US Market Recap

クルード・オイルはここが底だ!?

去年の夏、クルード・オイル価格は80ドルに迫り、1バレル100ドルを予想するアナリストが多かった。テレビや新聞も、まるで100ドル突破は時間の問題、といった報道だったが、結果的にはそこが天井だった。先週金曜、2月限のクルード・オイルは51ドル99セントで終了している。

皆が100ドル論を公表する中、ピーター・グランディック氏は冷静な見方をしていた。7月1日付けのレポートで、氏はこう書いている。「秋頃から、クルード・オイルの大幅下落が始まるだろう。2007年の春までには、1バレル当たりの価格は60ドル以下になる可能性が高い。」

振り返ってみると、クルード・オイルはピークから20%ほど下げて2006年を終えている。今月に入ってからは、瞬時20カ月ぶりの安値、49ドル90セントを記録する場面もあった。

オイル100ドル論の信憑性が高かったのは、ハリケーンが大きな原因だ。しかし、2006年は打って変わって、2005年のようなハリケーン多発はなく、石油掘削機が被害を受けるようなことはなかった。もう一つ100ドル論を支えたのは、ピーク・オイルの説だ。石油は有限資源であり、これ以上の増産をすることはできない。だから、生産量のピークは既に去った、というわけだ。

2007年に入り、オイルは4%以上の下げを展開している。多数のアナリストは、季節外れの暖かい冬が原因だと言う。ここ12日間の取引を見ると、上げたのは4日しかない。さすがに強気なトレーダーも元気がなくなり、ここが底だ、と威勢良く叫ぶ声もほとんど聞こえなくなった。

40ドルの半ばを予想するアナリストが増え始めているが、グランディック氏はこう語っている。「一つ考えられることがあります。このオイルの大幅な下げで、多額な損を出しているヘッジファンドがあると思われます。損額や規模にもよりますが、そんなニュースが流れることになれば、オイルはもう一段下げることでしょう。もし、狼狽売りになれば、一気に売り物は出尽くしです。」グランディック氏は、今年の前半にオイルが底を打つことを予想し、今の段階で積極的な空売りは勧められないと言う。

更にグランディック氏はこう続ける。「これからは空売りではなく、オイル買いのタイミングを計ることが大切です。しかし、75ドルに戻ることは無いと思います。オイルがそこまで高騰するには、カトリーナに匹敵するハリケーン、イランでの軍事的事件、といった一大事が必要です。」

「今回のクルード・オイル下落は、サウジアラビアのバックアップ無しでは実現しません。狙いは、核兵器を武器に、中東制覇を企むイランのオイル利益を減らすことです。もしこの狙いが真実であるなら、他の産油国は来月からの減産を実施することは無いでしょう」、とギャリー・ドーシ氏(グローバル・マネー・トレンズ)は語っている。

(注:上記はダウ・ジョーンズ社、そしてCBSからの報道をまとめたものです。)

生活リズムとトレーダー

トレードで良い結果を出すためには、生活にリズムをつけることを忘れてはいけない、とジェフ・ホワイト氏(ザ・ストック・バンディット)は語る。リズムをつける、と言っても別に特別難しいことをするわけではない。お決まりの手順を作り上げればよいだけだ。もう少し、氏に説明してもらおう。

「私の一日は、いつも同じパターンで始まります。オフィスに入るのは、マーケットが開始する1時間半前です。先ずコンピュータを立ち上げて、主なニュースをチェックして寄付き前の雰囲気をつかみます。同時に、話題になっている銘柄の記事にも目を通します。その次は、私のルールに当てはまっている銘柄の最終的なリスト作りです。」

銘柄リストの作成に話が進んでいるが、ホワイト氏はどうやって銘柄を選んでいるのだろうか?「これは毎晩していることですが、マーケットに上場されている全ての銘柄を、株スクリーナーを使って調べます。インターネットには、様々な株スクリーナーがありますから、色々と試してみてください。

一度目のスクリーンでは、だいたい1600銘柄くらいが、候補銘柄として選び出されます。もちろん、こんなにあっても実際に使いものになりません。ここで重要なのは、それらの銘柄の終値です。具体的に言えば、高値引けしたのか、それとも安値引けしたのか、ということです。ソフトウェア利用して、高値近辺で引けたものと、安値近くで終了したものに分けます。これで、買い候補と売り候補リストができたわけです。

ここからが肝心です。買い候補と、売り候補リストに入っている銘柄の、日足チャートを一つずつ検討します。何も手動でしなくても、コンピュータにさせればよい、と言う人もいますが、私は本当にきれいなチャートパターンかを、自分の目で確かめたいのです。私のトレードスタイルは、継続パターンの利用が主になりますから、納得できるチャートだけを選びます。この作業が済むと、約50銘柄が残ります。

まだ終わりではありません。50の候補から、これは行ける!、という際立った銘柄を選ばないといけません。はたしてこの株は、思っている方向に直ぐ大きく動いてくれるでしょうか?一日の平均値幅は十分にあるでしょうか?特に、注意を払いたいのが出来高です。単に、トレードに適した出来高がある、ということを言っているのではありません。きれいなチャートパターンには、出来高の裏づけがあるでしょうか?今日のマーケットを動かしているのは、ヘッジファンドや、ミューチュアルファンドです。出来高に、機関投資家の足跡が見えない株は敬遠です。翌日、銘柄をもう一度点検して、最終的なリストの完成です。」

ハイテク株とカレンダー

しばらくハイテク株を避けた方が良い、とストリート・ドット・コムのジム・クレーマー氏は言う。「もちろん、個別銘柄によって違いはありますが、季節的にハイテク株は売りです。」そういえば、ウォールストリートには、「5月に売ってどこかへ行け(Sell in May and Go Away)」、という格言がある。現在1月だから、まだ5月ではない。知らない間に格言が修正されたのだろうか?クレーマー氏の話に戻ろう。

「ハイテク銘柄を効果的にトレードするには、カレンダーが必要です。私のヘッジファンドマネージャーとしての経験からも言えることですが、ウォールストリートのファンドマネージャーたちも、ハイテク株の季節性を利用しています。具体的には、1月中にハイテク株を処分して、買いは8月です。

一口にハイテク株と言っても、売りの対象になるのは半導体、ソフトウェア、それに携帯電話関連です。そろそろ個人ユーザー向けに、マイクロソフト(MSFT)からビスタが販売されるから、インテル(INTC)やアドバンスト・マイクロ・デバイシーズ(AMD)が行ける、と言う人たちがいます。しかし、それら大手二社は価格戦争状態ですから、買える銘柄ではありません。

以前なら、インテルと互角に価格競争できる企業はありませんでしたが、時代は変わりました。今となっては、会社規模を拡大させているAMDをインテルは無視できません。その他では、テキサス・インスツルメンツ(TXN)、クアルコム(QCOM)、そしてナショナル・セミコンダクタ(NSM)も避けるべきです。

新製品iPhone を発表したアップル(AAPL)、それからマーベル・テクノロジー(MRVL)は売る必要はありません。保持できる銘柄です。そして、MRVコミュニケーションズ(MRVC)も処分しなくて大丈夫です。スピンオフ(分離独立)の話もありますが、MRVCには、季節性という言葉が全くあてはまりません。

ソフトウェア・セクターは、どうしようもなくひどい状態です。特に悪いのがシマンテック(SYMC)です。先日、収益に関する警報がありましたが、あれほど徹底的にダメな発表は、いまだかつて聞いたことがありません。ソフトウェアで例外なのは、マイクロソフト(MSFT)です。パワフルな企業ですから、カレンダーを気にする必要はありません。

あともう三つ、季節に影響されないハイテク銘柄があります。シスコ(CSCO)、ヒューレット・パッカード(HPQ)、そしてグーグル(GOOG)です。もし、インターネット銘柄を一つだけ選ぶなら、グーグルしかありませんが、投機が好きな人には、レベル3コミュニケーションズ(LVLT)が面白そうです。」

ベテラントレーダーが学んだ教訓

フルタイムのスイングトレーダー、ブライアン・シャノン氏が初めて株を買ったのは13才の時だったという。「毎週金曜の夜は、ウォールストリート・ウィークという株番組を、父といっしょに見ることが習慣になっていました。と言っても、別に株に興味があったわけではありません。ただ、父と時間を過ごすことが、とても楽しかったのです。」13才で、いったいどんな株を買ったのだろうか?氏の話に戻ろう。

「買ったのは、ロージャックという銘柄です。車に特殊な装置をつけて、もし盗難にあった時、素早く取り戻すことがロージャックの主な業務内容です。貯めた金が500ドルあったので、さっそく1株5ドルの株を100株買いたい、と父に話しました。最終的に買った株数は1000株です。不足分は、父が出してくれましたが、儲けは全て私のもの、という好条件もつきました。そして6カ月後、ロージャックは2倍になりました。」

トレードを始めると、誰でも一度や二度は痛いめにあうものだ。シャノン氏には、どんな失敗談があるのだろうか?「証券会社を辞める計画をしていた頃ですから、1993年の1月だったと思います。銘柄はシャンタルという製薬会社で、シワに絶対的な効果がある、というクリームが大きな話題になっていました。浮動株数も極端に少なかったですから、とうぜん株価は急騰です。

実際に、シャンタルでは何回か利益を上げていましたから、この株には自信がありました。金曜日のことですが、持ち株には既に一株あたり2ドル以上の儲けがありました。月曜は特別な休みをもらっていたので、これで素晴らしい3連休になる、と浮かれ気分でした。

問題は、その月曜です。株価を確認するために同僚に電話を入れると、信じられない言葉が返って来ました。シャンタルは、金曜の値段より6ドルも下がっているのです。同僚の悪い冗談、と思いましたが声は真剣です。話をまとめると、週末に発売された株新聞の記事が原因でした。状況が状況でしたから、同僚に株を直ぐ処分してもらいました。口座に大きな穴が開きましたが、それから6カ月後、シャンタルは倒産です。」

その後も氏は失敗を重ねるが、こんな教訓を学んだという。「マーケットは、私の考えていることなどには、全く興味がありません。何時間もファンダメンタル分析をして、この株は行ける、と確かな自分なりの意見を持つのですが、そんな意見がマーケットを説得できるわけではありません。ですから自分の考えや、専門家のアイディアを無視して、値動きだけを見ることにしました。これが好転の起点です。」

新人トレーダーに、氏はこうアドバイスする。「マーケットだけに注意を払ってください。それから、底値での買いや、天井での空売りを考えないでください。トレンドに正しく従ったトレードをすること。それが第一です。」

最高の職場環境を備えた企業はどこ?

就職するならここだ!給料、ボーナス、従業員福利制度、将来性などを考慮して、フォーチュン誌が100のトップ企業を発表した。はたして、ナンバー1はどの会社だろうか?正解は、カリフォルニア州マウンテンビュー市に本拠地を構えるグーグルだ。さっそく、職場としてのグーグルを覗いてみよう。

ほぼ100%の従業員が称賛するのは、無料の社員食堂だ。その数は全部で11におよび、単なる食堂ではなく、正確に言えばグルメ・カフェテリアだ。11もあれば十分過ぎるほどだが、それ以外にもソーダやフルーツなどだけを扱った、スナック・ルームも用意されている。

シリコンバレーでは、通勤に電車を利用する人がいるから、多くの会社には低料金の出迎えバスがある。しかし、グーグルの場合は無料だ。車で通勤する人のためにも、グーグルは無料のオイル交換を行っている。更に、ハイブリッド車を購入するなら5000ドルが支給される。無料バス、オイル交換のほかにも、無料美容室がある。

優良な人材確保は、どの企業にも重要なように、グーグルも優れた人材の獲得に大きな力を入れている。グーグルの従業員が会社側に人材を紹介して、もしその人が本当に採用されると、社員には紹介料として2000ドルが支払われる。赤ちゃんが生まれた社員には、1カ月間にわたって食事が自宅へ届けられる。

食べているだけでは太ってしまうが、もちろん職場には、一流スポーツクラブに負けない屋内体操場もある。マッサージのサービスもあるから、凝った首や肩をほぐすこともできる。コーポレート・コンシェルジュ(社員専用雑務排除係員)もいるから、レストランの予約や映画のチケット手配などもしてもらえる。

特に独身の男性は、洗濯物をためこんでしまうが、洗濯機と乾燥機が職場にあるから仕事中に洗濯を済ますことができる。小さな子どもがいる社員には、社内に保育所があるから嬉しい。また、社員専用の医師や看護婦もいるから、ちょっとしたことなら、わざわざ病院へ行く必要が無い。

グーグル社員の平均年収はどの程度だろうか?残念ながら、ボーナスや給料に関しては、会社側から公表されていない。それでは、平均年収だけを基準にして上位5社を見てみよう。
1位、ニクソン・ピーボディ: 18万1099ドル。(21731880円)
2位、ビングハム・マクカッチェン: 18万50ドル。(21606000円)
3位、アルストン・アンド・バード: 16万6300ドル。(19956000円)
4位、アドビシステムズ: 16万1127ドル。(19335240円)
5位、アーノルド・アンド・ポーター: 15万5929ドル。(18711480円)

さて、1位のニクソン・ピーボディだがフォーチュン誌100リストの中では第49位。最もランクの高いのは、アルストン・アンド・バードの19位だ。

大衆は正しい?

逆張りについて、少し考えてほしいことがある、と経済コラムニストのハーブ・グリーンバーグ氏は言う。「本当に、いつも大衆は間違っているのでしょうか?大衆の参加無しで、マーケットは動くでしょうか?違った言い方をすれば、今週のナンバー1ソングが存在するのは、大衆からの絶対的な支持があるからです。」たしかに、皆が熱狂的になって買ってくれなければ、株価は上がらない。売買タイミングに問題があることも事実だが、氏の話を続けよう。

「ウォールストリートには、こんな格言がります。「株価には逆らうな。」「トレンドは投資家の友だちだ。」とうぜん疑問になることは、トレンドや株価を作り上げるのは誰でしょうか?もう一つ、こんな言葉もあります。「大衆は正しくもなければ、間違ってもいない。大事なことは、大衆の行動は自己達成的予言のようなものだ。」

自己達成的予言?話が分かりにくくなったかもしれませんが、株価を法外に高い水準に押し上げたり、極端に安いレベルまで大衆は株を売り叩いてしまいますが、これはその時点で相場を支配する常識に基いた行動です。単独行動をするのは難しいことですが、グループの意見に従って首になる社員はいません。ライオンが襲うのは群れではありません。餌食になるのは、群れから外れた動物です。

大衆が好むもの、嫌うものに注意を払うことは大切です。それらを適切に把握しなくては、逆張りで成功することはできません。言い方を換えれば、エンロンの空売りや、2002年の底でのハイテク株買いが可能だったのは、正しく大衆の心理を読むことができたからです。

もちろん、大衆心理を正確に読むことは簡単ではありません。ですから、直感に頼るのではなく、実際のデータに基いて大衆心理を判断することが大切です。いくつか、私が利用しているデータを紹介しましょう。

1、プット/コール比: 投資家が弱気な時は、プットの買いが増え、逆に強気な時はコールの買いが増えます。(この比率を見るには、StockCharts.comが役にたつ。)単に一日一日の動きだけでなく、現在の位置を全体的な流れの中でつかむことが大切です。

2、ボラティリティ指数(VIX): この指数は、大衆が安心している時に低い数値を示す逆指数です。ですから、マーケットが下がると上昇します。

3、ARMS指数: 大衆が弱気になると、この指数は1以上の数値を示し、大衆が強気なら1以下に下がります。

また、ニューヨーク証券取引所に上場されている、全銘柄の何パーセントが40日移動平均線より上にあるかを確かめることも重要です。」

米国住宅市場は上向きになった?

どうも話が合わない。先ず、全米不動産業協会(NAR)からの発表を見てほしい。

1、最終的な、2006年の中古住宅販売件数は650万件が予想され、2007年の売上数は642万件が予測される。

2、2006年の住宅着工件数は約181万件におよび、2007年は151万件が見込まれる。

3、2006年、中古住宅中間価格は1.1%の上昇が見られ、2007年は更に1.5%上がって、中古住宅中間価格は22万5300ドルになりそうだ。

4、2006年、新築住宅中間価格は+0.3%を記録した。今年は+3.0%が見込まれ、新築住宅中間価格は24万8900ドルに達しそうだ。

5、今年の中古住宅総売上数は、ほぼ去年と同様な数値が予想される。

どうだろうか?2番目の住宅着工件数を除けば、米国の住宅市場は決して悪くない。しかし、CNNの報道を読むと、全く違った様子が見える。報道の一部を紹介しよう。

ミネソタ州の読者からメールが届いた。「ここ数カ月だけで、住宅価格は少なくとも2万ドルの下げです。場所によっては、6万ドルも下げています。しかし、売れません。」コネチカット州の読者はこう書いている。「とにかく買い手が現れません。仕方ないので、住宅ローンの残高と同様な価格を提示しました。それでも売れません。」

なぜ現実と、全米不動産業協会からの発表には、こうも開きがあるのだろうか?「住宅市場は、地域によって事情が大きく異なります。不満の声は、一定の地域だけに限られ、全米に起きている現象ではありません。しかし、一番問題なのは、消費者が不動産ブームに慣れきってしまい、正常な住宅市場価格を忘れていることです」、と全米不動産業協会のジャネット・ブラントン氏は説明する。

ジョナサン・ミラー氏(マンハッタンで不動産鑑定会社を経営する)は、データそのものに問題があると言う。「たとえば住宅価格の算出方法ですが、実際に買い手が購入したときの価格ではなく、ローンの借り換えをした時の住宅鑑定価格も多数含まれています。これでは、正確な比較ができません。」

次に指摘したいのは、住宅建築業者からの発表だ。木曜に出たM/Iホームズのレポートによれば、12月31日に終了した四半期は、建築契約数が前年の同時期を61%下回った。また、新築住宅価格の下落が原因になり、買い契約取り消し数が前年の同時期を63%上回った。

メリテージ・ホームズも、同様な発表をしている。第4四半期の建築契約数は42%の減少になり、買い契約取り消し数は創業以来最高のレベルに達した。実際に売れた住宅数は1201件だが、これは前年同時期の2072件を大幅に下回った。

一部の消費者、そして住宅建築業者の声を聞く限り、米国住宅市場に回復の気配は見られない。しかし、全米不動産業協会のレポートからは、「最悪」という事態を読み取ることはできない。これでは状況が把握できないから、米抵当銀行協会の、ダグ・ダンカン氏の見方を記しておこう。「地域的には、今年、中間価格は10%から20%の下げになるでしょう。全米の住宅売上数は、7%から8%の減少になりそうです。」

ドルは長期的なダウントレンド

今年の相場は、どう展開すると思いますか?こんな質問に、銀行家のJPモルガン氏は、「たぶん上下するだろうね」、と決まって答えたという。同様な質問が、人気エコノミストのベン・スタイン氏にも向けられているが、さっそく返答を見てみよう。

「今年も、下げ基調の継続が予想されるのは米ドルです。一時的な下げ止まり、そして反発は当然おきると思いますが、長期的なダウントレンドに変わりはありません。ドル安要因の一つは、アメリカが抱える貿易赤字です。輸入が輸出を大きく上回っていますから、世界にはドルがあふれています。

全ての商品がそうであるように、供給量が多すぎると価格は下がります。米ドルは、貿易の準備通貨ですから、世界の国々は大量なドルを保有する必要があります。しかし、ドルが永久に主要準備通貨でなければいけない、という法律は存在しません。

最近見られることは、OPECなどの石油輸出国、そしてアジアの国々は準備通貨としてユーロを少しずつ保有し始めています。もちろん、これはドル売り材料です。ユーロ圏は、米国に対して大きな貿易黒字ですから、これもドル売りに結びつきます。他にも、タイ、台湾、韓国の通貨もドルに対して強くなっています。

ドルのダウントレンドを、どう利用することができるでしょうか?簡単、賢明な方法は、ヨーロッパとアジアの主要経済国の株価指数ファンド(インデックス・ファンド)に投資することです。例をあげれば、先ずiShares MSCI EAFE Index (EFA)があります。

EFAは、アメリカン証券取引所に上場されているインデックス・ファンドです。対象になるのはヨーロッパとアジアだけでなくオーストラリアも含まれています。このファンドは、これらの国々の通貨が、ドルに対して強くなると上がる仕組みになっています。

iShares MSCI Emerging Markets Index (EEM)も狙えるインデックス・ファンドです。EFAは多くの国々が対象となって幅が広いですが、EEMは新興市場だけに限られます。ですから、対象になるのは中国、インド、ブラジル、ロシア、タイ、フィリピン、メキシコなどです。実際の資金分散ですが、EFAに15%、新興市場に10%ほど割り当てて差し支えないと思います。

さて、米国株式市場に戻りましょう。過去12カ月の利益を基に計算すると、ダウ指数に属する30銘柄の平均株価収益率は20を少し超えます。歴史的に見れば、かなりの高水準にあたり、マーケットの下げを予測する人たちもいます。しかし、2007年、私の買い姿勢は変わりません。極端にひどい自然災害やテロ事件でも起きない限り、買いが今年の基本姿勢です。」

注目銘柄は無視!

ヘンリー・ブロジェット氏が、最近また話題になっている。2003年、証券業界から追放になった氏だが、90年代後半、インターネット株アナリストで、氏の右に出る者は一人もいなかった。先月の中頃から、テレビや雑誌では「2007年、注目の10銘柄」といった特集が多い。しかし、ブロジェット氏は「それらの銘柄を買ってはいけない」、と警告する。少し話を聞いてみよう。

「それらの株を買わない、と約束できるなら、注目10銘柄の記事を読むことは止めません。とにかく、注目銘柄を買っては駄目です。投資者たちは、なぜ個別銘柄を買うのでしょうか?一番の目的は、S&P500指数などに代表される、マーケット以上の利益を上げるためです。

S&P500、と簡単に言いますが、なかなかの強敵です。過去10年のデータを見ると、ファンドマネージャーで、S&P500指数以上の成績を常に出しているのは4人に1人もいません。プロでさえこんな状態ですから、常識的に考えて、雑誌の方が優れている、ということは先ずありえません。考えてください。大事な場面で、あなたはスポーツ記者を代打に起用するでしょうか?

雑誌やテレビで紹介される材料は、マーケットで既に消化済みです。当たり前の話ですが、テレビや雑誌が特定の銘柄を取り上げる理由は、それが話題になっているからです。あなたの手元に雑誌が届くころは、多くのプロたちが何度も売買を済ませ、それらの注目銘柄はゴミ箱行きになっている可能性があります。

雑誌社やテレビに、注目銘柄を教えたのは誰でしょうか?記者やレポーターが自力で発掘したのでしょうか?皆さんの察するように、情報を流したのはプロです。記事のお陰で、株価が急騰したら、あなたはどうしますか?持ち株を売って、利食うのではないでしょうか。プロも同様です。

もちろん、役にたつ記事もあります。マネー誌は、バンガード・インデックス・ファンドを注目すべき投資の一つに含め、個人投資家に適切な情報を提供しています。インターネットでは、ヤフー・ファイナンスに投稿している、ベン・スタイン氏(エコノミスト)のアドバイスは一読の価値があります。

大した価値の無い情報なのですが、なぜ毎年のように雑誌は注目銘柄特集を出版するのでしょうか?これも、皆さんが察するように、銘柄特集は雑誌の売上に好影響だからです。」

人気アナリスト、として活躍したブロジェット氏は、こんなことも付け加えている。「個人投資家の多くは、銘柄選びや適切なマーケット予測が重要だと思っています。しかし、そんなことに時間を使う必要はありません。重要なのは、マーケット自身に、耳を傾けることです。」

注目はアナリストが嫌う株

2006年、ウォールストリートのアナリストが敬遠した4銘柄は、平均で21%の伸びがあった、とサンダーストーム・キャピタルのジョン・ドーフマン氏は言う。そして、最も積極的に推された4銘柄は、平均で+2.4%だったというから、少し考えてしまう。「極端に結論すれば、アナリストが嫌うものほど見込みがあるのです。」ドーフマン氏の話を続けよう。

「過去9年間(1998年から2006年)、最も買い推奨が集中している4銘柄と、極めて売り推奨が多い4銘柄の成長率を調べました。年平均の数値ですが、買い推奨が集中している銘柄はマイナス3.7%、そして売り推奨が多い銘柄はマイナス0.2%です。この間、S&P500指数の年平均成長率は+7.4%でした。

アナリストは、マーケットの味付け役です。買いや売り推奨だけに限らず、収益や売上予想などを発表して、個別銘柄やマーケットの具体的なイメージを作り上げます。イメージが好感の持てるものであれば大衆は買い、悪いイメージなら売られますから、アナリストの影響は多大です。

完璧な調査とは言えませんが、過去9年間の買いと売り推奨を見る限り、アナリストの意見は絶対に信頼できるものではありません。アナリストも皆さんと同様に、正確な予想ができないのですから、株を買うときは、自分で納得できるまで調べることが肝心です。

2006年が始まって間もないころ、5人のアナリストのうち4人が、マーサ・スチュアート(MSO)に売り推奨を出しました。考えてみれば、売り推奨はもっともな格付けです。創始者のマーサ・スチュアート氏は、その頃、監獄から釈放されたばかりでしたから、アナリストに嫌われても仕方ありません。しかし2006年、赤字経営にもかかわらず、マーサ・スチュアートは+29%の成長です。

もっと顕著な例はシカゴ商品取引所(BOT)です。2006年は+62%でしたが、割高を理由に、7人中5人のアナリストは売り推奨でした。もし私の意見が聞かれていれば、たぶん私も、割高を理由に売り格付けを発表したことでしょう。

SIインターナショナルは、11人中11人のアナリストが買い推奨でした。結果は+6.1%ですから、S&P500指数の伸び率を下回っています。ペトロホーク・エネルギーは、追っている8人全てのアナリストから買い推奨でしたが、大きく13%の下落です。

それでは、今年はどうでしょうか?ブルームバーグのデータを使って、ダウ30銘柄を見てみました。ブルームバーグは、アナリストの意見を基にして株の評価が数字で表され、5が強い買い、3がホールド、1が売りです。最も高得点なのは、アルトリア(MO)の4.64、そして最も嫌われているのは2.22のゼネラル・モーターズ(GM)です。」
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