US Market Recap

ヘッジファンドの失敗から何を学ぶ?

膨大な損を出したヘッジファンド、アマランスから投資者は何を学ぶことができるだろうか?「90億ドルを運用するヘッジファンドは、砂の上に建てられた家のように崩れた」、とザ・ストリート・ドット・コムのジム・クレーマー氏は言う。「アマランスが教えてくれたことは、傲慢な態度が、いかに危険なものかということだ。自信を持つのは構わない。しかし、あまりにウヌボレが強くなると、今回のアマランスのようにトレードがいい加減になり、多くの間違いを積み重ねることになる。」

報道によれば、天然ガスの下落で、アマランスは35%以上の損を出している。当然、解約を求める投資者の殺到が予想されるが、2月1日以降に投資を始めた人たちは、25カ月間、資金をファンドから引き出すことができない。クレーマー氏の話に戻ろう。

「アマランスが大失敗した第1の理由は、資金をエネルギー・セクターだけに極端に集中させたためだ。一つのバスケットに、全ての卵を入れるな、という格言があるように、どんなことがあっても資金の20%以上を、一つの銘柄だけに投資することは避けたい。

信用取引を利用することは、もちろん罪ではない。しかし、アマランスのやり方は無責任すぎる。まだ投資を始めたばかりの人に、私は信用取引を勧めない。信用取引は、借金をして株を買うことだ。積極的な信用取引は、借金を増やすことと同じだから、もし思惑が外れると、アマランスのように膨大な損を出すことになる。安易な気持ちで、信用取引を絶対にしてはいけない。

マーケットを一番よく知っているのは、マーケット自身だ。アマランスは天然ガス市場で大損をしたが、この天然ガス市場をコントロールできる、と思い上がっていたようだ。自信過剰は、つまらない失敗を引き起こす。だから、ウヌボレは罪だ、と思った方が良い。

もし、あなたがミューチュアルファンドに投資しているなら、ファンド・マネージャーがいかに資金を運用しているかを調べよう。アマランスは資金の半分が天然ガス市場に投入されていたから、リスク管理が完全に無視されていた。あなたのファンドは、資金がうまく分散されているだろうか?

ファンドのポートフォリオを調べたら、ファンド・マネージャーの経歴も見てみよう。十分な経験があるだろうか?満足な成績を上げているだろうか?成績で重要なのは、上げマーケットだけでなく、下げマーケットでも良い成績を残していることだ。」

クレーマー氏もヘッジファンド・マネージャーの経験があるが、もう一つこう付け加える。「株と結婚するな、とよく言われるが、アマランスは天然ガスと結婚してしまった。間違ったら直ぐ損切るのが鉄則だが、あまりに自信がありすぎたアマランスは、結局最後まで天然ガスと手を切ることができなかった。」

犬を狙うヘネシー・ファンド

ドッグズ・オブ・ダウ(Dogs of Dow)をご存知だろうか?言うまでもなく、Dogsは犬のことだが、それは成績の悪い株を意味する。1991年、「Beating The Dow」(マイケル・オヒギンズ著)、という本の中で紹介されていらい、ドッグズ・オブ・ダウは、今日も注目される投資方法の一つだ。

簡単に説明すると、ドッグズ・オブ・ダウには二つの条件がある。

1、株価は低迷し全く冴えない。
2、平均以上の配当金があること。

そんな株を買って、本当に大丈夫なのだろうか?先週木曜、ブルームバーグに、こんな記事があった。

二ール・へネシー氏は、「ドッグズ・オブ・ダウ」を実践する、希なファンド・マネージャーの一人だ。氏の指揮するヘネシー・トータル・リターン・ファンドは1億400万ドルの資金を運用し、最近12カ月間で+18%を記録している。これは、126ある同種ファンドの中で一番の成績になり、平均リターンの+4.9%を大きく上回っている。

ヘネシー氏が選んだ、ダウ指数に属する犬銘柄は、製薬会社のメルク、そして長距離電話会社のAT&Tだ。ここ1年間で、両銘柄とも38%以上の伸びだから、成績の悪い犬から優秀な犬に変身したわけだ。「退屈な投資方法ですが、着実に利益を上げています」、とヘネシー氏は言う。

ペイデン・バリュー・リーダーズ・ファンドも「ドッグズ・オブ・ダウ」を実践していたが、去年11月、それをやめた。広報担当のキンバリー・ティップトン氏によれば、投資成績があまりにもばらつくためだという。

モーニングスター社の、デービッド・カスマン氏は「ヘネシー氏のやり方は、自動的に利益を生むわけではありません」、と述べ、ヘネシー・トータル・リターン・ファンドに星二つ(下から二番目)の格付けをしている。「シャープ・レシオという指数があります。この指数が高いファンドは、ポートフォリオのバランスがうまくとれています。ヘネシー・トータル・リターン・ファンドのシャープ・レシオは0.74ですから、同種ファンドの平均値1.24を下回っています。これは、ヘネシーファンドが、一部の銘柄に集中投資していることを表し、投資の危険度も上がります」、とカスマン氏は付け加える。

分かりやすい「ドッグズ・オブ・ダウ」には、こんな利点がある。「10倍、20倍といった華やかなリターンはありませんが、ドッグズ・オブ・ダウは下げマーケットで力を発揮します。2000年から2002年のベアマーケットで、ダウ指数は23%の下落になりましたが、この間ドッグズ・オブ・ダウは1.6%の上昇です」、とヘネシー氏は指摘する。

簡単にドッグズ・オブ・ダウ銘柄を見つける方法を記しておこう。MSNを利用するのが一番早い。あとはチャートを調べて、買いのタイミングをとらえよう。

クイズ、クイズ、クイズ

賞金は250ドル。円に直せば約2万9000円だ。先ず、何の賞金かを説明しよう。先週ラスベガスで、若いビジネスマン、ビジネスウーマンを対象にしたセミナーがあった。開始早々、参加者に配られたのは、8つの問題が載ったテスト用紙だった。めでたく全問正解なら賞金は250ドル。さっそくテストを見てみよう。(解答は一番下を参照)

1、フォーチュン1000社(売上規模全米上位1000社)の最高財務責任者は、平均でどのくらいの在職期間があるだろうか?

A、4.3年
B、9.5年
C、15年
D、2.2年

2、フォーチュン1000社の最高財務責任者の何パーセントが女性?

A、1.5%
B、22%
C、7.7%
D9.5%

3、フォーチュン1000社の最高財務責任者で、経営学修士号、公認会計士の資格のどちらも無い人は何パーセントいるだろうか?

A、92%
B、24%
C、10%
D、55%

4、最近4年間で、何人の最高財務責任者が、企業税法違反で逮捕されただろうか?

A、225人
B、30人
C、10人
D、5人

5、証券取引法違反で、ワールドコムの最高財務責任者、スコット・サリバン氏が実際に払った罰金額はいくら?

A、1300万ドル
B、2000万ドル
C、220万ドル
D、0(ゼロ)

6、アスベスト(石綿)で健康を損ねた人たちが訴訟を起こしているが、次のアスベストになる可能性があるのはどれ?

A、黄色の蛍光ペンに使われるインク
B、ベンゼン(化成品原料)
C、ジアセチル(ポップコーンの香料として使われる)
D、アスパルテーム(人口甘味料)

7、現在アメリカには、合計で何人の公認会計士と監査人がいる?

A、45万2000人
B、1000万人
C、120万人
D、200万人

8、証券取引法違反で有罪の判決を受けたマーサ・スチュアート氏が、生涯禁じられたことは何?(マーサ・スチュアート氏は、料理番組、雑誌、シーツや枕カバーなどの家庭用品を扱う会社の社長だった。)

A、どんな理由があっても、グルーガンを使ってはいけない。
B、自社株の保有をしてはいけない。
C、どの会社の最高財務責任者になってはいけない。


正解

1、平均在職期間は4.3年のA。

2、Cの7.7%。最近20年間を見ると、大学、大学院で会計学を専攻する女性の数が男性を上回っている。そのため、公認会計士事務所に勤務する女性の数が急ピッチに増えている。

3、Bの24%。3年前は41%だった。

4、Bの30人。

5、Dのゼロ。科せられた罰金はAの1300万ドルだが、支払い能力無し、と認められ証券取引委員会は全く罰金を受け取っていない。

6、Bのベンゼン。

7、Cの120万人

8、C。スチュアート氏は最高財務責任者になることを生涯禁じられた。

アメリカの地銀が危ない!?

「米国経済は心配されたような急激後退することなく、安定成長に移行できるだろう。だから、株式市場が高値を更新するのは時間の問題だ。そんなソフトランディングを主張する投資戦略家たちが目立ちますが、私は賛成できません」、と言うのはグローバル・マーケット・コンサルタンツ社のリチャード・サットマイヤー氏だ。話を続けよう。

「先日の会議で、連銀は金利を据え置きましたが、それ以外に選択肢が無かったのです。据え置きを実施することで、マーケット関係者や消費者に、連銀はソフトランディングのシナリオを考えていることが表明できます。逆に利上げだったらハードランディングを引き起こし、利下げなら連銀は金利を上げ過ぎたことを認めることになり、ほぼ間違いなくハードランディングになります。

国債利回りは、短期金利を0.5ポイントほど下回っています。これは何を意味するのでしょうか?国債投資者たちは、連銀は利下げするしかない、と読んでいます。私が一番気になるのは銀行、特に地方銀行です。住宅建築のために、銀行が貸し付けた金額は、現時点で約5140億ドルほどあります。

アメリカの国内総生産は13兆ドルです。ということは、住宅建築に融資された総金額は、国内総生産のほぼ4%になります。あまりにも大き過ぎます。時限爆弾を抱えているようなものです。

木曜、500の地方銀行の動きを見る、アメリカズ・コミュニティー・バンカーズ指数が高値を更新しました。ソフトランディングが買い材料です。連銀は、経済を安定成長に導くことができる、というわけすが、私はそう思いません。逆に今こそ、地方銀行株を利食うべきです。

迫っている中間選挙も注目です。もし民主党が巻き返して、下院と上院の過半数を占めるような事態が起きると、2008年の大統領選挙まで、株式市場に先行き不安感を与えることになるでしょう。」

「ヒットエンドラン株式売買法」の著者、ジェフ・クーパー氏の意見も記しておこう。

「高値が目前のダウ指数だが、まだシャンパンの栓を抜くには早過ぎる。指摘したいのは、1976年から始まった30年周期が終わりに近づいている。単にダウ指数は抵抗線に頭をぶつけているだけでなく、現在の位置は2002年の安値から計算すると、重要な1.618フィボナッチ・レベルだ。

更に、S&P500指数が、今週の安値近辺で引けるなら、週足チャートには反転パターンが出来上がる。実際にチャートを見てもらうと直ぐ分かることだが、先週の強気な線に後続が無いのだから、マーケットから発信されているメッセージは明瞭だ。」

綿、大豆、カカオ豆

天然ガスの急落で、あるヘッジファンドが大損を出していることを昨日書いたが、それ以外にもオイルやガソリンの下げが顕著だ。USグローバル・インベスターズのフランク・ホルムズ氏によれば、8月の初め頃から、資金をオイル市場からハイテク株に移すヘッジファンドの動きが目立つと言う。

ハイテク株はナスダック市場に集中している。特に最近買われているのが半導体銘柄だ。ここ5週間を振り返ってみると、毎週インベスターズ・ビジネス・デイリー紙の業種別リストで136位だった半導体は、一気に33位まで駆け上っている。どこまで半導体銘柄が買われるかは分からない。しかし、下落するエネルギー価格は、インフレ懸念を薄れさせるから株には好材料、と言うアナリストが多い。

オイルの下げは頻繁に報道されても、現在の商品市場全体的な低迷を耳にすることは滅多に無い。株投資者だけに限らず、先物市場で投機する人たちも人気商品に集まる傾向がある。「人の行く、裏に道あり花の道」、という有名な言葉が本当なら、商品市場は買いチャンスだろうか?商品市場アドバイザーの、ジェーク・バーンスタイン氏は、こう語っている。

「商品市場のブルマーケットが終わり、以前輝いていたスターが、光を完全に失ってしまいました。歴史が教えてくれることは、マーケットの底が近い時、往々にしてリングにタオルが投げ込まれるものです。だから、長いこと低迷している商品や、急落した商品を調べてみることは時間の無駄ではありません。

先ず、人気商品投機に伴う危険の大きさを説明しましょう。たとえば、オイルが40ドルだった時に、5%の損切りを設定して投機すると、1コントラクト(1枚)あたりの損額は2000ドルになります。しかし、オイルが人気化して80ドルの時に、同じ損切り幅の5%で投機すると、損額は4000ドルになります。5000ドルから1万5000ドルの口座資金がほとんどの個人投機家ですから、人気商品で利益を上げるのは楽なことではありません。

3つの商品が狙えそうです。

1、綿: 2003年以来、下向きだった綿市場は、2004年の7月から横ばいが続いています。フラット・ベースと呼ばれる、平らな底がチャートに形成され、このパターンから大きな上放れが起きる可能性があります。

2、大豆: 2005年にラリーがありましたが、現在安値圏で推移しています。いったん動き始めると、派手な値動きになりますから、大豆は注目です。

3、カカオ豆(ココア): 2000年から2003年のブルマーケットを最後に、長いこと横ばいが続いています。これもブレイクアウトが狙えそうです。」

もちろん、綿、大豆、カカオ豆がブレイクアウトするかは分からないが、バーンスタイン氏はこう付け加えている。「ハリケーンや中東問題などがキッカケになって、またオイルが急騰する可能性があります。それは商品市場を刺激する結果になり、大豆などにも買いが広がるかもしれません。」

なぜこんなことが起きた?

膨大な損が出ている、と大々的に報道されているが、いったいどのくらいの金額なのだろう?問題になっているのは、大手ヘッジファンドのアマランス・アドバイザーズだ。コネチカット州に本拠地を構え、上昇するエネルギー市場にうまく乗って、去年、アマランスは10億ドル以上の利益を上げた。しかし月曜(18日)、天然ガスの先物投機に失敗して、アマランスは30億ドルを超える損を出していることが判明した。ニューヨーク・タイムズから、要点を拾ってみよう。

アマランスの顧客リストは、年金基金、寄付基金、銀行、保険会社、そして大手証券会社で占められている。インベストメント・バンカーとして有名な、モルガン・スタンレーも約1億2400万ドル(6月30日時点)をアマランスに投資している。

92億5000万ドルに及ぶ資金を運用していたアマランスに、決定的な一打を与えたのは、先週展開された天然ガスの12%下落だ。こんな事実があったにもかかわらず、先週、チャールズ・ウィンクラー氏(アマランス最高業務責任者)はマンハッタンの高級レストランで、アマランスは今年25%の利益が出ている、と顧客に話していた。それから数日後、アマランスは大きな損を出している、という噂が顧客の耳に入った。

12月から下げ始めた天然ガス価格が、急ピッチに損を膨らませることになった最大の原因だ。歴史的に見ると、天然ガスは3月、4月頃から下げ始める傾向があるから、12月に下げ開始は珍しい。アマランスは、3月限と4月限の価格が大きく広がることを期待していたが、天然ガスの下落で、6週間前は2ドル50セントあった両月の差額が75セントまで下がってしまった。

トレーダーたちから事情説明を聞いた関係者の話によれば、実際の損額は予想以上に大きいという。しかし現時点では、どの程度の影響を顧客金融機関や市場へ与えるかを推測するのは難しい。

エネルギー市場で失敗を犯しているのは、もちろんアマランスだけではない。異常な暑さに襲われた今年の夏、天然ガスは急騰していたが、これを空売りしていたのがマザーロック・エネルギー・ファンドだ。最終的に、ファンドは25%の損を出して経営破たんに追い込まれた。

なぜヘッジファンドは天然ガス市場に参入するのだろうか?答えは高い値動き変動率だ。ヘッジファンドは、短期間で優れた成績を出すことが要求されるから、値動きの荒い天然ガスのような市場はヘッジファンドに狙われやすい。エネルギー・コンサルタントのアーサー・ゲルバー氏によれば、天然ガスの値段変動率は株式市場の5倍以上だという。

以上が要約だが、掲示板やチャットルームでは、こんな疑問が多い。「なぜ天然ガスに、ここまで大きく集中投資したのだろう?どうして直ぐ損切りができなかったのだろう?だれもトレーダーの売買を監視していなかったのだろうか?」どちらにしても、ミューチュアルファンドのような規制が無いヘッジファンドだけに、議会が乗り出してくるかもしれない。

株式市場は住宅市場の後を追う?

下のグラフで分かるように、住宅着工戸数が顕著に減っている。

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8月分の住宅着工戸数は、年間ベースで167万戸と発表され、7月の数値を6%下回った。更に、去年の同時期と比較すると、ほぼ20%の落ち込みとなり、明らかに米国住宅市場はダウントレンドだ。冷え込む住宅市場は、米国経済に悪影響を及ぼす。ということは、株式市場も住宅市場の後を追うのだろうか?

こんな事実がある。代表的な株指数といえばS&P500だが、このチャートと全米住宅産業協会から発表される、住宅建築指数を比べると、面白いことが発見できる。S&P500指数は、住宅建築指数を追従する傾向があるのだ。追従といっても直ぐ後を追うのではなく、約1年間のずれがある。だから、S&P500が上げ始めるのは、住宅建築指数が上げ始めてから1年後、そしてS&Pの下げ開始は、住宅建築指数の下げが始まってから1年後に起きるわけだ。

嫌なことに、住宅建築指数が下げ始めたのは、ほぼ1年前だから、そろそろ株の下げが始まることになる。「歴史を参考にするなら、ここからの株投資は慎重にしなくてはいけません」、とスタンダード・アンド・プアーズ社のサム・ストーバル氏は言う。

JPモルガンの投資戦略家、アブヒジト・チャクラボーティ氏は、先日こんな見方を発表した。「夏に展開されたドラマ的なラリーで、ダウ指数は高値更新まで、あと169ポイントに迫った。その結果、多くの銘柄が割高になっただけでなく、既に企業の利益幅減少も予想されているから、株式市場は下げ方向の確率が高くなった。」

住宅市場のスランプで、個人消費の下落も予想されている。住宅ブームだった頃は、積極的なローンの借り換えが行われ、消費者は多額な現金を手に入れた。新車の購入、家族旅行などにその金は使われたが、住宅市場の下降に伴い、ローンの借り換えも大幅に減った。以前のように、派手な金遣いを消費者に期待できなくなったのだから、これも株には悪材料だ。

もっと直接的な話をすれば、住宅市場の落ち込みは失業率の上昇も引き起こす。家が直ぐに売れないから、不動産業者は以前のように多数のセールスマンは要らない。売れないものを建てても仕方が無いから建築業者も人員を減らす。銀行も不動産ローン部門を縮小することになるわけだ。

正反対の意見も記しておこう。「S&P500指数と住宅建築指数の関係が注目されていますが、解釈の仕方が間違っています」、とファースト・トラスト・アドバイザーズ社のボブ・カリー氏は言う。「株は住宅建築指数を追従する、と信じられていますが、それは最近10年間の話です。もっと長期的に見れば、それら二つには何の関係もありません。

株は割高、という意見もありますが、私はそう思いません。現在の水準でも、株はまだ20%から25%ほど割安です。企業収益も好調ですから、いきなり雇用状況が悪化することもありえません。住宅市場がこれ以上冷え込めば、連銀は金利を引き下げる可能性があります。これは株に好材料です。」

さて、水曜には連邦公開市場委員会がある。心配になる金利は、今回も5.25%に据え置かれることが予想されている。ガソリンやオイルの値下がりでインフレ懸念が薄れ、更に悪化する住宅市場を考慮すると、連銀が金利を今年再引き上げすることは無い、と言うアナリストが増えている。

空売り専門マネージャーの声

9月の相場は悪いはずなのに、いったいどうなっているのだろう、と頭を掻く投資者が多い。好調なのだから迷うことはない、と積極的に買っている人も当然いるが、あえてここで弱気論で有名なビル・フレッケンスタイン氏の意見を聞いてみたい。ひとつ付け加えておこう。フレッケンスタイン氏が弱気論で有名になった原因は、空売りを専門にするヘッジファンドでマネージャーを務めているからだ。

「このラリーは本物ではありません。ダマシです」、といきなりフレッケンスタイン氏は言う。「マーケットは上げていますが、これは希望的観測を基盤にしているだけですから、確かなファンダメンタルズの裏付けがあるわけではありません。

忘れてはいけないのは、私たちが相手にしているのはマーケットだ、という事実です。マーケットを作り上げているのは、投資家たちの感情ですから、決して論理的なものではありません。言い方を換えればマーケットは野生の動物です。

先ず、株を考えてみましょう。現在、私の空売りが本格的でないのは、以前から述べていたように、連銀の金利据え置きを予期していたからです。投資者にとって、連続利上げをしていた連銀の姿は、まるで悪魔のように見えましたが、この据え置きで完全にイメージが変わってしまいました。単なる据え置きではなく、金利引き上げは終わった、と言うアナリストも現れ始めましたから、買い手がいっそう元気になりました。

また、経済の下向きも予想されていましたが、ソフトランディング論が主流になり、これも買い材料になっています。しかし、全体的な立場から米国経済を見ると、ソフトランディングを単純に買い材料にするのは間違いです。第3四半期の企業収益は、投資者にとってガッカリなものが多く発表されると思います。更に、第4四半期の収益を下方修正する企業も増えることでしょう。肝心な収益が下がってしまうのですから、ここから株が大きく上昇するのは無理です。

金市場に目を移してみましょう。方向は逆になりますが、これも株と同様に一方通行です。チャートを見てください。まるで全ての友人を失ってしまったようです。それでは、同じ金チャートの5月の様子を見てください。高値に向けて棒上げです。これはファンダメンタルズに支えられているでしょうか?

繰り返しますが、私たちが相手にしているのは、感情に支配されているマーケットです。冷静な考えが、頻繁に無視されるところです。これは私の経験から言うのですが、人々はマーケットの頂点で最も強気になり、大底で最も弱気になるものです。」

為替トレーダーが学んだ五つのルール

モハメッド・イサ氏は、為替専門のトレーダーだ。「トレーダーというのは本当にユニークな職業です。毎日のトレードを通して、私たちはマーケットの動きを直接感じるだけでなく、自分自身を発見することができるのです。トレードを始めた頃は失敗ばかりで、全くうまくいきませんでした。」

だれでも最初は辛い。プロ野球の世界なら、いきなりメジャー・リーグでプレイするのではなく、先ず何年かマイナー・リーグで経験を積む。言い方を換えれば、初心者コース、中級者コースで成功しなければ、上級レベルのメジャーでプレイすることはできない。

しかし、株、先物、為替の世界は違う。今日初めて株をトレードするからといって、初心者用の証券取引所が存在するわけではない。高校でプレイしただけの新人が、いきなりメジャーのバッターボックスに立つようなものだから、ベテラン・ピッチャーに簡単に料理されるだけだ。イサ氏の話に戻ろう。

「私の大きな失敗を少し話したいと思います。ユーロ/ドルのトレードが専門ですから、私も他の為替トレーダーと同じように、毎朝国際ニュースに目を通します。その朝、私はフランスの金融政策記事を見つけ、これで完全にヨーロッパが有利になる、と判断しました。

しかし、私は致命的な間違いも犯しました。ヨーロッパが有利だ、と単に判断しただけでなく、私は自分の読みが完全に正しい、と信じきって、持っているポジションにあらかじめ付けてあった、万が一のための損切り注文も外してしまったのです。もうそれこそ自信満々の状態でしたから、更に買い増しも実行しました。

結果は無残な敗戦です。具体的な損額は言いませんが、口座に大きな穴を開けただけでなく、精神的に強烈なダメージを受けました。私は6カ月ほどトレードから離れました。」

金銭的、精神的に叩かれたイサ氏は、五つの重要なルールを学んだと言う。

1、適切なトレード訓練、トレード教育なしでマーケットに臨まないこと。トレードは、自分一人で簡単に習えるほど甘いものではない。実際に損を重ねながら、一人でトレードを習得することも可能だが、それではあまりにも時間と金が無駄になる。評判の良いセミナーに出席するのは、必ずトレードに役立つ。

2、計画なしでトレードをしないこと。いくらで買い、いくらで利食い、いくらで損切るのかを決め、その計画どおりにトレードすること。いったん決めた計画は、途中で変更してはいけない。

3、自分の声を聞け。感情ではなく、本当の自分の声に耳を傾けること。損が出ると、感情的な自分は難平買いを訴える。しかし、本当の自分はそれが間違っていることを知っている。

4、儲かっているポジションは、そう簡単に売らないこと。トレーリングストップを利用して、できるだけ多くの利益を確保すること。

5、プロになるには時間がかかる。一日で成功しようと思わないこと。トレードは長い道のりだ。

覚えておきたい8週間ルール

何もしないで待つことはつらい。伝説的な大投資家、ジェシー・リバモア氏はこんなことを言っている。「良いアイディアが相場で大きな利益を上げる秘訣ではない。最も重要なのは、絶好の時が来るまで静かに座っていることだ。」今日のトレーダーたちも、「手の上に座る」という表現で、我慢することの大切さを強調している。

さて、インベスターズ・ビジネス・デイリーに、関連した興味深い記事があった。要点を紹介しよう。

株が横ばいゾーンからブレイクアウトすると、そのまま一直線に上げるのではなく、以前の横ばいゾーンの上に、新しい横ばいゾーンを作ることがある。経験のある投資家なら、更なる上昇前の一休みであることを心得ているから、じっくりと次の動きを待つ。しかし、経験の浅い投資家は買い時を間違ったと早合点して、せっかく買った株を新横ばいゾーンで売ってしまう。

なぜ、多くの投資家は良い株をみすみす手放してしまうのだろうか?簡単に言ってしまえば、買いのタイミングが間違っていたからだ。どうしたら、こんな間違いを防ぐことができるだろうか?もし株が、横ばいゾーンからブレイクアウトしたら、横ばいゾーンの上辺から5%以内で買うことが肝心だ。

株がブレイクアウトした場合、棒上げになるのではなく、必ず一時的な戻し(下げ)がある。統計によれば、本当のブレイクアウトなら、戻しが8%を超えることは希だ。だから、どんなに悪くとも、買った値段から株が8%以上下げる時は、必ず損切ることもすすめたい。

これも珍しいケースになるが、ブレイクアウトした後、1週間から4週間で20%以上も伸びる株がある。そんな場合は、もちろん半分売っても構わないが、少なくとも8週間、その株を持ち続けよう。こんな勢いのある株は、短期間に2倍、3倍になる可能性があるから、ぜひ8週間のルールを覚えておいてほしい。

売りのタイミングをとらえるには、持ち株を指数と比較してみよう。たとえば、あなたがナスダック銘柄を買ったとしよう。この株の日足チャートと、ナスダック指数の日足チャートを見比べてほしい。指数は横ばい、または上げているのに、あなたの株が下げ始めた時は要注意だ。特に出来高を増大させながらの下げなら、機関投資家が売り逃げている可能性があるから、そんな場合は躊躇せずに持ち株を処分しよう。

その他には、持ち株の日足チャートに主要移動平均線を入れることも大切だ。20日移動平均線は短期トレンドを見るのに役立つから、株価がそこまで下げて反発しない時は注意しよう。50日移動平均線は中期トレンドを表し、多くのファンドマネージャーも見ている。だから、50日移動平均線を割る時は、持ち株を処分するのも一案だ。

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