戦いの時が来た、米国消費者よ立ち上がれ!と、ポール・ファーレル氏のコラムは気合が入っている。今年は、大統領だけでなく、下院議員の選挙もある。経済のスランプが顕著になった今日のアメリカだけに、役に立たない議員を一掃するチャンスだ。
そろそろ底だ、割安になった株を買え!そういう非現実的なことを言ってもらっては困る。マーケットは、下げが始まったばかりだ!とにぎやかな週末だ。こういう予想があった。
「ダウは10000、S&P500は1175、ナスダックは2000。」
(金曜の終値: ダウ 11346.51、 S&P500 1278.38 ナスダック 2315.63)
予想したのは、ルイーズ・ヤマダ氏(ルイーズ・ヤマダ・テクニカル・リサーチ・アドバイザーズ)だ。
先ず質問しよう。ルイーズ・ヤマダ氏はどちらでしょうか?
正解は右側。左の東洋系の顔をした女性は、CNBCテレビの人。
ヤマダ氏は、テクニカル・アナリストだから、チャートや指標を使ってマーケットを分析し、一株利益、売上などといったことは気にしない。
S&P500が、1175に行くというのは、既に多くのトレーダーに受け入れられている。理由は、下の月足チャートを見てほしい。
入れてあるのは、2002年の安値と2007年の高値を結んで引いた、フィボナッチの値戻しレベル(リトレースメント)だ。A、B、Cは最も頻繁に利用されているレベルになり、上から38.2%、50%(半値戻し)、そして61.8%の順番になる。現在、S&P500がテストしているのは38.2%のリトレースメント・レベルであり、ヤマダ氏が言っている1175は、Bの半値戻しレベルと一致する。
ナスダック (月足)
予想されている2000は50%の値戻しレベルだ。
ヤマダ氏のインタビューは下記で見ることができる。 (英語のヒアリングに挑戦してください。)
http://www.cnbc.com/id/15840232?video=780265054
3%を超える木曜の下げは、さすがに投資家たちにこたえた。この大幅下落から、私たちは何を学ぶことができるだろうか?ジム・クレーマー氏(マッド・マネー)が、いくつかの点をあげているので、先ずそれから見てみよう。
「航空会社は、新しい飛行機を購入できるような状態ではないから、投資家は航空機を製造するボーイング(BA)、そして飛行機の部品会社ハネウェル(HON)を売り払った。
同様に、将来的に資金のやり繰りに困りそうなゼネラルモーターズ(GM)が売られ、自動車部品のジョンソン・コントロールズ(JCI)もいっしょに売られた。
オラクル(ORCL)は、低迷する金融機関に技術を提供しているということで売られ、好決算結果であったにもかかわらず、リサーチ・イン・モーション(RIMM)は売り叩かれてしまった。こんな状況では、テクノロジー銘柄は買えない。」
なるほど、飛行機、自動車、テクノロジーが駄目なら、何を狙ったら良いのだろうか?不況に耐えることができ、供給不足しているものを提供できる会社、ということでチェサピーク・エネルギー(CHK)、シュルンベルジェ(SLB)、ハインツ(HNZ)の三銘柄をクレーマー氏は候補に挙げている。
前労働省長官、ロバート・ライク氏は、木曜の大幅下落について、こうブログで書いている。
この大きな下げ方に驚いた、と言う人たちがいるが、そんなことを言う人がいることに私は驚いた。下げの第1原因は、史上初めてオイルが1バレル140ドルを突破したこと。第2の理由は、昨日の会議で連銀が金利を引き下げなかったためだ。そして、米国自動車セクターの崩壊。もう一つは、更に予想される大手金融機関の評価損計上だ。
金利を引き上げなかったから株が下がった、と説明する人もいるが、それは間違っている。現在、アメリカや海外の投資家が最も心配していることは不景気だ。
しかし、そんなことよりも問題なのは、米国消費者が限界に来ていることだ。高騰する食品とエネルギー価格。それに相変わらず住宅価格が下がり続けているから、消費者は住宅ローンを借り換えて現金を手に入れることができない。こんな状況では、たとえ企業の海外での売上が好調でも、収益が下がることは目に見えている。
これを読む限り、ライク氏はインフレをさほど気にしていない。本当に、インフレの心配をする必要は無いのだろうか?ライク氏の回答はこうだ。
単に食品やエネルギー価格が上がっただけでは、インフレ率が加速することは無い。インフレが悪化するのは、生産量が向上していないのに労働賃金が上がり続け、企業が製品を何度も値上げするためだ。今日のアメリカに、それはあてはまらない。給与が上がらないだけでなく、現在のアメリカは失業率が上昇している。この状態では、企業が製品の値上げを何度もすることはありえない。
(情報源: http://robertreich.blogspot.com/
http://www.thestreet.com/story/10423360/1/cramers-mad-money-recap-june-26.html)
ジム・クレーマー氏
ここはサポートレベルだから、少しグーグルを買ってみよう、と動き出した人もいることだろう。下の日足チャート(大引けまで約2時間)で分かるように、たしかに今回も、540ドル付近に走るサポートラインのテストに成功したようだ。
古い論争が、フィリックス・サーモン氏のコラムで、にわかに活気を取り戻した。どちら側にも、熱狂的な支持者がいるから、冷静さを失って感情的になってしまう人たちも多い。先ず、問題になったコラムを引用してみよう。
「買われ過ぎ、売られ過ぎ、モメンタム、支持線、抵抗線、といった言葉を聞くことがあるが、それらはゴミ屑のようなものだ。そもそも、そういうことを言う人自身、何も分かっていない。そんな話は完全に無視だ。」
とまあこういう書き方だから、本音というより、論議を引き起こすことを目的に執筆された可能性がある。インターネットが便利なのは、コラムの直ぐ下に、読者からの感想が読めることだ。いくつかの書き込みを見てみよう。
・テクニカル分析を、完全に無視するのは間違いだと思う。過去、投資家たちはどこで買い、どこで売ったのか、そしていくつかのパターンを習得することは、値動きの予測にある程度役立つ。 Davidさん
・支持線、抵抗線という現象は、こんなところにも見ることができる。
このチャートは、カリフォルニア州オレンジ郡の、レギュラー・ガソリンの平均価格を表している。見てのとおり、4ドル60セントがレジスタンスだ。もちろん、数カ月前には、チャートを見ただけでは4ドル60セントがレジスタンスになることは、予測できなかったことだろう。 odographさん
・ほとんどの人たちは、時間をかけて、マーケットを分析することを怠っている。個人投資家として大切なことは、必要な知識を身に付けて、何が本当に役立つかを見極めることのできる眼を持つことだ。 gmlernerさん
・テクニカル分析は単なる道具にすぎない。良い結果を得たいなら、先ず、道具の使い方を学ぶべきだ。 Jacksonさん
テクニカル分析の利点として、バリー・リットホルツ氏(リットホルツ・リサーチ)は、次の6点を挙げている。
1、統計に基いた投資を可能にする。
2、ブルマーケット、ベアマーケットの判別が簡単にできる。
3、トレンド分析をすることで、間違ったセクターに投資することを防ぐことができる。
4、リスク/リワード比を簡単に計算できる。
5、機関投資家の動きを追うことができる。
6、比較的短時間で、投資に適した銘柄を選ぶことができる。
テクニカル分析というと、チャート分析のことだ、と思っている人もいるが、テクニカル分析には少なくとも4つの分野がある。これについては、後ほど書きたいと思う。
(情報源:http://www.portfolio.com/views/blogs/market-movers/2008/06/23/adventures-in-technical-analysis-jim-cramer-edition
http://bigpicture.typepad.com/comments/2008/06/lets-get-techni.html)
株の話、経済の話、何の話だろう?
原油価格は、1バレル65ドルに下落する可能性がある、というニュース速報が目にとまった。現在の原油価格は136ドル40セント。高騰が続いていただけに、10%、20%の下げがあっても不思議ではないが、65ドルというのは、あまりにも大袈裟な予想ではないだろうか?
記事を読み進むと、これは予想ではなく、アナリストの議会での証言だった。マイケル・マスターズ氏(マスターズ・キャピタル・マネージメント)は、こう述べている。
「もし議会が、エネルギー先物市場での投機を規制する法案を通過させれば、30日以内に、小売ガソリン価格は現在の半額に相当する、1ガロン2ドル程度まで下がるだろう。同様に、現在135ドル近辺で取引されている原油も、1バレル65ドルから75ドルに下がることだろう。」
ガソリン高は、今日の米国消費者を大きく悩ませているだけに、政治家も票稼ぎのために無視することができなくなった。現に先日、カリフォルニア州選出の下院議員、マキシーン・ウォーターズ氏(民主党)は、石油会社を国有化するべきだと議会で発言して、論議を巻き起こしている。(注:論争を引き起こした一番の原因は、民主主義、資本主義の理念を掲げる米国の政治家が、国営化という信じられない言葉を使ったことにある。)
この発言に関して、マイク・シュミット氏(hedgefolios.com)は、こんな感想を書いている。
「国有化する、という言葉を聞いて、笑っている他の議員たちの姿が見えたが、私には笑うことができなかった。困ったことがあると、何でも政府に解決させようとする、社会主義的な人たちが増える今日だが、石油会社の国営化は危険なアイディアだ。
数年ほど前、ベネズエラは石油会社を国営化し、石油の在庫量は米国の在庫量を抜いた。ベネズエラに限らず、石油の在庫量が多い国に共通して言えることは、石油会社が国営化されていることだ。
しかし、マキシーン・ウォーターズ氏、そして氏の意見に賛成する人たちは、肝心な事実を忘れている。これらの大産油国は、石油会社を既に国営化しているにもかかわらず、今日の原油急騰を避けることはできなかった。ただでさえ石油の在庫量が少ないアメリカが、石油会社を国営化しても、これは世界の石油供給量に大した変化を与えることは無い。
ウォーターズ氏は、アメリカの3大石油会社を目の敵にしているようだが、それら3社を国有しても原油の値下がりを約束することは無理だ。石油業界には採掘業者、精油業者、パイプライン業者、それに多くの独立系企業も存在する。ウォーターズ氏は、それらの会社も国営化するつもりだろうか?」
マキシーン・ウォーターズ氏
(情報源: http://www.marketwatch.com/News/Story/Story.aspx?guid={D3EC8E90-A28A-40D2-9687-DBE0518F6D48}&siteid=mktw
http://seekingalpha.com/article/80647-nationalizing-oil-well-intentioned-but-wrong)
株の話、経済の話、何の話だろう?
原油チャートに走る200日移動平均線は、100ドルを超えて、100ドル67セントになった、とジョセフ・ラザロ氏(WallStreetItalia.com)が、金曜のコラムで書いていた。ご存知のように、200日移動平均線は、長期トレンドを見る一方法として、多くの投資家やトレーダーに利用されている。