現在、米国のダウ指数は12215付近で推移している。信用収縮、インフレ、不景気、と心配材料が多いだけに、マーケットは本格的な下げ相場に入る、と言う人たちも多い。しかし、信じられない記事があった。リチャード・バンド氏は、早ければ年末までに、ダウ指数は16000に達すると言うのだ。
マーケットは底を打ったのだろうか、という質問を頻繁に聞くようになった。サブプライム問題、信用収縮、インフレ、不景気、と心配事は多いのだが、経営難に陥っていたベアー・スターンズの救済買収ニュースで、一先ず悪材料は出尽くした、と結論する投資家が現れ始めている。
原油の値上がりで頭が痛いのは航空会社だ。10月、1バレルあたり80ドル以下だった原油は、先週瞬時110ドルを記録し、現在100ドル70セントで取引されている。下が日足チャートだ。
(チャートはINO.comより。 移動平均線は50日)
それでは質問しよう。もし、原油が100ドル台に定着した場合、航空会社は利益を上げることができるのだろうか?
下は、メリルリンチからの資料だ。
航空会社
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75ドル
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95ドル
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100ドル
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110ドル
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アラスカ航空
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$104
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$14
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($9)
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($54)
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アメリカン航空
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$797
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($538)
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($872)
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($1539)
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コンチネンタル航空
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$444
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($12)
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($126)
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($354)
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デルタ航空
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$538
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($100)
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($260)
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($579)
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ノースウエスト航空
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$488
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$43
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($69)
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($291)
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ユナイテッド航空
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$540
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($116)
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($280)
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($609)
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合計
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$2913
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($709)
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($1615)
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($3426)
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(注:単位は100万ドル。カッコ内の数字は赤字を示す。)
簡単に、一番下のユナイテッド航空を使って説明しよう。
・もし2008年度、原油価格の平均が75ドルの場合、ユナイテッド航空は5億4000万ドルの黒字になる。
・もし原油価格が95ドルになると、ユナイテッドは赤字に転落し、その額は1億1600万ドルになる。
・原油が100ドルなら赤字額は2億8000万ドル。
・原油が110ドルなら赤字額は6億900万ドルに達する。
ようするに、原油が100ドル台に落ち着いてしまったら、全ての航空会社は赤字経営になるわけだ。
FTNミッドウエスト証券のアナリスト、マイケル・ダーチン氏は、こう語っている。
「航空業界は、厳しい適者生存の時代に入った。航空料金は大幅な値上げが実施され、現在国際線で適用されている燃油サーチャージが、国内線にも適用されることになるだろう。」
USA TODAYによれば、各航空会社は既に切り詰めるところまで切り詰め、これ以上の節約は難しい状態だという。そこで、少しでも機体を軽くして、ジェット燃料の消費量を減らそう、という動きが出てきた。たとえば、ジェット・ブルー航空は、エアバスA320型の航空機から座席を6つ取り外した。アラスカ航空の場合は、機内食に使うカートを軽いものに取り替えた。しかし、それらは微々たる節約にしかならないようだから、やはりダーチン氏の言うように、航空料金大幅値上げしか解決策が無いようだ。
(参考にしたサイト:http://www.usatoday.com/money/industries/travel/2008-03-24-jet-fuel-costs_N.htm)
月曜のマーケットで注目されるのは、大手証券ゴールドマン・サックス(GS)、そしてリーマン・ブラザーズ(LEH)だ。理由を説明する前に、まず両方の日足チャートを見てみよう。
ゴールドマン・サックス
リーマン・ブラザーズ
両銘柄とも、3月17日に大きく一転反発し、現在ゴールドマン・サックスは下降する50日移動平均線、リーマン・ブラザーズは50ドルに挑戦中だ。言うまでもなく、証券セクター底打ちと読んで、これら二銘柄を買った人は多数いることだろう。
両銘柄が注目される理由に移ろう。株式市場が休みだった金曜(21日)、247wallst.comのダグラス・マッキンタイア氏は、こんなことを書いている。
S&P(格付け会社)、ゴールドマン・サックスとリーマン・ブラザーズ(LEH)を格下げ。
金融セクターは最悪の事態を乗り越えた、という兆しが見え始めていたが、S&Pは、わざわざ休日の金曜を選んで、ゴールドマン・サックスとリーマン・ブラザーズを格下げした。このニュースに反応したくても、休日だから、ニューヨーク証券取引所には誰もいない。もしこの格下げが、先を見越したものであるなら、金融業界の悪材料は、まだ完全に出尽くしていないということになる。
長期的に見た、週足チャートも載せておこう。
ゴールドマン・サックス
レジスタンスになる可能性がある、38.2%の値戻しレベル、それに下降するトレンドライン(赤)が近い。
リーマン・ブラザーズ
既に38.2%レベルは突破したが、レジスタンスになりそうなレンジの下辺(赤)、そして50%の値戻しレベルが直ぐ上だ。
追伸: 週末のミミさんのブログに、こんなコメントがあった。「SPよ、そんな材料マーケットが休みの時に出さんといて?な。」
(参考にしたサイト: http://www.247wallst.com/2008/03/sign-of-more-ma.html
http://www.thestreet.com/story/10408862/1/sp-lowers-outlook-on-lehman-goldman.html)
聖金曜日、ということで株式市場は休み。株中毒の人には、辛い週末かもしれない。そこで、そんな人たちのために、一つ面白いブログを紹介しよう。少しは、中毒症状を和らげることができるはずだ。
先ず、下記をクリックしてほしい。
Fake Money. Real Stocks
10万ドルの架空口座を使って、ペーパートレード(実際のお金を使わないで売買判断をする)をしてみよう、というのがこのブログの目的だ。チャートを見る練習にもなるから、とにかくやってみよう。
簡単に使い方を説明しうよう。
チャートの上には、こんなものが見えるはずだ。
1、$100,000.00は元手の10万ドル。
2、資金を、また最初の10万ドルに戻したい時はresetをクリックする。
3、What would you do with this stock?の下には、Buy、Skip、Sellの三つのボタンがある。チャートを見て、この株は買い、と思うならBuyをクリックする。空売りだ、と思うならSellをクリックする。よく分からない場合は、真ん中のSkipをクリックすると、別なチャートが表示される。
さて、あなたは10万ドルをいくらに増やすことができるだろうか?
追伸:
こんなものは楽すぎる、という人はHomeの右側にあるAdvancedをクリックして、上級者コースに挑戦しよう。
追伸その2:
クマーな投資ブログでは、アメリカのインフレを心配する、シーゲル教授の話が取り上げられている。
USA TODAYに、上位10人のエコノミストによる、米国経済の予想が載っていた。と言っても、単に二つの質問に回答しているだけだから、ごく簡単なものだ。質問1は、2008年、連銀はFF金利をどこまで下げるだろうか?(現在2.25%)質問2は、2008年、米国は不景気に陥るか、というものだ。
1、デービッド・バーソン氏 (PMIグループ)
質問1: FF金利は1.5%。
質問2: 不景気に陥る。
2、ナリマン・ベラベシュ氏 (グローバル・インサイト)
質問1: FF金利は2%。
質問2: 不景気に陥る。
3、ライル・グラムリー氏 (スタンフォード・ワシントン・リサーチ・グループ)
質問1: FF金利は2%
質問2: 不景気に陥る。
4、マーク・ザンディ氏 (ムーディーズ・エコノミー)
質問1: FF金利は1.5%。
質問2: 不景気に陥る。
5、ローレンス・ユン氏 (全米不動産業協会)
質問1: FF金利は2.25%。
質問2: 不景気にはならない。
10人中、上位5人を記したが、さっそく非難の声が聞こえてくる。問題になっているのは、第5位にランクされているローレンス・ユン氏(全米不動産業協会)だ。バリー・リットホルツ氏(リットホルツ・リサーチ)を引用しよう。
USA TODAYは明らかに調査を怠っている。ローレンス・ユン・ウォッチを読んだことがないのだろうか?抜粋しよう。
「2005年9月、ユン氏はこう予想している。『ワシントン地域の住宅価格が下落する確率は0%に近い。逆に、ワシントンの住宅価格は、7%から10%の上昇が見込まれ、全米平均を上回ることになるだろう。』
ご存知のように、米国の不動産低迷は続き、ユン氏の予想は大きく外れている。S&Pケース・シラー指数によれば、2005年9月以来、ワシントンの住宅価格は8.4%の下落だ。
ユン氏自身、最近こんなことを言っている。『私は人々に間違いを指摘されることを気にしない。現に、私も、急激に変化する住宅市場が原因で、予想が外れてしまったことがある。』ユン氏は、いつも都合の良い言い訳ばかりだ。こんなユン氏を、第5位にあげたUSA TODAYが信じられない。」
事実、ユン氏の名前が、トップ・エコノミストとして紹介されているUSA TODAYの記事を疑問視する人は多いはずだ。ユン氏の属する、全米不動産業協会は、業界のチアリーダーとして有名なだけに、いつもバラ色な見方を発表する傾向がある。そんな定評のある機関のエコノミストを、なぜUSA TODAYはトップリストに加えたのだろうか?全く理解できない。
ユン氏
(参考にしたサイト: http://bigpicture.typepad.com/comments/2008/03/top-forecaster.html
http://lawrenceyunwatch.blogspot.com/2008/03/ridiculous-usa-today-names-lawrence-yun.html)