アメリカは不景気を避けることができない、とチェンジ・ウェーブ・インベスティングの、トービン・スミス氏は言う。このような悲観論が主流になり、強気論者の声がほとんど聞こえなくなった今日この頃だが、先ず、氏の挙げる要素をいくつか見てみよう。
・全米経済研究所から発表される4つの重要なデータ、雇用、実質個人所得、工業生産、実質小売売上の全てがマイナスになった。
・供給管理協会から発表される、ISM指数が47.7%に落ち込み、2002年以来初めて製造業がマイナス成長を記録した。
・上場されている全銘柄の70%以上が、最近の高値から20%以上の下落となり、ベアマーケットが顕著になった。
・失業率が悪化し、2008年の後半から2009年の前半には、失業率が6.5%に達する可能性がある。
更にスミス氏は、住宅市場の低迷、そして信用収縮が引き続き今年も問題になることを指摘している。
こんなデータを見つけた。
(情報:スタンダード・アンド・プアーズ社)
これは、S&P500指数(株式指数)が、不景気前の6カ月間 (Six months before)、不景気の期間 (During recession)、そして不景気終了後の6カ月間 (Six months after)で、どう動いたかを示したものだ。
一般的に、不景気の期間は株が大きく下げる、と信じられている。その考え方が正しかったのは、1973年11月から1975年3月までの不景気(S&P500指数は24.7%の下げ)、そして1969年12月から1970年11月までの不景気だ(S&P500指数は11.3%の下げ)。
それ以外を見ると、不景気だからと言って、特別に株が下げるようなことはない。例えば、1990年7月から1991年3月の不景気では、+2.5%の数字で分かるように、S&P500指数は上げている。逆に不景気前の6カ月はマイナス0.5%だから、不景気の期間中の方が、株の成績が良かったわけだ。2001年3月から2001年11月の不景気では、S&P500指数は8.1%の下落だが、不景気前の6カ月は18.3%も下げていた。
ジェフリー・ミラー氏(ニューアーク・インベストメント)は、こう述べている。「たしかに、不景気を予想するアナリストが多い。しかし、現在マーケットは、不景気を織り込もうとしている事実を頭に入れておいてほしい。」
(参考にしたサイト: http://articles.moneycentral.msn.com/Investing/StrategyLab/Rnd16/P2/ChangeWaveJournal20080117.aspx
http://oldprof.typepad.com/a_dash_of_insight/2008/01/market-response.html)
アメリカは既に不景気だ、と宣言するアナリストや経済学者が増え始めている。こんなジョークがある。「不景気とは、隣に住んでいる人が失業することであり、恐慌の定義は、あなた自身が職を失うことだ。」さて、何と言っても、経済を支えるのは消費者だ。さっそく、庶民たちの声を聞いてみよう。
・「我が家の収入は、統計で見ると、中流階級の上位です。秋、夫が昇給になりましたが、ガソリンや食品価格が大きく上がっているので、反対に給料が目減りした感じです。」 Dianeさん
・「経済学者に言われなくても、そんなことは誰にもでも分かる。自分で商売でもしていない限り、ほとんどの人たちの収入は毎月同じだ。収入は限られているのに、物価が上がるのだから、個人消費に悪影響になるのは当たり前だ。」 Brad Windleyさん
・「もし米国経済が、コーチのバッグ、ティファニーの宝石、メーシーズの高級衣料品の売上に依存しているなら、明らかに米国経済の先行きは暗い。不景気は、米国経済を現実に引き戻す良い薬になるかもしれない。」 Dave McClureさん
・「引退した私にとって、今日の物価上昇は厳しい。特にガソリンの値上がりが大きいから、用事は全部一度に済ませるようにして、車をなるべく運転しないように心がけている。」 graced8669さん
・「原油急騰のおかげで、光熱費や交通費が大きく増えた。節約を第一として、本当に必要な物だけを買うようにしている。」 Carol Paurさん
・「米国経済の繁栄は、消費者が金を使い続けることが前提になっている。個人消費に落ち込みの兆しが見える今日、私たちは不景気の心配をするのではなく、恐慌の可能性を考えた方がよさそうだ。」 AlanRiversさん
・「全ての物が高くなりました。特にガソリンと食品の値上がりが目立ちます。私は、外食する回数が減りました。」 Sergioさん
・「最近、外に食べに行くことが少なくなった。家で毎日スープとサンドイッチ、もういい加減にアキアキだ。」 Cindyさん
・「株の比重を減らして、その分、国債への投資を増やした。買い物は現金で済ませ、クレジットカードは使わないことにした。」 CCarrierさん
・「昇給する度に、ガソリン、食料品、保険が上がり、いったい何のための昇給か分からない。一つ助かっているのは、私には、月々の住宅ローンの支払いが無いことだ。」 Lorieさん
・「今日のアメリカには、必要なことが三つある。先ず、節約、次が節約、そして節約だ。」 Bill Sohngさん
(上記は、ニューヨーク・タイムズの掲示板から抜粋: http://community.nytimes.com/article/comments/2008/01/14/business/14spend.html)
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