思ったとおり悪かった、というのが投資家たちの、今朝発表された雇用統計に関する感想だ。10月、24万におよぶ人たちが職を失い、これで米国失業率は6.1%から6.5%に上昇した。
10月10日の安値が、マーケットの大底だった可能性がある、とラリー・エーデルソン氏(ファイナンシャル・アドバイザー)は言う。強気論者が、また一人増えたわけだが、氏の話を少し聞いてみることにしよう。
株式市場はファンダメンタルズより先に動く。実例を挙げれば、1932年、大恐慌の真っ只中でダウ指数は底打ちになったが、経済回復の兆しは1935年まで見えなかった。
最近の例ではスウェーデンがある。1990年代、スウェーデンは、最悪な住宅市場のスランプに襲われた。最終的な損額はGDPの12%に達し、現在アメリカが経験している住宅問題など比べ物にならない。
1992年、スウェーデン政府は、経営危機に直面する銀行に資金を注入し、更に預金口座の保証を約束した。こんな惨たんたる状態だったが、次の12カ月間で、スウェーデンの株式市場は低迷する経済状態に関係なく42%の上昇となった。
上記の実例が顕著に示しているのは、悪材料が無くなるのを待っていたのでは、投資の絶好なタイミングを逃してしまうということだ。
これは何度も言うことだが、ダウ指数や他の株式指数を過去の数値と比較する時は、インフレ率を考慮する必要がある。10月10日、ダウの安値は7884.82だったが、インフレを計算に入れると約2550に相当するから、ダウ指数は既に77%の下落だ。言い換えれば、1932年以来、ダウがここまで売られ過ぎレベルに陥ったことは無い。
そして10月10日、ニューヨーク証券取引所に上場された銘柄の87%が、12カ月ぶりの安値を記録した。これほど悪い数字、50%以上の銘柄が12カ月ぶりの安値となったのは1962年、1966年、1970年、そして暴落のあった1987年の4回しかない。
ということで、今日のマーケットは歴史的な売られ過ぎレベルだから、そろそろラリーがあってもおかしくないというわけだ。さて、では何を買うべきだろうか?エーデルソン氏は4つの上場投信を挙げている。
・The iShares MSCI BRIC Index Fund (BKF): ブラジル、ロシア、インド、そして中国の株に投資。
・The Dow Diamonds ETF (DIA): ダウ30銘柄に投資。
・The Energy Select Sector SPDR (XLE): エネルギー株に投資。
・The SPDR S&P Metals and Mining ETF (XME): 金属、資源、鉱山関連に投資。
アジア株投資アドバイザーとして有名なトニー・サガミ氏は、日本株に対して強気な見方を発表し、長期投資対象として次の上場投信を挙げている。
・iShares MSCI Japan Index Fund (EWJ)
・WisdomTree Japan Total Dividend (DNL)
・streetTRACKS Russell Nomura Prime (JPP)
・streetTRACKS Russell Nomura Small (JSC)
(サガミ氏)
(参考にしたサイト: http://www.moneyandmarkets.com/big-moolah-to-be-made-27918
http://www.moneyandmarkets.com/nikkei-hits-26-year-low-bargains-galore-27886)
オバマ氏が当選ならこの銘柄が行ける、マケイン氏の勝利ならこの銘柄が有望だ、と投資家たちはあれこれ詮索していたが、選挙結果は大差でオバマ氏の勝ちとなった。
次期政権が明確になった今日、ハリー・ドマッシュ氏(「プロの銘柄選択法を盗め! 上がるバリュー株、儲かるグロース株」の著者)がオバマ銘柄の選び方を紹介しているので、さっそく見てみよう。
条件:
長期的な成長、過去の実績などが大切なのは言うまでもないが、現在の経済環境を考慮すると、買い候補となる企業は豊富な現金を保有し、負債がゼロであることが好ましい。
・時価総額は10億ドル以上あること。
・株価は10ドル以上であること。10ドル未満の株は、一般的にリスクが高く、機関投資家から避けられる傾向がある。
・当座比率は3以上あること。この数値に設定することで、保有する現金(流動資金)が、短期負債を3倍以上上回る企業を選ぶことができる。
・負債資本比率は0.1以下であること。
・総資産利益率は、過去5年平均で年15%以上あること。
・アナリストの推奨は、ホールド(中立)またはそれ以上であること。普通なら、買いと強い買い推奨だけに注目するが、今日のようなマーケット環境では多くの銘柄が既に格下げされているから、ホールドも買い候補に含める。
・向こう5年間で予想される一株利益の成長率は、年15%以上あること。
下記が条件を満たす10銘柄だ。もちろん、これらは買い推奨ではなく、単なる投資アイディアの一例であることをお断りしておきたい。
Adobe Systems (ADBE)、Cognizant Technology Solutions (CTSH)、Ensco International (ESV)、
Immucor (BLUD)、Infosys Technologies (INFY)、Intuitive Surgical (ISRG)、Netease.com (NTES)、
Qualcomm (QCOM)、Satyam Computer Services (SAY)、Simpson Manufacturing (SSD)
(情報源: http://articles.moneycentral.msn.com/Investing/SimpleStrategies/if-obama-wins-be-ready-for-a-rally.aspx?page=1)
いよいよ火曜日は大統領選挙。intrade.comは、92.6%の確率で、オバマ氏(民主党)の当選を予想している。たしかに、選挙は水物と言われているが、あまりにもマケイン氏(共和党)が劣勢だ。
さて、景気後退が顕著な今日のアメリカ、新大統領は積極的な経済刺激策を実施して、極めて低いレベルに陥った消費者信頼感を回復させねばならない。
11月3日、ウォールストリート・ジャーナルに、更に悪化する米国民の暮らしを物語る、電気やガスを切られる世帯数上昇の記事がある。
ペンシルベニア州の電力会社、PPLコープが今年9カ月間で電気を切った件数(一般住宅と商業用を含む)は、去年の同時期を78%も上回っている。PPL社の話によると、この大幅な上昇は、以前のように長期間待つことをやめて、滞納金が増えすぎる前に電力を切る、という方針に変えたため起きたという。
以前のように長期間待つことをやめた、ということなのだが、何故そうしたのだろうか?
収益見通しが下方修正されただけでなく、大幅な株価の下落で、電力、ガス会社は企業利益に悪影響となる、料金滞納者数の削減を決定した。
ということで株価が原因の一つになったようだが、maoxian.comは、低迷する株式市場に関して、こんなことを指摘している。
投資家やトレーダーに人気がある、11の空売り専門上場投信(ETF)のチャートを調べて、ある一つのことに気がついた。これが大底を意味するかは分からないが、11中8つから売りサインが出ている。
下記が、売り警報が出ているという、8つの空売りスタイルETFだ。
UltraShort QQQ ProShares (QID)、UltraShort S&P500 ProShares (SDS)、
UltraShort Financials ProShares (SKF)、UltraShort Dow30 ProShares (DXD)、
UltraShort Russell2000 ProShares (TWM)、UltraShort Basic Materials ProShares (SMN)、
UltraShort FTSE/Xinhua China 25 Proshare (FXP)、UltraShort MSCI Emerging Mrkts ProShares (EEV)
売りサインは週足チャートで見ることができるが、最も顕著に表れている、UltraShort MSCI Emerging Mrkts ProShares (EEV、新興市場株の空売り専門ETF)の週足を見てみよう。
超大陰線が形成され、投資家たちは、新興市場株は底を打ったと読んでいるようだ。EEVほど大袈裟ではないが、各チャートには、前週の線を包み込む陰線が出来ている。maoxian.comで記されているように、ここが大底かは分からないが、積極的な空売りを控える投資家が増えていることは事実だ。
(参考にしたサイト: http://www.intrade.com/
http://online.wsj.com/article/SB122567355463991711.html
http://maoxian.com/archive/do-bear-and-bond-fund-reversals-mean-the-bottom-is-in/)
(注:電気やガスを切られる世帯数は、抜粋したペンシルベニア州に限ったことではなく、全米で見られる現象。更に、この現象は、所得の低い世帯だけでなく、中間所得層にも広がっている。)
Sell in May and go awayという格言に従って、5月に株を売った人たちは、11月にマーケットへ戻ってくる。歴史的に見ると、11月から4月は、株が大きく成長する6カ月間だ。
波乱な10月が去ったところで、さっそく10月のマーケットを復習してみよう
・1987年の暴落があった10月以来、先月は、S&P500指数にとって、21年ぶりの最悪な月となった。(ニューヨーク・タイムズ)
・先月、世界の株式市場が失った総額は9兆5000億ドル。(バロンズ誌)
・2008年10月、S&P500指数のボラティリティは、ここ80年間で最高の数値を記録した。(ニューヨーク・タイムズ)
・先月、主要株式指数が、たった1日で9%を超える上昇を見せたことが2回あった。これと同様なことは、過去80年間で9回しか起きていない。(ニューヨーク・タイムズ)
・先月、株式市場が下げた日数は、1973年8月以来最高となった。(marketwatch.com)
・先月、米ドルはユーロに対して14.3%、カナダ・ドルに対して22.3%、そして豪ドルに対して31.8%の上昇となった。これは史上4番目の好成績。(marketwatch.com)
・金融危機の最悪な事態は去ったようだ。10月9日、5.09%だったLibor金利は、ここ6年間で最低の0.73125%まで下落した。(Bespokeインベストメント・グループ)
・先月の銅、そして原油の下げ率は史上最高。(バロンズ誌)
・先月、金価格は18%の下げとなり、これは1980年以来最高の下げ幅。
・小麦価格は、先月、22年ぶりの下げ幅を記録した。(ウォールストリート・ジャーナル)
・先月、日経225は26年ぶりの安値に転落。
・アイスランドの株式市場は、先月、81%の大暴落。(marketwatch.com)
バリー・リットホルツ氏(ritholtz.com)は、こう書いている。
「たしかに大幅に売り込まれていた、という事実もあるが、先週の株式市場は悪くなかった。何と言っても11%の上昇だ。」
なるほど、11月を待たずに、既に底値拾いは始まっていたようだ。
(参考にしたサイト:http://www.ritholtz.com/blog/2008/11/bad-month-to-stop-sniffing-glue/)
「Trading with TK」というブログがある。TKという私と同じイニシャルということもあって、毎日読むようになってしまったのだが、書いているのは、ニューヨーク証券取引所スペシャリストを務めたケビン・フィーハン氏だ。
オッサン、といった感じのフィーハン氏だが、木曜のブログでこう語っている。(動画だから、書いているのではなくて、本当に語っている様子を見ることができる。)
「頭の切り換えをしなくてはいけない。投資家たちは、ベアマーケットという見方に固執してしまっているが、マーケットは底を打ったと思う。ブレイクアウトは時間の問題だ。」
更に氏は、買い候補として二銘柄を挙げ、実際にチャートを見ながら、なぜ買いなのかを簡単に説明している。下は候補の一つ、First Marblehead Corp. (FMD)の日足チャートだ。
(木曜の終了時点 終値1ドル41セント)
50ドル、100ドルといった株価に慣れている人には、この株価を見ただけで嫌になってしまうと思うが、First Marblehead Corp. (FMD)はニューヨーク証券取引所に上場されている。
繰り返しになるが、氏はチャートを使って、なぜ買えるのかを説明したわけだから、収益などのファンダメンタルズは全く考慮していない。しかし、これだけダウントレンドがハッキリした株が、どうして買い候補なのだろうか?
・先ず、明確なサポートレベル(1)が出来ている。
・買いパターンである、上昇トライアングル(3)が形成されている。
・買いは、木曜の終値(1ドル41セント)近辺。目標株価は4ドル50セント(2)。損切りはサポートレベル割れ(1ドル17セント)。
ということで、翌日金曜、この株を追ってみた。
(10分足)
・金曜の寄付きはAの陰線。(もしフィーハン氏が有名人だったら、大きな窓を開けて、取引が始まったことだろう。)
・最初の30分間は何もなかったが、抵抗線(赤)を上放れたBの陽線の終値(1ドル56セント)で買い。
・思惑が外れて、抵抗線(赤 1ドル49セント)を割ってしまったら損切り。
・上昇するトレンドライン(青)を割った、Cの終値で利食い(1ドル71セント)。
単純計算すると利益は9.6%ほどになるが、言うまでもなく、買い材料になるようなニュースは発表されていない。それに、この株を追っているアナリストは3人だけだから、証券業界では全く注目されていない銘柄だ。
しかし、だからと言って、日足チャートを見た全ての人に、フィーハン氏のように上昇トライアングルが見えたわけではない。おそらく、ほとんどの人たちは、アップトレンドが明瞭にならなければ買うことはないだろう。
ここで、ラリー・ウィリアムズ氏の言葉を思い出した。「誰が見ても、明らかに買いだ、という時点での買いは遅すぎる。買いは、黄信号が青に変わる寸前にするべきだ。」
(情報源:フィーハン氏のサイトhttp://www.tradingwithtk.com/2008/10/picking-up-bargains-2-new-ideas-jbl-fmd.html)