US Market Recap

引き続き注目されるエネルギー・セクター

神は六日間で天地万物を創造し、七日目に休んだ。しかし、連銀が金利引き上げを停止するには二年の月日がかかった、と経済コラムニストのキャロリン・バウム氏は言う。この停止は単なる一時停止なのか、それとも金利引き上げ政策が完全に終了したのかは、現時点ではだれにも分からない。

次々に発表される、大手証券会社のアナリストたちの意見を読んでみると、考え方は二つに分かれる。先ず、ゴールドマンサックスのジャン・ハットズィウス氏が述べる、「金利引き上げサイクルは終わり、連銀は来年早々に金利を引き下げる」、というもの。そして、ベアスターンズのエコノミストが主張する、「今回の停止は単なる一休みで、連銀は早ければ10月に再び利上げを実行する」、という見方だ。

どちらにしても、18回連続の金利引き上げが無かったことは事実だから、私たちの投資姿勢も変える必要があるだろうか?そんな質問に対する回答が、いくつかビジネスウィーク誌に載っているから、さっそく見てみよう。

マーケットは不透明感を嫌う。米国経済は減速の兆しが見え、先日発表された声明の中でも、「インフレ圧力は減退するだろう」、と連銀は述べている。しかし、この景気冷え込みが、どの程度企業収益に悪影響をもたらすかがハッキリしない。連銀はインフレに対して楽観的な見方を示しているが、連銀の見解が間違っていることも考えられる。

インフレ、米国経済、それに企業収益の三つに、明確な見通しがたたない今日、投資者は攻撃的な投資をするのではなく、守りを固めることが重要だ。「警戒姿勢を崩してはいけません。強い向かい風ですから、マーケットは方向性の無い横ばい状態が続くことでしょう」、とスタンダード・アンド・プアーズ社のアレック・ヤング氏は言う。

どのセクターに投資するべきだろうか?中東問題、数日前はBPアラスカ油田閉鎖、ということで引き続きエネルギー・セクターが狙えるようだ。エクソン、シェブロンなどの大オイル会社は既に高値をつけているが、まだ割安なオイル銘柄がある、とファースト・アメリカン・ファンズのデービッド・チャルプニック氏は言う。「アパッチ・オイル(APA)はまだ比較的割安です。現在オイル価格は76ドルほどですが、アパッチはオイルが45ドルに下がっても大丈夫です。」

7月31日、ワコビア証券のアナリストがヘルスケアセクターに関する好レポートを発表したように、ヘルスケア銘柄は保守的投資の代表だ。エリックバーデン氏(ファンド・マネージャー)によれば、コベントリー・ヘルスケア(CVH)、ユナイテッド・ヘルスグループ(UNH)、それにエトナ(AET)が魅力的だと言う。個別銘柄に投資したくなければ、ヘルスケアの上場投信、ヘルスケア・スパイダー(XLV)を買うのも一案だ。

顕著になり始めた中国の労働者不足

夏本番、しかし北米の小売業者はクリスマスの心配をしている。理由は中国だ。当てにしていた低労働コストが見込めなくなり、おもちゃ、服、靴などを安く入手するのが難しくなってしまった。カナダの玩具メーカー、スピンマスターのハロルド・チズィック氏はこう語る。「第4四半期の需要は予想以上に伸びそうなので、クリスマスシーズン用の玩具増産を検討していました。しかし、中国の人件費問題が浮上し、増産計画を中止する可能性が出てきました。」

特に影響を受けるのは、スピンマスターのような玩具メーカーだ。統計よれば、全世界の90%以上の玩具が中国で製造され、更に53%の履き物、50%の衣料品、そして16%の家電製品も中国で生産されている。正に世界の工場だ。

11月、12月は玩具業界にとって、最も重要な季節だ。年間に製造される70%以上の玩具がこの二カ月間に小売店に発送され、おもちゃの年間売上の50%以上が11月、12月に集中している。それだけに、中国の労働コスト問題は、玩具業界に大きな打撃を与えそうだ。

中国政府の発表によれば、玩具工場や家電製品工場での人件費が上がっているのは、頼りにしていた出稼ぎ労働者数の減少が原因だという。

衣料品と履き物業界を代表する、アパレル・アンド・フットウェア協会のネイト・ハーマン氏は、「中国の労働コスト上昇が顕著になった今日、アメリカの企業は製品の製造を中国からベトナムに移し始めています」、と述べている。もちろん、全ての業者がベトナムに工場を確保できているわけではないから、多くの玩具業者はクリスマスシーズンがギリギリになるまで、中国の工場への注文を遅らせるようだ。しかし、そうなると中国側からの発送も時間どおりにいかなくなることが考えられるから、どちらにしても北米の玩具業者は頭が痛い。

なぜ出稼ぎ労働者不足が中国で起きているのだろうか?ニューヨークのチャイナ・レーバー・ウォッチ社のレポートによれば、第一の原因は中国政府が農業政策を改善したためだ。そのため農業に従事する労働者の賃金が上がり、農村に住む労働者たちは、玩具工場などに出稼ぎに行く必要がなくなった。もう一つの理由は、1970年代の終わり頃から実施された出産数の制限だ。子どもは一人だけ、という中国政府の指示で、明らかにに若い世代の労働者が減っている。そのため2015年に労働者数がピークになり、それ以後は減少基調に入ることが予想されている。

安い労働コストを求めて、外国企業は中国から本格的に撤退して、ベトナムに進出するのだろうか?「米国企業は、インフラ投資、技術投資といった形で、膨大な資金を中国に投入しました。そう簡単に撤退することはありえません」、とビジネス・コンサルタントのヘリエット・ワイス氏は言う。

設備投資に消極的なオイル会社

アラスカの油田操業を一時停止させたBPは、なぜパイプラインの腐食に、もっと早く気がつかなかったのだろうか?老朽化するパイプラインは、BPだけの問題ではなく、他社にも広がっているのだろうか?「こんなことが起きるのは、以前から分かりきっていたことです」、と言うのは天然資源保護協議会のチャールズ・クルセン氏だ。「オイル会社は、設備投資を怠っていましたから、今回の事故は当然な結果です。」

オッペンハイマー社のアナリスト、ファデル・ガイト氏もクルセン氏に同意する。「オイル会社が、インフラ投資に消極的なことは有名です。パイプラインだけに限らず、他のプラットフォームや油田機器を十分に管理していくだけの必要経費を欠いているのが現状です。BPはアラスカで、もう30年以上も操業しています。パイプラインが古くなり、腐食するのは自然な成り行きです。これは、他のオイル会社への警報になったはずです。」

ここまで事態がひどくなるまで、何の処置もしなかったBPに対して、オイル業者は驚きの声をあげている。「最後にパイプラインを検査したのは、いつだったのでしょう?こんなに遅くなるまで、腐食を発見できなかったのが不思議です」、とエネルギー・コンサルタントのジョン・ヘロルド氏は言う。

BPのスポークスマン、スコット・ディーン氏の説明はこうだ。「我が社は2006年度だけでも、アラスカ油田のパイプラインに7100万ドルの資金を設備費として投入している。これは、2005年度の金額を15%上回るものであり、2001年度を80%も上回っている。」

ディーン氏によれば、BPが最後にパイプラインの内部を、スマート・ピッグと呼ばれるセンサーを使って検査したのは1992年のことだ。通常、スマート・ピッグは地下を走るパイプラインに使用され、アラスカのように地上を走るパイプラインに利用されるのはめずらしいことだという。パイプラインの外面は頻繁に点検されていたようだから、今回の事故はBPにとっても驚きであった、とディーン氏は言う。

最終的に、BPは16マイル(約26キロ)におよぶパイプラインを取り替えるが、工事に必要な日数や経費に関しては、何の発表もされていない。エネルギー情報局の推定によると、BPのアラスカ操業がフル回転に復帰できるのは、2007年の2月頃になるようだ。

なぜオイル会社は積極的に設備投資をしないのだろうか?ガイト氏の説明を記そう。「以前のように、オイル価格が低い時は、オイル会社は設備投資をしたくありません。資本収益率が悪くなるからです。今日のように、オイルが高くても設備投資はできません。こんなにオイルが値上がっているのですから、一時操業を止めて設備の点検などしたら、大きな利益を逃がしてしまいます。」

大砲の音は買い、勝利のトランペットは売り!

ベン・スタイン、と聞いただけでは首をかしげる人もいる。しかし、コマーシャルに出演している氏だから、アメリカ人にはお馴染みの顔だ。コマーシャルに出ているからといっても、スタイン氏の本業はタレントではない。どことなく気難しそうな雰囲気が示すように、氏の肩書きは弁護士、そして経済学者だ。

先々週、経済番組の討論会に参加したスタイン氏は、その時の模様をこう語っている。「今、株を買うべきか、が司会者の発した質問でした。悪化する中東情勢、そして不透明な金利政策などを理由に、出席者のほぼ全員が株に対して消極的な意見を述べました。特に、中東での戦争が更にエスカレートして、オイルの輸送網に支障を与えるような事態が起きれば、オイルは大幅な上昇になりますから、株はますます買えない、というわけです。

もっともらしい意見ですが、私にはどうもシックリしません。株を買う良いタイミングは、株価が安い時に買うことです。売り手がマーケットに殺到し、皆が狼狽している時こそが、絶好の買いチャンスです。恐怖に包まれた投資者は、株価の正当評価額などを気にしているヒマはありません。とにかく持ち株を投げることだけに専念していますから、株価は超格安レベルに下落します。

イスラエル上空を、ミサイルが飛んでいてはB社の株は買えない、と人々は言います。たしかに投資心理は変わりましたが、B社の内容には変化がありません。どちらにしても、遅かれ早かれ、投資心理が好転する日がやって来ます。永久な停戦はありえないにしても、中東紛争も停止する日がやって来ます。そして、投資者も株式市場に戻って来ます。しかし、そのような状況下では、割安な株を手に入れることは無理です。

もちろん、高いところで株を買っても儲けることはできますが、割安株を買ったほうが有利な投資になることは言うまでもありません。次のことを、ぜひ覚えておいてください。「大砲の音は買い、勝利のトランペットは売り。」

マネー・マネージャーの、フィル・デムス氏はこんな統計を発表しています。第二次大戦後、米国が体験した不景気時の安値で株を買ったとすると、株は10年以内に倍になっています。逆に、好景気のピークで株を買ったとすると、10年で得られる利益は75%程度です。

いや今回は違う。中東での紛争は世界大戦に広がり、人類は滅亡する、と主張する人もいます。もちろん、人類が滅亡してしまえば株など無意味ですが、そんな極端な状況が訪れないかぎり、「大砲の音は買い、勝利のトランペットは売り」が鉄則です。」

スタイン氏は、更にこう付け加える。「もしあなたがアドバイザーなら、相場環境の悪い今こそ積極的に、株の買いを大衆に勧めるべきです。」

ハリケーン銘柄、そして今週の焦点

8月、9月はハリケーンの季節だ。去年はカトリーナのおかげで、石油精製所の集中している、メキシコ湾岸州が大きな被害を受けた。おかげで全米のガソリン価格が値上がり、1リットル90円以下は昔の話になってしまった。そこで注目されるハリケーン銘柄だが、何を買ったら良いだろうか?もちろん、アナリストは既にあれこれと銘柄をあげている。しかし、いつもアナリストの話を聞くだけでは面白くない。

証券会社やファンド会社に勤務していなくても、個人投資者の中には、ユニークなアイディアを持っている人たちがいる。ブログでハリケーン銘柄を紹介している人も多いから、アナリストは幼稚なことが言えなくなった。経済コラムニストのジェームズ・アルツシャー氏は、ヤサー・アンワー氏のブログを土曜のコラムで取り上げた。

アンワー氏はカナダに在住する、ヨーク大学の学生だ。2004年から株を始め、メリルリンチで実務研修、そしてカナダの証券ライセンスも取得した。ブログで、アンワー氏は五つのハリケーン銘柄をあげている。アルツシャー氏は、「excellent(素晴らしい)」と形容したくらいだから読んでみる価値がありそうだ。

さて、肝心な五つの銘柄を見てみよう。全て小型株だ。先ず、ホーム・ソリューションズ(HSOA)、ゴールドフィールド(GV)、グローバル・インダストリーズ(GLBL)、インペリアル・インダストリーズ(IPII)、そしてブーツ&クーツ(WEL)だ。

ここで話題を今週の焦点に移そう。なんと言っても、火曜のFOMC(連邦公開市場委員会)が目玉だ。金利引き上げ無し、を期待するマーケット関係者が多いから、今回のFOMCは特に注目されている。世界最大の債券ファンドマネージャー、ビル・グロス氏も金利引き上げ無しを主張する一人だ。

グロス氏によれば、米国住宅市場の冷えこみが更に加速するようなら、連銀は2007年早々、金利を引き下げる可能性がある。これまでの歴史を振り返ると、連銀は金利を上げ過ぎる傾向があり、一番最後の利上げから6カ月後に金利引下げが始まる。

金利引き上げ一時停止論が主流になった一原因は、金曜に発表された雇用統計(7月分)だ。非農業部門新規採用者数は+11万3000と発表され、アナリストが予想していた14万2000に満たなかった。失業率も4.6%から4.8%に上がり、米国経済の冷えこみが見えている。

金利引き上げが終了すれば、マーケットは上昇基調に入るだろうか?投資戦略家の、バリー・ハイマン氏はこう語っている。「金利問題の心配が無くなるのは、投資者にとって嬉しいことです。しかし、マーケットの下げ基調は変わらないことでしょう。一転反落した金曜のマーケットが示すように、投資者たちは経済減速の現実に直面することでしょう。」

最悪なパターンでの損?

株式投資で成功するには、二つの鉄則がある。第一のルールは、決して資金を減らさないこと。第二のルールは、第一のルールを決して忘れないこと。これは、大投資家ウォーレン・バフェット氏の言葉だ。もちろん、損を絶対に出すな、と言っているわけではない。問題は、どんないきさつで損を出したかだ。

「株式市場には、損がつきものですから、投資者は損を100%防ぐことはできません。正しいやり方で失敗するのは仕方ありません。しかし、最悪なパターンでの損は絶対に出してはいけません」、と語るのはフール・ドット・コムのデービッド・マイザー氏だ。最悪なパターンでの損?氏の話を続けよう。

「資金を減らすな、とバフェット氏は強調していますが、これは短期的な口座残高の浮き沈みを指摘した言葉ではありません。最近のマーケットは、変動率が高いですから、とうぜん口座残高も影響されます。バフェット氏が言っているのは、株式投資参加不可能になるような、大きな穴を口座に開けるな、ということです。

こんな統計があります。個人投資家は、小型株(時価総額16億ドル未満)に集まる傾向があります。テレビやニュースレターで、頻繁に小型銘柄が推奨されますから、当たり前の結果かもしれません。ノースウエスタン大学の調べによれば、人気番組「マッド・マネー」で買いが推薦される小型株は、なんと12日間で6.6%の下落です。言うまでもありませんが、こんな買い推奨に2度3度と投資していると、損は急ピッチに増大していきます。

「マッド・マネー」を非難しているのではありません。人気番組で株が紹介されると、翌日買いが殺到し、株は一日で割高になってしまいます。これでは急落するのが目に見えています。先ずバフェット氏のように、銘柄を徹底的に分析しなければいけません。テレビで見た、という衝動的な買いでは、肝心な分析が全くされていません。これでは、株価が割高になっても気がつくことはないでしょう。

資金を減らさないためには、三つのことを実行する必要があります。1、銘柄を徹底的に調べること。2、割高になったら直ぐ売ること。3、割安になるまで買わないこと。」

ここで思い出すのが、木曜に起きたスターバックスの下げだ。アメリカは、異常な暑さに襲われている。冷たい飲み物が飛ぶように売れているから、スターバックスのコールド・ドリンク好売上を期待しての投資者が増えていた。しかし、会社からの発表は正反対だった。

スターバックスの売上7月分は、たった4%の伸びで、予想された6%から7%増に満たなかった。会社側は、こんな説明をした。「売上不振は、この猛暑です。フラップチーノ系のコールド・ドリンクにお客さんが集まりましたが、コールド・ドリンクはコーヒーより時間がかかります。そのため店内に長い列ができ、急いでいる人が店を避けたようです。」

テクニカルアナリストが注目する20月移動平均線

欧州中央銀行、そしてイングランド銀行による金利引き上げ。金曜は米国雇用統計の発表、更に来週はFOMC(連邦公開市場委員会)もあるから投資者は心配だ。こんな不安定な状況で、投資アドバイザーは、どんなことを推薦しているのだろうか。ビジネスウィーク誌に掲載された、クリス・ジョンソン氏(シェイファーズ・インベストメント・リサーチ)の意見を少し見てみよう。

7月末、インフレに関するバーナンキ連銀議長のコメント、それに第2四半期のGDPはマーケット上昇材料になった。これで8月に利上げは無い、と判断した人が増えたためだが、それでは8月に利上げが実施されたらどうなるだろうか?失望売りを呼ぶのではないだろうか?まだマーケットは20月移動平均線に支えられているが、失望売りが強烈なら、ブレイクダウンの可能性がある。

全体的に、投資者たちは悲観的だ。ミューチュアルファンドへの資金流入量、株オプションのプット・コール・レシオ、ボラティリティ指数などからも分かるように、大衆は株式市場に対して悲観的な見方をしている。ファンダメンタル的に買える材料も乏しいから、連銀による金利引き上げ政策終了が大きな鍵になると思う。

決算シーズンもほぼ終わり、65%に近い企業は予想以上の利益を発表した。今年後半の見通しも思ったほど悪くないが、投資者の目から見ればガッカリな内容だ。それだけに、来週のFOMCから、はっきりとした連銀の金利政策が読めれば、投資者はマーケットに戻ってくるだろう。もちろん、たとえFOMCが好材料になっても、多くのレジスタンスレベルが控えているから、一本調子の上げはありえない。

現在のマーケットが不安定だからといって、買えるものが全く無いわけではない。人気の無いセクターだから、買いを推薦するアナリストが少ないが、電話会社や電力会社には魅力的な銘柄がある。例えば、電話ならAT&T(T)とベル・サウス(BLS)の二社、そして電力ならアメリカン・エレクトリック・パワー(AEP)だ。

テクノロジー銘柄は買えるだろうか?かなり下げた銘柄も目につくが、大型テクノロジー銘柄は、まだ買い時期が来ていない。たとえば、95%のアナリストが買い推奨をマイクロソフトに出していたが、その数値は70%台に下がっている。しかし、まだ高すぎる。半数以上のアナリストが、ホールド(中立的立場)以下の格付けをしないかぎり、完全に売り物は出尽くしたとは言えない。

マイクロソフト以外でも、インテル、シスコ、デル、ヤフー、グーグルなどは空売り残が少なすぎる。これらの銘柄に、現在ある空売りを全て買い戻すには二日とかからない。買い候補になる銘柄には、空売り買い戻しに、通常6日から7日の日数が必要だ。

注:「マーケットは20月移動平均線に支えられているが」、とジョンソン氏が指摘するマーケットはS&P500指数のこと。しかし、既にナスダック指数は20月移動平均線を割っているため、氏はS&P指数のブレイクダウンを心配している。

バックミラーに頼る投資者たち

1999年に戻ってみよう。インターネット銘柄の棒上げで、口座残高は予想以上に膨れ上がっている。この辺が潮時だろう。いくらなんでも、この上げ方は普通ではない。明日売ることにしよう、と思案していると、テレビからはアナリストの強気論が流れてくる。おまけに、自分の持つ株にも机を叩きながらの買い推奨だ。もうしばらく売りは控えよう。それより、少し買い足したほうが良さそうだ。

投資の秘訣は安く買って高く売ることだ、という言い古された言葉がある。なぜ、それを実行するのは難しいのだろうか?根本的な理由は、安く買い高く売るには、大衆との逆行動が要求されるからだ。安いものには悪材料が多いから、買うにはかなりの勇気がいる。高い株のほとんどは人気銘柄だから、どうしても誘惑に負けて買ってしまう。

冷静になることが重要なのだが、感情を支配するのは容易なことではない。そこで、心理学者が教える、感情の犠牲にならない方法を、二つ紹介しよう。

90年代末のインターネット銘柄人気でも分かるように、興奮した投資者たちは、現在ホットなものだけに手を出すようになる。言い方を換えれば、バックミラーばかりに気を配って、全く前を見ない投資者になってしまう。

今日の人気株が人気株になったのは、過去の成績が優秀だったからだ。1年間で3倍、などと大々的に報道されると、どうしても買いたくなるが、報道されているのは以前の華々しい結果にすぎない。しかし、人気株やホットな投資を追うようになると、投資に肝心な将来性を忘れてしまう。多くの投資者は、最近の成績が優れたミューチュアルファンドばかりに投資するが、これでは高値をつかむだけで、決して良い結果が得られない。それでは、どうしたらよいのか?

ファンドの説明書にも明記されているが、過去の好成績は今後も続く保証は無い、という事実を思い出そう。そして、資料を集めて、投資の将来性を冷静に判断しよう。ファイナンシャル・アドバイザーのマーガレット・スターナー氏も述べているが、去年のスターは今年もスターになる確率は低い。

個人投資家、特に男性に顕著に見られるのが自信過剰だ。ブラッド・バーバー氏と、テランス・オデアン氏がまとめたレポートによれば、自信過剰は頻繁すぎる売買につながる。現に、男性の取引回数は女性投資家を45%上回り、当然の結果として手数料が利益を2.45%減らしている。

男性投資家は、自信過剰を指摘されることを好まないが、バーバー氏はこんな提案をする。「長期的な視野で、頻繁な取引が口座に与える悪影響を理解することが先決です。1万ドルで始めた投資に、毎年7%の利益があったとしましょう。典型的な女性投資家なら、30年後には4万6400ドルになっています。しかし、売買の激しい男性の場合は3万8000ドルにしかなりません。」

次の買収ターゲットはこれだ!?

マーケットがパッとしなくても、買収ニュースなら、株価は大きく跳ね上がる。どうやったら、買収ターゲットになりそうな銘柄を見つけることができるだろうか?投資アドバイザー、ハリー・ドマッシュ氏の方法を紹介しよう。

最近、二つの買収ニュースが大々的に報道されたが、この二つは同質な買収ではない。アドバンスト・マイクロ・デバイシーズ(AMD)が、ATIテクノロジーズ(ATYT)を買ったのは、あくまでも戦略的な理由だ。ATIの製品が手に入れば、AMDはライバルのインテルに、更に接近することができる。

投資グループが、病院を経営するHCAインク(HCA)を買ったのは、将来的に期待できる大きな利益だ。全く戦略的な買収ではないが、私たちが探し当てたいのはHCAのような銘柄だ。いったいHCAには、どのような魅力的要素が隠れていたのだろうか?言い換えれば、買収される銘柄には、どんな共通点が存在するのだろうか?

先ず指摘したいのは、企業サイズだ。IBMのような大企業では、投資グループによる買収など考えられない。最近買収された企業の時価総額を見てみると、ほとんどが10億ドルから50億ドルの間だ。

投資グループは、できるだけ短い期間で利益を上げることが目的だから、現在収益状況の悪い企業を避ける。ここで問題になるのが、株主資本利益率(ROE)だ。この数値がプラスなら企業が儲かっている証拠になり、急成長中の企業なら、ROEが15以上の高水準に達することもある。買収される企業には、少なくとも5以上のROEがある。

ROEが良くても、キャッシュフローが悪くては話にならない。そこで投資者は、株価キャッシュフロー倍率が20以下の企業に焦点を合わせることが大切だ。

株価にも十分注意を払わなくてはいけない。人気株は超割高レベルにあるのが普通だから、どんなに好企業でも、連日高値更新では買収ターゲットにならない。投資グループも、割安株を手に入れたいから、株価は最近5年間の高値から30%以上の下げていること、しかし高値から60%以上下げているものは無視する傾向がある。

更に、株価売上高倍率は2以下、アナリストによる格付け平均はホールド(買いと売りの真ん中)以上、向こう5年間の一株利益成長率は年間10%以上、しかし15%以下、そして負債株主資本比率は0.5以下であることが好ましい。

それでは、上記条件を満たす銘柄を記そう。

Applebee's International (APPB), Avnet (AVT), BJ's Wholesale Club (BJ),
Borders Group (BGP), Brunswick Corp (BC), Dollar General (DG),
Family Dollar Stores (FDO), Henry Schein (HSIC), Hewitt Associates (HEW),
J.B. hunt Transport Services (JBHT), JLG Industries (JLG), Komag (KOMG),

(注:これらの銘柄は買い推奨ではなく、投資の一アイディアであることをお断りしておきたい。)

ビジネス・トリビア

トリビアを辞書で調べると、くだらないこと、瑣末なこと、雑学的な事柄や知識、という説明がされている。知っていても役にたたない事かもしれないが、けっこうトリビアには面白いものがある。そんなわけで、ビジネス・ウィーク誌に載ったビジネス・トリビア・クイズをいくつか紹介しよう。(正解は一番下)

1、優良企業100リストに入る企業で、初めて有名人をスポークスマンとして採用したのはどこ?

A、ナイキ
B、コカコーラ
C、ティファニー
D、アメリカン・エクスプレス

2、トップ企業100リストの中で、最も古いブランド名はどれ?

A、コカコーラ
B、マルボロ
C、Moet & Chandon ドンペリニョン
D、JPモルガン

3、トップ10企業の中で、一番新しいブランド名はどれ?

A、ノキア
B、マイクロソフト
C、インテル
D、IBM

4、商標価値が、ここ1年間で最も大きく上昇したのはどれ?

A、グーグル
B、スターバックス
C、イーベイ
D、モトローラ

5、ここ一年間で、商標価値が一番下がったのはどの会社?

A、ギャップ
B、フォード・モーター
C、コダック
D、ハインズ

6、最近6年間で、最も成長率の高かった企業はどれ?

A、アップル・コンピュータ
B、ノキア
C、サムスン
D、インテル

7、アメリカ以外の国で、最も多くのブランド名を生み出した国はどこ?

A、フランス
B、日本
C、スイス
D、ドイツ

8、1906年に発売された商品には、会社創立者のサインが入っていた。それはどの会社?

A、コカコーラ
B、ケロッグ
C、リグリー
D、ディズニー

9、ブランド商品は、どの製品に多い?

A、コンピュータ・ハードウェア
B、自動車
C、ダイヤモンドなどの高級品
D、金融商品

10、ピアノで有名なスタインウェイだが、スタインウェイが重要な役割を果たしたのはどの企業?

A、モトローラ
B、メルセデス・ベンツ
C、Moet & Chandon ドンペリニョン
D、ソニー

解答

1、Bのコカコーラ。
1893年、ミュージック・ホールで活躍していた、ヒルダ・クラーク氏がスポークスマンに選ばれた。

2、CのMoet & Chandon ドンペリニョン。
創立されたのは1743年。

3、Bのマクロソフト。
ビル・ゲイツ氏が、マイクロソフトを始めたのは1975年。インテルが創立したのは、その7年前だ。

4、Aのグーグル。商標価値は46%の上昇だ。2位はスターバックスの+20%、3位イーベイとモトローラが、それぞれ18%の伸びだ。

5、Aのギャップ。商標価値は22%の下落だ。2位はフォード・モーターの16%減、3位コダック12%減、そして9%減のハインズへと続く。

6、Cのサムスン。総合成長率は154%だ。

7、Dのドイツ。日本は2位。

8、Bのケロッグ社。コーンフレークの箱には創立者、W.Kケロッグ氏のサインが印刷されていた。

9、Bの自動車。最近仲間入りしたのはレクサスだ。

10、Bのメルセデス・ベンツ。1888年、スタインウェイは米国での販売権を買い、ニューヨークのロング・アイランドに、ダイムラー・モーターを創立した。

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