US Market Recap

クリスマスプレゼントは銀

あと2カ月を残すのみとなった2006年、大きな伸びを期待できるものは何だろうか?ここまでダウ指数が上がってしまうと、さすがに割高感があって買いにくい。それなら、出遅れている小型や中型株が狙いだろうか?ここで少し変わった意見、マネー・アンド・マーケッツのショーン・ブロードリック氏の話を紹介しよう。

「ファンダメンタル的要素が揃い始めています。第4四半期、銀は予想以上に大きなラリーを展開する可能性が高くなってきました。ここしばらく、横ばい状態が続いていましたが、次の動きは力強いブレイクアウトになりそうです。現在の銀価格は12ドルほどですが、15ドルを狙えるだけでなく、場合によっては20ドルの突破もありえます。

銀上昇の原動力をいくつか挙げましょう。今日からシャンハイの金取引所で、試験的に銀の取引が始まりました。この試験取引の成功は間違いありません。中国から膨大な資金の流れこみが予想され、既にその影響を織り込んで、シャンハイの株式市場は5年ぶりの高値を記録しました。

世界宝石連盟の調べによると、中国、インド、そしてロシアでの銀消費量は、向こう数年間、二桁の伸び率が予想されます。しかし、供給量が問題です。地下にある銀は除いて、地上に備蓄されている銀は、1990年、約22億オンスありました。1995年には14億オンスに減少し、現在の量は3億オンスにすぎず、ここ50年間で最低のレベルです。

銀の工業用使用量も上昇しています。たとえば最近開発された、銀・亜鉛電池はリチウム電池より長持ちし、とつぜん火災を起こして、ノート型パソコンを破壊する心配もありません。

上場投信のSLVは、現在1億328万オンスの銀を所有しています。4月は2100万オンスでしたから、飛躍的な伸びです。先日提出された書類によれば、SLVは1682万2727株を更に発行して、1億6800万オンスの銀買い足しを計画しています。銀市場に参加する簡単な方法として、SLVを買うこともできますが、これは単に銀の値段に連動するだけですから、あまり面白味がありません。

ここで注目したいのが、バンクーバーに本拠地を置くシルバー・ホイートン(SLW)です。銀鉱銘柄ですが、この会社は全く銀鉱を所有しません。ですから、採掘に関連した機材費などの経費がいっさいありません。シルバー・ホイートン社は、メキシコ、スウェーデン、ペルーなど世界各地の鉱山と契約を結んで銀の生産をしています。最近の四半期の生産量は270万オンスにのぼり、経費を計算すると1オンスあたり3ドル90セントです。これは極めて魅力的な数字です。

2006年度、シルバー・ホイートンの生産量は1500万オンスを超えることが予想され、2009年には2000万オンス達成が見込まれています。第3四半期の決算が11月2日に予定されていますから、その前に買ってみるのも面白いアイディアです。」

あてにならないGDP

米国経済は、既に思っている以上に悪い、という声が聞こえるようになった。先週金曜に発表された第3四半期GDP(国内総生産)は、予想された+2.1%を下回る+1.6%、という結果だった。これだけでも冷えこみを見ることができるが、実際の数値は、+1.0%に満たないという。

アライアンス・バーンスタイン社のエコノミスト、ジョー・カーソン氏はこう語っている。「今回の報告で際立って目立つのは、26%増の自動車生産量です。この数字を除くと、GDPは発表された+1.6%ではなく、+0.9%になります。

既に、ゼネラルモーターズ(GM)とフォードモーター(F)は減産が実施されていますが、それにもかかわらず、なぜ生産量が増えたのでしょうか?答えは、スポーツ用多目的車(SUV)や小型トラックの卸売り価格が下がり、各自動車メーカーは売れ残った2006年型モデルを、いっせいに処分しようとしたためです。自動車業界の低迷が、具体的な数字としてGDPに現れるのは、次の発表になると思います。」

少し説明すると、米国商務省が車の生産量を割り出すために使っているのは、自動車卸売り業者からの数字だ。第3四半期、スポーツ用多目的車(SUV)の卸売り価格は5.5%ほど下がり、一時的に販売数が上がった。しかし、格安価格での売上だから、単にSUVが右から左に動いたたけだ。

カーソン氏は、自動車メーカーの低迷は次のGDP発表で顕著になる、と言っているが、それを裏付けする報道があった。フロリダに本拠地があるオートネーションは、アメリカで最大の自動車とトラックの卸売り業者だ。その規模は、80のGM販売店、48のフォード販売店、58のクライスラー販売店、そして147のフランチャイズ店にのぼる。

第4四半期、オートネーションはデトロイト自動車メーカーへの注文台数を30%減らす。最高経営責任者、マイク・ジャクソン氏によれば、全米各地での販売数が下落している。今年9月までの状況を見ると、GM車の売上は8.6%減、そしてフォードとクライスラーがそれぞれ7.3%減だ。「このままの状態では、2007年になっても、2006年型の販売が続きそうだ」、とジャクソン氏は述べている。

危険シグナルは、自動車産業だけでなく、他の製造業や小売セクターにも見られる。たとえば、先日発表された小売最大手、ウォルマートの売上は2000年12月以来の低成長だった。製造業者は、予想以上に大きな在庫を抱えているから、第4四半期の生産量は下落することだろう。

マスコミは、住宅市場の冷えこみばかりを報道するが、アメリカの経済の落ち込みは、思っているより広範囲にわたっているようだ。

ファンドマネージャー注目の金鉱株

今週の経済カレンダーは忙しい。注目されるのが、金曜に予定されている10月分の雇用統計だ。非農業部門新規雇用者数は+12万5000、失業率は4.6%、そして平均時給は0.3%増が予想されている。予測されたとおりの結果なら、株式市場は極端な動きをすることはない。しかし、インフレ懸念を再発させるような数値、具体的には失業率が4.5%に下がり、平均時給が0.5%以上の伸びなら、金利引き上げ支持者たちの声が大きくなるだろう。

「2007年度の金利動向ですが、この予測がなかなか難しいのです」、と言うのは経済コラムニストのジム・ジューバック氏だ。「米国経済が、予想以上に悪くなったとしましょう。たとえば、GDP(国内総生産)が1.5%以下の成長率に落ち込み、不況の確率が濃厚になれば、とうぜん連銀は金利引き下げを実施します。現に、国債市場は、このシナリオを織り込んでいます。逆に、アメリカの経済が、予想以上に強い場合はどうでしょうか?GDPが3.5%以上のペースで伸びるようなら、バーナンキ連銀議長は、まちがいなく金利を引き上げることでしょう。」

またインフレの心配をしないといけないのだろうか?インフレ対策の一つとして金投資が選ばれるが、ファンドマネージャー、ジョセフ・ウィックワイヤ氏は、こんな見方をしている。

「金は、長期的ブルマーケットの初期段階です。マクロ経済、地政学的要素、そして需給バランスなどから、金の上昇を予測することができます。米国の膨大な貿易赤字は、ドルを15%から35%ほど下落させる可能性があります。もちろん、そんな事態が起きれば、とうぜん金買いが活発になります。」

直接に金を買わなくても、金鉱銘柄を買うことで、金市場に参加することができる。ウィックワイヤ氏は、実際にどんな金鉱銘柄に投資しているのだろうか?

毎年、約500万オンスほどの金が生産されるが、ウィックワイヤ氏が最も勧めるのは、世界最大の金生産業者、バリック・ゴールド(ABX)だ。特に魅力的なのは、生産コストが低いから収益性に優れている。また、バリック・ゴールドは銅部門もあるから、単なる金専門会社でないことを、氏は付け足している。アナリストの意見を見てみると、4人が強い買い、11人が買い、5人がホールド、そして2人が売り格付けを設定している。アナリストたちの、平均目標株価は42ドルだ。(金曜の引値は29ドル91セント)収益性の良さをウィックワイヤ氏が指摘しているように、ここ12カ月間の伸びは、過去3年間の平均成長率を上回っている。

IQではなくEQを確認しよう

IQは知能指数。それでは、あなたはEQをご存知だろうか?EQ?これもIQのように頭文字を取ったものだが、EはEmotional、そしてQはQuotientだ。直訳すれば、「感情指数」、ということになる。「EQを確かめることで、自分が本当に株や先物のトレードで成功できるかを知ることができます」、とベテラン・トレーダーのジョー・ロス氏は言う。話の一部を紹介しよう。

感情指数は、いくつかの要素で構成されるが、先ず挙げたいのは自己動機付け(セルフ・モチベーション)だ。トレードで成功するには、プラス思考が要求されるから、モチベーションも前向きなものでなくてはいけない。正しく自己動機付けをするには、自分を信じることが大切だ。どんなに必死に動機付けをしても、悲観的思考を捨てることができなければ、トレードで成功することは難しい。

暗い方向ばかりに目が行く人は、トレードで損を出すたびに、自分は才能が無いと思い込み、「敗者」というレッテルを自らに貼ってしまう。前向き思考の人は、たとえトレードに失敗しても、劣等感を与えるような自己批判をしない。ルールどおりにやっても、損を出すことなどトレードの世界では日常茶飯事だ。簡単に、「私はダメな人間だ」、などと軽々しく口にしてはいけない。

あなたは適切に自己認識ができるだろうか?ある銘柄を買う、と決めたとしよう。問題は、それをどう決定したかだ。単なる感情的な買いだろうか?それとも、ルールに基いた買いだろうか?いったい何が、自分の行動を支配しているのかを、冷静な目で見なくてはいけない。

一つ注意しておきたいことがある。感情と直感を混同してはいけない。直感には、思わぬ先見性があるから、何かひらめいた時は、先ず分析してみよう。誤解されやすい表現だが、直感はトレーダーが持つ力強い武器だ。

気分をコントロールすることも大切だ。気分と感情は同じものではないのか、と疑問に思われる方もいることだろう。気分もたしかに感情なのだが、ここで言う気分というのは、トレード以外の事が原因になって起きる感情だ。例を挙げよう。マーケット開始10分前に、あなたは妻と激しい口論をした。その怒りがおさまらぬまま、あなたはコンピュータの前に座る。ムシャクシャした気分だから、とうぜん冷静にチャートを見ることができない。

トレード以外、と記したが、トレードに関することでこんなことも起きる。口座を見ると、昨日処分したはずの株がまだ残っている。さっそく証券会社に電話をするが、担当者の態度があまりにも横柄だ。あなたは気分を害し、頭に血がのぼってくる。とにかく問題は解決したが、害された気分は戻らない。こんな状態でトレードに臨んだら、まずロクな結果にならない。これで、気分をコントロールすることの重要性が、分かっていただけたと思う。

暑くもなく、寒くもない

イギリスの童話、「3匹のクマ」に登場する主人公は、ゴルディロックスという名前の女の子だ。そして現在、アメリカが経験しているのは、ゴルディロックス経済だ、と言うアナリストが多い。これは良い状態なのだろうか、それとも心配した方がいいのだろうか?

話を忘れてしまった人のために、簡単な復習をしよう。森で道に迷った女の子(ゴルディロックス)が、クマの家を見つけた。(単に散歩していただけかもしれない。)中に入ると、テーブルの上には三つのスープがあった。(スープではなく、オートミールという訳もある。原語はporridge)

お父さんクマのスープは熱すぎる。お母さんクマのは冷たすぎる。しかし、子どものクマのスープは丁度よかった。どうだろう?話を思い出されただろうか?ということで、ゴルディロックスちゃんは、子どものクマのスープを飲んだ。

途中を飛ばして結末に進もう。女の子は眠くなったので寝室へ行くと、三つのベッドがあった。お父さんクマのは硬すぎ。お母さんクマのは柔らかすぎ。子どものベッドは丁度よかった。子どものベッドで寝ていると、クマたちが帰ってきた。ビックリした女の子は、飛び起きて逃げさる。ようするに、ゴルディロックス経済というのは、丁度良い状態のことだ。

「快適なベッドで眠るゴルディロックスちゃんは、まるで今日の投資者のようです」、とインベスター・アラートのジョン・ムガリアン氏は言う。連日ダウ指数の高値更新が報道され、投資者たちはベアマーケットのことなど、全く頭に無いことだろう。もし今、クマが現れたら投資者はどんな反応を示すだろうか?氏の話を続けよう。

「昨日の金利据え置き発表は、単なる時間の浪費です。連銀は最初から、金利を引き上げることなど考えていません。中間選挙まで、あと約二週間です。こんな重要な時期に、金利引き上げなどありえません。現に、引き上げを唱えたのは、リッチモンド連銀のジェフリー・ラッカー氏だけです。

ソフトランディングが主流意見ですが、住宅市場を考慮すると、いまだにハードランディングの可能性を、完全に否定することはできません。更に、逆利回り現象や中東問題も心配要素です。

ソフトランディングを提唱する人たちは、最近下がったエネルギー価格を指摘します。たしかにその通りですが、いぜんとして高いレベルであることも事実です。それに、こんなことも言えます。オイルが急騰している時は、中東からのオイルに依存することをやめて、代替エネルギー開発が叫ばれました。しかし、オイルの下落で、そんな声が聞こえなくなり、節エネは死語になったようです。

中間選挙終了後、エネルギー価格の上昇が始まることでしょう。そして株式市場は、8%から10%ほど下げると思います。きっと投資者たちは、森の中へ逃げさることでしょう。」

中間選挙とダウ指数

「風邪をひいてしまったので、おとなしく休むことにしました。ちょうど良い機会だったので、もう一度「欲望と幻想の市場、伝説の投機王リバモア」(エドウィン・ルフェーベル著)、を読んでみることにしました」、と投資アドバイザーのマイケル・ナイストローム氏は切り出す。相場師リバモアをモデルにした小説だが、意外とテクニカル分析の本質を学ぶことができるらしい。ナイストローム氏の話に戻ろう。

「味気の無い教科書が嫌いな人でも、この本なら楽しく読めることでしょう。トレンドライン、抵抗線、サポートレベル、といった言葉は出てきませんが、それらのコンセプトが、様々な状況の中で語られています。小麦相場のエピソードでは、1ドル20セントを超えたら直ぐ買えば儲かる、と主人公は強調し、ブレイクアウトの手法が説明されています。

この小麦の話と、最近12000を突破したダウ指数には共通点があります。小麦は、1ドル10セントと1ドル20セントの間で、長いこと横ばいをしていました。友人たちは、「強気論」と「弱気論」を戦わせますが、主人公はこう言います。「儲けたければ、1ドル20セントを超えたら直ぐ買うんだ!きっと短期間で儲かるよ。」

主人公は、小麦が必ず1ドル20セントを突破することを知っていたわけではありません。しかし、いったん抵抗線が崩れれば、値段の上昇に弾みがつくことを指摘したのです。今日も多くの投資者は、ブレイクアウトで買うことに躊躇します。ダウの場合なら、こんな高値圏では買えない、という理由でせっかくの上放れを逃してしまいます。

先日、知人とレストランに行った時です。知人は、ダウが新高値を更新しているのに、持ち株は全く上がらない、とぼやいていました。これは、決して奇妙な現象ではありません。今日のラリーは、全セクターが参加しているのではなく、一部の大型株だけです。」

たしかに好調なダウ指数だが、この大きな原因の一つは来月に迫った中間選挙だ、とナイストローム氏は言う。「長期的にマーケットをコントロールするのは無理ですが、ダウ30銘柄のように限られた株を一時的に操ることは可能です。中間選挙が目前です。経済状況を良く見せるには、言うまでもなく、ダウ指数上昇が役立ちます。

ブッシュ大統領の共和党が勝利するには、株高が必須です。もし民主党が勝利したら、どんな状況が起きるでしょうか?議会ではイラクでの戦争が真剣に取り上げられ、ブッシュ政権が大きく傾くことになるでしょう。スムーズにブッシュ経済政策を続行させるためにも、どうしても共和党は勝たなければいけません。とにかく選挙が終わるまで、ダウは高値を更新し続けることでしょう。」

株式市場の弱点

四つに組んだら手ごわい相手に、まわしを取らせるわけにはいかない。できれば、立ち上がりから突っ張って、そのまま押し出してしまいたい。勝負の世界では、対戦相手の長所短所を調べることが必須だ。株も勝負の一種だから、とうぜん敵を研究する必要がある。

さて、皆さんが株を買う場合、いったい誰が敵なのだろうか?デイトレーダーのミシェルさんが、こんな話をしている。「私の知っているデイトレーダーですが、勝率95%という、すならしい数字の持ち主がいます。しかし、彼には不思議な癖があるのです。

こんなことができるのは、たぶん豊富な口座資金が関係していると思いますが、とにかく彼は信じられないことをします。思惑が外れたら、即座に損切るのがトレードの掟ですが、彼はよほどのことがない限り、損切りをまったくしないのです。買った場合なら、下がるたびに買い足して、下げ止まるまで執拗に追い続けます。もちろん、大きな穴を口座に開けたことは1度や2度ではないようですが、95%の勝率ですから、最終的に損を取り戻してしまいます。

彼は、素早い損切りが大切であることを知らないわけではありません。現に、彼自身こう語っています。「自分のしていることが間違っているのは、最初から分かっている。しかし、損切りがどうしてもできない。下がる株を買い足し続けることは、明らかにルール違反だ。自分の中に魔物が生息している、としか説明のしようがない。」皆さんも、自分自身が最悪の敵になっていないでしょうか?」

自分との戦いもあるが、株投資者が相手にしているのは株式市場(マーケット)だ。勝つためには、相手の長所短所を把握することが重要、と上記したが、マーケットの長所短所は何だろうか?フール・ドット・コムのブライアン・パカンパラ氏は、2つの弱点を挙げている。

1、過剰反応

分かりやすい例はニュースだ。2005年、薬品の安全性が疑問視されるニュースが報道されて、ファイザーが大きく下げたことがあった。投資者たちは、この悪材料だけに注目して、他の情報にはまったく注意を払うことができなくなり、行き過ぎになるまで株は売られた。

2、極端な一般化

あの人はニューヨーク出身だから短気だ。女性は数学が苦手だ。黒人はバスケットボールが上手い。そんな形で、私たちは物事を一般化するが、株投資でも同様な間違いを犯してしまう。例を挙げれば、出遅れ株狙いだ。オイル株が上げている時なら、既に上げている株ではなく、まだ低迷しているオイル株を買う人たちがいる。セクターが強いのだから、この株が上がるのも時間の問題、という理屈だが、人気の無い銘柄にはそれなりの理由がある。正解は、常にリーダーを買うことだ。

マーケットは、個人と機関投資家で作り上げられている。マーケットの持つ二つの弱点、とパカンパラ氏は言うが、ようするにそれらは、私たちの持つ弱点のことだ。

年末に買える10銘柄

単に避けられている銘柄を狙うのではなく、徹底的に忌み嫌われている株を買え、と経済コラムニストのジム・ジューバック氏は言う。ただし、条件が一つある。買うのは、今直ぐではなく年末まで待つこと。もう少し、氏の説明を聞いてみよう。

「2004年にも同じやり方で、10銘柄を勧めましたが、先ず結果を見てみましょう。投資期間は2004年12月15日から、2005年の12月15日までです。この間、S&P500指数は6%の伸び、そしてダウ指数は+2%でしたが、勧めた10銘柄は平均で14.9%の上昇でした。

買った10銘柄は、Charles Schwab(SCHW)、Hasbro(HAS)、Interpublic Group Of Companies(IPG)、Merck(MRK)、MBNA(バンク・オブ・アメリカに買収されました)、Nokia(NOK)、Reynolds&Reynolds(REY)、Teva Pharmaceutical(TEVA)、Western Digital(WDC)、Westwood One(WON)です。

今回もこのやり方で成功する保証はありませんが、一つ指摘したいことがあります。最近、投資グループによる企業買収が目立ちます。一般的に、資産の豊富な割安株が買収ターゲットになりますから、現在忌み嫌われている銘柄が対象になる可能性が高くなります。

叩かれた株を買う方法で有名なのは、the Dogs of the Dow strategyです。対象になるのはダウ指数に属する30銘柄だけですが、簡単に説明しましょう。たとえ同じ額の配当金でも、株価が下がると、配当利回りは上昇します。ですから、ダウ銘柄の中で最も利回りが高い10銘柄を12月31日に買って1年間持ち続ける、という方法です。成績の方は、ここ2年間は冴えませんが、1928年から2003年を振り返ると、年間平均で13%ほどの利益がありました。

the Dogs of the Dow strategyの問題点は、ダウ30銘柄に限定されますから、あまりにも選択肢が狭すぎます。これが、最近2年間の成績低迷の一原因と思われます。ですから、私はマーケット全体から銘柄を選ぶことにしました。

銘柄選択条件の中で、特に大切なのはレラティブ・ストレンクス(チャートについてくるRSIではなく、マーケット全体との比較)と、現在の株価です。銘柄はレラティブ・ストレンクスが20以下のものに絞りました。これで、下から数えて20%以内で低迷する株が手に入ります。更に、株価も52週間の安値から20%以上離れていないものに限定して、嫌われ度を確かめます。」

それでは、現時点(10月23日)における、今年の年末用の買い10候補を記そう。(注:これは買い推奨ではなく、単なる投資アイディアであることをお断りしておきたい。)

1. Newmont Mining (NEM) 2. Quest Diagnostics (DGX) 3. Red Hat (RHAT) 4. Helix Energy (HLX)
5. NAVTEQ Corp (NVT) 6. Biovail (BVF) 7. Sierra Health (SIE)
8. Vantana Medical (VMSI) 9. Hydril (HYDL) 10. Microsemi (MSCC)

ヤフー復活のカギはコレだ

ヤフー(YHOO)はもう見込みが無いのだろうか?1月9日、43ドル66セントだった株価は、現在たったの23ドル21セントだ。ここまで下がったのだから、そろそろ買えそうだ、と思うかもしれないが、10月に入ってから、ヤフーを格上げしたアナリストは一人もいない。

たとえば、10月20日、スタイフェル・ニコラスのアナリストは、ヤフーを「買い」から「ホールド」に格下げ。10月18日、ドイツ銀行は、目標株価を25ドルから24ドルに引き下げ。同18日、UBS証券は、36ドルだった目標株価を33ドルに下方修正。更に同18日、パイパー・ジャフレーも株価ターゲットを引き下げているから、これでは投資者も足がすくんでしまう。

アナリストの悲観的な意見が18日に集中した原因は、前日の決算発表が大きな原因だ。たしかに予測されたとおりの結果だったが、第3四半期の収益は、去年の同時期を37%も下回った。おまけに、第4四半期の利益はアナリストの予想以下になる、というからガッカリな話だ。

ここで、「マッド・マネー」のジム・クレーマー氏の意見を引用しよう。「業績不振はヤフーだけの問題でなく、業界全体が低迷している、とヤフーは言います。しかし、同業のグーグル(GOOG)を見てください。すばらしい収益を上げています。業界全体が悪い、というのは単なる言い訳です。マズイのはヤフーの経営陣です。

ヤフーが以前のような人気を取り戻すためには、モンスター・ワールドワイド(MNST)を買収する必要があります。モンスター・ワールドワイドは、オンライン求人市場の48%を牛耳っています。それに、多くの新聞社とも提携しています。小型企業買収がヤフー再建に必須ですから、買収ターゲット候補として、モンスターを買うのも一案です。他には、バンクレート(RATE)やザ・ノット(KNOT)も狙えると思います。」

ヤフーの経営陣が悪い、とクレーマー氏は指摘しているが、こんなことも付け加えている。「最高経営責任者、テリー・セメル氏が首になるなら、徹底的な買いを勧めます。とにかく、早急な経営陣の入れ替えがない限り、株価は21ドルまで下げるかもしれません。」

セメル氏の評判は良くない。株掲示板には、セメル非難があふれている。

「セメル氏を直ぐ首にしろ。ヤフーの事より、トム・クルーズの赤ちゃんを見に行くことを優先させているのだから、こんな人は会社に必要ない。」 JOCO52さん

「ヤフーを崩壊させた犯人はセメル氏だ。即刻クビにしろ!」 CTURGRE2さん

引用していたら切りが無い。しかし、これだけ嫌われている株だから膨大な空売り残がある。8月時点で、ヤフーの全空売り残を買い戻すには、3.07日の日数が必要だったが、現在この数字は7.07日に膨れ上がっている。ニュースの内容によっては、一斉の買い戻しが期待できるだけに、ヤフーは注目の一銘柄だ。

来週も金利は据え置き

17回連続の、金利引き上げ最後の日は6月29日だった。8月8日、そして9月20日の連邦公開市場委員会では、金利が据え置かれたが、もちろん、もう二度と連銀は引き上げをしない、と断言することはできない。しかし、こんな事実を経済コラムニストのチェット・クリヤー氏は指摘する。「6月29日から今週までを振り返ってみると、S&P500指数は7.9%の上昇です。低迷が長かったナスダック指数も、7.7%ほど上げています。」

上昇しているのは株だけではない。クリヤー氏によれば、6月の終わり、5.25%の利回りがあった10年物国債は、現在4.75%から4.8%で推移している。利回りの下降は価格の上昇を意味するから、国債も株と同様に好調だ。

「連銀は、うまくインフレを抑制しています」、とINGインベストメントのダグラス・コーテ氏は言う。水曜日に発表された、消費者物価指数の9月分は、オイルやガソリンの値下がりが反映されマイナス0.5%だった。年間ベースでは+2.1%だから、連銀の目標とする方向へたしかに進んでいる。

さて、来週24日と25日の二日間にわたって、連邦公開市場委員会がある。最近、何人かの連銀関係者がタカ派的な意見を述べて、投資者を心配させているが、多くのアナリストは現行の金利据え置き(5.25%)を予想している。

タカ派の代表は、リッチモンド連銀のジェフリー・ラッカー氏だ。9月20日の議事録に、氏の意見が要約されている。「金利据え置きは、インフレを抑える適切な措置ではない。現行のインフレ率を下げるためには、更なる金利引き上げが必要だ。」

据え置きを支持する連銀関係者は、冷え込む住宅市場と、下降するエネルギー価格を挙げている。9月分の住宅着工戸数は、8月分を約6%上回る意外な結果だったが、住宅建築許可数や販売数から分かるように、住宅市場は明らかに冷え込んでいる。ある大手住宅建築業者は、アリゾナ州フィニックス市の新築住宅の売れ行きは際立って悪く、まるでゴーストタウンのようだという。

ここでクリヤー氏は、こんな質問をする。「単に据え置きでなく、金利引下げが近い、と言うアナリストも出始めていますが、もし現行金利がずっと続いたら、株にどんな影響を与えるでしょうか?」金利が安定するわけだから、株には良さそうな気がする。しかし、安定は安心を呼び、それが無謀な投機へつながる危険性を警告するエコノミストもいる。

世界最大の債券ファンドを運用する、ビル・グロス氏の話によれば、金利据え置きが長期間継続することはありえない。「現在の米国経済状態を見る限り、2007年中に連銀は金利を引き下げることになるでしょう。」

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