先ず、証券株の動きを示す、証券セクター指数(XBD)の週足チャートを見てほしい。最も嫌われているセクターとあって、下降する20週指数平滑移動平均線が壁になり、明確なダウントレンドだ。(注:MACDのヒストグラムには、ダイバージェンスが起きている。)
そして、下記がこの指数を構成する銘柄だ。
それでは本題に入ろう。
上記の銘柄だけを対象に、アナリストの売買推奨に従って投資したら、どんな結果になっただろうか?言い換えれば、買い推奨が出された時に買い、ホールドに格下げされた時点で手仕舞い、そして売り推奨が出されたら空売る、ということだ。
ブルームバーグが、先週金曜、投資結果を発表しているので、さっそく見てみよう。(調査期間は、2007年6月3日から、2008年6月3日まで。)
Bestの表示で分かるように、これは、最も成績が良かった二人のアナリストだ。
(注: Analystはアナリスト名。 3 month、 6 month 、1 year は3カ月、6カ月、1年の成績をパーセンテージで表したもの。 # of 1-Year picksは、1年間に何回推奨したかの回数が示されている。)
これは、成績の最も悪い5人のアナリストだ。調査期間中、証券セクター指数は38%の下落だから、上記5人は指数を上回る下げを記録したわけだ。(注:アナリストの平均はマイナス17%。)
誤解しないでほしいのは、アナリストの言うことは当てにならない、と結論したいわけではない。職業柄、アナリストたちは、今回のブルームバーグの調査のように、絶えず評価されている。もちろん、サラリーマンも会社側から仕事ぶりを評価されるわけだが、アナリストのように大衆の面前にさらされるようなことはない。
なぜブルームバーグは、わざわざ最も低迷する証券株を選んで、アナリストの調査をしたのだろうか?上記したように、調査期間中、証券セクター指数は38%の下げ、そしてアナリストの平均成績はマイナス17%だった。極論すれば、アナリストの言うとおりに投資していれば、損額はマーケットの下げ幅以下で済んだわけだから、アナリストの意見はとても重要だ、とも結論できる。
しかし、ブルームバーグのヘッドラインは「アナリスト、投資家の資金を17%失う」、というものだから、最初からアナリストを批判する姿勢が丸見えだ。もちろん、センセーショナルなタイトルでないと、読者にクリックしてもらえない、という事情もあると思うが、正直言って後味の悪い記事だった。
(参考にしたサイト:http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601087&sid=aTuI17bC.igE&)
5月、ウォルマート(WMT)の売上は、アナリストが予想していた+1.6%を大きく上回る、+3.9%という好結果だった。ウォルマートは世界最大の小売業者として知られ、大幅安売りを武器にする、大手デパートの強敵だ。(注:+3.9%には、ガソリンの販売は含まれていない。)
先月の好調な売上について、ほとんどのアナリストは、こう語っている。
「低迷する金融市場、それにスランプが続く住宅市場に加えて、ガソリンや食品の値段が上がり、消費者に大きな重荷となっている。こんな状況で、『お金を節約して、快適な生活をしよう!』、というウォルマートのスローガンが当たり、消費者は衣類や家庭製品だけでなく、食品などの日常必需品もウォルマートで購入する結果となった。」
経済の悪材料が、ウォルマートには好影響になったわけだが、この記事に対する米国読者たちの書き込みを見てみよう。
・「高級レストラン、高級品を売る店、とにかく高級という名が付く店は苦しい状態だ。私たちの、生活水準低下を見るのは、全く面白いことではない。」 Mecheさん
・「ウォルマートが強い理由は、そこへ行くだけで、必要な物がほぼ全て安い値段で手に入るためだ。ガソリンが高い今日、消費者は、あちこちの店に足を運ぶことを好まない。」 Carloさん
・「インフレ、それに不景気が顕著になった今日、ウォルマートが好調なのは当然の結果だと思う。現に、ウォルマートで買い物をすることで、私たちはかなり節約することができる。」 Goldbrainさん
・「私もウォルマートで買い物をしている。もちろん、失業保険の世話になっている身分だから、他の店には行けない。」 Silver-Bugさん
・「ウォルマートで買い物をするのは、パスポート無しで中国へ行って買い物をするようなものだ。」 izwideshutさん
・「買い物は全てウォルマートです。メーシーズのようなデパートには行きません。最終的には、どこで買っても品物は古くなって壊れるのです。」 bello505さん
・「運動用として、妻が高いNu Balanceの靴を買ってくれたのですが、6カ月でダメになってしまいました。しかし、ウォルマートで買った20ドルの安い靴は、2年以上も持っています。ブランド商品を買うのは、本当に馬鹿げたことです。」 ASHKELONさん
(ウォルマートの店員。ユニフォームの背中には、How may I help you?、という文字が見える。)
(参考にしたサイト: http://www.marketwatch.com/news/story/wal-mart-benefits-downturn-sales-beat/story.aspx?guid=%7B445531BE%2DAA76%2D4599%2DA18C%2DC436855BD985%7D)
http://kabukeizainani.blogspot.com/
月曜の寄付き前、メリル・リンチ(MER)、モルガン・スタンレー(MS)、そしてリーマン・ブラザーズ(LEH)の大手証券会社が、スタンダード・アンド・プアーズ社(S&P)によって格下げされた。既に膨大な評価損が計上されているが、不良債権問題は完全に片付いておらず、金融業界の先行きは暗い、というのが格下げ理由だ。
アナリスト達は、Strong Buy、Buy、Hold、 Underperform、そしてSellという言葉で株の格付けをするのが一般的だが、ここでそれぞれの銘柄を見てみよう。(下は先週金曜の終了時点における状況。)
メリル・リンチ(MER)
モルガン・スタンレー(MS)
リーマン・ブラザーズ(LEH)
一目瞭然なのは、どれもHoldを推奨するアナリストが圧倒的に多い。Strong Buy(強い買い)、Buy(買い)、Sell(売り)というのは簡単に理解できるが、Holdというのはいったいどういう意味だろうか?英和辞典では、「保持する」、「持続する」、「維持する」、と説明されているから、Hold=株を持ち続ける、と解釈することができるが、詳しく説明するとこうなる。
・この株を既に持っている人は、買い足しや売却をしないで、この株を持ち続けること。
・この株を持っていない人には、この株の買いを奨めることはできない。
極論すれば、Holdは売り推奨と同じだ。まだ投資していないなら、この株は買わないほうが良いですよ、と言っているわけだから、Holdが圧倒的に多い銘柄は避けた方が無難だ。
上とは逆の例を一つ挙げておこう。
アップル(AAPL)
Strong BuyとBuyが目立ち、Holdを奨めるアナリストは4人だけだ。
(参考にしたサイト: http://biz.yahoo.com/rb/080602/usa_credit_banks_sp.html)
http://kabukeizainani.blogspot.com/
6月の相場は荒れそうだ、とシティ・インベストメント・リサーチの、ローリー・カルバシナ氏は言う。理由は、ラッセル指数を構成する銘柄が入れ替えになり、当然の結果として、ミューチュアルファンドによる持ち株の調整が予想されるためだ。
カルバシナ氏の話をまとめるとこうなる。
「120のミューチュアルファンド(金額に直せば約5350億ドル)は、トレーダーにポピュラーなラッセル2000指数を含めて、26のラッセル指数に連動する仕組みになっている。指数構成銘柄の変更で、ミューチュアルファンドがポートフォリオを調節しなければならないが、この事実を利用して、ヘッジファンドが何か仕掛けてくることだろう。」
CNNの報道によれば、現在ウォール街では、どの銘柄が組み替えの対象になるかが予想され、ヘッジファンドは既にそれらの銘柄に投資を開始している。ラッセル2000指数は小型株の動きを示す指数であり、IWM(iShares Russell 2000 Index)は、連動銘柄として投資家やトレーダーに人気がある。
ここで、IWMの日足チャートと、大型株の代表である、ダウ指数に連動するDIAの日足チャートを比べてみよう。
一目瞭然、小型株に連動するIWMの方が成績が良い。ヘッジファンドは、6月の銘柄入れ替えを見込んで、確かに資金を小型株に移していたようだ。
メリサ・ロバーツ氏(Keefe, Bruyette & Woods社)は312銘柄、そしてシティのキース・ミラー氏は307銘柄が新たに小型株指数に組み入れられることを予想している。
ローリー・カルバシナ氏(シティ・インベストメント・リサーチ)
(参考にしたサイト: http://money.cnn.com/2008/05/31/markets/bc.na.fin.mkt.us.wallst.ap/index.htm?section=money_latest)
やる銘柄を間違ってしまった、という言葉をよく聞く。ほとんど株の経験が無い人でも、注目銘柄を買ったお陰で儲かった、ということが起きることで分かるように、適切な銘柄を選ぶことは大切だ。