちら?

A、1929年の大暴落が起きる直前のブルマーケット
B、2000年のインターネット株崩壊直前のブルマーケット

4、90年代のブルマーケットで投資していたほとんどの人は、ベアマーケットの経験が無い。

A、そのとおり
B、間違っている

5、ブルマーケットの上昇が大きければ大きいほど、次のベアマーケットでの下げは大きなものになる。

A、そのとおり
B、間違っている

6、1966年のブルマーケットの頂点で優良株を買い、損切らずに持ち続けたなら、元の値段に戻るまで何年かかったでしょうか?

A、6年
B、12年
C、24年
D、30年

7、1966年、ダウ指数は初めて1000ドルを突破しましたが、結局そこが天井となってベアマーケットに入りました。次にダウが1000ドルに復帰して、その上に安定するには何年かかったでしょうか?

A、4年
B、17年
C、30年

8、1929年から1932年のベアマーケットで、ダウ指数はどのくらい下げたでしょうか?

A、30%
B、60%
C、70%
D、89%

9、株の下げ速度は上げ速度より早い。

A、そのとおり
B、間違っている

正解

1、A。ベアマーケットは3.3年に一度の割合で訪れている。

2、B。頻度は逆に上がっている。過去10回のベアマーケットは2.4年に一度の割合で起きている。

3、B。1982年から2000年まで続いた上げ相場は、歴史上一番長い。

4、A。90年代、熱狂的なインターネット相場に参加した大半の投資者には、下げ相場の経験が無い。

5、A。2000年のインターネットバブル崩壊で分かるように、ブルマーケットが強烈なほど、次にやって来るベアマーケットも厳しくなる。

6、D。元に戻るまで30年かかった。

7、B。1000ドル台に復帰して落ち着くまでには、17年間を要した。

8、D。ダウ指数は386.10から40.60まで下げた。

9、A。たとえば1989年、ダウ指数は14カ月かかって610ポイント上げたが、たった6カ月で、その上昇幅を失った。

米国不動産は暴落する?

DRホートン、Pulteホームズ、レンナー、KBホームズ、Tollブラザーズ、といえば主な住宅建築銘柄だが、去年の夏から30%から50%の大幅下落だ。AGエドワーズのアナリストは、こんなメモを顧客に送った。「住宅市場のソフトランディングシナリオは、もはや無効です。」米国住宅市場は、暴落の運命にあるのだろうか?

ビジネスウィーク誌の報道によれば、6月13日、ハーバード大学は米国不動産に関する楽観的なレポートを発表した。さっそく要点を見てみよう。

楽観的といっても、上昇する不動産ローンの金利とエネルギー価格が悪影響になり、ハーバード大学の研究員たちも、住宅市場の冷えこみを予測している。しかし、健全な雇用状況や移民による人口の増加は、更に住宅需要を伸ばす結果になるから、あるていど住宅市場の冷えこみを抑えることができる。

研究員の一人、レイチェル・ドゥルー氏はこう語っている。「パニックする必要は全くありません。たしかにアメリカの住宅市場は下向きになりますが、急激な後退を招くことなくソフトランディングになるはずです。住宅価格の大暴落を予想するアナリストもいますが、それは極論です。たとえバブルが弾けても、空気はゆっくりとしたペースで抜けていきますから、暴落はありえません。

1980年代のテキサス、そして1990年代にカリフォルニアで大きな住宅価格の下落がありましたが、これは住宅マーケットが熱くなり過ぎて起きたわけではありません。一番の原因は、急ピッチな住宅建築です。新築住宅数が極端に増え、市場の需給関係が完全に崩れてしまいました。また、80年代にはオイル産業の不振でテキサスは失業問題が深刻になり、同様に90年代のカリフォルニアも、軍事産業の低迷で多くの失業者が出ました。」

楽観的なハーバードの見方に同意する人でも、住宅市場は冷え込むわけだから、ここで積極的に不動産投資をすることはありえない。しかし、「待った!」の声が聞こえてくる。「不動産悲観論が主流の今日ですが、まだ良いチャンスが残っています」、とロバート・キヨサキ氏(「金持ち父さん、貧乏父さん」の著者)は言う。少し話を聞いてみよう。

「誰でも不動産で儲けられる時代が終わりました。これからは、プロだけが生き残れるマーケットです。ブルマーケットでは、物件の値段が面白いように上がりましたから、売り手は簡単に予想以上の利益を得ることができました。現在の状況では、前のように素早く物件が売れませんから、売り手に焦りが見え始めています。買い手は、物件の正当評価額などを詳しく調べることで、かなり有利な条件で住宅を購入できることでしょう。とにかく今は、慎重に情報を集めて、じっくりと売り手と交渉する、プロの態度が必要です。」

ハーバード大学のレポートは、2005年までの資料をもとに作成された。だから、今年に入ってからの住宅市場冷えこみは含まれていない。レイチェル・ドゥルー氏は、2006年度第1四半期の住宅価格下落は、予想以上に大きかったと言う。しかし、氏のソフトランディングのシナリオは変わらない。

なぜ低位株を狙うのか?

40ドルの株を100株買うと4000ドル、そして4ドルの株を1000株買うと4000ドルの資金が要る。もちろん手数料も払わなくてはいけないが、あなたならどちらを選ぶだろうか?「現在、アメリカに上場されている株の平均価格は、約26ドルです。投資者によっては、一株26ドルと聞いただけで、買いの対象から外してしまいます。なぜなら、5ドルから10ドルで取引されている株が魅力的に感じるからです」、と言うのはドーフマン・インベストメントのジョン・ドーフマン氏だ。

心理的なことかもしれないが、一般的に投資者たちは、5ドルの株の方が200ドルの株より将来性があると思っている。200ドルが二倍になるよるも、5ドルが10ドルになる方が、ずっと楽に見えるからだ。それに、200ドルの株を100株買うには2万ドルが必要だが、それだけの資金があれば、5ドルの株を4000株も買うことができる。同じ投資金額でも、4000株の方がリッチな気分になれる。ドーフマン氏の話に戻ろう。

「ミューチュアルファンドやヘッジファンドが、なぜ10ドル以下の銘柄を避けるかを説明しましょう。コンピュータテクノロジーが進み、売買がだいぶ自動化されてきましたが、多くのミューチュアルファンドは、いまだに一株あたり1セントから6セントの手数料を払っています。500株、600株といった数字なら問題ありませんが、ファンドの売買する金額は膨大です。ですから、低位株などに手を出すと手数料が極めて割高になってしまうのです。

個人投資家には、ファンドのような手数料のハンディキャップがありません。オンラインでトレードすれば、10ドル前後の手数料で売買ができるはずです。

ミューチュアルファンドや、機関投資家が低位株を敬遠する現状ですから、とうぜんアナリストたちも10ドル以下の株を追うことはありません。更に付け加えれば、安い株は、ウォールストリートで軽視されています。ですから、低位株には、意外な掘り出し物が隠れている可能性が大きいとも言えます。

2001年から始めたことですが、私は毎年5ドルから10ドルで取引されている、有望株リストを作成しています。2005年の6月16日から、2006年6月9日までの成績は、配当金も含めて+10%でした。同時期のS&P500指数は、+5.4%ほどです。

特に目立った伸びを見せたのは、アリバ(ARBA)とハーベスト・ナチュラル・リソーシズ(HNR)の二銘柄で、それぞれ30%以上の成長です。ダメだったのは、アースリンク(ELNK)がマイナス14%、そしてスチュワート・エンタープライズ(STEI)のマイナス5.6%です。

過去3年間の低位株リストの成績は+38%、そしてS&P500指数が20%増です。それでは、今年のリストから二つ紹介しましょう。

ジャーナル・レジスター(JRC)
27の新聞社と、362の出版社を経営しています。11年間連続で利益を上げ、2005年度の収益はやや下がりましたが、それでも株主資本利益率は22%を記録しました。

アースリンク(ELNK)
去年のマイナス株ですが、まだチャンスがあると思います。アースリンクは、アトランタに本拠地を置く、全米第4位のインターネット・プロバイダです。1994年から2003年まで赤字が続きましたが、2004年に黒字になり、2005年は1億4300万ドルの収益がありました。株価収益率はたったの9ですから、正に割安株です。」

次の買収ターゲット?

最近の株式市場は、まるでパーティーのようです、とMLFインベストメントのマット・フェシュバック氏は言う。ひどい下げ方だったから、空売りで大儲けしたのだろうか?「狙っていた銘柄が4割も下げたのです。さっそく買いました。今週も、割安株買いで忙しくなりそうです。」

割安株?下げ相場だから、叩かれた株など山ほどある。いったい何を基準に、割安株の判定をするのだろうか?デイリー・アドバンテージの、ジョン・マークマン氏はこんなヒントをあげている。「会社も個人も同じことですが、現在のように金利上昇が続く環境で、苦しい立場に陥るのは、多額な借金がある人たちです。下げ相場だけが要因となって、ほとんど負債の無い会社の株が売られるなら、これは割引価格で買うチャンスです。」

8億ドルの資金を運用するトム・カーン氏は、マークマン氏の言う投資アイディアを実践する一人だ。「バランスシートに注意を払うことが大切です。借金が無く、大量な現金を保有する企業は、今日のように短期金利が上がっても、経営状態が悪化することはありません。

たとえば、ホロジック(HOLX)という会社がありますが、株価は月曜だけで7.5%も下げました。負債の無い、高利益を上げている企業です。マサチューセッツ州に本拠地があり、画像診断システム、ヘルスケアが専門です。中核になる製品は乳癌検診に使われる、デジタル・マンモグラフィになります。また、医療診断用のソフトウェアを開発するR2テクノロジーの買収も最近しています。

鮮明な三次元画像化されたデジタル・マンモグラフィを利用することで、癌専門医は手術の前に、より正確な診断をすることができます。現在、デジタル・マンモグラフィは指定された病院だけでテストされていますが、来年早々に政府からの許可が下りることでしょう。

ホロジックが魅力的なのは、デジタル・マンモグラフィだけではありません。歴史を振り返ってみると、優良な医療機器メーカーは大手企業に買収される傾向があります。ゼネラル・エレクトリックが既にデジタル・マンモグラフィに似た製品を販売していますが、ホロジック社ほど優れたものではありません。

独占禁止法があるので、ゼネラル・エレクトリックによる買収はありえませんが、シーメンス(SI)やフィリップス(PHG)による買収なら十分に考えられます。ホロジックは36ドルほどで取引されていますが、買収価格は最低でも75ドルから100ドルになると思います。」

もう一つの買い候補として、カーン氏はオーディオボックス(VOXX)をあげている。約12ドルの株だが、オーディオボックスは1株あたり8ドルに相当する現金を保有している。借金も無く、売上も来年は上向きそうとのことだ。

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