膨大な損を出した、アマランス・アドバイザーズから、私たちは何を学ぶことができるだろうか?コネチカット州に本社を置くアマランスは、エネルギー市場専門のヘッジファンドとして、優秀な成績を上げていたが、天然ガス投機に失敗して60億ドル以上の資金を失った。
ここ10年間、ヘッジファンド業界の成長には、目をみはるものがある。現在8000あまりのヘッジファンドがビジネスを展開し、運用されている総資金は1兆2000億ドルを超える。成績の方は、決して全てがずば抜けたものではないが、ほとんどのファンドは、商品市場やエネルギー市場に資金を移すことで、株のベアマーケットをモロにかぶることはなかった。
推定によれば、最近2年間で約25%のヘッジファンド資金が、エネルギー市場に流れ込み、これがオイルやガソリン価格を大きく押し上げる一因になったことは間違いない。高いガソリンは、消費者に迷惑な話だが、高騰が続いたエネルギー市場で、資金を運用したヘッジファンドが直面したリスクも多大なものだ。
天然ガス市場は不安定な価格で有名だが、アマランスは「スプレッド・ポジション」を利用することで、万が一の場合に備えていた。スプレッド・ポジションは、ある限月を買い、ある限月を売る方法を意味し、普通の売買方法より危険度が低いといわれている。
「思い出してほしいのは、90年代の終わりに破綻した、大手ヘッジファンド、ロングターム・キャピタルです。ロングタームがつぶれた原因はスプレッド・ポジションです」、とエコノミストのジェレミー・シーゲル氏は言う。まだ、アマランスの細かい具体的な失敗原因は分からないが、シーゲル氏の話を続けよう。
「ヘッジファンドはリスク回避を強調します。しかし、実際に今回のアマランスで分かるように、ヘッジファンドはマーケットが持つボラティリティから逃げることはできません。ある市場が活発になれば、次々と他のヘッジファンドが参入してきます。これが更にボラティリティを増大させ、ファンドの直面するリスクも上がります。
多くのヘッジファンドマネージャーは、商品市場は株式市場から大きな影響を受けることはない、と言いますが、これは間違いです。実例をあげれば、9月11日にニューヨークを襲った惨事です。航空会社だけでなく、株全体が大幅に下げましたが、エネルギー市場も下落したことを忘れてはいけません。
たとえ10年、20年のデータを基にテストしても、ヘッジファンドはマーケットの持つボラティリティを避けられません。十分に検討されたスプレッド・ポジションでも、極端なボラティリティに襲われてしまえば、全くリスク回避ができない事実を、私たち投資者は頭に入れておかなければいけません。」
US Market Recap
本当にリスクを回避できるのか?
トレーダー113人に聞きました
トレードの本は、本当に役立ちますか?113人に、トマス・ブルコースキー氏(投資家)は尋ねた。92%が助けになった、と回答し、フレッドさんはこう語っている。「先ず、インターネットで徹底的に調べました。書評を読むだけでなく、読者の感想も参考にしました。その結果、良さそうな本だけ買いました。」レジナさんは、「トレードを真剣に考えている人なら、本を読むのは当たり前です。何の勉強もしないで、いきなりトレードすることはギャンブルと同じです」、と述べている。
冗談まじりに、トムさんはこんなことを言う。「ありとあらゆる本を読みました。しかし、読む本を間違っていました。私が買ったのは、テクニカル・アナリシスの本ではなく、ファンダメンタルズに関するものばかりでした。おかげで、会計士に負けぬ知識が身につきました。」
次の質問は、ブログは役立ちますか?65%の回答は、「時間の無駄」、というものだ。「たしかに、株や先物のことが書かれていますが、それはごくわずかで、スポーツや政治の話題が主になっているブログがほとんどです」、とジムさんは指摘する。更に、多くのトレーダーは情報の不正確さを強調している。
ブログが助けになる、という意見を代表するのはリチャードさんだ。「ブログを読むことで、様々な意見に触れることができます。こんな解釈方法があったのか、という発見も時々ありますから、ブログに目を通すことは無駄ではありません。マーケットに対する偏見を捨てるためににも、色々なブログを読むことは有益です。」
三番目の質問は、どうやったらコンスタントに儲けられるようになりましたか?ピーターさんは、三つの条件を挙げる。「先ず、売買ルールを作り上げてください。そして、ルールに忠実に従ってトレードすること。それから、常にテクニカル分析を怠らないことです。」
何人かのトレーダーは、こう語っている。「なかなか利益が上がらないので、タイムフレームを長めの物に変えました。」人によって違うが、1分足チャートから5分足へ、または3分足から15分足へ、といったように長めのチャートに移ることでトレードが好転することもある。
こんな回答も多い。「確実に損切りができるようになったら、利益が出るようになりました。いつもモニターの前に座っている、という理由で実際に損切りのオーダーを入れない人がいますが、それはダメです。買いが成立した時点で、直ぐ損切りオーダーも入れることが大切です。」
最後の質問は、新人トレーダーに何かアドバイスはありますか?ボブさんの言葉を記そう。「これは行けそうだ、といった気分的な理由だけでトレードしないでください。とにかくトレードを習得するには、かなりの時間が要ることを覚えておいてください。」
マスコミは投資者の味方?
騒々しいだけで内容が無い、とセンセーショナルなジャーナリズムを批判するのは、フール・ドット・コムのセス・ジェーソン氏だ。「ダウ指数の高値更新が執拗に報道されました。まるで偉大な記録が樹立されたように聞こえますが、全く意味の無い数字です。単に数値を比べるだけなら、たしかに新記録ですが、インフレを考慮すれば、今日のダウ水準は2000年1月のレベルを10%ほど下回っています。」
明らかに、最近の経済ジャーナリズムを苦々しく思うジェーソン氏だが、マスコミを株投資に利用することができる、と氏は言う。話を続けよう。
「覚えておいてほしいのは、経済ジャーナリストの目的は、情報を提供して投資者を助けることではありません。彼らが一番興味があるのは、刺激的なヘッドラインを利用して、私たちをニュースに引き込むことです。最初から、投資判断に役立つ情報の提供は考えていません。
センセーショナルな報道に、退屈な銘柄を利用することはできません。しかし事実は、マスコミが取り上げなかった地味な株が大きく上げています。たとえば、2000年から今日まで、ダウ銘柄で一番成績が良かったのは、食品のアルトリア、そしてトラクターやブルドーザーで有名なキャタピラーです。前者の伸びは370%、後者は+215%です。
次に、マスコミが無視し続けている、S&P500指数を見てみましょう。まだ2000年のピークから遠く離れている現状ですが、過去6年間、この指数に属する銘柄に投資していたらどうなっていたでしょうか?500銘柄中、200が2倍以上になっています。3倍以上になった株も110あります。
ルーセント (マイナス96%)、ヤフー(マイナス72%)、タイム・ワーナー(マイナス70%)。数字は2000年から今日までの結果ですが、どの銘柄も大きく下げています。覚えている方も多いと思いますが、これらの銘柄は、2000年、マスコミが毎日のように取り上げたものです。次世代をリードする超有望銘柄!、と大々的な報道でしたが、株価は全く冴えません。
次の三つは、マスコミが振り向きもしなかった銘柄です。チェサピーク・エネルギー(+1325%)、コベントリー・ヘルスケア(+1296%)、プルテ・ホームズ(+616%)。
マスコミは、投資者の最悪な敵になる可能性があります。ですから、ニュースを投資に使うことには、細心の注意を払ってください。刺激的な報道を信じて、人気銘柄だけに投資するなら、あなたの口座を救うことは誰にもできません。頻繁に報道される銘柄の中から、本当の宝を見つけるのは無理です。人気化していますから、それらは完全に割高銘柄です。口で言うほど簡単ではありませんが、マスコミが執拗に取り上げる株は、無視した方が無難です。」
少し変わったトレンド確認法
なぜ、ヤフーは下げているのだろう?なぜ、スターバックスは買われているのだろう?「人々は、「なぜ」を気にしすぎます。株投資での成功に、「なぜ」はどうでもよいことです」、と言うのはテクニカル・アナリストのジョン・マーフィー氏だ。
ご存知のように、テクニカル・アナリストは、売上、一株利益、キャッシュフローなどの要素は分析に一切使わない。チャートと指標だけが頼りだから、多くのデイトレーダーやスイングトレーダーは、テクニカル・アナリストの意見に耳を傾ける。
テクニカル・トレードはテクニカル分析を基盤にした売買方法だが、これには10の基本ルールがある、とマーフィー氏は言う。いくつか見てみよう。
1、トレンドの確認
先ず、月足チャートや週足チャートを使って、ここ数年間のトレンドを確認しよう。それが済んだら日足チャートで中期トレンドを調べ、その次に日中足で短期トレンドを確かめよう。私は短期トレード専門だから週足は見ない、という人がいるが、短期チャートの騙しに惑わされないために、長期チャートを使うことは大切だ。
2、トレードをトレンド方向に合わせる
日足チャートで売買する人なら、トレンドを決定するのは週足チャートだ。週足が上げ基調なら買いだけを考慮して、日足チャートで買いのタイミングをつかもう。60分足でトレードする場合なら、トレンドを決めるのは日足チャートになる。だから、日足が下げ基調なら、60分足で空売りのタイミングを探す。
3、高値と安値の確認
以前の高値と安値は、レジスタンスレベルやサポートレベルになりやすい。また、以前のサポートレベルがレジスタンスレベルに、そして以前のレジスタンスレベルがサポートレベルになることが多いから注意したい。たとえば、30ドルにレジスタンスラインが走っていたとしよう。株価がそこを突破すると、30ドルのレジスタンスラインはサポートラインに変わる。
4、値戻しレベルを頭に入れる
上昇する株は、必ず利食われて下げが始まる。これが押し目買いの機会になるわけだが、半値戻し(50%)や38.2%レベルを頭に入れておこう。
トレンドを確認しろ、とマーフィー氏は指摘するが、実際にはどうやって確かめるのだろう。トレンドラインや移動平均線が一般的に利用されるが、ここでストキャスティクスを使った方法を紹介しよう。
ストキャスティクスは、ジョージ・レーン氏によって考案され、%Kと%Dと呼ばれる2本のラインが使用されている。一般的には買われ過ぎ、売られ過ぎの判断に利用されるが、トレンドを見る場合は%Kの1本だけが要る。パラメーターは39に設定して、数値が50より上ならアップトレンド、そして50より下ならダウントレンドだ。例として、ペプシコーラの日足チャートを載せておこう。
ニューヨーク・タイムズを少し分析
AP通信の報道によると、大手証券会社モルガン・スタンレーは、積極的にニューヨーク・タイムズ(NYT)を買っている。既に集めた株数は全体の7.62%に相当し、7月は6.6%の比率だったというから、真相はさておき、とにかく買ってみよう、と個人投資家たちも動き始めた。
割安を理由に、モルガン・スタンレーはニューヨーク・タイムズを買っているようだが、ここで週足チャートを見てみよう。
全体的な流れは、矢印の方向が示すように下向きだ。しかし、7月の終わり頃から横ばい状態になり、AP通信などの報道がキッカケになり、NYTは今週このレンジから飛び出た。それでは日足チャートに移ろう。
木曜の大陽線の高値を抜いたら買ってやろう、という強気なやり方もあるが、ストキャスティクスは買われ過ぎゾーンだ。上昇する短期トレンドラインへの、値戻しを待った方が良いだろう。
攻撃的な人なら、こんなことを言うだろう。「ただ値戻しを待つのは面白くない。よし、短期トレンドラインを目標に空売りだ。」下は30分足チャートだ。
前日の高値が壁になって、弱気なローソク足ができている。だから、空売りはこのローソクの安値割れがエントリーポイントだ。もちろん、逆に前日の高値を超えるようなら、直ぐ損切らなくてはいけない。下の上昇する赤いラインは、目標になる日足に走るトレンドラインだ。ストキャスティクティクスも買われ過ぎレベルだから、NYTが一時的に下がる可能性を示している。
上記したように、モルガン・スタンレーがニューヨーク・タイムズ(NYT)を買っている理由は「割安」だからだ。本当に割安かどうかを確かめるには、現在の株価と正当評価額を比べる必要がある。
8人のアナリストたちの意見を総合すると、ニューヨーク・タイムズは向こう3年間で、8.5%の一株利益上昇が見込まれる。売上、キャッシュフローなどの他要素も含めて計算すると、NYTの正当評価額は26ドル56セント、ということだから、現在の株価(23ドル76セント)は割安だ。
NYTの競争相手を見てみよう。先ず、経済ニュースで有名なダウ・ジョーンズ社の現株価は33ドル94セント、そして正当評価額は21ドル98セント。ニュース・コープの金曜終了値は21ドル59セント、そして正当評価額は19ドル32セントだ。
他社と比較しても割安なNYTだから、アナリストは買い推奨を出している、と思うかもしれないが、買いを勧めるアナリストは一人しかいない。だからと言って売り推奨が多いわけではなく、ほとんどのアナリストは「ニュートラル」、という煮え切らない態度を示している。
株が割安なのは、人気の無い証拠だ。はたしてモルガン・スタンレーのNYT買いニュースは、今週も効き目があるだろうか。注目してみたい。
すばらしいタイミング!?
「単なる偶然だろうか、と疑ってみたくなりますが、この際それは考えないことにします」、と切り出すのは、経済コラムニストのローリー・クリコースキー氏だ。ことの発端は、あるアナリストが発表した格下げなのだが、氏の話を続けよう。
「バンク・オブ・アメリカのアナリスト、マイケル・ヘクト氏は、オンライン証券会社、アメリトレード(AMTD)の格付けを「買い」から「ニュートラル」に引き下げ、目標株価を20ドルちょうどに設定したことを10月6日に発表しました。この格下げ発表は、バンク・オブ・アメリカが関係者を驚かすことになるニュースを出す5日前です。
10月11日、全米で第2位の巨大銀行バンク・オブ・アメリカは、一定の条件を満たした預金者に、株取引手数料ゼロを実施することを発表しました。全く予期されなかったニュースですから、オンライン証券会社の株が売られ、アメリトレードは12%の大幅下落です。」
このニュースに関して、人気番組「マッド・マネー」のジム・クレーマー氏は、こう語っている。「バンク・オブ・アメリカの決定で、アメリトレード、Eトレード、チャールズ・シュワブのようなオンライン証券会社が苦しい状況に直面します。こんなにインパクトの大きな発表を、だれも予期していなかったのは事実です。現に、ニュースの出る数日前、私はアメリトレードの最高経営責任者に会いましたが、バンク・オブ・アメリカのことなど、全く話題になりませんでした。
銀行ではなく、同業のオンライン証券会社からのニュースなら、それなりの対応策はあると思います。しかし、大手銀行からの挑戦ですから、はたしてどの程度のダメージになるかが正確に予測できません。正にオンライン証券会社にとって脅威です。どちらにしても、収益が下がることになるでしょう。」クリコースキー氏の話に戻ろう。
「アメリトレードの格下げを発表した時点で、ヘクト氏がバンク・オブ・アメリカの重大ニュースを知っていた、という証拠はありません。しかし、このあまりに良いタイミングには、どうしても首をかしげたくなります。
ヘクト氏が格下げをした理由は、ここ数カ月間でアメリトレードの株価が、あまりにも上げすぎたためです。今年の7月から、オンライン証券会社の株価は平均で16%の上昇だが、アメリトレードは37%の上昇だ、とヘクト氏はレポートに記しています。」
早速バンク・オブ・アメリカの広報担当者は、「ヘクト氏は重大発表について何も知らなかった」、と記者会見で述べ、業界の規則は厳重に守られていることを強調した。さて、クリコースキー氏によれば、オンライン証券株が売られた翌日、ヘクト氏は「オンライン証券株は売られ過ぎです」、という発表をしたそうだ。
5つの心配材料
それでは、どんな事が起きたら投資者たちは考えを一変させるだろうか。ビジネス・ウィーク誌が指摘する、いくつかの材料を見てみよう。
1、住宅市場
今年、住宅セクター指数は既に17%の下落だ。連銀のバーナンキ議長によれば、住宅市場の低迷は米国経済の成長率を1%減らすことになる。問題なのは、住宅市場が予想以上に悪くなった場合だ。ゴールドマン・サックスの、エド・マッケルビー氏は、こう述べている。「私の見方はアナリストの中でも悲観的な方ですが、現在の住宅市場は、既に予想以上に悪い状態です。」
投資戦略家(チャールズ・シュワブ)のリズ・アン・ソンダース氏は、「住宅市場の下げサイクルはまだ続きます」、と述べ米国株をポートフォリオから5%減らして、現金化することを勧めている。
2、企業収益
S&P500指数に属する大手企業収益は、17四半期連続で二桁成長だ。しかし、下降する商品価格、それに減速する米国経済は企業収益にマイナス材料になる可能性がある。シティグループのスティーブン・ウィーティング氏によれば、特に商品生産者の成長率が大幅に下がり、S&P500の企業は、2006年度の+15.4%から2007年度は+7.4%に落ち込むことを予測している。
3、不景気
おだやかな経済減速ではなく、利回り曲線は、不景気を予想している、と言うアナリストたちもいる。現在、10年物国債の利回りは、短期金利を0.5ポイントほど下回っている。歴史を振り返ると、この差が1ポイントを超えると、雇用状況悪化が顕著になり不景気に陥る。
4、インフレ
最近のマーケットが好調な理由の一つは、金利引下げ期待がある。しかし、連銀は投資者たちが思っているほど早急に利下げを行わない可能性もある。議事録からも分かるように、連銀は相変わらずインフレの心配をしている。ここ数週間、オイルやエネルギー価格は下げ方向だが、これが再度上げに転ずるなら、言うまでもなくインフレ材料だ。
5、地政学的な問題
先日発表されたレポートによれば、アナリストやエコノミストは、テロリズムが米国経済に最も大きな短期的ダメージを与える、と答えている。それ以外にも、中東での紛争、そして北朝鮮もマーケットには不安材料だ。PNCアドバイザーズのジェフ・クライントップ氏は、イランの動きに注目することを強調している。
テロ、と一口に言っても、当然ながら全てのテロ活動がマーケットに悪影響を及ばすわけではない。マーケットに大打撃を与えるには、5年前の世界貿易センターのような過激な事件が必要だ、と多くのアナリストは語っている。
注目の新規公開株
サイエンス・アプリケーションズ・インターナショナル・コープ(SAI)が株式市場にデビューする。最終的な公募価格は木曜に決定され(予想は13ドルから15ドル)、そして翌日金曜が初取引だ。幹事証券会社はモルガン・スタンレーとベア・スターンズ、合計で7500万株が発行される。
なぜ注目されるのか?5年前の9月11日以来、テロリズムがアメリカ人に現実の問題となった。テロリストに対抗するには、正確な情報収集が必要になり、そのためには最新のテクノロジーが要る。そんな要望に応えるのが、サイエンス・アプリケーションズ・インターナショナル・コープ(SAI)だ。
テロ対策(カウンターテロリズム)、企業の機密保持、密輸発見などに使えるソフトウェアやハードウェアの開発だから、SAIの主な収入源は米国政府機関だ。ザ・ストリート・ドット・コムによれば、SAIの技術はロッキード・マーチン(LMT)やノースロップ・グラマン(NOC)に匹敵するようだから、軍事関連銘柄の人気株になる可能性がある。
新規公開株には若い企業が多い。SAIが創立したのは1969年、そして現在の社員数は4万3100人だから、昨日今日に始まった会社ではない。若い会社には爆発的な伸びが見られるものだが、SAIは安定している。2005年から2006年の成長率は8.4%だから、投資者によっては物足りないかもしれない。しかし、77億ドルを超える収益、と聞いたら無視できなくなるだろう。
さて、新規公開株から核実験で問題になっている、北朝鮮に話題を移そう。「ナイーブかもしれませんが、これで地球最後の日が更に近くなった、という見方には反対です」、と言うのは経済コラムニストのジェームズ・スチュワート氏だ。「たしかに予測が難しい国ですが、たとえ北朝鮮であったとしても、私は核兵器を実際に使うことはないと思います。」
まったく人騒がせな国だが、スチュワート氏は、これが新興市場を見直す良い機会であることを指摘する。「新興市場の成長が話題になっていますが、5月がピークになり、その後は冴えない展開です。例をあげましょう。iShares MSCI Emerging Markets Index fund(EEM)は、新興市場に投資をする上場投信です。5月に111ドル10セントの高値を記録し、6月には82ドルまで下げ、現在99ドル付近で取引されています。過去3年間を振り返ると、EEMの年間平均成長率は+28%です。北朝鮮が心配材料になった今日、もはや28%といった高成長は難しいと思われます。
しかし、こんな状況でも新興市場の一つである韓国は買えそうです。もちろん、韓国が北からの脅威を一番受けていることは承知です。今年、韓国の株式市場は4%以上の下げです。株価収益率(PER)は約11ですから、まだ比較的割安なレベルです。積極的な買いは勧めません。あくまでも割安が主な理由ですから、Korea Fund (KF)やKorea Equity Fund (KEF)の上場投信が狙えると思います。」
増えすぎたヘッジファンドマネージャー
ヘッジファンドの黄金時代は終わった、と経済コラムニストのデービッド・ワイドナー氏は言う。「先ず、カン違いしてほしくないのは、私はロン・インサナ氏を侮辱しているわけではありません。株式番組のコメンテーターとして、氏の冷静な意見は、多くの視聴者に有益であったことは間違いありません。しかし、インサナ氏がヘッジファンドを始める、というニュースを聞いた今日、投資者はヘッジファンドから資金を引き上げる時が来たように思われます。」
最近では、天然ガス市場で大きな損を出したアマランス・アドバイザーズが話題だが、ヘッジファンド・リサーチ社の報告によれば、2005年1月以来2600の新ヘッジファンドが誕生している。いくら何でも異常な増え方だ。ワイドナー氏の話に戻ろう。
「株式コメンテーターが本業を離れてヘッジファンドを始めるのですから、今の証券業界は、お祭り気分にひたっています。もちろん、ヘッジファンドが無くなってしまうことはありません。これからもヘッジファンドは、優秀なトレーダーたちに活躍の場を与えることになるでしょう。それに、ヘッジファンドは1兆2000億ドルを超える巨大産業です。
ナラガンセット・マネージメントLP、ベガ・アセット・マネージメント、パイレート・キャピタル、そしてアマランス・アドバイザーズなどの名前をあげることができますが、どれも投機に失敗して多大な損を出しました。シーバート・ファイナンシャルの創始者、ミュリエル・シーバート氏は、こう述べています。「ヘッジファンドによる積極的なレバレッジの利用は、株式市場や先物市場に大きな脅威になっている。年金ファンド資金もヘッジファンドに流れているが、これは株式市場にとって警戒シグナルだ。」
適切なレバレッジ利用は投資に効果的ですが、シーバート氏が言うように、攻撃的なレバレッジ利用をするヘッジファンドが失敗すると、損額は膨大なものになります。これはマーケットに悪影響を与えるだけでなく、場合によっては政府からの助けが必要になりますから、納税者にも被害を及ぼします。
有能なトレーダーが、ヘッジファンドに引き抜かれています。各証券会社は破格なボーナスや年俸を提示して、やり手トレーダーだけでなく、平均的トレーダーの流出防止に懸命です。全く人気の衰えないヘッジファンド、というイメージがありますが、SACキャピタル・アドバイザーの創始者、スティーブ・コーエン氏によれば、機関投資家たちは、以前のようにヘッジファンドを積極的に利用しなくなったようです。
コーエン氏は更に、個人資産家たちも従来のヘッジファンドに興味を失い始め、プライベート・エクイティ(未公開株式)などに資金を移していることを指摘しています。どちらにしても、これだけヘッジファンドの数が膨れ上がった今日、以前のように、50%、80%といった成績を出すことが難しくなったことは事実です。」
気鋭ファンドマネージャー、ジョン・アーノルド
天然ガス市場で60億ドルにおよぶ大損を出したヘッジファンド、アマランス・アドバイザーズとは対照的なのが、ヒューストンに本拠地を構えるケンタウルス・エネルギーだ。ファンドマネージャーは、今年32才のジョン・アーノルド氏、ここまでの成績は+200%だから、間違いなく投資者は喜んでいることだろう。
エネルギーを専門に投機するケンタウルスだから、もちろん天然ガス市場にも参入している。「ケンタウルスは、アマランスの危機を感知していたと思います。ですから、苦しくなったアマランスのポジションを分析して、天然ガス市場で多大な利益を得た可能性があります」、とエネルギー・コンサルタントのアート・ゲルバー氏は言う。
2005年度も、ケンタウルスは優秀な成績を残している。この年、サイタデル・インベストメント・グループやリッチー・キャピタルがエネルギー市場で失敗しているが、ケンタウルスのリターンは+160%だった。2003年、2004年もずば抜けた結果だったから、トレーダー・マンスリー誌によれば、去年ファンドマネージャー、ジョン・アーノルド氏が稼いだボーナスと年俸は1億ドルに達している。
投資者は喜んでいるだろう、と記したが、ここ数年間、ケンタウルスは一切投資者を受け入れていない。そればかりか、投資者に資金を返し始め、最終的にはアーノルド氏の個人資金と、ごく限られた同僚の資金だけを運用することになるようだ。
どうしてアーノルド氏は、こんな素晴らしい成績を上げることができるのだろうか?多くのインタビューが申し込まれるが、先ず氏が承諾することはない。時おり、エネルギー業界専門誌に、アーノルド氏の談話が載ることがある。具体的なトレード方法に触れることはないが、「トレードのチャンスは、マーケットが妥当な価格から大きく離れた時に起きる」、ということだ。
アーノルド氏は、ヘッジファンド業界のスターであることは間違いない。極端にマスコミを避けているから、氏の私生活が話題になることはない。しかし、ダウジョーンズ社から、こんな報道があった。
ジョン・アーノルド氏は、ヒューストンにある「ドッグウッズ」という名前で知られる、歴史的な建物を購入した。すぐ隣にはバイユー・ベンドと呼ばれる、ヒューストンの美術館が所有する建物もあり、素晴らしい内装で有名だ。しかし、アーノルド氏は「ドッグウッズ」の取り壊しを始めた。言うまでもなく、市民たちから反感を買うことになる。
アメリカの歴史を壊した、表向きにはそんな理由で氏に反対しているが、本音は全く違う。アーノルド氏は、以前エンロンのエネルギー・トレーダーだったのだ。腐敗の象徴エンロン破綻で、従業員たちは401Kに積み上げてきた老後の資金を全て失った。アーノルド氏が購入した物件は、以前のエンロン役員たちが住んでいた高級住宅街の隣だったのだ。これでは反感を買っても仕方ない。