これは、streetTRACKS Gold Shares (GLD)という金価格に連動する上場投信だ。1月5日の安値を境にして、現在GLDは上昇ラリーを展開している。騒ぐなら、2日前の大陽線で徹底的に報道すればよさそうなものだが、区切りの良い数字700ドルが近くなった今日の方が話題にニュース性があるようだ。
ここで、金1000ドル論を唱える、ケビン・カー氏(グローバル・リソーシズ・トレーダー)の話を聞いてみよう。「インフレ懸念を示す連銀関係者のコメントで、水曜、金は20ドルを超える上げになりました。もちろん、オイル価格の上昇や、イラン情勢も買い材料になったことはたしかです。
さて、金は現在の高レベルでまだ買えるでしょうか?テクニカル的に見ると、700ドルから710ドルが壁になっています。先ず、そこが突破できないかぎり、ここでの買いは得策でありません。しかし、金鉱株は別です。ヤマナ・ゴールド(AUY)、ニューモント(NEM)、それにフロンティア・ディベロプメント・グループ(FRG)が魅力的です。」
ヘッジ・ファンド・マネージャーの、バリー・リットホルツ氏はこんな見方をしている。「これは金対バーナンキ連銀議長の戦いです。今日のバーナンキ氏には、インフレのタカ派として知られていた、以前の姿を見ることができません。先日のコメント、「減退するインフレと安定の兆しが見える住宅市場」でも分かるように、完全なハト派に変身です。
こんな氏の意見を聞いて、大声で笑っているのが金です。「バーナンキさん、私には、あなたが何を恐れているかが良く分かる。現実は、インフレ減退の逆だ。それに、住宅ローンの返済が不可能になった人たちが大幅に増え、既に大手ローン会社が大きな損を出している。たぶんこの問題は、全米に広がるはずだ。」
金は全て知っているのです。前任グリーンスパン氏の低金利政策が、大きなインフレ原因になっています。しかし、減速の見られる米国経済ですから、バーナンキ氏はこれ以上の金利引き上げはできません。
住宅ローンの支払いが不能になっているのは、サブプライム融資を利用した人たちです。住宅ブームに乗って、銀行だけでなく、多くの金融機関が普通なら金を借りるのが無理な人たちにサブプライム・ローンを積極的に勧めて、多額な融資をしました。
サブプライム・ローンのほとんどは利率が変動しましすから、度重なる金利引き上げで、多くの人たちがローンの支払いが苦しくなったわけです。ですから、ここでバーナンキ氏は金利引き上げをしたくてもできません。もし更なる金利引き上げに踏み切れば、サブプライム・ローンに関連した金融会社の倒産が次々と起きることでしょう。
今、連銀にできることは同じメッセージを繰り返すことだけです。「住宅市場は安定し始めた。インフレは抑制されている。」連銀は、ただじっと座って次に訪れる大きなインフレを待っているだけです。」