US Market Recap

常識と株式市場

株価には、あらゆる情報が既に織り込まれている。だから、ニュースを聞いてから行動したのでは遅すぎる。この考え方は、1970年代前半に発表された、ユージーン・ファマ教授の「効率的市場仮説」が基盤になっている。皆さんの中にも、ファマ教授の仮説を、直接経験された方がいると思う。XYZ社の新製品が華々しく市場に登場し、アナリストも続々と買いを薦める。これなら行ける、と意気込んで買ってみるが、株価はサッパリ上がらない。それどころかズルズルと下げ始め、けっきょく安値引けになってしまう。

常識的に考えれば、新製品発表、アナリストの買い推奨なら、株価は上昇しないといけない。しかし、逆の結果になってしまうということは、アナリストは企業と組んで、個人投資家たちを罠に落とし入れようと企んでいるのだろうか?もちろん、答えは「ノー」だが、投資心理の研究で知られる、ブレット・スティーンバーガー氏は、こんなことを言う。「株式市場は、私たちの頭脳とは配線のされ方が違うのです。」配線のされ方が違う?もっと氏の説明を聞いてみよう。

「人間は誘導的、そして帰納的な思考をする傾向があります。同じ現象が何度も繰り返されると、私たちは物事の規則性に気がつきます。例をあげれば、澄み渡っていた青空に暗い雲が広がり始めると、私たちは雨を予測します。初めて暗い雲を見た時は雨を予測しませんが、これが何度も繰り返されると、暗い雲=雨という公式が私たちの頭の中に定着します。ですから、雲ひとつ無い空を見て、雨を予想する人は滅多にいません。

さて、株式市場の方ですが、人々が傘をさすとアッという間に晴天、海岸で日焼け止めローションを塗っていると、突然大雨といった有り様です。正に、極端な状況から極端な状況へと動きます。

マーケットは配線のされ方が違います。ですから常識が通用しません。男の子を持つ親なら、子どもの身長は160センチから190センチくらいまで伸びることを予想するでしょう。どちらにしても、自分の身長を50センチも上回ることは予測しないはずです。しかし、子どもの身長が株式市場のルールでコントロールされるなら、2メートル以上の身長、そして1メートル10センチにも満たない身長が頻繁に起きるのです。」

こんな話を聞くと、悪材料は買い、好材料は売り、と思ってしまうが、あるデータを紹介しよう。1989年以来、S&P500指数を三日連続で下げた後買うと、次の5日間での利益は平均週間利益を約4倍上回る。逆に、三日連続上昇後S&P500指数を買うと、次の5日間での利益は±0だ。

上げが続く時は買いが入りやすい。下げが続くと売りが殺到する。常識が通用しないマーケット、同じ状況が継続する時は、注意が必要だ。

不要な感情はなぜ起きる?

感情的になるな、冷静さを失うな。成功しているトレーダーは、感情をコントロールできる。しかし、損の多いトレーダーは感情に支配されている。よく聞く言葉だ。たしかに、頭に血が昇ると見えるものも見えなくなってしまう。ある程度の緊張感はトレードにプラスだが、極端に興奮してしまったら、トレードはうまくいかない。トレーダーを、感情的にさせる要因は何だろうか?ビッグトレンド・ドット・コム社長、プライス・ヘッドレー氏の話を聞いてみよう。

「トレード心理の専門家、マーク・ダグラス氏も指摘していますが、ほとんどのトレーダーや個人投資家は、マーケットの次の動きを予測できる、と思っていますから、どうしても「勝ち」「負け」の結果だけを重要視してしまいます。そのため、「確率のゲーム」、というトレードが持つ基本的要素を見失い、不要な感情をトレードに引き込むことになります。」

少し説明しよう。教科書に載っているようなチャートパターンが目の前に現れると、トレーダーは絶対に勝てる、と錯覚してしまう。こうなるとトレードに力が入りすぎ、まかり間違って株価が逆に動こうものなら大ショック、ということになってしまう。だからヘッドレー氏は、勝率の高いパターンだけを選んで、株は「確率のゲーム」と割り切れ、と言っているわけだ。氏の話に戻ろう。

「不要な感情は、「恐怖」「不安」といった言葉に置き換えることもできます。損を出したらどうしよう、といった損に対する恐怖が、トレーダーを襲う最も一般的な不要な感情です。誰でも損をするのは嫌です。しかし、損に対する感情が異常に強くなると、体が凍ってしまい売買が執行できなくなります。よするに、引き金を引けない、という状態です。これでは絶好の買いタイミングを逃し、既に持ち株がある場合なら、損切りが出来ずに、ズルズルといたずらに損額を増大させます。

損を出したくない、という理由だけで引き金が引けなくなるのでしょうか?真の原因は、自分のトレード手法に自信が持てないからではないでしょうか?100%勝てる手法は存在しません。あなたとプロの違いは、プロは損切りが早く、資金管理が上手いだけです。

もし、あなたも中々引き金を引けない一人なら、トレードの勝ち負けばかりに気を取られていることを理解してください。ペーパートレードから始めて、自分の計画に沿ってトレードすることを身につけてください。繰り返しますが、トレードで最も大切なのは資金管理です。損を立て続けに出しても、一回一回の損額が小さければ、トレードで生き残ることができます。」

ヘッドレー氏は、更に三つの不要な感情について触れているが、忠告することは同じだ。勝敗ばかりを気にするな。忠実に自分の計画に従ってトレードしろ。そうすれば、自然と自信も生まれてくる。

アメリカ株情報のデパート登場・トヨタとGMが提携?

海の日ですね。皆さんは、どんな休日をお過ごしでしょうか?海と言えば自然、そして自然から環境問題を想像する方々もおられると思います。そこで、環境問題に貢献する銘柄を探していたら、ある記事を見つけました。環境とは全く関係ありませんが、二行目にはこう書かれています。「経済情報を、弾丸よりも速く提供する新サイト登場」なかなか勇ましい紹介です。さっそくアクセスしてみました。

ホームページの名前は「インスタントブル・ドット・コム」です。紹介記事を書いたのはビジネスウィーク誌で、星四つ(最高評価は星5つ)ですから、決して悪い評価ではありません。とにかく使いやすい、これ一つでほとんどの情報を得ることができる、とべた褒めする一方、情報量が多すぎる、と批判的な一文も付け加えられています。

実際にインスタントブル・ドット・コム(正式開始は7月18日)に行っていただくと分かりますが、クリック一つで、主な経済サイトや掲示板からの情報が得られる仕組みになっています。ですから、ダウジョーンズ、ロイター、APなどからのニュースだけでなく、人気ブログ、ヤフーファイナンス、そしてグーグル・ファイナンスからの情報が簡単に取得できます。

「ユニークなテクノロジーが駆使され、特別なソフトウェアをダウンロードする必要は無い。使用料金もタダ」(ビジネスウィーク誌)、ということですから、興味のある方は一度試してみてください。

次の話題はゼネラルモーターズ(GM)と、トヨタが提携する、という噂です。既にGM、ニッサン、ルノーの三社提携の可能性は報道されていますが、本当にトヨタはGMに興味があるのでしょうか?これもビジネスウィーク誌からですが、「トヨタ情報通の話によれば、トヨタはGM、ニッサン、ルノーのような形での提携は考えていない。しかし、戦略的な立場から見て魅力的な方法での提携を考慮している。」

トヨタのスポークスマン、スティーブン・カーティス氏は「単なる憶測にすぎない」、とコメントしていますが、月曜のGMの寄付きが注目されます。

もう一つ、今週の相場を大きく影響するのは、イスラエル、レバノン問題です。爆撃が続くかぎりマーケットも下げ続ける、という見方が圧倒的に多いですから、こんな状態では積極的な買い手が現れる可能性はありません。「悪化する中東情勢が、原油価格を押し上げています。しかし今のところ、オイル供給に支障はありません」、とケン・カム氏(ファンド・マネージャー)は述べています。

どちらにしても、「今週も高ボラティリティが顕著になるだろう」(スティーブン・サックス氏、ライデックス・インベストメント)、ということですから決算シーズンと重なって、荒れ模様な週になりそうです。

貧困救済運動は本当に役立つのか?

海外援助は、貧困を撲滅することができるだろうか?撲滅が大袈裟なら、海外援助は本当に貧困救済に役立っているのだろうか?世界には、飢えや伝染病に苦しむ人たちが大勢いる。お腹が異様に飛び出た、骨と皮だけになった子どもたちが、砂漠をさまよう姿は痛ましい。

海外援助に熱心なスターが多い。U2のリード・シンガー、ボノ氏はABCニュースのインタビューで、こう語っている。「西側政府が一致協力すれば、世界から貧困を一掃することができます。私たちには十分な財源とノウハウがありますから、どんなに極端な貧困問題も解決できるはずです。」

女優のアンジェリーナ・ジョリー氏も、ボノ氏の意見に賛成だ。「あともう少し援助資金を増やすだけで、状況は目覚しく好転すると思います。」

「まったく馬鹿らしい理由で、毎日2万人の子どもたちが餓死しているのです。どうして私たちは、こんな悲惨な状況を直視しないのでしょうか?」、と訴えるのは「The End of Poverty 貧困の終わり」の著者、ジェフリー・サックス氏だ。氏は単に問題を提起するだけでなく、実際に西側諸国に積極的に呼びかけ、500億ドルにのぼるアフリカへの救済資金獲得に成功している。

アンジェリーナ・ジョリー氏も、サックス氏が作ったアフリカのモデル・ビレッジを訪れて、貧困問題解決の可能性を強く感じたようだ。

しかし、ジャーナリストのジューン・アルンガ氏は、「たしかにサックス氏の努力は称賛にあたいするが、長期的な解決策にならない」、と言う。なぜだろうか?アルンガ氏の説明を聞いてみよう。

「私はケニアで生まれ育ちました。アフリカを救おう!、とアメリカ政府は多額な支援金を送ってきますが、私にはそれが不思議でたまりません。ケニアだけではなく、アフリカは泥棒政府の集まりです。援助金は、本当に必要な人々に届くことはありません。政府の役人たちは海外からの援助金を盗み、スイスの銀行に隠してしまいます。もちろん、その金は豪華なマンション、一般庶民には触れることもできない高級車、そしてファーストクラスでの贅沢な旅行に使われるのです。」

ABCニュースによれば、アフリカ政府の役人たちが盗んでいるのは金だけでない。飢餓に苦しむ人々に行くはずの、食料品にも手をつけているのだ。

ケニアは、海外からの援助は要らない、とインター・リージョン・エコノミック・ネットワークのジェームズ・シクワティ氏は強調する。「人々は必死に働いています。服、靴、家具、とあらゆる物を売ってやりくりしていますが、いつまでたっても貧困から抜け出すことができません。その大きな原因の一つは、政府は個人による土地所有を認めないからです。」

50年前、東アジアの国々もアフリカのように貧しかった。しかし、今日の東アジアは繁栄している。東アジアも海外から救済資金を受け取ったが、東アジアには経済促進に役立つ法律が設定された。一部の階級だけが恩恵を受ける特権社会が崩れないかぎり、アフリカの貧困に終わりは来ないことだろう。

割安株は割高?

バリュー株という言葉がある。簡単に言ってしまえば割安株のことだ。成長率、収益、資産性などを分析して正当な株価を算出し、もし現在の株価が、算出された株価を下回るようなら、割安というわけだ。

なぜバリュー株が出現するのだろうか?こんな質問を、一般のアメリカ個人投資家にすると、次のような答えが返ってくる。「バリュー株は、大きく叩き売られた株のことです。以前は人気株だったかもしれませんが、予想を裏切る決算やアナリストの悲観的なコメントで、株価が異常な水準まで落ち込んでいます。ですから、そんな株には、誰も見向きしません。」なかなか的を得た説明ではないだろうか?

割安株を狙う投資者は多い。しかし、バリュー株を専門に投資する、デルファイ・マネージメントのスコット・ブラック氏はこう語っている。「最近、割安株を見つけることが、とても難しくなっています。」決して調子が良いとは言えない今日の株式市場、特に半導体や小売銘柄の下げがひどい。これだけ売られたら割安、と思ってしまうが、どうやらそうではないらしい。

何故バリュー株が、なかなか見つからないのだろうか?USAトゥデイのマット・クランツ氏の説明を記そう。「バリュー株が本当に割安かを確かめるには、成長株と比較してみる必要があります。スタンダード・アンド・プアーズ社スモールキャップ600バリュー株指数には17.2の株価収益率(PER)があります。そして、スタンダード・アンド・プアーズ社スモールキャップ600成長株指数のPERは17.1です。ほぼ同一の株価収益率ですから、これではバリュー株に魅力がありません。

スタンダード・アンド・プアーズ社以外にも、ウィルシャー・アトラス社が割高なバリュー株を指摘しています。2000年末、大型バリュー株の株価収益率は、大型成長株の株価収益率を15.1ポイント下回っていました。今日、両者の違いはたった5.8ポイントだけですから、これではバリュー株投資家たちが積極的に動けません。」

今年の成績を見てみると、ラッセル3000バリュー株上場投信は+6.6%、そしてラッセル3000成長株上場投信はマイナス1.8%だ。この数値が意味するのは何だろうか?クランツ氏の話に戻ろう。

「割安株が買われ始めると、とうぜんの結果として株価が上がります。これは更なる買い手を集めることになり、株価の上昇が続きます。今年だけで、人気バリュー株のヒューレットパッカードは+13.7%、オフィスデポは+15.5%、そしてJCペニーは24.1%の上げです。」ようするに現在のアメリカ市場では、バリュー株が成長株化し、成長株がバリュー株化しているようだ。

なぜ格上げや格下げを気にするのか?

皆さんが既にご存知のように、株を分析するにはファンダメンタル・アナリシスとテクニカル・アナリシスの二つがあります。どちらが優れている、劣っているということではありませんが、デイトレードにファンダメンタル・アナリシスは役にたちません。その理由を見てみましょう。

ファンダメンタル・アナリストが丹念に調べるものに、決算報告書があります。この会社は儲けているのだろうか、それとも損を出しているのだろうか?もし儲けているなら、利益は増え続けているのだろうか、それとも減少の傾向にあるのだろうか?もし損を出している場合なら、損額は増大しているのだろうか、それとも損出に減少の兆しがあるのだろうか?

ZZZという会社があったとしましょう。先回の収益減少は一時的なものであり、今期は好決算が期待できます。この情報だけで、デイトレードができるでしょうか?答えは「ノー」です。もし、あなたと同様なファンダメンタル情報を持つ人たちが、寄付きで一斉に買いを入れたらどうなるでしょうか?たぶん、ギャップアップ(窓)を起こすことになると思いますが、ここでいきなり買っていいのでしょうか?

そんな時は、PER(株価収益率)に注意を払えばよい、と言うファンダメンタリストもいます。たしかに、PERは割高割安を測るために使われますが、これもデイトレードでは役にたちません。勢いのある人気株には、平均以上のPERがありますから、割高という結論になってしまい、とうぜん対象銘柄から外されてしまいます。

野村証券のホームページで「株価収益率」を検索すると、こんな回答が出てきます。「株価と企業の収益力を比較することによって株式の投資価値を判断する際に利用される尺度である。一般的には、市場平均との比較や、その会社の過去のレンジとの比較で割高・割安を判断する場合が多い。どのくらいの株価収益率が適当かについての基準はなく、国際比較をする場合には、マクロ的な金利水準は基より、各国の税制、企業会計の慣行などを考慮する必要がある。」

興味深いのは「どのくらいの株価収益率が適当かについての基準はなく」、の部分です。アナリストたちは、よくPERを引き合いにして、「割安だから買いだ」、といった意見を述べます。しかし、現実は適当な基準は無いわけですから、絶対的なモノサシではありません。米国が急騰するインターネット株に浮かれていた90年代、アナリストはこんな事を言っていました。「インターネット株は、従来のPERを当てはめることができない。たしかに、現在のPERは高すぎるように見えるが、将来の収益を考慮すれば、現在の株価は決して割高ではない。」

「鎌田さんは、なぜアナリストによる格上げや格下げを話題にするのですか?ファンダメンタルズはトレードに不要なんでしょう?」、といったメールをよくいただきます。その通りです。トレードにファンダメンタル的な情報は必要ありません。私が興味があるのは、格上げや格下げが作り上げるチャートパターンです。

格下げはギャップダウンを起こしますが、直ぐ一転反発することがあります。ファンダメンタルズでは買えないが、テクニカル的には買えることがあるわけです。ファンダメンタル分析を馬鹿にしているわけではありません。長期投資にファンダメンタル分析を欠かすことはできません。現に、ファンダメンタルを重視したwww.fool.com、という人気サイトもあります。肝心なことは、自分に合った投資方法や、トレード方法を見つけることだと思います。

世界経済にとって最高のシナリオ

ダウジョーンズ社の調べによれば、過去3回のワールドカップを振り返ると、優勝国の株式市場は、平均で10%の上昇があった。反対に決勝戦で敗れた国家の株式市場は、平均で25%という大きな下落があった。イタリアには嬉しい話だが、フランスには嫌なニュースだ。

しかし、こんな意見がある。「イタリアの勝利は、世界経済にプラス材料だ。」なぜだろうか?先ず、ルーベン・ヴァン・リーウェン氏(ABNアムロ社)の見方から紹介しよう。「ワールドカップ優勝が、国民に与える好影響を無視することはできません。間違いなく、イタリア人に大きな自信と希望をもたらせたはずです。まさかイタリアが勝つとは、全く思ってもいませんでしたが、これは世界経済にとって最高のシナリオです。」イタリア人が狂喜するのは誰にでも分かる。たぶん、リーウェン氏の指摘するように、イタリア経済が刺激されるかもしれない。だが、それが世界経済にどう関係するのだろう?

2002年、日本で開催されたワールドカップで優勝したのはブラジルだった。「優勝以来、ブラジルの株式市場は260%も上昇しています。ブラジルに敗れたドイツの株式市場は、今日まで51%の伸びですから、ひじょうにおだやかな成長速度です」、とゴールドマン・サックスのジム・オニール氏は言う。

2002年以来、イタリアの株式市場も、ドイツと同様に今日まで51%の上げを記録している。優勝という快挙があったにもかかわらず、月曜のイタリア市場は、たった0.4%の上昇を示し、今年全体では+2.5%という状況だ。一方、負けたフランスの月曜は+0.6%、そして今年ここまでの成績は5.7%増だから、イタリアを上回っている。

ここで一つ付け加えておこう。月曜のイタリア市場は+0.4%だったが、買いを集めた、ある銘柄がある。答えは、サッカーチームのユベントスF.Cだ。一日で6.9%の上げだから、投資家はサーカー銘柄に焦点を合わせたわけだ。

本題の質問に戻ろう。なぜイタリアの勝利は世界経済に好都合なのか?リーウェン氏の説明を、もう一度聞いてみよう。「イタリアはヨーロッパの中で、主要経済国家の一つに数えられていますが、「ヨーロッパの病人」というあだ名でも呼ばれています。2005年の国内総生産は、0.1%増という惨めな成長です。

イタリアがここまで弱ったのは、柔軟性を欠く労働市場が問題になり、世界での競争についていけなくなったためです。ワールドカップでの勝利は、イタリア人の自信をよみがえらせ、政府は積極的に経済復興に向けて動きだすことでしょう。企業の設備投資も進むことになりそうですから、労働市場問題も改善されていくでしょう。」

ヨーロッパの病人イタリアが健康になれば、個人所得や個人消費も上がる。ひょっとしたら、多大な貿易赤字を抱えるアメリカが、イタリアの回復を一番期待しているのかもしれない。

人工知能がウォールストリートを支配する!?

週末、ゆっくりと新聞や雑誌を読む投資家が多い。面白そうな銘柄探しだけが目的ではないが、チャットルームでは、ニューヨークタイムズの記事が話題になっていた。「なぜコンピューターは、多くのファンドマネージャーが知らないことまで知っているのか?」、というのがタイトルの直訳になる。どう考えても、ファンドマネージャーを称賛しているとは思えない。報道したのはズービン・ジェルベ氏、要点を拾ってみよう。

マトリクスなどの映画で分かるように、私たち人間は人工知能によって運命を左右されることを好まない。それなら何故、大切な投資資金をコンピューターに任せるのだろうか?答えは、それが効果的だ、という現状があるからだ。

クアントファンドと呼ばれる、コンピューターが選び出した銘柄を中心に投資するミューチュアルファンドが存在する。過去3年間を見てみると、一般のファンドを上回る成績を上げ、投資者たちの関心を集めるようになった。

1985年、バンガード・グループはクアントファンドを開始した。2002年、40億ドルだった投資資金は、2005年末、200億ドルに膨れ上がっている。現在、ミューチュアルファンドが抱える総資金は9兆5000億ドルと言われるから、クアントファンドが運用する金額は微々たるものだ。しかし、バンガードの実例は人工知能を無視できないものに変えた。

クアントファンドには2種類ある。銘柄の選択から、売買までの全てをコンピューターが行うもの。もう一つは、データをコンピューターに分析させて、有望な投資銘柄リストを作る。そして、最終的な銘柄選択と売買タイミングは人間が決定する。バンガード・ストラテジック・ファンドが前者に当たり、今年の成績は+5.9%だ。後者の例としては、クアント・フォーリン・バリューファンドがあり、今年+11.1%の成績を上げている。

クアントファンドの強みは、何と言ってもスピードだ。膨大な情報量を、迅速正確に分析できるから、人間は絶対に勝つことができない。たとえば、チャールズシュワブ社は、コンピューターを駆使して、約3000銘柄のファンダメンタルズとテクニカル要素を分析して、各銘柄にAからFまでの評価付けをしている。その結果、ファンドマネージャーは評価の高い銘柄を簡単に選ぶことができるから、リスクの減少に結びつくわけだ。

コンピューターには感情が無いのもクアントファンドの良さだ。ダメなものは直ぐ損切ってくれるから、難平買いをして、大きな穴を開けるようなことは無い。それに、コンピューターは給料やボーナスも不要だからファンド会社は経費を節約できる。

もちろん、人工知能には大失敗もある。コンピューターが政治的要素を分析できなかったばかりに、大手ヘッジファンド、ロングターム・キャピタル・マネージメントが1998年に破綻したことを覚えている方々もいることだろう。モーニングスター社の、グレッグ・カールソン氏はこう語っている。「全自動で、どんな時代にも適用できるクアントファンドなどありえません。既に起き始めていることですが、人間が絶えず新しい情報をコンピューターにインプットしていかないと、人工知能は使いものになりません。3年前のプログラムでは、今日のマーケットで利益を上げることはできません。」

コントラリアンが薦める8銘柄

株価は決して適切に動くことは無い、と言われる。予想以上に良い決算が発表されると、株は異常なレベルまで買い煽られ、著名アナリストによる格下げは、株価を一日で半減させてしまうこともある。こんな投資者たちの行動が証明していることは、圧倒的な買いは好材料発表直後に起きやすい、という事実だ。

コントラリアンと呼ばれる、逆張り投資家がいる。人の反対を行くやり方だが、だからといって全ての悪材料で買うわけではない。コントラリアンが興味があるのはニュースそのものよりも、感情的になった大衆が作り出す値動きだ。

「逆張りを中心にしたニュースレターで、ターンアラウンド・レターがあります。成績ですが、1988年から今日までを見ると、毎年平均で14.7%の利益を上げています」、と語るのはハルバート・ファイナンシャル・ダイジェストのマーク・ハルバート氏だ。比較のために一つ記しておこう。同期間、ウィルシャー5000指数(米国に上場されている株を全て含む総合指数)は、年平均で11.8%の伸びがあった。ハルバート氏の話を続けよう。

「最近問題になっているのが、経営陣によるストックオプションの行使です。公平な行使は、現行の株価を基準にして行われなければいけませんが、報道されたように、大手企業の経営陣たちは、日付をさかのぼらせてオプションを行使していたのです。

7月号のターンアラウンド・レターも、不公平なストックオプションの行使を批判しています。しかし、エディターのジョージ・パットナム氏によれば、不正な行使は許されるべきではないが、今回のストックオプション問題は、短期的に企業イメージを傷つけるだけにすぎない、とのことです。

多くのアナリストは賛成しませんが、パットナム氏は更にこう述べています。「経営陣による、不正なストックオプション行使のニュースは、株価を大きく下落させることになった。しかしながら、コントラリアンの立場から検討すると、これは買いのチャンスだ。」

ようすに今回のスキャンダルで、極端なレベルまで売り叩かれた銘柄の中に買いチャンスがある、とパットナム氏は言っているわけですが、実際にはどの株が良いのでしょうか?パットナム氏は、まだ買い推奨を出していませんが、現在検討中の銘柄として8銘柄あげています。さっそく紹介しましょう。アポログループ(APOL)、ブロードコム(BRCM)、ホームディポ(HD)、マカフィー(MFE)、メダレックス(MEDX)、マイクロソフト(MSFT)、オープンウェイブ・システムズ(OPWV)、そしてビテッセ・セミコンダクター(VTSS)です。」

おびただしい数のニュースレターがあるが、ハルバート氏によればターンアラウンド・レター以外にAPOLを推奨するのは2紙、BRCMは1紙、HDは14紙、MFEは2紙、MEDXは1紙、MSFTは16紙、OPWVは3紙、そしてVTSSは0紙、ということだ。

40%の失敗

トレーダーなら、必ず一度や二度は悪夢のような日がある。ほとんどの人たちは、そこで挫折してしまうが、その苦しみを乗り越え、更に成長したアメリカの現役トレーダーを紹介しよう。

ジョン・エミリー氏は、カリフォルニア州に住むデイトレーダーだ。「トレードを始めて2年ほどたった、1999年の春でした。大した儲けや損も無く、とにかく何とか泳いでいる、といった状態だったと思います。ですから、ここで一発勝負してやろう、といった気持ちがあったことは確かです。」

エミリー氏、どうやら焦り気味だったようだが、話を続けよう。「私は単純なトレード方法を使っていました。チャートには20にセットした移動平均線を入れました。株価には、移動平均線に戻る習性がありますから、あまりにも大きく上に離れている時は売り、逆に極端に下に乖離している場合は買いです。

出来高もトレードには大切な要素ですから、銘柄は取引の頻繁にある、S&P500指数に属する銘柄を選びました。それからもう一つ、当時の私はファンダメンタルズ的なことにも注意を払っていました。売上や収益がしっかりした会社だけが買える、と信じていましたから、どんなに割安に見えても、ファンダメンタルズの悪い会社には手を出しませんでした。

さて、問題の1999年の春ですが、アナリストたちはこんなことを言い始めたのです。「ルーセント、ノーテル・ネットワーク、PMCシエラ、そして同業種の会社では在庫がだぶつき始めている。この状況は更に悪化することが予想されるから、売上の下降原因になるだろう。」

もちろん、私はアナリストの言葉を重要な情報として扱いました。ルーセント、ノーテル・ネットワーク、PMCシエラなどの、インターネット装置を製造する会社では在庫が増え続けている、というのですから売り材料です。当然の成り行きですが、私はルーセントやノーテルの売りチェンスを待つことにしました。

繰り返しになりますが、株価が20日移動平均線より、かなり上にあるものを売るのが私のやり方です。1999年4月、ついにルーセントの空売りチャンスが訪れました。株価は大きく20日移動平均線から乖離して、明らかに割高レベルです。買われ過ぎ、と判断した私は先ず48ドル近辺で空売りました。思ったように直ぐ下げなかったので、マーケット終了間際に更に空売りを入れました。

翌日です。ルーセントは、1株を2株に分割するストック・スプリットを発表しました。分割と聞いただけで買い材料になった頃ですから、もちろんルーセントには買いが殺到しました。ルーセントは在庫問題がある!私は更に空売り株数を増やしました。

そしてその翌日、口座にある空売り株数を見て、私は本当に怖くなりました。いままで、こんなに大きく空売ったことなどありません。相変わらず株価は上げています。恐怖はパニックに変わりました。完全に耐え切れなくなり、私は成り行きで全株買い戻しました。口座資金は40%減、膨大な投資資金が消え去りました。」

往々にしてあることだが、ひにくなことにエミリー氏が買い戻した直後、株は下げ始めたという。もう少し我慢できれば利益になった、というからいっそう気分が悪くなってしまう。この大失敗で氏が学んだのは、リスク管理の重要性だ。

<< < 70  71  72  73  74  75  76  77 >>

本マガジンは客観的情報の提供を目的としており、投資等の勧誘または推奨を目的としたものではありません。各種情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。これらの情報によって生じたいかなる損害についても、当社は一切責任を負いかねます。

発行:株式会社ブレイクスキャン 監修:株式会社デイトレードネット