US Market Recap

不景気より恐ろしいもの

米国経済悲観論なら、ニューヨーク大学のノリエル・ロビニ氏の話を聞くのが一番だ。「金利引き上げ政策の結果、住宅市場は単に冷え込むだけではなく、暴落の可能性があります。オイルやエネルギー価格の上昇は、スタグフレーションを引き起こすことが考えられます。借金だらけの消費者、それに膨大な貿易赤字もありますから、ドルは大きな下落になるでしょう。」

「ロビニ氏の暗い予想は、昨日今日に始まったものではありません」、と言うのはエコノミストのマイケル・マンデル氏だ。「2004年、氏は世界的な不況を予測し、今回の予想はアメリカ経済が2007年までに極度の不景気に陥る、というものです。もう長いこと悲観論を唱えているロビニ氏ですが、今度も予想は外れるのでしょうか?」

マンデル氏は、ロビニ氏ほど米国が不景気に陥ることを気にしていない。マンデル氏の話を続けよう。「エコノミストたちは、経済がどの程度落ち込むかを正確に予測することはできません。しかし、短期金利や貨幣供給量を調整することで、下向き経済にどう対処すべきかは心得ています。

歴史を振り返ってみると、1987年の株式市場暴落は、皆が思ったほどの悪影響を米国経済に与えることはありませんでした。そして2001年の不景気、ナスダック市場の大幅下落も、米国経済活動を大きく減速させる原因にはなりませんでした。言うまでもありませんが、他のエコノミストと同様に、バーナンキ連銀議長も経済減速にどう対応すべきかは十分に分かっています。

経済の浮き沈みは悪いことではありません。経済の低迷は企業にとって苦しい状況ですが、弱い会社はつぶれ、画期的なアイディアを持った、順応性のある会社だけが生き残ることができます。山火事は多数の木を焼き尽くし、山を裸同然にしてしまいますが、こんな環境から次世代が生まれます。不景気も山火事と同じです。弱体企業は倒れますが、こんな厳しい状況から次世代を代表する企業が生まれるのです。

私には経済低迷より怖いものがあります。それは生産性(プロダクティビティ)の下降です。現在アメリカの生産性は、毎年約2.5%の伸びがあります。今後もこの伸び率を維持できるなら、極端な不景気を心配する必要はありません。プロダクティビティの向上は個人所得の上昇に結びつきますから、ある程度雇用状況が悪化しても、経済全体が下向くことはありません。

経済の下向きには、減税や金利引下げの対処方法があります。しかし、生産性の下降には効果的な対処方法がありません。今のところ、米国の生産性に問題は見られません。もちろん、問題が起きないことを祈るばかりです。」

中東問題、ハリケーン、しかし原油は下がる!?

つい1カ月ほど前、オイル価格は1バレルあたり80ドルを目前にしていた。そんな状況だったから、1バレル100ドルを唱えるアナリストも多かった。現在72ドル近辺でオイルは取引されているが、ビジネス・ウィーク誌にこんな一文があった。「上を見るのではなく、50ドルの可能性を考慮するべきだ。」下げ材料があるのだろうか?少し記事を読んでみよう。

クルード・オイルが100ドルに達する危険性が消えたわけではない。不安定な中東情勢、それに2005年アメリカを襲ったリタとカトリーナのような大型ハリケーンが再来すれば、オイル価格は急騰することだろう。しかし、向こう1年から2年を考えると、1バレル100ドルより50ドルの方が現実的だ。

最近のオイル市場を振り返ってみよう。イスラエルとヒズボラの軍事的衝突、そしてBPアラスカのパイプライン腐食問題にもかかわらず、オイルは80ドルに接触することはなかった。78ドル付近まで上昇したが、8月17日には70ドル6セントまで下げている。そして、オーク・アソシエーツのエド・ヤーデニ氏や他のアナリストが指摘するように、原油だけでなく、好調だったオイル関連銘柄にも失速が観測できる。

ウィードン・アンド・カンパニーのベテラン・オイル・アナリスト、チャールズ・マックスウェル氏はこう述べている。「ファンダメンタル的にも、オイル価格の下落が予測されます。たとえば、世界で最もオイルを消費するアメリカでのオイル需要が和らぎ始めています。」

夏休みの旅行シーズンも大詰めになり、車の運転が最も頻繁な季節が終わろうとしている。8月16日、米国石油協会からの発表によれば、7月のクルード・オイル在庫量は去年の同時期を5%上回る3億3500万バレルだった。更に、毎年7月に減少するガソリン在庫量は、逆に今年は増えている。

最近ではイランの核問題、北朝鮮のミサイル実験、それに上記したイスラエル/ヒズボラ紛争で分かるように、オイル価格は地政的要素に大きく左右される。それに本格的なハリケーン・シーズンが訪れようとしている今日、相変わらず投機筋からの資金がオイルに流れ込んでいる。あるウォールストリートのアナリストによれば、投機資金額は750億ドルから1000億ドルにおよび、数年前のレベルを1500%以上上回っている。

「もし、中東とアジア情勢がある程度安定するようなら、膨大な投機資金は他のセクターに移動するしかありません」、とチャールズ・マックスウェル氏は言う。投機家の心理状態が変わり、本当に資金の流出となれば、影響を受けるのはオイル株だ。80%の確率で原油価格を追従するオイル株だから、エクソン(XOM)やシェブロン(CVX)などの値動きに注目したい。

自らの首をしめるグーグル内部関係者

2006年1月11日、475ドル11セントだったグーグルの株価は、先週金曜383ドル36セントで取引を終えた。約19%の下落だが、なぜ今年グーグルは低迷しているのだろうか?「原因は経営陣です」、と言うのは経済コラムニストのマーク・ギルバート氏だ。経営陣?何かヘマをおかしたのだろうか?少し説明を聞いてみよう。

2005年2月14日を境に、自社株売りの制限が無くなったグーグルは、会社関係者たちによる持ち株の投げ売りが顕著だ。8月9日現在、会社インサイダーたちが処分した株数は、なんと2300万株に及んでいる。ドルに換算すれば74億ドルにのぼり、2004年8月、一株85ドルの新規公開で集められた資金の約三分の一が売られたわけだ。

自社株売りは、もちろん犯罪ではない。グーグルを1190億ドルの企業に成長させた幹部の功績は、称賛されるべきであり、持ち株を売って新居の購入、一家揃っての旅行に使うのは当たり前の行動だ。

しかし、一つ気になることがある。ブルームバーグ社の調べによれば、2005年2月14日以来、グーグルの会社内部者は自社株を売ることはあっても、誰一人として自社株買いを実行していない。グーズマン・アンド・カンパニーのアナリスト、フィリップ・レメック氏は、グーグルに売り推奨を出す極めてまれなアナリストだ。しかし、氏の意見を圧倒的に支持しているのは、グーグルの内部者ではないだろうか。

自社株売りに、最も積極的なのは、会社を創立したラリー・ページ氏とサーゲイ・ブリン氏の二人だ。売り総額は、ページ氏が20億ドル、そしてブリン氏が19億ドルだ。他には、上級副社長オミッド・コルデスタニ氏が11億ドル、役員のラム・シリラム氏が6億5000万ドル、そして最高財務責任者のジョージ・レイエス氏が2億ドル相当を手放している。

グーグルに売り推薦を出すアナリストが少ないことは上記したが、今月の様子を見ると、強い買い推奨を出しているアナリストは11人、買いが21人、ニュートラルが3人、売りはたった2人だ。これだけ強気意見が多いのは、サーチエンジン業界では、グーグルがなんと言ってもナンバー1だからだ。2005年、36.9%のサーチエンジン市場を占めていたグーグルは、今年44.7%まで率を上げている。

低迷する株価も、アナリストはグーグル買いの一理由にあげている。2007年度に予想される一株利益を使って計算すると、現在のPER(株価収益率)は29だ。グローバル・クラウン社のアナリストによれば、PERが40になるまでは買えるというから、少なくとも525ドルの株価を予測しているわけだ。

季節的にグーグルは買える、と言うアナリストもいる。まだ歴史の浅いグーグルだが、ここまでの株価推移を振り返ってみると、2004年第4四半期は+50%、そして2005年の第4四半期は30%以上の上昇だ。はたして今年も同様な結果となるだろうか?

豪華ヨットは危険信号

レッグ・メーソンのファンドマネージャー、ビル・ミラー氏に危機が訪れている。15年間連続で、S&P500指数以上の成長率を記録してきたが、いよいよ連続記録がストップしそうだ。モーニングスター社の調べによれば、今年ここまでミラー氏が指揮をとるバリュー・トラスト・ファンドは10.14%の下落を示し、+2.78%のS&P500指数を下回っている。

なぜ、ミラー氏は今年不調なのだろうか?間違った銘柄を選んだからだ、と当たり前な回答をすることもできる。しかし、バロンズ誌は変わった見方をしている。バリュー・トラスト・ファンドが低迷しているのは、ミラー氏が超豪華ヨットを買ったからだ、というのだ。

言うまでもなく、ファンドマネージャーは投資者たちに利益を与えることが最も重要だ。そんな立場にいる人間が、投資者を優先させることを忘れ、船内のインテリア選びに忙しくしているようなら、そのファンドからは大した利益を見込むことができない。だから早々に解約した方が得策、というわけだ。

アメリカでは昔から、豪華ヨットが贅沢度のモノサシとして使われてきた。豪華ヨットを買う人は、単に金持ちというだけでなく、金が有り余っている。だから、もうこれ以上稼ぐ必要はいっさい無い。多くの企業が小型ジェット機を購入しているが、これは遊びのためではない。素早く移動して、ビジネスを効率化させるのが目的だ。豪華ヨットはノンビリと浮いているだけだから、暇人以外には使い道が無い。

1940年に発行された「Where Are the Customers' Yachts? (顧客のヨットはどこ?)」は、証券業界を痛烈に批判した一冊だ。もしこの本が今日発行されたなら、たぶん題名は「ミューチュアルファンド加入者たちのヨットはどこ?」、になったことだろう。

アメリカで一番大きな豪華ヨットを所有するのは、オラクル社の最高経営責任者、ラリー・エリソン氏だ。豪華ヨットを購入した2004年から、オラクルの株価とS&P500指数を比べてみると、オラクルは常にS&P500指数に負けている。(下がチャート。赤がS&P500指数。)

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二番目に大きな豪華ヨットを所有するのは、マイクロソフトの共同創立者、ポール・アレン氏だ。もう一つ付け加えれば、アレン氏は全米で四番目に大きな豪華ヨットも所有する。1998年以来、アレン氏はチャーター・コミュニケーションズの会長を務めているが、株価の方は目もあてられない状態だ。2000年1月、チャーター・コミュニケーションズは17ドル75セントで取引されていたが、今日現在株価はたったの1ドル40セントにしかすぎない。

バリュー・トラスト・ファンドは本当に見込みがないのだろうか?バロンズ誌によれば、使っていない時は、ミラー氏は豪華ヨットを貸して料金稼ぎをしているようだ。そんなことをポール・アレン氏はしていないから、バリュー・トラスト・ファンドにはまだ希望があるかもしれない。

(注:上記はバロンズ誌とスレート・ドット・コムの要約です。)

素朴な質問

あまりにも単純な質問をされると、意外と回答に窮するものだ。投資心理の研究で有名な、ブレット・スティーンバーガー氏の元には、毎日様々なメールが送られて来る。その中の一つに、こんな質問があった。「株のトレードで損を出すことは、どうしてこうも簡単なのですか?」それは、あなたのやり方が間違っているからです、と技術的な面を強調することもできる。しかし、ブレット・スティーンバーガー氏は少し違った見方を発表している。早速いくつか見てみよう。

1、銘柄が大衆に馴染み深いものであればあるほど儲けが低くなる。

アメリカの個人投資者が最も好むのは大型成長株だ。たとえば、2003年の5月に大型成長株に投資する上場投信を買ったとすると、今日現在22%の利益がある。もし小型株に投資する上場投信なら、74%の利益が上がっている。アメリカ人に馴染みが無いのは外国株だ。しかし、日本株の上場投信を買っていれば+101%、そしてドイツ株の上場投信なら+99%の儲けがある。

2、増え続ける上場投信数はマーケットに悪影響。

スパイダー(SPY、S&P500指数の銘柄に投資する上場投信)で説明しよう。2000年以来、スパイダーの出来高はコンスタントに増えているが、逆にボラティリティは減少している。なぜだろうか?出来高が増えると裁定取引も増し、これがボラティリティを低下させる原因になった。そのためマーケットに、はっきりしたトレンドが現れにくくなり、トレードが難しくなった。

3、マーケットにマイナーリーグは無い。

野球の場合なら、大リーグに行く前には先ずマイナーリーグで実績を作る必要がある。だから初日から、大リーグのピッチャーに遭遇するようなことは決して無い。しかし、トレーダーはいきなり最初から大リーガーと対戦することになる。素人トレーダーには、ヘッジファンドのような膨大な資金、情報網、それにコンピュータを駆使した高度な売買手法が無い。こんな不利な条件で始めるのだから、とにかく徹底的にトレード知識で武装することが肝心だ。

トレードのヒントとして、スティーンバーガー氏はこんな統計を付け加えている。二人のトレーダーがいたとしよう。両者ともスパイダー(SPY)を買うのだが、一人はSPYが上がっている時だけにマーケット終了間際に買い、他者は下がったいる時だけに大引けで買う。どちらが良い成績を残しただろうか?

正解は下がった日に買う方法だ。1996年から今日までを見ると、上がった日に買うと一回平均の利益は0.01%、そして下がった日に買う場合は、一回平均の利益は0.20%だ。とかくマーケットが上がると買いたくなるが、実際は下げた日に買った方が効果的なわけだ。

責任感の無い会社役員たち

アメリカは不景気に陥るのだろうか?それとも、一時的に軽い経済低迷を経験するだけだろうか?こんな議論が盛んなだけに、株主たちは企業の金使いに敏感になった。具体的に言えば、サラリー以外に支払われる、トップ経営陣への特典が問題になっている。マイケル・ブラッシュ氏(経済コラムニスト)が指摘する、いくつかの実例を見てみよう。

・ナイキは退職が決まった経営責任者に、自宅の改造費として57万9649ドル(約6700万円)を支払う。

・イーベイは、もし新最高財務責任者が自宅を思ったとおりの値段で売ることができない場合、新最高財務責任者に70万ドル(約8100万円)を支払うことを約束した。

・スターウッド・ホテルは、新社長に就任一年目の飛行機代として150万ドル(約1億7300万円)を支払うことを決めた。スターウッド・ホテルの本社はニューヨークにあるのだが、新社長は家族をカリフォルニアから引っ越させる気はない。だから、頻繁に自宅へ帰りたい、というわけだ。

「ひどい無駄使いです。いったい役員たちは何を考えているのでしょうか?こんな金を使っても、企業収益向上には全く結びつきません」、と米労働総同盟産業別組合(AFL CIO)のダニエル・ペドロティ氏は言う。ファンド会社社長の、ドン・ホッジェス氏はこう語る。「問題は責任感の無い会社役員たちです。まるで役員に就任することを、高級カントリークラブに入会するのとカン違いしているようです。役員は株主の利益を優先させなければいけません。しかし、役員が最も気を配っているのはトップ経営陣のことだけです。」

実績のある経営陣なら、それなりの高給を払っても株主は文句を言わない。単に有能な人材を確保する、という理由だけで、会社資金が湯水のように使われることを、株主は疑問視しているわけだ。「この状況を解決するのは簡単です」、とチャック・コリンズ氏(企業監視グループ代表)は言う。「役員会議でトップ経営陣のサラリーや特典が決定されていますが、それを廃止して、それらを株主総会で決定すれば良いのです。」

上記したように、ナイキは退職が決まった経営責任者に、自宅の改造費として57万9649ドル(約6700万円)を支払う。しかし、話はここで終わらない。マイケル・ブラッシュ氏の説明を記そう。「この経営責任者は、ウィリアム・ペレズ氏のことです。1月に辞めましたが、就任期間は1年ほどでした。

ペレズ氏の退職条件は破格です。支払われた金額は550万ドル(約6億3690万円)、そして1100万ドル(約12億7300万円)に相当するナイキ株です。さらに、ナイキはペレズ氏の自宅を300万ドル(約3億4700万円)で引きとっただけでなく、57万9649ドルの自宅改造費までペレズ氏に返したのです。」呆れた話だ。

爆発するノートブック

「ノートブック型コンピュータ爆発」、まるでテロ活動を思わせるような見出しだ。次の行に進むと、古いトラックが破壊されたことが説明されている。コンシューマー・アフェアズ・ドット・コムの報道によれば、最近デル・コンピュータのノートブック型コンピュータ爆発が所々で起きている。

なんとなくユーモラスな出来事だから、テレビでは面白半分に取り扱われているが、先ず破壊されたトラックの写真を見てほしい。

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トラックの持ち主はトマス・フォークランさん。爆発が起きたのは、先月、友人とネバダ州のミード湖での釣りを終え、帰りのしたくをしている時だった。フォークランさんは、デルInspironノートブックを助手席の上においた。友人のロッド・リドルさんは、何かが弾けるような音を聞いたというが、無視して帰りのしたくを進めた。

しばらくすると、二人は嫌な臭いに気がついた。「手を止めて顔を上げると、助手席の窓から炎が吹き出ているのが見えました」、とフォークランさんは言う。「助手席の方ではなく、私は運転席側に駆け寄りました。トラックの中は、完全に火に包まれていました。悪いことに、グローブ・ボックスの中には三箱の弾丸も入っています。」

古いトラック、と上記したが、ファークランさんにとっては単なるトラックではない。1966年型のフォードF250、「ジェニー」という名前までつけた、フォークランさんが可愛がっている年代物トラックだ。

「トラックの後ろにいましたが、とにかく凄まじい炎でした。もうトラックはダメだ、と思った時です。ピストルを乱射するような音が聞こえ始めました」、とリドルさんは言う。もちろん、乱射の音は過熱した弾丸が原因だ。二人は事がおさまるまで、地面に伏せた。

言うまでもなく、フォークランさんの例は極端な一例だが、6月21日付けのInquirer誌にも、デルのノートブック爆発が報道されている。事件が発生したのは日本だ。目撃者の話によれば、会議に使われていたノートブックが小さな爆発を数回起こし、テーブルクロスを燃やした。火は数分以内に消された。

爆発の原因はバッテリーだ。8月15日、デルは400万個におよぶバッテリーのリコールを発表した。デルにニュートラルの格付けをしたJPモルガンのアナリスト、ビル・ショップ氏はこう語る。「今回のリコールは、デルの収益に大きな影響はありません。しかし、現在苦しいデルですから、悪いタイミングでのリコールです。」デルは木曜に決算発表を控えている。22セントの一株利益が予測されているが、さてどんな結果が出るだろうか?

免税店は被害を受けた?

イギリスでのテロリスト逮捕ニュースは、空港の警備体制を一段と厳重にさせる結果となった。夏休みの観光シーズンに起きたテロ未遂だけに、アメリカの主要国際空港は大混雑だ。

報道されたように、テロリストは液体の爆発物利用を計画していたから、水気のある物は、手荷物として機内へ持ち込むことが禁止された。だから、ウイスキー、香水、うがい液、日焼けローションなどは全て持ち込むことができない。手荷物検査がされる場所には、大きなゴミ箱が設置され、シャネルなどの高級香水が投げ捨てられている場面が放映されていた。

もちろん、手荷物として機内に持ち込めないだけだから、あらかじめスーツケースに入れてチェックインしていまえば問題は無いらしい。しかし、ここで気になるのが免税店だ。アメリカからのおみやげとして、ワインやウイスキーを買う人が多い。ご存知のように免税店で買い物をすると、品物は飛行機の登場ゲートで受け取る仕組みになっている。液体の持ち込みは完全に禁止された今日、いったい免税店はどうしているのだろうか?

260億ドルにおよぶ免税店業界の扱う品物は、アルコール飲料、タバコ、香水だけに限らず衣料品や家電製品も取り扱っている。国際免税店協会のマイケル・ペイン氏はこう語る。「たしかに免税店は多くの品物を販売していますが、何と言ってもアルコール類と香水が人気商品です。全売上の半分以上は、アルコールと香水です。今回の手荷物規制で、ブラジルとアルゼンチンの免税店は、アルコールと香水の販売を中止しました。」もう一つ付け加えれば、テロリストが逮捕されたイギリスでは、ロンドンのヒースロー空港でアルコールや香水の販売が規制されただけでなく、英国航空はそれらの機内販売も中止した。

それでは、アメリカの免税店はどうだろうか?ロンドンやブラジルを見習っているだろうか?答えは「ノー」だ。極端な言い方をすれば、米国の免税店は、手荷物規制を完全に無視している。手荷物検査で、好きなウイスキーを没収された人でも、免税店で購入すれば以前と同様に搭乗口で受け取って、機内へ持ち込むことができる。CNNニュースのインタビューで、国土安全保障局のアン・デービス氏は、「登場口で品物を受け取るのではなく、機内で受け取るようにするべきだ」、と述べている。

国際免税店協会のペイン氏も、デービス氏の意見に賛成だが、さらにこんな提案もしている。「旅行客は出発する空港の免税店を利用するのではなく、降機する空港の免税店で買い物をするようにすれば、テロ問題を防ぐことができると思います。あるいは出発する空港で買い物をして、実際の品物受け取りは降機地の免税店で行うことも可能だと思います。」

連銀の大きな間違い

連銀も認めるように、インフレの危険性は依然として存在する。しかし、減速する米国経済がインフレを抑制する結果になる。これが金利据え置きになった要点だ。「この考え方は大きな間違いです」、とトレンド・マクロリティクス社で投資アドバイザーを務める、ドナルド・ラスキン氏は言う。さっそく氏の意見を紹介しよう。

「12カ月以内に、アメリカは不景気に陥ることでしょう。短期的に見た場合、株はラリーの展開が予測されますが、最終的には現在のレベル以下に下がります。

連邦公開市場委員会後に発表された声明の中には、たしかに経済の「和らぎ」、という表現が使われています。経済が冷えこみ方向ならインフレ問題も解消する、と連銀は結論していますが、危険な考え方だと思います。どちらにしても、連銀は判断の間違いに気がつき、執拗な金利引き上げ政策に戻ります。そして、米国経済は単に和らぐだけでなく、正真正銘の不景気に転落します。

先ず指摘したいのは、現在のアメリカに顕著な経済の冷えこみは見えません。三年前から私は、米国経済に対して強気な意見を発表してきましたが、今もこの考え方に変わりはありません。アメリカ経済は、いたって健康な状態です。

多くの人たちは、低金利が米国経済を発展させた、と強調しますが、低金利政策が経済を上昇させた主要原因ではありません。二年間近い金利引き上げがあった、今日の金利を見てください。決して高レベルではありません。80年代と90年代を振り返れば、現在の水準は平均以下です。

経済成長速度が和らいでいるから、インフレは解消する、という連銀の見方ですが、現実には経済は減速していないのですから、インフレ問題は無くなりません。十歩ゆずって、たしかに米国経済が冷え込んでいるとしましょう。歴史を見る限り、経済成長速度とインフレには何の関係もありません。

インフレが起きるのは、有り余る金が、ごく限られた物を追い回すためです。経済の浮き沈みが決定できることではありません。思い出してください。数年間続いた低金利政策時代、連銀は膨大な量の紙幣を印刷しています。印刷じたいは悪いことではありません。問題は、印刷を止める時期があまりにも遅すぎました。これでは17回連続で利上げをしても、大したインフレ退治にはなりません。

先日発表されたGDP(国内総生産)には、経済の冷えこみが見える、と多くのアナリストが言います。実際は正反対です。第1四半期の個人消費は+2.1%でしたが、第2四半期は+2.9%に上がっています。現に、第1四半期の数値に対して「高すぎる」、というのが連銀の見解でしたから、+2.9%は極めて強いレベルです。

連銀は18回連続の利上げを実行して、金利を5.5%に引き上げるべきでした。そして次回を最後の利上げにすれば、インフレ問題がうまく解決したと思います。」

ファンダメンタルズからテクニカル分析へ、ビジネス・コンサルタントの成功例

初めて買った株は兄の勤める会社だった、とトレード・ザ・ムーブ・ドット・コムのカーナン氏は言う。「1990年代のことでした。初戦からいきなり40%以上の儲けでしたから、完全に株の虜になってしまいました。」もちろん、今日までの道のりは全てが順調だったわけではない。カーナン氏の話を続けよう。

「株を始めたのは90年代ですが、フルタイムのトレーダーになったのは2000年です。トレーダーになる前は、大手会計会社でビジネス・コンサルタントをしていました。

株をやるほとんどの人たちが経験することですが、私も株を始めて間もない頃、大きな損を出しました。ある株アドバイザーなのですが、この銘柄は超割安だから爆発的な伸びが期待できる、と自信たっぷりに言うのです。よし、勝負してやろう、私は決意しました。

しかし、株価はなかなか上がらず下がる一方です。心配になりましたが、アドバイザーはますます株が割安になった、と自信に揺らぎはありません。私は下がるたびに買い増しを実行しました。気がついた時は株価は1ドルを割り、具体的な金額は言えませんが、大きな穴を口座に開けてしまいました。このアドバイザーのおかげで、株投資では絶対に人を頼ってはいけないことを学びました。自分流のやり方を身につけない限り、株での成功はありえません。」

大手会計会社で、ビジネス・コンサルタントの経歴があるカーナン氏だから、株アドバイザーの言うことを鵜呑みしていたわけではない。自ら決算報告書などを調べて、明らかに株が割安であることを確認した上での買いだ。違った言い方をすれば、カーナン氏はファンダメンタルズを使って株を売買していたことになる。

氏の成功は、ファンダメンタルズ重視をやめてテクニカル分析に的をしぼったことだ。「新製品の開発や売上動向などの情報は、全ての投資者が平等に入手できるものではありません。しかし、テクニカル分析に必要な情報は、だれでも簡単に入手できます。ですから、株で利益を上げる秘訣は適切なテクニカル分析をすることです。」

一口にテクニカル分析と言っても、トレンドライン、サポートレベル、レジスタンスレベル、移動平均線などと利用されるものは多数ある。カーナン氏のお気に入りは何だろうか?「トレードはシンプルなやり方が一番です。フィボナッチは分かりにくい、と言う人たちもいますが、私にとってフィボナッチほど重要なものはありません。」

フィボナッチは複雑に説明しようと思えば、いくらでも難しくすることができる。カーナン氏が利用しているのは、主要値戻しレベルの38.2%、50%、そして61.8%だ。「自分流のやり方を身につける」、と氏が言っているように、どんなにフィボナッチが優れていても、あなたの肌に合わなければ何の意味もない。

どうやったら自分に合った方法が見つかるだろうか?これはカーナン氏も実行したことだが、先ず徹底的にありとあらゆるテクニカル分析の本を読むことだ。特に、「スイングトレード入門 (アラン・ファーレイ著)」は氏に大きな影響を与えたようだ。

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