US Market Recap

ドルが直面する3つの問題

連銀は、もはや短期金利をコントロールすることができない、とジム・ジューバック氏(MSNマネー)は言う。「先週のような出来事が、何度も繰り返されるようなことになれば、米国金利動向の鍵を握るのは誰であるかが、全ての投資家たちに明確になるでしょう。」先週の出来事?氏の話を要約しよう。

11月28日、急降下の続いていたドルは、ユーロに対して20カ月ぶりの安値を記録した。その直後、連銀のバーナンキ議長が信じられない発言をした。米国のインフレ率はいぜんとして高すぎ、経済成長も堅調だから、まだ金利引き上げの可能性があることをほのめかした。

なぜ議長のコメントは意外だったのだろうか?もう一度28日を振り返ってみると、その朝、10月分の耐久財受注が発表された。予想は5%減だったが、結果は2000年7月以来最悪のマイナス8.3%だった。明らかに米国経済の冷えこみを表し、2007年早々に金利引下げがある、というマーケット関係者の見方を支持する数字だ。

もちろん議長の言葉は無視され、ドル売りは止まらなかった。具体的なデータに基いたコメントなら話は別だが、バーナンキ氏の意図は、あまりにも見え透いている。単にドルを上げたいだけだ、とマーケット関係者は受け取った。翌日、第3四半期のGDP(国内総生産)が1.6%増から2.2%増に上方修正された。このニュースで、バーナンキ氏の信用がやや回復し、ドルは0.3%高になった。

ドルには、そう簡単に解決できない問題が三つある。

1、膨大な貿易赤字: オイル価格は下落しているが、結果的に今年度の総赤字額は7500億ドルを超えることになるだろう。現に、大量なドルを保持する海外の中央銀行は、ドルのやり場に困り始めている。

2、米国経済の冷えこみ: 第3四半期のGDPは上方修正されたが、エコノミストは2007年度、米国経済成長率の減速を予想している。そうなると、ヨーロッパや日本にも悪影響を与える可能性がある。

3、海外の金利: 米国の金利は据え置かれているが、ヨーロッパや日本は上げ方向だ。これが意味することは、海外の国債に買いが集まり、アメリカの国債が売られることになる。

「バーナンキ議長は、国内経済ではなくドルを最優先するのではないでしょうか。あり余るドルを保有する中国は、もしドルが1セント下がると、70億ドルの評価損が出るのです。あなたがヨーロッパや日本の銀行なら、含み損の増え続けるドルを、今後も我慢して保持するでしょうか?

来年早々の利下げを予測するアナリストやエコノミストは多いですが、今の連銀には国内経済を優先させる余裕はありません。世界情勢を考慮すれば、たとえ米国経済を弱らせることになっても、連銀は金利引き上げを選ぶのではないでしょうか」、とジューバック氏は強調する。

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サメから学ぶ

新人トレーダーが最も犯しやすい過ちは何だろうか?「投資苑」の著者、アレキサンダー・エルダー氏の言葉を引用するまでもないが、トレードで間違いを犯すと、損という形で直ぐ結果が数字に表れる。何度も同じ失敗を繰り返さないことが大切なのだが、「多くの新人は、スタートの時点で既に間違っています」、とマイケル・シンシア氏(ザ・ロングターム・デイトレーダーの著者)は言う。さっそく説明を聞いてみよう。

「何か物事を始める時は、それなりの準備が必要です。しかし、多数の新人トレーダーは十分な知識や技術を習得する前に、トレードの世界に入ってしまいます。弱肉強食が、マーケットのルールです。ベテラントレーダーはサメ、新米はエサになる小魚です。サメといっしょに、同じ水の中で泳ぎ続けたいなら、先ずサメから学んでください。

アレキサンダー・エルダー氏も述べていることですが、学ぶことは時間がかかります。とにかく焦ってはダメです。大手証券会社のベテラン・トレーダーたちは、最初から優れていたわけではありません。徹底した先輩たちからの指導が無ければ、今日の彼らは存在しません。本だけではなく、実際に受講した人たちの話を参考にして、トレード・セミナーに参加することが大切です。

これは新人だけに言えることではありませんが、資金のことで必要以上に感情的になってはいけません。新人トレーダーに、「あなたにとって金とは何ですか?」、と質問してみました。10人中9人は、「金は生活の安全を保証するものだ」、という回答でした。

金=安全、という考え方では感情的になって当然です。トレードで損を出すことは、生活の安全を失うことを意味しますから、これでは正しいトレードができません。サメ(ベテラン・トレーダー)を観察して分かることは、彼らの顔色を見ただけでは、損をしているのか儲けているのかが、全く分かりません。冷静なトレードを身につけるためには、金額的に気にならない小さな株数から始めることを勧めます。

「動くものなら何でもトレードする」、と言うトレーダーたちがいます。他の言い方をすれば、これらのトレーダーには専門分野がありません。大手証券のプロトレーダーを考えてください。彼らは毎日同じ銘柄だけをトレードしています。ですから、昨日はマイクロソフトをやって、今日はS&P500の先物、などということはありえません。

銘柄を一つに絞れ、と言っているのではありません。数銘柄だけと付き合い続けることで、銘柄の持つクセや特徴を把握することができますから、最終的に良いトレード結果をあげることができます。」

成功から学ぶ

北米の自動車工場を調べた結果、ある工場の欠陥車生産率が極めて低いことが分かった。他の工場でも、同じ車がつくられているのだが、何故かこの工場だけが際立って良い。そこで自動車メーカーは、優秀な工場と他の工場にカメラを設置して、どこが違うのかを確かめることにした。さっそく優れた工場から発見したことを、他の工場に適用することで、自動車メーカーの欠陥率は大きく下がった。

50人の外科医が、ある病院に勤務している。記録を見てみると、10人の外科医は、手術後合併症などの面倒な問題がほとんど無い。病院側は、他の40人の外科医たちに、10人の外科医の詳しい話を聞いてもらうことで、合併症を起こす確率を減らすことに成功した。

「間違いや失敗から学ぶことばかりが強調されますが、上記二つは、成功から学ぶことの実例です」、と言うのは「The Psychology of Trading (投資の心理学)」の著者、ブレット・スティーンバーガー氏だ。「トレードで好結果を出しても、多くのトレーダーは、何故それがうまくいったのかが分かっていません。これでは、肝心な成功から学ぶことができません。」

単に投資心理の研究だけでなく、スティーンバーガー氏はトレーダーでもある。なぜ成功したのか、では分かりにくいかもしれないから、好結果を得たトレードを振り返って、どんな条件があったかを細かく記してみよう。スティーンバーガー氏自身のトレードを見てみると、次のような条件があった時、氏のトレードは成功している。

1、最初の買いは少な目にする。1000株を予定していたなら、半分の500株だけ買って、株が思惑どおりに動いたら買い足す。うまく行くトレードは、買って直ぐに思った方向へ動く。同様に、失敗するトレードも買って直ぐに逆方向へ動くから、最初から予定どおりの株数を買わないことにした。

2、マーケットの主役は、ファンドや銀行などの機関投資家だから、大手投資家たちの動きを監視すること。ニューヨーク証券取引所のティックを見ることで、大手投資家が動いているかが分かるから、彼らと歩調を合わせることで、トレードの成功率も上がる。

3、株が思ったように動き始めたら、トレーリングストップを使って利益を確保する。

4、他の銘柄に手を出す時は、変動率の高い銘柄を選ぶこと。できれば、現在持っている銘柄と、似たチャートパターンの物を取引することで、良いトレード結果を得ることができる。(株を例に氏は話しているが、氏のトレードはS&P500指数が専門だ。)

5、トレードは午前中だけにする。損の出ているトレードは、午後のマーケットで起きやすい。

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ブタに口紅

12月の相場が始まった。先月中間選挙があったが、統計によれば今月のマーケットは上がる可能性が高い。過去14回までさかのぼって、中間選挙があった年の12月を調べてみると、マーケットが弱かったのは4回だけだ。それなら積極的に買っていこう、と結論する前にマーク・ホイッスラー氏(ペアズトレーダー・ドット・コム)の意見を聞いてみよう。

「先日、一週間ほど仕事でラスベガスに行く機会がありました。休憩時間にニュースを見ると、ダウ指数の高値更新が報道されていました。いつもなら嬉しいニュースなのですが、今回は素直に喜ぶことができないのです。

昨夜、ホテルのカジノでギャンブルに夢中になっている人たちの様子を、何気なく見ていました。明らかにに疲れた、といった顔をしている人、勝利にハシャグ人、苛立ちを隠せない人、アルコールが入りすぎの人、と様々です。言うまでもありませんが、最初からギャンブラーには勝算はありません。それなのに、皆おしみなく賭け続けるのです。

現在のマーケットはカジノに似ています。ダウ指数を見る限り、たしかにマーケットは7月から好調ですが、米国経済は逆の動きです。バーナンキ議長も認めているように、既に住宅市場は下降基調ですから、GDP(国内総生産)に更なる悪影響を与えることは間違いありません。

テクニカル的には、ボラティリティ指数(マーケットと反対に動く逆指標)が、現在の極端に低いレベルを維持し続けるのは無理です。マーケットが上昇するには、ボラティリティ指数が一桁台に大きくブレイクダウンする必要があります。

長いことトレードをしてきましたが、一つ言えることがあります。マーケットの上げスピードが速ければ速いほど、下げスピードも速くなります。今ウォールストリートがしていることは、ブタに口紅をつけて投資者たちをマーケットに引き込むことです。

とにかく今は、積極的に買う時ではありません。もし持ち株の多い人なら、下げに対しての準備はできているでしょうか?下げに備える、と言っても空売りをする必要はありません。簡単なのは「プット・オプション」を買うことです。ダウ指数に連動する、ダイヤモンド(DIA)という銘柄がありますが、この12月限、あるいは1月限のプット・オプションを買うことを勧めます。

大バカ理論、という言葉を聞かれたことがあると思います。ここで積極的に買う人は、より愚かな投資者が現れない限り、儲けることはできません。口紅を塗ったブタに騙されて、バカな投資者になってはいけません。センセーショナルなニュースで、ブタを後押しするのがマスコミです。決して信じてはいけません。」

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トレード日誌のススメ

皆さんはトレード日誌をつけているだろうか?「日誌と言っても、単に何時何分にどの株をいくらで買って、何時何分にいくらで売った、というような業務的なものではありません。そんなものなら、12才の女の子にも書くことができます。日誌には、15の項目が含まれていなければいけません」、とトレーダーコーチのダグ・ハーシホーン氏は指摘する。

「チャートを正確に読むことや、適切な売買執行方法を学ぶことだけが、トレードの腕を上げる結果となるのではありません。残念ながら、ほとんどのトレーダーには、トレード日誌をつける習慣がありません。一日の利益や損額を記録する人はいますが、どうやら問題は日誌に何を書いたらよいかが分かっていないのです。時としてスランプに陥ることがありますが、スランプの克服に大きく役立つのがトレード日誌です。」それでは、さっそく15の項目を見てみよう。

1、今日のトレードルールを明記する。たとえば、最近なかなか思っているような成績が上がっていないなら、最初のプルバックで持ち株を半分処分する、というルールを記すことができる。

2、現在相場では、何が大きなテーマになっているかを確認する。

3、今日発表になる、主な経済指数をたしかめる。雇用統計などは、一日の大きなテーマになる傾向があるから要注意だ。

4、今日のモットーを作る。けっして難しく考える必要はない。「15分足も必ず見ること!」、といったようなものでかまわない。

5、午前中のゲームプランを作る。

6、午前中のゲームプランを振り返り、改善すべき点や、新たに気がついたことなどを記録する。

7、午後のゲームプランを立てる。これは、マーケットがヒマになる、お昼の時間帯を利用する。

8、午後のゲームプランの復習。要領は6番と同じ。

9、今日のトレードで、何が上手くできたかを考えてみよう。どうして、それは成功したのだろうか?このやり方は、更に改善することが可能だろうか?

10、失敗したトレードを見てみよう。何故うまくいかなかったのだろうか?自分のルールに従っていただろうか?

11、現在のマーケットはアップトレンドだろうか?それともダウントレンドだろうか?あるいは方向性の無い横ばいだろうか?今、もっとも注目されているセクターは何だろうか?逆に、避けられているセクターは何だろうか?

12、今日一日を振り返って、自分を採点してみよう。1を「最悪」、10を「最高」として今日の出来を評価しよう。

13、昨日と今日を比較して、今日のトレードには進歩があっただろうか?今日なにか発見したことや、新たに習ったことはあっただろうか?新しいことを、毎日学ぶことは難しいかもしれない。トレーダーとして成功するためには、常に謙虚になって、「学ぶ心」を忘れてはいけない。進歩、改善を怠るトレーダーは、必ず行き詰まりになる。

14、明日は、どんなトレード方法が使えそうだろうか?

15、明日の目標を立てよう。

反対意見を聞いてみよう

ジョセフ・グランビル、という名前を聞いたことがあるだろうか?たとえ聞いたことがなくても、移動平均線を使って株を売買している人なら、グランビルの法則を知らずに利用している可能性がある。それはさておき、氏が有名になった最大の原因は、1981年、「持ち株を全て処分しろ」のタイムリーな警報だ。

今年83才になったグランビル氏は、現在のマーケットをどう見ているだろうか?セントルイス・トゥデイに引用された氏の意見を読む限り、マーケットは天井が近いようだ。ダウ指数は好調に高値を更新してきたが、この指数に属する銘柄で高値を更新するものが減ってきている。また、相場の4年周期も指摘され、今は特に慎重にならなければいけないようだ。

ここでもう一人警報を鳴らす、マーク・フェイバー氏(エコノミスト)の見方も紹介しよう。「マーケットは超割高レベルに達していますが、投資者たちは全く心配していません。季節的にマーケットが強い時期ですから、株は来年の一月まで上げる可能性があります。私個人的には、ここで新たな資金を投入するのではなく、空売りすることを選びます。」

株の陰に隠れてしまい、ほとんど目立たないのだが、マーク・ハルバート氏(ハルバート・ファイナンシャル・ダイジェスト)は、国債投資家たちもあまりに強気すぎる、と指摘する。「9月20日の連邦公開市場委員会で、短期金利の5.25%据え置きが決定され、今日もその金利に変わりはありません。この二カ月の間、一時的に10年物国債利回りが上昇することもありましたが、現在の利回りは9月20日に記録されたレベルを下回っています。(国債が買われると利回りは下がる)

問題なのは、国債買いを推奨するアドバイザーやコンサルタントが多すぎるのです。片方の意見が、一方的に強い時は気をつけなければいけません。皆が「買い、買い」と騒ぐのは、マーケットの底ではなく、マーケットの天井で起きるものです。

ほとんどのアドバイザーが国債の買い推薦ですから、たしかに国債価格が上がっています。しかし統計を見ると、極端に一方の意見が優勢な時は、そのトレンドが二カ月以上続くことは、滅多にありません。ですから、国債市場はピークに近い状態です。

最新のハルバート・ボンド・ニュースレター・センチメント指標は43.2%です。これは、アドバイザーたちがポートフォリオの何パーセントを国債に投資することを勧めているかを示したものです。先月の数値を少し上回っていますが、こんなに高い水準を記録するのは五年ぶりです。」

経済記事は真実?

またしても、全国小売連盟(NRF)からの発表に非難の声が上がっている。感謝祭の翌日(11月24日)が、「黒い金曜日」と呼ばれ、クリスマス・セールの開始日になることは先日も話したが、問題になっているのは、その週末3日間に関する売上ニュースだ。

全国小売連盟の調べによれば、買い物客は平均で360ドル15セント(4万1820円)の金を使い、去年の黒い金曜日の週末を18.9%上回った。好調な滑り出しだが、この360ドル15セントは正確な数字ではない、とファンド・マネージャーのバリー・リットホルツ氏は言う。

「最初に指摘したいのは、全国小売連盟は第三者的な機関ではなく、小売業者のスポークスマン的な存在です。違った表現をすれば、同業者団体である全国小売連盟の役割は、小売業界のチアリーダーです。ですから、発表された数字を鵜呑みすることはできません。

ビジネスニュースで有名なCNBCも、同じ週末三日間の売上を調査して、こう報道しています。「多数の買い物客がショッピングセンターに押し寄せたが、黒い金曜日の週末売上は、2005年度と同程度、またはやや下回ることになりそうだ。ガソリンやエネルギー価格が最近下がっていただけに、これは予想外の結果だ。具体的には、46%の消費者が「去年と同程度の金額をクリスマス・ギフトに使う」、と答え、32%は「去年より少なくなる」、と回答している。」

CNBCが正しくて、全国小売連盟の数字はいい加減だ、と言いたいわけではありません。だれが調査をするかによって、結論も全く違ってくることを示したかっただけです。私個人的な意見ですが、現在の米国経済を考えると、たぶん売上は+2%から+4%の範囲になると思います。ですから、CNBCの言う「去年と同程度」の方が信憑性があります。

困るのは、経済ニュースで最も権威のある、ウオールストリート・ジャーナルからの報道です。「業界団体の調べによると、今週末、買い物客は平均で360ドル15セントを使い、去年の302ドル81セントを約19%上回った。去年と同様に、安売りを専門にするディスカウント・ストアの人気が高いが、ディスカウント・ストアに今週末行った、と答えた人の数は50%にあたり、去年の61%から大きく減少している。」

インターネットの発展で、新聞会社の経営が苦しくなっています。記者の数も減っていますから、情報の正確さが、ひとつひとつ確認されていない記事です。全国小売連盟の売上調査方法を記しておきましょう。ショッピングセンターで買い物客をつかまえて、こう質問します。「なかなか混んでますね。買い物予算は、去年をどのくらい上回りそうですか?」繰り返しになりますが、全国小売連盟は小売業界のチアリーダーです。実際に、買い物客の領収書を見て出した数字ではありません。」

株で賃貸料稼ぎ

あなたの持ち株が一時的に貸し出されている可能性がある、とリズ・モイヤー氏(フォーブス・ドット・コム)は言う。貸し出されている?ご存知のように、空売りをするには、対象になる株を借りる必要がある。特に、ヘッジファンドは大量な空売りをするから、株を貸すことで証券会社は料金稼ぎができる。だから、ひょっとしたら、あなたの持ち株も、既に借用されているかもしれない。無断で借りるとはケシカラヌ、と憤慨される方のために、モイヤー氏は、こんな例を紹介している。

カリフォルニア州に在住する、ロジャー・メッツラー氏は、ノバスター・ファイナンシャル(NFI)に投資している。一株あたり5ドル60セント、利回りに直せば18.5%の配当金が、何と言っても大きな魅力だ。アメリカの住宅市場冷えこみが原因になり、ここ2年間、不動産上場投信のNFIには大きな空売り残がある。しかし、メッツラー氏は、全くそんなことを気にしていない。

メッツラー氏は、持ち株の32000株を貸すことで、証券会社と同様に料金稼ぎをしているのだ。この料金がバカにならない。氏の口座はスミス・バーニーにあるのだが、毎年13%の利回りに相当する賃貸料金を手に入れることができる。もっと細かく言えば、配当金が5ドル60セント、賃貸料が4ドルだから、一株あたりの総利益は9ドル60セントだ。

証券会社は、株をヘッジファンドや大手投機筋に貸すことで、年間100億ドルにのぼる収入を得ている。株を借りるのは、空売りだけが理由ではなく、金融派生商品(デリバティブ)取引にも、現物の株が必要になる場合が多い。しかし、メッツラー氏のように、個人投資家が株を貸して料金を稼いでいるのは、ごく希なケースだ。

誤解を招く前に説明しておこう。あなたの株は、既に借りられているかもしれない、と記したが、証券会社が自由に借用できるのは、顧客の信用取引口座(マージン・アカウント)に入っている株だけに限られる。メッツラー氏のように株を貸して料金稼ぎをしたいなら、株は信用買いではなく、現金で全て買ってしまわないといけない。

借りることが難しい銘柄だけに限って、チャールズ・シュワブは顧客に賃貸料の一部を支払っている。実際にシュワブに口座を持つ個人投資家の話によると、ノバスター・ファイナンシャル(NFI)の場合、顧客には8%の支払いがあるようだ。

真剣に賃貸料金稼ぎを考えるなら、どの銘柄に空売りが集中しているかを確認しなければいけない。空売り人気が高ければ、借りられる株数も少ないから、有利な条件で貸すこともできる。最近の人気空売り銘柄を見てみよう。Netflix(NFLX)、Martha Stewart Living Omnimedia (MSO)、Krispy Kreme (KKD)、NYSE Group (NYX)、そしてOverstock.com (OSTK)などがある。特に、一番最後のOSTKの空売り人気には異常なものがあり、賃貸料金は何と利回りに換算すると54%にのぼっている。

手数料ゼロを導入する証券会社も出始めているように、株を貸すことは、証券会社にとって重要な収入源だ。それだけに、賃貸料金を顧客と分ける証券会社は少ない。繰り返すが、メッツラー氏のようなケースは希だ。

肥満のコスト

七面鳥ディナーとパンプキン・パイで満腹になった感謝祭が終わったばかりだが、そろそろ12月になる。12月と言えば、オフィスでのクリスマス・パーティーや忘年会。もちろん、家庭でもクリスマス・ディナーをしなければいけないから、とにかく飲み食いの機会が多くなる。

冬眠に入るクマなら、徹底的に食べて脂肪を増やさなければいけないが、そんな習慣のない私たちは、数キロ重くなった体で新年を迎えることになる。だから当然の結果として、新年の抱負は「ジョギングをして体重を減らそう!」、という運びになるわけだ。

アメリカでは、10人中6人が太りすぎている。そして、太っている人たちの三分の一は、極端な肥満カテゴリーに属する。今さら言うまでもないが、肥満は心臓発作、脳卒中、糖尿病、関節炎などを引き起こす。専門家の調べによれば、毎年10万人の人たちが、肥満が原因となった病気で命を失っている。

病気になったら病院の世話になるから、医療費が生じる。アメリカの肥満問題は、いったいどのくらいの社会負担になっているのだろうか。二つの例を、フォーブス誌から拾ってみよう。

1、現在、米国医療費の9%は、肥満関連の病気治療に使われている。ドルに換算すれば、年間およそ930億ドルだ。カリフォルニア州、ニューヨーク州、ペンシルバニア州、そしてテキサス州は、年間それぞれ40億ドル以上が、肥満関連病に使われている。

2、肥満者は、体重が正常な人より、仕事を休む日数が多い。体重に問題が無い人は年間で3日の病欠があり、肥満男性は5日、肥満女性は8日の欠勤がある。肥満者による病欠は、企業に年間40億ドルの出費になる。

「肥満は大きな社会問題ですが、企業側には効果的な対処方法がありません」、と言うのはエコノミストのエリック・フィンケルスタイン氏だ。「私たちアメリカ人が、一つの会社に勤務する期間は、平均で4.5年間です。肥満が、実際に病気という形で表れるには時間がかかります。終身雇用なら話は別ですが、何十年という期間にわたって一つの会社に勤めないかぎり、先ず企業側は肥満問題を気にする必要はありません。

肥満で、一番の被害を受けているのはメディケアです。(メディケアは高齢者向けの公的医療保険制度)退職後は、メディケアに頼ることになりますから、企業側には医療費を負担する必要はありません。若い社員が太りすぎでも、病気になるのは、かなり先の話ですから、企業側は余計な金を使って社員のために減量プログラムを実施するより、メディケアに任せてしまった方が楽なわけです。」

フィンケルスタイン氏は、更にこう付け加えている。「太りすぎている人たちからアンケートを取ったのですが、こんな答えが返ってきました。もし特別手当が貰えるなら、減量してもいいよ。」

小売業者の正念場

ついに、2006年度のクリスマス・ショッピング・シーズンが始まった。開店時間に違いはあっても、アメリカでは全ての店が一斉に感謝祭の翌日(黒い金曜日)からクリスマス・セールを開始する。プロ野球でいうなら、公式戦開幕日に相当するから、正に待ちに待った買い物客が、格安品を狙ってショッピングセンターに押し寄せるわけだ。

ここで質問。なぜ、クリスマスセールの初日が、「黒い金曜日」と呼ばれるようになったのだろうか?

1、たくさんの買い物客で、小売店が大きく黒字になるから。
2、買い物客が、まだ早朝の暗いうちから店の前に並び始めるから。
3、この日は株式市場が下げる傾向があるから。
4、調子にのった買い物客は金を使いすぎ暗い気分に落ち込むから。

(正解は下を参照)

最近の傾向は、黒い金曜日の開店時間が早くなってきていることだ。最大手のウォルマートが店を開けたのは午前5時だから、これは遅い方だ。ロサンゼルス郊外にある、サイタデル・アウトレット・センターは金曜日を待てず、木曜の夜11時に開店した。

クリスマス・シーズンの売上は、年間売上の20%以上を占めるから、正に小売業者の稼ぎ時だ。はたして買い物客たちは、思ったように金を使ってくれるだろうか?住宅市場が冷え込んでいるから、今年の売上は、あまり大した期待ができない、という意見があるが、CNNニュースの報道によれば、67%の消費者(2500人を対象)は、クリスマス・ショッピングと住宅価格は関係無い、と回答している。

「消費者が、下降する住宅価格をさほど気にしていないのは、個人所得の上昇が原因です。10月の小売売上結果には、いくつかの問題点もありましたが、今年全体を通して見ると6.5%の伸びです。住宅市場は低迷ですが、個人所得は今年平均で8%ほど上がっています。これが、小売売上を支えている鍵です」、とエコノミストのマイケル・ニーミラ氏は言う。

世界最大の小売業者、ウォルマートの業績には、まだ力強さが表れていない。第3四半期決算、一株利益はアナリストの予想を上回ったが、肝心の売上は予想以下だった。ガソリンやエネルギー価格が値下がりしていただけに、この売上結果に一番おどろいたのは、ウォルマートの経営陣だ。

「ガソリンの値段が下がり始めましたから、ほとんどのアナリストは、ウォルマートの売上が上がることを信じていました。しかし、消費者は安売りを専門にするウォルマートを避け、質の良い高級品を扱うデパートに向かったのです」、とニーミラ氏は説明している。

巻き返しを狙って、既にウォルマートの最高経営責任者は、更なる安売りをクリスマス・セールで実施することを発表している。ライバルのターゲットも、負けずに対応する、と宣言しているから、今年のクリスマスの贈り物は、安く手に入りそうだ。

(クイズの正解は1番)

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