US Market Recap

空売り銘柄発掘法

チャートを見ながらトレードする人なら、サポートラインやトレンドラインなどを使って、空売りのタイミングをつかむことができる。それでは、ファンダメンタルズを重要視する人たちは、どうやって空売り銘柄を探すのだろうか?「プロの銘柄選択法を盗め! 上がるバリュー株、儲かるグロース株」の著者、ハリー・ドマッシュ氏の方法を紹介しよう。

こんなメールが読者から届いた。「ドマッシュさんのやり方を反対にしたら、有望な空売り候補銘柄を選べるのでしょうか?」簡単に聞こえるが、実際にやってみると、これが中々難しい。その前に、少し背景の説明をしよう。

既に皆さんもご存知のように、株価の下落を利用して利益を上げるのが空売りの目的だから、これは下げ相場における有効な手法だ。最近、マーケットは天井だ、と言う人たちが増えているから、近いうちに空売りの機会が訪れるかもしれない。

それでは、銘柄の選び方に移ろう。先ず、一番新しい決算報告書が必要になる。一つ一つの項目を検討して、心配材料を探すわけだ。こんな質問をしてみよう。あなたがアナリストだったら、この企業の収益を下方修正するだろうか?「そんな事を言われても、私には決算報告書の見方が分からない」、とこぼす人たちもいることだろう。具体的に注目してほしいのは、マージン(利益幅)、売掛債権(未収金勘定)、そしてキャッシュフローだ。

将来的な問題がある企業には、マージンの低下、売掛債権の上昇、キャッシュフローの悪化、という現象が見られる。これらの数値を比べるときは、前四半期の決算を使うのではなく、前年の同時期を利用しよう。

私のやり方は複雑でも面倒でもない。MSNマネーのスクリーナー(無料)を使って簡単にできる。スクリーナーに入れるパラメーターを記しておこう。

1、Mean Recommendation = Strong Buy
なぜ「強い買い」推奨銘柄を狙うのか、と不思議に思う方もいることだろう。アナリストが強気でも、株価が低迷なら、その企業には何らかの問題があるはずだ。それに株価が冴えないのは、機関投資家が買っていない証拠だ。

2、% Institutional Ownership <= 35
機関投資家による保有率は35%以下。低い数値は、機関投資家に人気が無いことを表す。

3、% Institutional Ownership >= 8
そして、機関投資家による保有率は少なくとも8%以上。あまりに数値が小さ過ぎると、株価がほとんど動かない。

4、Last Price > = 15
株価は15ドル以上。

5、Avg. Daily Vol. Last Month >= 50,000
先月の一日平均出来高は5万株以上。

もちろん、株価や出来高は、あなたの好みに合わせて設定できるが、株価が一桁の銘柄には、機関投資家が集まることは滅多に無い。更に、これは単なる銘柄選びの一アイディアであることも付け加えておきたい。

迷アドバイス その2

専門家の意見だからといって、100%鵜呑みする必要はない。それでは、「迷アドバイス」の残り半分を見てみよう。昨日と同様に、下のチャート(ダウ指数)を参照しながら読んでほしい。

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11、「不景気の最も悪い局面は、既に過ぎ去ったようだ。」 ハーバード・エコノミック・ソサエティー(1930年1月18日)

12、「米国経済に悪影響となっていた要素は全て無くなった。」 アンドリュー・メロン(米財務長官 1930年2月)

13、「1930年春、アメリカの経済危機に終止符が打たれた。」 ジュリアス・バーンズ (フーバーズ・ナショナル・ビジネス協議会 1930年3月16日)

14、「経済見通しは好転している。」 ハーバード・エコノミック・ソサエティー(1930年4月19日)

15、「株式市場の暴落から、まだ6カ月しか経過していないが、私は最悪の事態は既に過ぎ去ったと確信している。心配された、大手銀行や企業の倒産も無く、ここからは急激な経済回復が展開されることだろう。」 ハーバート・フーバー(米第31代大統領 1930年5月17日)

16、「予想に反する状況が続いているが、近いうちに企業の回復が始まるはずだ。」 ハーバード・エコノミック・ソサエティー(1930年6月28日)

17、「恐慌の勢いに衰えが見える。」 ハーバード・エコノミック・ソサエティー(1930年8月30日)

18、「この辺で、経済の下げは止まるはずだ。」 ハーバード・エコノミック・ソサエティー(1930年11月15日)

19、「ここで経済が安定し始める確率が高い。」 ハーバード・エコノミック・ソサエティー(1931年10月31日)

20、「国税庁の役人が付き添わないかぎり、銀行の貸し金庫を開けることを禁ずる。」 ルーズベルト大統領(1933年)

さて、現代に戻ろう。先月、ダウ指数は12000を突破して、新高値が記録された。アナリストやアドバイザーたちは、どんな意見を発表したのだろうか?いくつか見てみよう。

「2月までに、S&P500指数は更に100ポイント、そしてダウ指数は1000ポイントほど上げるだろう。」 ピーター・カネロ(カネロ・アンド・アソシエーツ 2006年10月13日)

「アメリカ経済は減速方向ですが、これは投資者には好材料です。」 アビー・コーエン (ゴールドマン・サックス 2006年10月17日)

「90年代のバブルと比較する人がいますが、その見方は間違っています。株は上昇が続きます。」 トニー・ドゥワイヤー (FTNミッドウエスト証券 2006年10月18日)

「率直な意見ですか?私は超強気と強気の中間です。現時点でも、マーケットは割安です。」 ビル・ミラー(レッグ・メーソン 2006年10月21日)

繰り返そう。専門家の意見は、片方の耳だけで聞いたほうが良いかもしれない。

迷アドバイス その1

選挙は終わったが、相変わらず「何を買うべきか」、と専門家たちの意見が求められている。不安になると、どうしてもアナリストやアドバイザーの話に耳を傾けてしまうものだが、投資戦略家のバリー・リットホルツ氏が、面白い事実を紹介している。タイトルは「思い上がった予言者たち(1927年ー1933年を振り返る)」。下のチャート(ダウ指数)を参照しながら読んでほしい。

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1、「現代社会において、株式市場が暴落する可能性は消滅した。」 ジョン・メイナード・ケインズ (経済学者 1927年)

2、「米国経済成長をストップできるものは何も無い。」 マイロン・フォーブズ(ピアス・アロー・モーター社長 1928年1月12日)

3、「今日ほどアメリカが希望に満ちていたことは、いまだかつて一度も無い。繁栄する国内経済、そして政府間の理解が深まり、世界平和が実現している。」 カルビン・クーリッジ(第30代米大統領 1928年12月4日)

4、「株価の一時的な低迷はあるかもしれない。しかし、暴落はありえない。」 アービング・フィッシャー (経済学者 1929年9月5日)

5、「株式市場は、高値圏での横ばい状態に入った。50から60ポイントの下落を予測する人もいるが、私はその可能性は無いと思う。数カ月後には、現在よりかなり高い位置に達しているだろう。」 アービング・フィッシャー (経済学者 1929年10月17日) このコメント直後、ニューヨークは暴落に襲われる。

6、「今は絶好の買いチャンスだ。J.Pモルガンの言葉を思い出してほしい。アメリカ経済に弱気論はありえない。」 R.W.マクニール(証券アナリスト 1929年10月30日)

「この暴落は、米国経済に大きな影響を与えることはない。」 アーサー・レイノルズ(コンチネンタル・イリノイ銀行会長 1929年10月24日)

「ここで優良株を買う投資者は、けっして後悔することはないだろう。」 ニューヨーク・ヘラルド・トリビューン紙(1929年10月30日)

7、「極めて大幅な株式市場の下げだが、これは単なる中期的な修正であり、不況を予想するものではない。」 ハーバード・エコノミック・ソサエティー(1929年11月2日)

8、「米国が深刻な不景気に陥る可能性を肯定することは、きわめて難しい。来年の春には、企業収益が上向くはずだ。」 ハーバード・エコノミック・ソサエティー(1929年11月10日)

9、「現状を見る限り、米国経済に対する悲観論を支持する要素は、全く存在しない。私は、春までに経済が回復することを確信している。」 アンドリュー・メロン(米財務長官 1929年12月31日)

10、「近い将来、株式市場は上向くはずだ。見通しは、ひじょうに明るい。」 アービング・フィッシャー (経済学者 1930年早々のコメント)

つづく

ヘッジファンドが追う新テーマ

次のホットな投資テーマは何だろうか?プロたちは、いったいどこへ資金を投入するのだろう?そんな疑問に回答を与える報道が、ブルームバーグからあった。要点をまとめてみよう。

「私たちは、歴史的なウラン不足に直面しています」、と5億8000万ドルを運用する、ファイアバード・マネージメントのジェームズ・パッシン氏は言う。現に氏は、5年前からウラン生産業者の株を買い始めている。

先週、ウラン価格は7%の上昇を展開し、1ポンドあたり60ドルの新高値を記録した。最近、Cameco社のウラン鉱山(世界最大のウラン供給者)が洪水の被害を受けているから、1月までには70ドルに達するだろう、というのが一般的な見方だ。超強気論者のボブ・ミッチェル氏(アディット・キャピタル・マネージメント)は、80ドルから100ドルを予想している。

たしかに新しいウラン鉱山も見つかっているが、今のところ、全く需要に追いつくことができない。カナダ、オーストラリア、ナミビアにある世界最大のウラン鉱山6つのうち5つは、今年生産量が減っている。そのため、世界の原子力発電所は史上最高の値段を払って、ウランを入手しているのが現状だ。また、ロシアは2030年までに、現在16%の原子力発電量を、25%に引き上げることを計画している。

ウランの需要量が上昇している原因の一つは、二酸化炭素排出量の削減を提唱する、京都議定書だ。これで、石油に替わるエネルギーとしてウランがクローズアップされ、世界の埋蔵量の4割を保有するオーストラリアは、向こう15年間でオイルに匹敵する原子力産業を作り上げる、と意気込んでいる。

過去5年間を振り返ると、ウランのスポット市場価格は、毎年平均で45%の上昇だ。銅とニッケルの伸び率は23%だから、それをはるかに凌いでいる。商品とエネルギー市場の動きを見るCRB指数は、今年8%の下落だが、ウランは66%の上げだから、バフェット氏の成績より優秀だ。

「よほど大きな事故が起きないかぎり、ウラン価格の上昇は続くことでしょう」、とマサチューセッツ工科大学の、トーマス・ネス氏は言う。「約20年間、低価格が続いていましたから、ほとんど新鉱山への投資はありませんでした。結果的にこれが、今日の供給量不足になったわけです。」

第2四半期、ポール・チューダー・ジョーンズによって設立されたチューダー・インベストメントは、2900万ドルの資金をCameco(世界最大のウラン生産者)に投じた。更に同時期、サイタデル・インベストメントはCamecoに1240万ドルを投資している。

国際法で定められているように、投資者は実際にウランを受け取ることはできない。毎年、約3000万ポンドのウランがスポット市場で取引されているが、そのうちの1800万ポンドは投機家たちによる売買だ。今、この高値で買うのは間違いだ、という警告も聞こえてくるが、ネス氏(マサチューセッツ工科大学)は、「インフレ率を考慮して計算すると、ウランが1978年につけた高値を突破するには、111ドル65セントに達する必要があります」、と述べている。

もし民主党が勝ったら、、、

いよいよ中間選挙だ。たとえミッキーマウスと仲間たちが当選したとしても、これ以上アメリカの政治を悪くすることは難しい、と悪い冗談が聞こえてくる。上院下院とも現在ブッシュ大統領の共和党が過半数を占めているが、イラク戦争反対の声が高まっているだけに、両議会とも民主党に奪われる可能性がある。

民主党の勝利は、株式市場にどんな影響を与えるだろうか?さっそく、CNNマネーの報道を見てみよう。

1、オイルとガソリン:
数年間以上続いた共和党のリーダーシップで、エネルギー会社は大きな恩恵を受けた。巨大オイル会社、エクソン・モービルは史上最高の収益を記録し、アメリカン証券取引所のオイル指数は、2000年ブッシュ政権が誕生してから、53%を超える上昇だ。

「民主党が議会の過半数を占めるようなことになれば、オイル業界を規制する法案を通過させることでしょう。そうなれば、以前のような莫大な収益を見込むことは当然できません」、とDA・デービッドソンのアナリスト、フレッド・ディクソン氏は言う。

2、製薬会社:
オイル会社に焦点が当てられるように、民主党は製薬会社にも注目することだろう。「民主党が主権を握る議会は、製薬会社に悪材料です。薬品価格を決定する際、製薬会社がメディケア(高齢者向け医療保険制度)からの合意を義務付けする法案が可決すると、製薬会社の収益は減少することになるでしょう」、とレイモンド・ジェームズの投資戦略家、ジェフリー・サウト氏は語っている。

3、軍事防衛:
イラク戦争を反対する民主党だから、間違いなく防衛費の削減が提唱される。単にミサイル、レーダー、爆撃機を製造する企業だけに限らず、軍からの注文に頼る企業はダメージを受けることになりそうだ。

4、ファニー・メイとフレディ・マック(アメリカ政府支援の住宅投資機関):
政府が支援する機関は、民主党の勝利で恩恵を受けることだろう。特にファニー・メイとフレディ・マックの伸びに期待ができる。「会計内容に不審な点がある、ということで両社とも取り調べを受けていましたが、民主党が議会の過半数を占めることになれば、政府支援機関が抱える政治的難問が取り払われることになるでしょう」、とISIグループのアンドリュー・ラペリエ氏は指摘する。(ファニー・メイとフレディ・マックはニューヨーク証券取引所に上場されている。シンボルはFNMとFREだ。)

5、鉄:
議会の大半が民主党になれば、保護貿易政策が実施される可能性があるから、製鉄会社には好材料だ。そうなれば、USスチール(X)が狙える。

6、代替エネルギー:
環境問題は民主党の大きな課題の一つだ。環境汚染を防ぐためには、代替エネルギーの開発が必要になるだけではなく、テトラ・テック(TTEK)のような資源管理システム企業も民主党議会から恩恵を受けることになるだろう。

2007年の投資テーマ

来年の株式市場で好成績を上げるためには、「適者生存の法則」を頭に入れておく必要がある、とメリルリンチの投資戦略家、リチャード・バーンスタイン氏は言う。まだ予告編の段階だが、氏の指摘する、2007年のテーマを見てみよう。

1、大型株

経済成長が減速する状況では、優良国際大型企業が有利になる。例を挙げれば、コカコーラ(KO)、ペプシコーラ(PEP)、マクドナルド(MCD)、3M(MMM)、デュポン(DD)、ゼネラル・ミルズ(GIS)、ケロッグ(K)、プロクター・アンド・ギャンブル(PG)、そしてウォルグリーン(WAG)などだ。

2、テクノロジー

全体的には、いぜんとしてハイテク銘柄は割高だが、大型ハイテク銘柄の中には比較的まだ割安なものがある。具体的には、グーグル(GOOG)、マイクロソフト(MSFT)、ヒューレット・パッカード(HPQ)、そしてIACインターアクティブ(IACI)だ。更に、マイクロソフトから新オペレーティング・システム、ビスタが発表されるから、ソフトウェアセクターに期待が持てる。

3、マスメディア

今年好転しているマスメディア銘柄は、来年も好調が続くことだろう。ニュース・コープ(NWS)、タイム・ワーナー(TWX)、そしてマグローヒル(MHP)が引き続き狙える。

4、軍事防衛

テロ、北朝鮮、中東問題などの地政学的要素は、来年もマーケットの心配材料になる。過去5年間で軍事費は+25%を記録し、来年も軍事費の増大が予想される。ボーイング(BA)、そしてハニーウェル(HON)が有望銘柄だ。

5、優良社債

AAAの最高格付けがある社債人気が続くことだろう。供給量も不足しているから、ゼネラル・エレクトリック(GE)、ジョンソン・アンド・ジョンソン(JNJ)、エクソン(XOM)、ファイザー(PFE)、ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)などの社債に、買い手が集まりそうだ。

6、配当金

アメリカ株ではなく、海外の優良株で比較的配当金の良い銘柄も狙ってみたい。上場投信の、PowerShares International Dividend Achievers(PID)を利用するのが便利だ。

7、日本株

経済成長の初期段階にある日本株は買いだ。良品計画(7453)、積水ハウス(1928)などが狙える。

8、ディスカウント小売店

全体的に見ると、小売セクターは避けた方が無難だ。買うならディスカウント小売店だけに焦点を合わせよう。(日本の小売セクターは大きく伸びそう。)

9、金融関連株の比重を減らせ

歴史を振り返ると、金利引き上げサイクル終了後は金融関連銘柄が低迷する。ただ、保険会社は逆に買われる傾向があるから、アフラック(AFL)は行けそうだ。

10、エネルギー銘柄を減らせ

オイルや商品関連銘柄は約60%ほど割高だ。特に、オイル価格は更に下落することになるだろう。

焦りが顕著になった不動産業者

共和党の勝利なら大手製薬会社、民主党の勝ちなら代替エネルギー銘柄が行ける、と熱心に議論されている。なんと言っても火曜が投票日、どこのチャンネルも一番の話題は中間選挙だ。そんなわけで日陰に入る形になってしまったが、一つ面白い広告が三日ほど前に出た。

「今が住宅売買絶好のチャンス」、というセンセーショナルな見出しで、全米不動産業協会は4000万ドル(47億2000万円)を投じて、一大キャンペーンを開始した。とにかく、下降する住宅市場に歯止めをかけたい。そんな意図が明白だが、この広告内容に対する批判だ出始めている。ザ・ビッグ・ピクチャーに要点が記されているので、さっそく見てみよう。

この広告を読んで直ぐ分かることは、完全なウソではないとしても、一つ一つの文が誤解されやすい。そこで、広告の主張と事実を比べてみた。

広告:今日の金利は40年ぶりの低金利だから、一生に一度しかない住宅購入チャンスだ。

事実:40年ぶりの低金利だったのは、今日ではなく2003年だ。当時1%だったフェデラルファンズ(短期金利)は、現在5.25%になっている。2003年、平均的な不動産ローン金利は5.125%だったが、今日の利率は7%を超えている。

広告:現在375万の家が売りに出されている。これだけ豊富な戸数だから、買い手は本当に気に入った住宅を見つけることができる。

事実:住宅売上数の下降、そして建築業者による住宅の建てすぎが、現在の有り余る戸数の原因だ。去年と比較すると、住宅販売数は16.5%ほど減少している。経済学の基本が教えるように、供給が増えすぎると価格は下がる。また、豊富な戸数が売りに出ているということは、買い手はあれこれと選り好みするから、売り手には厳しい状況だ。

広告:8月の住宅販売数は4.3%上昇し、来年は住宅価格も上げ基調に戻るだろう。

事実:住宅中間価格の下げが相変わらず続き、販売数も下降している。データを見る限り、来年住宅価格が上昇する、という根拠はどこにも無い。

広告:前連銀議長のグリーンスパン氏は、米国住宅市場に回復の兆しが見えると最近語っている。最悪の事態は既に過去のものとなり、第4四半期の住宅売上数は好結果になりそうだから、2006年度は史上3番目に相当する住宅売上数になるだろう。

事実:売上数だけに焦点をしぼるのは誤解をまねきやすい。肝心なのは現在のトレンドを把握することだ。子どもの数が増えれば子ども服の売上数が上がるように人口が増加しているアメリカだから、とうぜん住宅の売り上げ数も上がる。販売数ばかりが強調されるが、こんなデータがある。2005年の9月と、今年の9月を比べると、ローンの支払いができなくなり、差し押さえられた住宅数が63%も増えている。

なぜローンの支払いができなくなってしまったのだろうか?執拗な金利引き上げで、変動利率不動産ローン金利が大きく上がったのが、原因の一つだ。そう言えば、グリーンスパン氏も変動利率不動産ローンを勧めていた一人だったことを思い出す。

その他にもまだ例が挙げられているが、必死な米国不動産業者の姿がうかがえる。

ファンダメンタルアナリスト一転反落

意外な数字が発表された。10月分の米国失業率は4.4%に下がり、なんと5年半ぶりの低水準だ。おまけに平均時給も予想を上回る+0.4%だったから、賃金インフレを唱えるアナリストが、次々とテレビに登場している。皆、つい昨日まで、弱いGDPと住宅市場を例に挙げて、予想以上に悪い米国経済を強調していたことなど、すっかり忘れてしまったようだ。

インフレを嫌う国債は、さっそくこのニュースで大きく売り込まれ、10年物利回りは4.596%だった木曜の終値から、一気に4.7%台に跳ね上がっている。国債が売り叩かれる理由は、もう一つある。株式市場開始30分後、ISMサービス業指数が発表された。結果は予想された54.5を超える57.1だったから、インフレ懸念をいっそう高めてしまった。

もちろん、ブッシュ大統領は喜んでいるはずだ。火曜に中間選挙が迫り、議員たちは低失業率を必要以上に引用して、共和党の推進してきた経済政策の正しさを強調することだろう。

国債市場のような派手な動きは無いが、株投資家にとっても、今日の雇用統計とISMサービス業指数は警報になった。雇用状況は思ったほど悪くなく、逆に賃金インフレのおそれがあるなら、皆が期待している金利引下げが早急に実施されることはない。現に、好調な株式市場は、利下げを織り込んでいるだけに、ここに来てインフレが再台頭すると買い手が不安になるのは確実だ。

少し話がそれるが、ファンダメンタル・アナリストは、チャートを基本にする、テクニカル・アナリストを軽視する傾向がある。しかし、雇用統計発表後のファンダメンタル・アナリストたちの感情的な意見を聞いていると、一晩のうちに米国経済のファンダメンタルズは180度転換してしまったようだ。ファンダメンタルズは、そんなに早く変わるものなのだろうか。話を戻そう。

短気金利の先物(フェドファンズ)を見てみよう。木曜時点では、20%の確率で1月に金利引下げが実施されることが示されていたが、現在その確率は0に下がっている。バークレーズ・キャピタルのブレント・ベイガン氏は、「市場から、完全に金利引下げ期待が消え失せました」、と語っている。

ドイツ銀行の債券取引部門責任者、ギャリー・ポーラック氏はこう述べている。「今まで国債は、減速する米国経済を前提にトレードされていましたが、今朝のデータは、予想以上に強い経済を顕著に表しています。もしこのまま国債の崩れが止まらず、10年債利回りが4.8%に達するようなら、たぶんパニックする投資者が出てくるはずです。しかし、私にとって、それは良い買いチャンスです。」

木曜、ダラス連銀のリチャード・フィッシャー氏は、「まだ満足できるレベルではないが、インフレは既にピークに達したと思われる」、と語っていることを付け加えておこう。

条例案87はオイル会社の敵!?

ブッシュ大統領の共和党が過半数を保つか、それとも民主党が巻き返すか、11月7日の中間選挙がいよいよ来週の火曜に迫った。誰が議員になっても同じことだ、と最初から諦めきっている人もいるが、11月7日に選ばれるのは議員だけではない。

マーケット関係者が注目しているのは、カリフォルニア州の条例案87(プロポジション87)の投票結果だ。クリントン前大統領もこの条例案を支持する一人だが、この条例案の目的は海外オイルへの依存度を減らすことにある。全米で、最もガソリンが高いのはカリフォルニア、そして一番大気汚染が深刻なのもカリフォルニアだ。このような現状を改善するには、オイル消費量を減らして、代替エネルギー開発に力を入れるしかない。

「おそらく条例案87は、カリフォルニア住民から圧倒的な賛成票を得ることでしょう」、と言うのはストリート・ドット・コムのジム・クレーマー氏だ。ということは、オイル株を売って代替エネルギー関連銘柄に乗り換えるべきだろうか?クレーマー氏の話に戻ろう。

「来週、優良オイル会社のシェブロン(CVX)が売られる可能性があります。会社側からの説明によれば、もしこのプロポジション87が通過すると、シェブロンは約2億ドルのダメージを受けるようです。もちろん、条例案が認められたからといって、シェブロンのガソリンがカリフォルニアで売れなくなるわけではありません。問題なのは、40億ドルにおよぶ代替エネルギー開発費用を、税金という形で各オイル会社に肩代わりさせることです。

先月27日、シェブロンは決算発表をしましたが、一株利益は予想を上回る好結果でした。更に、メキシコ湾に膨大な油田も発見していますから、シェブロンには大きな将来性があります。ですから、投票後シェブロンが売られるなら、来週の水曜木曜は買いチャンスになりそうです。

もう一つ指摘しておきましょう。シェブロンの広報担当者が言うように、条例案の通過は収益の減少に結びつきます。ということは、シェブロンを追っているアナリストたちは、格下げ発表をする可能性が十分にあります。それは、一時的な株価下落を引き起こすことになるでしょうが、投資者にとっては良い買い場です。

繰り返しますが、シェブロンの一株利益は、アナリストの予想をほぼ15%上回る優れた数字です。特に、マーケティングが効果的になり、企業資金も以前のような無駄使いがなくなりました。競争相手のエクソン(XOM)と比べると、明らかにシェブロンの方が割安であり、3%の配当金も魅力です。それに、自社株買い戻しにも積極的ですから、投資者にはプラス材料です。とにかく、シェブロンの将来性には問題ありません。」

グローバル化の弊害

グローバル化の暗い側面を知りたければ、日本を見るのが一番早い、と経済コラムニストのウィリアム・ぺセック氏は言う。暗い側面?嫌な経済問題に、日本は襲われているのだろうか?ぺセック氏の話を要約しよう。

6カ月前、投資家たちの話題といえば、長いこと低迷していた日本経済の復活だった。去年、日経225は40%の上昇を記録し、誰もが世界第2位の経済国家が、前線に戻ってきたことを確信した。しかし、そんな期待を裏切るように、今年ここまでの日経の成績は、たったの1.8%増だ。さすがに浮かれたムードは消え失せ、慎重な楽観論に変わっている。

なぜ去年の快挙が続かないのだろう?米国経済の冷えこみ、高オイル価格、北朝鮮核問題などをあげる人たちが多いが、モルガン・スタンレーのチーフ・エコノミスト、スティーブン・ローチ氏は「グローバル化」が原因だと言う。

ある意味では、90年代、日本の政治家、企業経営者たちは明確な方針に基いて行動していた。業界の自由化、そして日本市場を世界に開放することを拒み、国民からの税金や国債発行に頼って、従来のやり方を続行させた。だが、中国の台頭が全てを変えた。

現在の日本は、回復の段階から成長の段階へ移っている。しかし、驚くことに個人消費が中々上がらない。ここまでの成長を支えてきたのは、企業の投資と輸出だが、これらの多くは中国に向かっている。

もし日本の将来が、政府関係者たちが言うように明るいなら、なぜ国民は金を使わないのだろう?ローチ氏は、こう説明している。「これは間違いなく、グローバル化のパラドックスが表面化した、と言うことができる。強力な世界の労働市場が、先進国から利益を吸い取っている。」

以前は、先進国が貧しい国へ行って、安い労働力を利用したが、今は違う。アウトソーシングが当たり前になり、インドや中国に次々と先進国は職を奪われている。正に、グローバル化の暗い側面だ。終身雇用の崩壊、不安定な国民年金制度、高齢化する社会、強力な海外労働市場は、今後も日本にとって脅威になるだろう。

もちろん、だからといって、また日本がデフレに襲われる心配をする人はいない。健全な銀行、優れた企業収益、国際情勢に敏感な政府関係者たち、現在の日本には90年代の面影は無い。

日本は、単に経済回復から成長を目指すだけでなく、生産性を更に向上させて、個人所得を上げる必要がある。雇用問題を解決するためにも、政府は起業家の育成に役立つ環境作りにも力を入れるべきだ。しかし、新内閣が先ず宣言したのは「経済成長」だから残念な話だ。

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