去年の夏、クルード・オイル価格は80ドルに迫り、1バレル100ドルを予想するアナリストが多かった。テレビや新聞も、まるで100ドル突破は時間の問題、といった報道だったが、結果的にはそこが天井だった。先週金曜、2月限のクルード・オイルは51ドル99セントで終了している。
皆が100ドル論を公表する中、ピーター・グランディック氏は冷静な見方をしていた。7月1日付けのレポートで、氏はこう書いている。「秋頃から、クルード・オイルの大幅下落が始まるだろう。2007年の春までには、1バレル当たりの価格は60ドル以下になる可能性が高い。」
振り返ってみると、クルード・オイルはピークから20%ほど下げて2006年を終えている。今月に入ってからは、瞬時20カ月ぶりの安値、49ドル90セントを記録する場面もあった。
オイル100ドル論の信憑性が高かったのは、ハリケーンが大きな原因だ。しかし、2006年は打って変わって、2005年のようなハリケーン多発はなく、石油掘削機が被害を受けるようなことはなかった。もう一つ100ドル論を支えたのは、ピーク・オイルの説だ。石油は有限資源であり、これ以上の増産をすることはできない。だから、生産量のピークは既に去った、というわけだ。
2007年に入り、オイルは4%以上の下げを展開している。多数のアナリストは、季節外れの暖かい冬が原因だと言う。ここ12日間の取引を見ると、上げたのは4日しかない。さすがに強気なトレーダーも元気がなくなり、ここが底だ、と威勢良く叫ぶ声もほとんど聞こえなくなった。
40ドルの半ばを予想するアナリストが増え始めているが、グランディック氏はこう語っている。「一つ考えられることがあります。このオイルの大幅な下げで、多額な損を出しているヘッジファンドがあると思われます。損額や規模にもよりますが、そんなニュースが流れることになれば、オイルはもう一段下げることでしょう。もし、狼狽売りになれば、一気に売り物は出尽くしです。」グランディック氏は、今年の前半にオイルが底を打つことを予想し、今の段階で積極的な空売りは勧められないと言う。
更にグランディック氏はこう続ける。「これからは空売りではなく、オイル買いのタイミングを計ることが大切です。しかし、75ドルに戻ることは無いと思います。オイルがそこまで高騰するには、カトリーナに匹敵するハリケーン、イランでの軍事的事件、といった一大事が必要です。」
「今回のクルード・オイル下落は、サウジアラビアのバックアップ無しでは実現しません。狙いは、核兵器を武器に、中東制覇を企むイランのオイル利益を減らすことです。もしこの狙いが真実であるなら、他の産油国は来月からの減産を実施することは無いでしょう」、とギャリー・ドーシ氏(グローバル・マネー・トレンズ)は語っている。
(注:上記はダウ・ジョーンズ社、そしてCBSからの報道をまとめたものです。)
フルタイムのスイングトレーダー、ブライアン・シャノン氏が初めて株を買ったのは13才の時だったという。「毎週金曜の夜は、ウォールストリート・ウィークという株番組を、父といっしょに見ることが習慣になっていました。と言っても、別に株に興味があったわけではありません。ただ、父と時間を過ごすことが、とても楽しかったのです。」13才で、いったいどんな株を買ったのだろうか?氏の話に戻ろう。
「買ったのは、ロージャックという銘柄です。車に特殊な装置をつけて、もし盗難にあった時、素早く取り戻すことがロージャックの主な業務内容です。貯めた金が500ドルあったので、さっそく1株5ドルの株を100株買いたい、と父に話しました。最終的に買った株数は1000株です。不足分は、父が出してくれましたが、儲けは全て私のもの、という好条件もつきました。そして6カ月後、ロージャックは2倍になりました。」
トレードを始めると、誰でも一度や二度は痛いめにあうものだ。シャノン氏には、どんな失敗談があるのだろうか?「証券会社を辞める計画をしていた頃ですから、1993年の1月だったと思います。銘柄はシャンタルという製薬会社で、シワに絶対的な効果がある、というクリームが大きな話題になっていました。浮動株数も極端に少なかったですから、とうぜん株価は急騰です。
実際に、シャンタルでは何回か利益を上げていましたから、この株には自信がありました。金曜日のことですが、持ち株には既に一株あたり2ドル以上の儲けがありました。月曜は特別な休みをもらっていたので、これで素晴らしい3連休になる、と浮かれ気分でした。
問題は、その月曜です。株価を確認するために同僚に電話を入れると、信じられない言葉が返って来ました。シャンタルは、金曜の値段より6ドルも下がっているのです。同僚の悪い冗談、と思いましたが声は真剣です。話をまとめると、週末に発売された株新聞の記事が原因でした。状況が状況でしたから、同僚に株を直ぐ処分してもらいました。口座に大きな穴が開きましたが、それから6カ月後、シャンタルは倒産です。」
その後も氏は失敗を重ねるが、こんな教訓を学んだという。「マーケットは、私の考えていることなどには、全く興味がありません。何時間もファンダメンタル分析をして、この株は行ける、と確かな自分なりの意見を持つのですが、そんな意見がマーケットを説得できるわけではありません。ですから自分の考えや、専門家のアイディアを無視して、値動きだけを見ることにしました。これが好転の起点です。」
新人トレーダーに、氏はこうアドバイスする。「マーケットだけに注意を払ってください。それから、底値での買いや、天井での空売りを考えないでください。トレンドに正しく従ったトレードをすること。それが第一です。」
どうも話が合わない。先ず、全米不動産業協会(NAR)からの発表を見てほしい。
1、最終的な、2006年の中古住宅販売件数は650万件が予想され、2007年の売上数は642万件が予測される。
2、2006年の住宅着工件数は約181万件におよび、2007年は151万件が見込まれる。
3、2006年、中古住宅中間価格は1.1%の上昇が見られ、2007年は更に1.5%上がって、中古住宅中間価格は22万5300ドルになりそうだ。
4、2006年、新築住宅中間価格は+0.3%を記録した。今年は+3.0%が見込まれ、新築住宅中間価格は24万8900ドルに達しそうだ。
5、今年の中古住宅総売上数は、ほぼ去年と同様な数値が予想される。
どうだろうか?2番目の住宅着工件数を除けば、米国の住宅市場は決して悪くない。しかし、CNNの報道を読むと、全く違った様子が見える。報道の一部を紹介しよう。
ミネソタ州の読者からメールが届いた。「ここ数カ月だけで、住宅価格は少なくとも2万ドルの下げです。場所によっては、6万ドルも下げています。しかし、売れません。」コネチカット州の読者はこう書いている。「とにかく買い手が現れません。仕方ないので、住宅ローンの残高と同様な価格を提示しました。それでも売れません。」
なぜ現実と、全米不動産業協会からの発表には、こうも開きがあるのだろうか?「住宅市場は、地域によって事情が大きく異なります。不満の声は、一定の地域だけに限られ、全米に起きている現象ではありません。しかし、一番問題なのは、消費者が不動産ブームに慣れきってしまい、正常な住宅市場価格を忘れていることです」、と全米不動産業協会のジャネット・ブラントン氏は説明する。
ジョナサン・ミラー氏(マンハッタンで不動産鑑定会社を経営する)は、データそのものに問題があると言う。「たとえば住宅価格の算出方法ですが、実際に買い手が購入したときの価格ではなく、ローンの借り換えをした時の住宅鑑定価格も多数含まれています。これでは、正確な比較ができません。」
次に指摘したいのは、住宅建築業者からの発表だ。木曜に出たM/Iホームズのレポートによれば、12月31日に終了した四半期は、建築契約数が前年の同時期を61%下回った。また、新築住宅価格の下落が原因になり、買い契約取り消し数が前年の同時期を63%上回った。
メリテージ・ホームズも、同様な発表をしている。第4四半期の建築契約数は42%の減少になり、買い契約取り消し数は創業以来最高のレベルに達した。実際に売れた住宅数は1201件だが、これは前年同時期の2072件を大幅に下回った。
一部の消費者、そして住宅建築業者の声を聞く限り、米国住宅市場に回復の気配は見られない。しかし、全米不動産業協会のレポートからは、「最悪」という事態を読み取ることはできない。これでは状況が把握できないから、米抵当銀行協会の、ダグ・ダンカン氏の見方を記しておこう。「地域的には、今年、中間価格は10%から20%の下げになるでしょう。全米の住宅売上数は、7%から8%の減少になりそうです。」
今年の相場は、どう展開すると思いますか?こんな質問に、銀行家のJPモルガン氏は、「たぶん上下するだろうね」、と決まって答えたという。同様な質問が、人気エコノミストのベン・スタイン氏にも向けられているが、さっそく返答を見てみよう。
「今年も、下げ基調の継続が予想されるのは米ドルです。一時的な下げ止まり、そして反発は当然おきると思いますが、長期的なダウントレンドに変わりはありません。ドル安要因の一つは、アメリカが抱える貿易赤字です。輸入が輸出を大きく上回っていますから、世界にはドルがあふれています。
全ての商品がそうであるように、供給量が多すぎると価格は下がります。米ドルは、貿易の準備通貨ですから、世界の国々は大量なドルを保有する必要があります。しかし、ドルが永久に主要準備通貨でなければいけない、という法律は存在しません。
最近見られることは、OPECなどの石油輸出国、そしてアジアの国々は準備通貨としてユーロを少しずつ保有し始めています。もちろん、これはドル売り材料です。ユーロ圏は、米国に対して大きな貿易黒字ですから、これもドル売りに結びつきます。他にも、タイ、台湾、韓国の通貨もドルに対して強くなっています。
ドルのダウントレンドを、どう利用することができるでしょうか?簡単、賢明な方法は、ヨーロッパとアジアの主要経済国の株価指数ファンド(インデックス・ファンド)に投資することです。例をあげれば、先ずiShares MSCI EAFE Index (EFA)があります。
EFAは、アメリカン証券取引所に上場されているインデックス・ファンドです。対象になるのはヨーロッパとアジアだけでなくオーストラリアも含まれています。このファンドは、これらの国々の通貨が、ドルに対して強くなると上がる仕組みになっています。
iShares MSCI Emerging Markets Index (EEM)も狙えるインデックス・ファンドです。EFAは多くの国々が対象となって幅が広いですが、EEMは新興市場だけに限られます。ですから、対象になるのは中国、インド、ブラジル、ロシア、タイ、フィリピン、メキシコなどです。実際の資金分散ですが、EFAに15%、新興市場に10%ほど割り当てて差し支えないと思います。
さて、米国株式市場に戻りましょう。過去12カ月の利益を基に計算すると、ダウ指数に属する30銘柄の平均株価収益率は20を少し超えます。歴史的に見れば、かなりの高水準にあたり、マーケットの下げを予測する人たちもいます。しかし、2007年、私の買い姿勢は変わりません。極端にひどい自然災害やテロ事件でも起きない限り、買いが今年の基本姿勢です。」
ヘンリー・ブロジェット氏が、最近また話題になっている。2003年、証券業界から追放になった氏だが、90年代後半、インターネット株アナリストで、氏の右に出る者は一人もいなかった。先月の中頃から、テレビや雑誌では「2007年、注目の10銘柄」といった特集が多い。しかし、ブロジェット氏は「それらの銘柄を買ってはいけない」、と警告する。少し話を聞いてみよう。
「それらの株を買わない、と約束できるなら、注目10銘柄の記事を読むことは止めません。とにかく、注目銘柄を買っては駄目です。投資者たちは、なぜ個別銘柄を買うのでしょうか?一番の目的は、S&P500指数などに代表される、マーケット以上の利益を上げるためです。
S&P500、と簡単に言いますが、なかなかの強敵です。過去10年のデータを見ると、ファンドマネージャーで、S&P500指数以上の成績を常に出しているのは4人に1人もいません。プロでさえこんな状態ですから、常識的に考えて、雑誌の方が優れている、ということは先ずありえません。考えてください。大事な場面で、あなたはスポーツ記者を代打に起用するでしょうか?
雑誌やテレビで紹介される材料は、マーケットで既に消化済みです。当たり前の話ですが、テレビや雑誌が特定の銘柄を取り上げる理由は、それが話題になっているからです。あなたの手元に雑誌が届くころは、多くのプロたちが何度も売買を済ませ、それらの注目銘柄はゴミ箱行きになっている可能性があります。
雑誌社やテレビに、注目銘柄を教えたのは誰でしょうか?記者やレポーターが自力で発掘したのでしょうか?皆さんの察するように、情報を流したのはプロです。記事のお陰で、株価が急騰したら、あなたはどうしますか?持ち株を売って、利食うのではないでしょうか。プロも同様です。
もちろん、役にたつ記事もあります。マネー誌は、バンガード・インデックス・ファンドを注目すべき投資の一つに含め、個人投資家に適切な情報を提供しています。インターネットでは、ヤフー・ファイナンスに投稿している、ベン・スタイン氏(エコノミスト)のアドバイスは一読の価値があります。
大した価値の無い情報なのですが、なぜ毎年のように雑誌は注目銘柄特集を出版するのでしょうか?これも、皆さんが察するように、銘柄特集は雑誌の売上に好影響だからです。」
人気アナリスト、として活躍したブロジェット氏は、こんなことも付け加えている。「個人投資家の多くは、銘柄選びや適切なマーケット予測が重要だと思っています。しかし、そんなことに時間を使う必要はありません。重要なのは、マーケット自身に、耳を傾けることです。」
2006年、ウォールストリートのアナリストが敬遠した4銘柄は、平均で21%の伸びがあった、とサンダーストーム・キャピタルのジョン・ドーフマン氏は言う。そして、最も積極的に推された4銘柄は、平均で+2.4%だったというから、少し考えてしまう。「極端に結論すれば、アナリストが嫌うものほど見込みがあるのです。」ドーフマン氏の話を続けよう。
「過去9年間(1998年から2006年)、最も買い推奨が集中している4銘柄と、極めて売り推奨が多い4銘柄の成長率を調べました。年平均の数値ですが、買い推奨が集中している銘柄はマイナス3.7%、そして売り推奨が多い銘柄はマイナス0.2%です。この間、S&P500指数の年平均成長率は+7.4%でした。
アナリストは、マーケットの味付け役です。買いや売り推奨だけに限らず、収益や売上予想などを発表して、個別銘柄やマーケットの具体的なイメージを作り上げます。イメージが好感の持てるものであれば大衆は買い、悪いイメージなら売られますから、アナリストの影響は多大です。
完璧な調査とは言えませんが、過去9年間の買いと売り推奨を見る限り、アナリストの意見は絶対に信頼できるものではありません。アナリストも皆さんと同様に、正確な予想ができないのですから、株を買うときは、自分で納得できるまで調べることが肝心です。
2006年が始まって間もないころ、5人のアナリストのうち4人が、マーサ・スチュアート(MSO)に売り推奨を出しました。考えてみれば、売り推奨はもっともな格付けです。創始者のマーサ・スチュアート氏は、その頃、監獄から釈放されたばかりでしたから、アナリストに嫌われても仕方ありません。しかし2006年、赤字経営にもかかわらず、マーサ・スチュアートは+29%の成長です。
もっと顕著な例はシカゴ商品取引所(BOT)です。2006年は+62%でしたが、割高を理由に、7人中5人のアナリストは売り推奨でした。もし私の意見が聞かれていれば、たぶん私も、割高を理由に売り格付けを発表したことでしょう。
SIインターナショナルは、11人中11人のアナリストが買い推奨でした。結果は+6.1%ですから、S&P500指数の伸び率を下回っています。ペトロホーク・エネルギーは、追っている8人全てのアナリストから買い推奨でしたが、大きく13%の下落です。
それでは、今年はどうでしょうか?ブルームバーグのデータを使って、ダウ30銘柄を見てみました。ブルームバーグは、アナリストの意見を基にして株の評価が数字で表され、5が強い買い、3がホールド、1が売りです。最も高得点なのは、アルトリア(MO)の4.64、そして最も嫌われているのは2.22のゼネラル・モーターズ(GM)です。」