US Market Recap

ベータを使って次のラリーに乗り遅れるな!

新高値を達成したダウ指数、S&P500も5年半ぶりの高値だ。「乗り遅れた!」、と悔やんでいる投資者に、「ベータ」の利用を勧めるのは、経済コラムニストのジム・ジューバック氏だ。「この調子で行くと、第4四半期も健全なラリーが期待できそうです。皆さんは、十分にベータを活用していますか?」何の事だろうか?ジューバック氏の話を続けよう。

「もし皆さんも私のように強気な見方なら、今こそベータを再検討する良い機会です。株の世界に、100%確実なものはありませんが、ベータを活用することで、次のマーケットラリーに乗り遅れることを防ぐことができます。繰り返します。あなたのポートフォリオがベータ不足なら、またラリーを逃すことになるでしょう。

さて、ベータとは何でしょうか?近代の金融理論によれば、投資ポートフォリオは、二つの要素に影響されます。先ず、ベータと呼ばれる、マーケット全体の方向性、そしてアルファと呼ばれる個人の投資技術です。MSNなどで、ベータは簡単に見つけることができます。たとえばマイクロソフトですが、右下の方にベータが記されています。

ベータは各株のボラティリティ(株価変動率)を、マーケット全体のボラティリティと比較したものです。マーケット全体、というのはS&P500指数を示し、このベータは常に1です。ベータ値の高い銘柄は、上げ相場においての上昇幅が大きくなり、下げ相場においての下降幅も大きくなります。

実例をあげましょう。9月のラリーで、S&P500指数は2%の上げでした。この間、ベータ値が1.1だったディズニーは4%の上げ、そしてベータが1.43だったAT&Tは5%の上げを展開しました。5月、6月の低迷マーケットでは、S&P500指数は8%下げました。ベータが2.21だったインテルは12%の下落、そしてベータが4.01だったNvidiaは37%の大幅下げとなりました。

ベータ値の低い銘柄は、マーケットよりも株価変動率が少なくなります。たとえば、春、マーケットは8%下げましたが、ベータが0.36だったウェルズ・ファーゴー銀行は3%の下げ幅でした。ベータが0.59だったペプシコーラは、±0という結果でした。」

強気なジューバック氏だが、第4四半期にラリーが見込める理由は5つある。

1、金利の安定とオイル価格の下降。

2、二桁の成長が見込める企業収益。

3、9月の好調なマーケットで、ファンドマネージャーは豊富に持つ現金を株式市場に投入する。

4、いまだに膨大な空売り残があり、この空売りの買い戻しが上昇に弾みをつける。

5、歴史的に、年末のマーケットは強い。

準備はできていますか?

1987年、10月19日、投資家には忘れることのできない日だ。黒い月曜日、ダウ指数は508ポイントの暴落となり、一日で23%の価値を失った。「引っ切り無しに電話がかかってきました。泣いている人もいました」、と当時証券会社に勤務していたリンダ・ネイラー氏は言う。

暴落の時のように、センセーショナルな報道はされなかったが、2000年から約2年続いたベアマーケットも嫌な思い出だ。5000ドルを超えていたナスダック指数は1200ドルを割り、多数の口座が被害を受けた。特にひどかったのがインターネット銘柄だ。倒産する会社も続出したから、全資金を失う投資者も珍しくなかった。

「大きな損を出すのは、とてもつらいことです。しかし、現に株式市場には、良い時と悪い時の周期があります。私たち投資者にとって重要なことは、厳しい環境に耐えることができる準備をしておくことです」、とフール・ドット・コムのリチャード・ギボンズ氏は言う。バリュー株の長期投資を専門にする氏の話を、もう少し聞いてみよう。

「最初に言っておきたいことは、損を出すことは悪いことではありません。かすり傷なら直ぐ回復できますが、足を切断するような重症では、元に戻すことは無理です。ベアマーケットで重傷を受けた人たちには、ある共通点がありました。持ち株がハイテクノロジー銘柄に集中していたのです。

2000年のベアマーケットで、徹底的に叩かれたのはハイテク株です。例をあげましょう。IT企業のCAインクは、2000年1月、70ドルで取引されていましたが、2002年の7月には、たった7ドル50セントでした。通信機器で有名なノキアは、48ドルから10ドルに転落です。もし今日まで両銘柄を持っていても、CAインクは23ドル、そしてノキアは19ドルですから、2000年のレベルにはまだまだ手が届きません。

カン違いしてほしくないのは、ハイテク株は危険だ、と私は主張しているのではありません。指摘したいのは、資金を一つのセクターだけに集中させず、分散投資することの重要性です。バンガード社の不動産ファンドが2000年から2倍になったように、建築関連やエネルギー関連に資産を分散していれば、たとえハイテクが不調でも、口座全体が下がってしまうことはありません。」

ギボンズ氏は、更にこんな忠告をする。「アナリストの言うことを、単純に信じてはいけません。株式市場は慈善団体ではありません。アナリストは予想をするのが好きです。最近では、オイルは1バレル110ドルを突破する、というのがありましたが、実際は逆に下げています。

インターネットバブルが崩壊する寸前、アナリストたちはインターネット・キャピタル・グループは250ドルに達する、という予想を発表しました。今日の株価は、たったの9ドル70セントです。当然、口座に大きな穴を開けた投資者が多数いることでしょう。覚えておいてほしいのは、証券会社は、個人投資家の味方ではありません。」

ここまでは順調

どちらを信じたらよいのだろうか?高値を更新した株式市場を信じるなら、アメリカ経済は急激な後退に陥ることなく、安定成長が期待できる。しかし、相変わらず短期金利を下回る国債は不景気を予測している。どちらが正しいのだろうか?経済コラムニスト、キャロライン・バウム氏の意見を聞いてみよう。

住宅市場が最盛期を過ぎた今日、いまだに明るい材料は企業収益だ。第2四半期の成長率は、前年度同時期を18.5%上回り、最近4年間の平均成長率を、やや超えている。更に、2001年の不景気時代から計算すれば、GDP(国内総生産)は29%の伸びにすぎないが、企業収益は二倍に膨れ上がっている。

「企業収益は、米国経済の方向を決定する重要な指標です」、とエコノミストのゲール・フォスラー氏は言う。「アメリカが不況に陥る前には、企業収益の下降が3四半期から7四半期連続で起こります。ですから、現状を見る限り、アメリカが直ぐ不景気に襲われる可能性はありません。一つ指摘しておきましょう。金融セクターはまだ大丈夫ですが、それ以外のセクターは頭打ちです。」

第2四半期、金融セクター以外の業種は、成長率が第1四半期を3.6%下回った。2005年、ハリケーン・カトリーナの時を除けば、企業収益が下がったのは、2003年の第1四半期以来初めてだ。

もし、逆利回り曲線が正しいなら、米国経済は平均以下の成長率期間を迎えることになる。とすれば、株も低迷するはずだ。しかし、ITGホーニック社のエコノミスト、ボブ・バーベラ氏は、「株と国債の両方が好調になることは、決して矛盾していることではありません」、と言う。

「経済が減速する中間サイクルでは、よくこのような現象が起きます。連銀は金利引き上げを終了させ、これは国債買いの原因になり、利回りが下がります。株式市場は、経済の下降には目を向けず、金利引き上げ終了=金利引下げ、ということに注目しますから、これは買い材料になります。」

多くのエコノミストは、現在の逆利回り曲線を問題にしない。世界的、特にアジアの国々が豊になり、有り余る資金を抱えるようになった。高い利回りを得ることよりも、安全な投資場所として、アメリカの国債が選ばれ、膨大な資金が流入した。これが低利回りの最大の原因であり、今日の逆利回り曲線は不景気を予測していない、というわけだ。

ダウは高値を更新したが、アメリカの株はまだ割安、と言う外国投資家たちもいる。過去5年間、S&P500指数は、たった25%上昇しただけだ。80ある世界の主要株式指数の中で、S&P500は下から10番以内に入る低迷指数だ。

上げ相場に強い消極的ファンドマネージャー

S&P500指数と、ファンドマネージャーの成績がよく比較される。S&P500が+8%、そしてファンドマネージャーが+15%なら、優れたファンドマネージャーだ。だから、たとえ年間で5%の損を出しても、S&Pがマイナス7%なら、優秀なファンドマネージャーという評価を得ることができる。

「問題なのは、多くのファンドマネージャーが、S&P500指数を上回る成績を、コンスタントに上げることができないのです」、と語るのは経済ジャーナリストのトーマス・コスティジェン氏だ。もちろん、これは新しいニュースではない。時おりマスコミは、半分冷やかしで、冴えないファンドマネージャーの成績を話題にしているから、投資者たちはS&P500を破ることの難しさは承知している。

しかし、プロに任せるのだから、やはり優れたリターンが欲しい。ファンドマネージャーも、良い成績を残さなければ投資者に逃げられてしまう。うまい解決方法はないだろうか?コスティジェン氏の話に戻ろう。

「簡単に言ってしまえば、S&P500指数を買えば、それに近い成績を出すことができます。これが指数ファンド(インデックス・ファンド)が生まれた原因です。投資者たちからも圧倒的な支持を受けて、ミューチュアルファンドには数多い種類がありますが、今日、インデックス・ファンドが最大の規模になりました。」

積極的なファンドマネージャー、そして消極的なマネージャーがいるが、ロバート・コソースキー氏(英国インペリアル大学)は、こんな発表をしている。「積極的なファンドマネージャーは、下げ相場において、指数を3%ほど上回る成績を上げています。しかし、上げ相場では逆に2%ほど下回っています。」(積極的なマネージャーの特徴には、頻繁な銘柄入れ替えや、限られた数の銘柄への集中投資などがある。)

ジェーソン・トマス氏(コーチス・フィッツ社)は、こう付け加える。「ヘッジファンド・マネージャーのように、投資スタイルが積極的になればなるほど成績が悪くなります。」この言葉で思い出すのが、先日報道されたヘッジファンドのアマランスだ。天然ガスに集中投資して、35%以上の損を出し、投資者は解約したくても解約できない状態だ。

ジェーソン・トマス氏自身も、約20億ドルの資金を運用している。正確に言えば、氏は預かった20億ドルを、ファンドマネージャーたちに運用させている。「積極的なファンドマネージャーを使うことは止めました。積極的だからといって、いつも良い銘柄を選べるわけではありません。それよりも、安定している消極的なファンドマネージャーを使った方が無難です。」

それでは、一般投資家はどうしたらいいのだろうか?「ベアマーケットなら積極的なファンドマネージャーのいるファンドを選び、ブルマーケットならインデックス・ファンドに投資することです」、とコソースキー氏は勧める。

ソフトランディングは幻

「1990年3月、60万ドルちょうどで家を買いました」、とエコノミストのベン・スタイン氏は言う。場所は海岸で有名なカリフォルニア州のマリブ、2年間あちこち探し回って決めたようだ。「90年といえば不動産が大人気でした。5年前は30万ドルほどの物件でしたが、場所が場所だけに、たとえ不動産人気が衰えても、たいした値下がりは無いだろう、と楽観していました。」

運が悪いことに、氏が家を買った一カ月後から住宅市場の下げが始まった。「暴落の中の暴落、そんな表現がされたくらいですから、タダだ、と叫んでも引き取る人はいません。購入してから3年後、物件の価値は35万ドルまで下げていました。全く絶望的な状態でしたが、また不動産ブームがやって来ました。2005年、物件はなんと180万ドルになったのです。そして2006年、住宅市場の冷えこみが顕著になり、もはや180万ドルは夢の値段になりました。」

最初から投資目的ではなく、住むことが目的で買った家だから、別に失敗談ではない。しかし、極端に動いた住宅価格には、ある真実が隠れている。スタイン氏の話に戻ろう。

「物件価格の大きな下落を見て分かることは、住宅市場にソフトランディングは存在しない、ということです。キビシイ下げ方でしたから、正にハードランディングでした。ここは環境が特に良いから下げ渋るはずだ、と人々は言いますが、完全に現実を無視した考え方です。冷えこみが進む状況では、どんなに値段を下げても売れません。

いや、今回は違う。今日も、そんな声が聞こえてきます。たしかに金利が上がりましたが、住宅ローンの金利は、決して高すぎるレベルではありません。米国経済も成長が続いています。また、最近ガソリンやオイルの値段も下がっていますから、消費者には明るいニュースです。

歴史を振り返るなら、住宅市場はあと2年ほど下げます。低迷が5年間に及ぶことも希なことではありません。景気には好不況の波があります。賢い投資家は、不景気な時に買い出動します。私が買ったマリブの家は賢い例ではありませんが、景気が低迷している時に買った他の物件では、良い利益を上げることができました。」

株投資に関して、スタイン氏はこう付け加えている。「もう何年も前から、新興成長市場ファンド(EEM)への投資を薦めてきましたが、タイでのクーデタや商品市場の大幅下落で、新興成長市場ファンドも下げています。長期的に見れば、アジア諸国の成長が、ここで終わってしまうことはありません。商品市場も、現在の下げは長期アップトレンドにおける、一時的な下げです。友人のレイ・ルシアが言うように、この下げは良い買い機会だと思います。」

押し目買いのチャンスがやって来る

「愛されすぎた株は避けるべきです」、と言うのはシェイファーズ・インベストメント・リサーチのクリス・ジョンソン氏だ。先週、ビジネス・ウィーク誌のインタビューで語られた言葉だが、マイクロソフト(MSFT)、インテル(INTC)、そしてアップル・コンピュータ(AAPL)などの大型株が、氏の警戒リストに入っている。インタビューの要点を記そう。

「二回連続の金利据え置きで、マーケットは既に上げが始まっていますが、こんな状況でも慎重に調べれば、買える銘柄はいくつかあります。アップルが買えない理由ですか?今日のアップルには、2年前のような革新的アイディアがありません。これが決算に反映されるのは、時間の問題だと思います。

最近のマーケットは、特にダウ指数が、とても好調です。長期、そして中期サポートレベルから跳ね返り、見事なラリーを展開しています。2回の金利据え置きで、多くの投資者たちは、金利引き上げが終了した、と結論したようです。短期的に見ると、現在のマーケットは、買われすぎレベルに達していますから、そろそろ利益確定の売りが来るでしょう。もちろん、それは押し目買いのチャンスです。

投資心理を測定するために、プット・コール・レシオ、それにボラティリティ指数などを利用しますが、はっきりとしたシグナルを得ることができません。実際に投資家たちからアンケートも取りますが、これもはっきりしません。ですから、現在の状態を見る限り、投資者たちは極めて強気でもなく、かと言って弱気に傾いているわけでもありません。繰り返しになりますが、利食いの売りが、そろそろあるはずですから、短期的には買いの機会がやって来ます。

エコノミストやアナリストは、米国経済の減速を予想していますが、今日のマーケットはテクニカル要素に反応し、ファンダメンタルズを無視しています。ようするに、サポートラインやレジスタンスラインが重要視されているわけですから、テクニカル分析を怠ってはいけません。

狙える銘柄ですか?いぜんとして、テレコミュニケーション銘柄が有望です。テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にもテレコミュニケーション・セクターは優れています。具体的には、長距離電話会社のAT&T(T)です。」

一つ付け加えておこう。今朝、クリス・ジョンソン氏の警戒リストに入っていたアップルが格下げされた。格下げをしたのは、シティグループのアナリスト、リッチ・ガードナー氏だ。「収益が予想に達することは難しい」、と判断され、買い推奨からホールドに引き下げられた。まだ大引けまで時間があるが、アップルは2.7%下げて、74ドル87セントで取引されている。

ソフトランディングは実現するのか?

瞬時突破する場面もあったが、ダウ指数は三日連続で高値を更新することができなかった。たった30銘柄で構成される指数だから、もちろん、マーケット全体を反映しているわけではない。現に、S&P500指数が2000年のレベルに復帰するには、まだ16%の上昇が必要であり、ナスダック指数は2倍以上にならなくてはいけない。

10月のマーケットが始まる。米国経済は、過去3年間のような成長が望めなくなり、ソフトランディングが濃厚になった。「経済は過熱することなく、ゆっくりとした成長になるでしょう。金曜日に発表される雇用統計にも、それが確認できるはずです。金利引下げの時期はまだですが、連銀は金利据え置きをしばらく続けると思われます」、とUBS証券のモーリー・ハリス氏は言う。

最近、オイルやガソリン、それに長期金利が下がっている。ビジネス経営者や消費者には嬉しいニュースだが、ハリス氏は、こう指摘する。「たしかに、消費者にとって良い環境になってきましたが、住宅市場の低迷は続くことでしょう。連銀は、最終的に金利を引き下げることになりますが、住宅市場が完全に冷え込んでしまえば、たとえ低金利になっても肝心な借りる人がいません。」

ハイ・フリークエンシー・エコノミクス社の、イアン・シェパードソン氏はこう語る。「住宅ローンの利子が、6カ月ぶりの低レベルになりましたが、これは単に数字上の話です。住宅ローンの平均金利は6.3%ですが、実質金利は8%です。ここ12カ月間で、住宅価格は平均で1.7%下がっています。ですから、6.3%に1.7%を足すことで、実質金利の8%を計算することができます。1年前の実質金利はマイナス10.6%でしたから、今日の金利が、いかに割高であるかが分かると思います。」

生産分野の健康度を見る、ISM指数(9月分)が月曜に発表される。8月、54.5%だった数値は、53.7%に下降することが予想されている。50%以上の数字は成長を表し、52%を割ると危険シグナルが発せられる。歴史的には、金利引下げは、ISM指数が50%を大きく下回った時に実施される傾向がある。

二回連続で下げた耐久財受注、そして予想以上に悪かったフィラデルフィア連銀からの経済レポートがあった後だけに、今回のISM指数は注目される。住宅市場の冷えこみ、それに個人消費の低下に対抗するには、企業による積極的な設備投資が必要だ。それが無くては、ソフトランディングが実現しない。

次に注目されるのが、金曜の雇用統計だ。失業率は変わらずの4.7%、新規雇用は12万6000人増の、生温い数字が予想されている。個人所得は+0.3%が予測され、年間ベースだと+4%に相当し、2001年6月以来の高レベルになる。個人所得の上昇が続く限り、金利引き下げは無い、というアナリストも多い。

ベテラン・チャーティストからのアドバイス

テクニシャンの中のテクニシャン、と呼ばれるマーチン・プリング氏は、テクニカル分析の第一人者だ。先日、チャールズ・シュワブのグレッグ・ミラー氏がプリング氏をインタビューした。その内容の一部を紹介しよう。(Gはグレッグ・ミラー氏、そしてMがマーチン・プリング氏)

G: トレーダーが、一番初めにしなければいけないことは何ですか?

M: 個別銘柄を検討する前に、トレーダーがしなくてはいけないのは、マーケットのトップダウン分析です。先ず、マーケット全体の様子をつかんでください。そして各セクターの分析です。個別銘柄を見るのは、それらが終わってからです。

G: トレーダーを待ち受ける罠には、どんなものがありますか?

M: スマートにトレードをするためには、客観的な態度でマーケットを見なくてはいけません。苦労して稼いだ資金ですから、冷静にトレードしろ、と言われてもなかなか難しいものです。トレーダーが最も陥りやすい罠は、感情に支配されてしまうことです。投資心理と株価には密接な関係があり、これを表したのがチャートです。簡単に言ってしまえば、冷静に客観的なチャート分析ができれば、適切な場所での売買が可能になります。

G: トレードに付き物のリスクにどう対応するべきですか?

M: リスクにどう対処するのか?言い方を換えれば、どうやって損を最小限におさえるか、ということになります。株価が逆に動いた場合、どこで損切るかを、あらかじめ決めておくことが大切です。買いを例にすなら、サポートレベルがどこにあるかを確認します。もし株価がサポートを割るなら、迷わず損切らなくてはいけません。サポートレベルができやすい場所は、以前の高値や安値、ギャップ、それに移動平均線やトレンドラインです。繰り返しますが、損は最小限におさえなければいけません。間違って50%の損をしてしまえば、次のトレードで100%の儲けを出さないと穴は埋まりません。

G: 利食いのポイントはどう決めたらいいですか?

M: リスク・リワード比の考慮が重要です。リスクが1なら少なくともリワードが3以上見込めない限り、そのトレードをしてはいけません。たとえば、20ドルで株を買い、19ドルに損切りを設定したとしましょう。リスクが1ドルですから、利食いの目標値は23ドルです。ですから、23ドル以下にレジスタンスレベルがあるようなら、その株は買えません。

G: 目標の23ドルに届かず、株価が勢いを失ってしまった時はどうしますか?

M: チャートパターンに注目してください。リバーサル・パターンが出来上がるようなら、直ぐ売ることが肝心です。

G: 多くの人たちは買いが中心ですが、空売りをどう思われますか?

M: 空売りが魅力的なのは、株価の下げは上げよりも速い、ということです。もちろん、空売りには怖い話もたくさんあります。たまに聞くのは、空売っていた株が突然買収されてしまうことです。一気に暴騰ですから、口座に大打撃を与えます。(理論的に、10ドルの株を空売った場合、最高に儲けても10ドルを超えることはない。しかし、買収なら10ドルが35ドルになってしまうこともある。)

G: プリングさんは、トレーダーの教育もされていますが、主にどんな手法を教えているのですか?

M: モメンタムトレードとスイングトレードです。トレンドやチャートパターンだけでなく、オシレーターも利用して、株価が買われ過ぎなのか、それとも売られ過ぎなのかを確認します。オシレーターの良い点は、大衆の心理を見ることができます。

G: 最後に効果的なスイングトレード方法を教えていただけませんか?

M: ブレイクアウトでの買いが効果的です。注意することは、オシレーターが既に買われ過ぎレベルなら、あまり大きな利益は望めません。

連銀はカン違いしている!?

アメリカ経済の70%を占めるのは消費者だ。だから、消費者が金を使わなくなると米国経済は落ち込んでしまう。もっともな意見に聞こえるが、「それは単なる神話です」、と言うのはトレンド・マクロリティクス社で、投資コンサルタントを務めるドナルド・ラスキン氏だ。いつも批判的な氏だが、少し説明を聞いてみよう。

「個人消費が冷え込むと米国経済も減速する、と信じている人たちが多いようです。現に、私のところへ相談に来る投資家も、それを疑いません。しかし困るのは、連銀までもが、その神話を信じているのです。たしかに、アメリカ経済の7割は個人消費と言われますが、だからどうしたというのでしょう?

真実は、生産者が100%のアメリカ経済です。考えてみてください。消費者が金を使いたくても、生産者が何も作らないならどうしようもありません。先ず物が生産され、そして個人消費の段階へ進みます。ですから、私たちは生産に目を向けなければいけません。アメリカは、十分に物やサービスを生産しているだろうか?そして、新規雇用も好転し、消費者の収入は上がっているだろうか?

なぜ皆、こうも心配なのでしょう?商務省から発表されたレポートを見てください。個人消費は10.2%の伸びを記録し、前回の+6.3%という高い数字を超えています。金額に直せば、2005年6月から2006年6月の間に、消費者は9兆2000億ドルの金を使いました。前年度を5550億ドル上回ったわけですが、この金はどこから来たのでしょう?言うまでもありませんが、それは労働によって得た金です。

多くの投資者はカン違いしています。過去3年間、個人消費が好調だったのは資産効果が原因、と思っています。住宅ブームで、家の値段が大きく上がりましたが、本当にこれが個人消費を大きく好転させたのでしょうか?資産効果に関する、こんなデータがあります。住宅の値段が100ドル上がると、個人消費が3ドル伸びます。ここ1年間で、アメリカの住宅市場は1兆7000億ドルの上昇です。その3%は510億ドルになります。しかし、実際の伸びは5550億ドルですから、資産効果だけで、個人消費の上昇を説明することはできません。

問題は連銀です。連銀も私たちと同じデータを持っていますが、下向きになった住宅市場が、個人消費を減速させ、米国経済成長も冷え込むだろう、と結論しています。事実は、個人消費に衰えはありません。米国経済は落ち込みません。2度連続で金利を据え置きましたが、これはインフレを悪化させます。手遅れになったところで、連銀は大幅に金利を上げることでしょう。もちろん、消費者には大打撃です。」

4つの心配ごと

1990年代、バブルと言えばナスダック市場のことだった。まったく利益の無い会社が、インターネット関連というだけで、一日で二倍になることが頻繁に起きていたから、とにかく異常だった。2003年から2005年は住宅バブル。現在、あちこちでバブルが弾け、住宅市場の冷えこみが顕著になっている。それでは、今日バブルが明らかなものは何だろうか?Money And Marketsのマイク・ラーソン氏の意見を紹介しよう。

マスコミがあまり取り上げないから、たぶん気がついている人は少ないと思う。今日、バブルが目立つのは国債だ。簡単に説明すれば、国債価格はインフレに大きく左右される。インフレの心配が無い状況なら国債は買われ、利回りが下がる。高インフレなら国債は売られ、逆に利回りは上昇する。

ここ数年間を振り返ってみよう。米国経済だけに限らず、世界経済は大きな伸びを展開した。住宅価格は、いまだかつて見たことの無いスピードで上昇し、オイルも1バレル25ドルから75ドルに達した。長期間、まったく冴えなかった金価格も2倍以上になり、消費者物価指数、そして生産者物価指数は明らかな上げ基調になった。その結果が、皆さんもご存知の17回連続の金利引き上げだ。

これだけ執拗な金利の引き上げだから、国債は大きく売られたことだろう、と思うのが普通だが、ほとんどの投資家は国債を売らなかった。そればかりか、国債の値段が下がるたびに買い足す動きも目についたから、現在の10年物利回りは4.6%しかない。(90年代の金利引き上げでは、利回りは6%を超えていた。)

インフレ問題があったにもかかわらず、なぜ国債は暴落しなかったのだろう?四つの事実がある。

1、アメリカは自分の稼ぎ以上の金を使う。

2、足りない分は国債を通して外国人から借りる。

3、経済をストップさせないように、政府は金の印刷を続ける。

4、以上三つの悪循環で、アメリカの赤字は増える一方。

連銀の金利政策など二の次だ。アメリカにとって一番怖いのは、外国人が国債を買わなくなることだ。もちろん、大量に売られるのも困る。説明したように、国債が売られると利回りが上がる。長期国債の利回りは、不動産ローンの利子を決めるから、長期国債利回り上昇は米国経済にマイナスだ。

もし、あなたの投資資金が長期国債に集中しているなら、その比重を減らしてほしい。長期国債の値段が10%下がると、毎年2回支払われる利子の2年分が消えてしまう。また、住宅市場が不安定になっているから、たとえ配当が良くても、不動産投資信託を避けてほしい。

<< < 63  64  65  66  67  68  69  70 >>

本マガジンは客観的情報の提供を目的としており、投資等の勧誘または推奨を目的としたものではありません。各種情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。これらの情報によって生じたいかなる損害についても、当社は一切責任を負いかねます。

発行:株式会社ブレイクスキャン 監修:株式会社デイトレードネット