インフレが深刻化する前に、連銀は金利引き上げをする必要があるのだが、今の連銀にそれはできない、と言うマーケット関係者が多い。先週の報道で明らかになったように、米国最大の住宅金融機関が経営危機に直面しているのだから、金利引き上げなど論外というわけだ。
破綻の危機に瀕する、大手2住宅金融機関に、米政府は公的資金を注入するというニュースで、マーケットはギャップアップでスタートを切った。下は、S&P500指数に連動する、スパイダー(SPY)の5分足チャートだ。
まだ大引けまで2時間以上残っているが、見てのとおり、強かったのは寄付き(A)だけだ。買いが全く続かず、投資心理の冷えこみが顕著に表れている。
マネーニュース・ドット・コムを見てみると、著名人の批判的、そして悲観的な言葉の引用が多い。
・ジム・ロジャーズ氏 (投資家): 「ファニーメイとフレディマックを閉鎖せよ」 (注:ファニーメイとフレディマックが、今回経営危機に直面している、米国最大の住宅金融会社。)
既に、金融銘柄を空売りしているロジャーズ氏は、こう語っている。「政府の介入がなければ潰れてしまうような会社は倒産させるべきだ。」
・マーク・ファーバー氏 (投資アナリスト): 「連銀は悪い冗談だ」
「私たちは、連銀、特にバーナンキ議長の言うことを信じてはいけない。議長は、インフレ問題やドル安に真剣に取り組んでいるような姿勢を見せるが、実際は何もしていないだけでなく、中産階級の消費者のことなど全く考えていない。」
・ジム・クレーマー氏 (人気番組「マッド・マネー」担当): 「株は絶望的だ。持ち株を処分しろ。」
いつも強気で有名な氏だけに、この言葉を聞いて、マーケットの底は近い、と言う投資家たちもいる。クレーマー氏の話を聞いてみよう。
「25年間マーケットを見てきたが、こんなマーケットは一度も見たことがない。私は、株に対して、いつも長期的強気論者だった。どんなに状況が悪い時でも、探せば何か投資対象になるものがあったが、今回は違う。株、社債、吸収合併、投資銀行、全てのものが同時にスランプ状態に陥ってしまった。」
今日のように、株式市場が低迷する状況では、マネーニュース・ドット・コムのように悲観論ばかりを並べるサイトが多い。たしかに、「ファニーメイとフレディマックを閉鎖せよ」とロジャーズ氏は言っているが、氏の2金融機関に対する不信は昨日今日に始まったわけではない。同様に、ファーバー氏の連銀批判も、昨日今日に始まったわけではない。
ジム・クレーマー氏が、「株は絶望的だ。持ち株を処分しろ」、と言ったことも事実だが、この話には続きがある。金曜のマッド・マネーで、氏はこう語っている。
「オイル高、食品高の現状で、比較的影響されていないのがヘルスケア・セクターだ。ファンドマネージャーたちは、こんなマーケット環境でも何かに投資しなければならないから、おそらくヘルスケア銘柄が狙われることだろう。」具体的な例として、氏はCR Bard(BCR)を取り上げていた。 (ジム・クレーマー氏には、15年間のヘッジファンド・マネージャーとしての経歴があり、成績は年間24%だった。)
フィデリティ・インベストメントで、大口取引を担当していた、ケビン・ハガティ氏はトレーダーにこう勧めている。「マスコミの言うことは、単なる物語だ、と割り切って解釈するべきだ。」
クレーマー氏
(情報源: http://moneynews.newsmax.com/index.html
http://www.cnbc.com/id/15838459)
株の話、経済の話、何の話だろう?
土曜の朝6時43分、バリー・リットホルツ氏(リットホルツ・リサーチ)は、経営危機に陥っている金融機関、フレディマックとファニーメイに関して、次のようのことを書いている。(しかし、リットホルツ氏、土曜というのに早起きだね。)
先ず、話を分かりやすくするために、ファニーメイ(FNM)の5分足チャート(金曜日)を見てほしい。
大きなギャップダウンの後、ファニーメイはラリーを展開して、6ドル台から10ドル台まで回復してしまった。それでは、リットホルツ氏の話に戻ろう。
フレディマックと、ファニーメイが大きな下げで取引が開始されて間もなくすると、連銀が救済に乗り出すという噂が流れ、これらの二銘柄に買いが入り始めた。しかし、連銀からこんな声明が発表されている。「連銀は、フレディマックとファニーメイの両社とは、全く何の話し合いもしていない。」
要するに、噂はデタラメだったということだが、これで金曜に買った人たちは、さっそく月曜の寄付きから売って来るだろうか?
金曜に、少し触れたが、デービッド・マーケル氏(証券アナリスト)は、あまりに規模が大きすぎて、連銀には効果的にファニーメイとフレディマックの二社を救済するのは無理だと見ている。全米に存在する、ほぼ50%に相当する住宅ローン債権を保有する二社だから、既に連銀の手には負えず、残された道は国有化しかないというわけだ。
全米最大の住宅金融会社、ファニーメイとフレディマックがこんな状態だから、誰もが予想しているように、米国住宅市場の低迷は更に長引くことだろう。リチャード・ディカサー氏(ナショナル・シティー・コープ)は、こう述べている。
「住宅ローン金利が上がる可能性があるだけでなく、銀行は更に基準を厳しくするでしょうから、消費者は、ますます金を借りることが難しくなるでしょう。」
(情報源: http://bigpicture.typepad.com/comments/2008/07/fed-no-discount.html
http://biz.yahoo.com/cnnm/080711/071108_fannie_freddie_woes.html?.&.pf=loans)
株の話、経済の話、何の話だろう?
ファニーメイとフレディマック(マクドナルドの話ではない)が国有化されるかもしれない、という報道で、現在ダウは1.73%と大幅に下げている。ニューヨーク証券取引所の様子を見ると、約4対1の割合で、圧倒的に下げ銘柄数が多い。
先ず、簡単にファニーメイ(FNM)とフレディマック(FRE)の説明をしよう。(Hatenaから引用)
ファニーメイ: 米国のGSEの一つ、FNMA(Federal National Mortgage Association)の通称。連邦住宅抵当公庫。1938年に住宅安定供給を目的に設立された特殊銀行。1968年に民営化され、NYSEに上場。民間金融機関から住宅ローン債権を買い上げた上で証券化を行ったり、保証業務によって収益を上げている。フレディマックとは競合関係にある。
フレディマック: 米国のGSEの一つ、FHLMC(Federal Home Loan Mortgage Corporation)の通称。連邦住宅金融抵当公庫。1970年に、フレディマックを補完する純粋な民間金融機関として設立。連邦議会及び政府機関による統制を受けているため、GSEの一種。NYSEに上場。民間金融機関から住宅ローン債権を買い上げた上で証券化を行うことで収益を上げている。ファニーメイとは競合関係にある。
現在、上記二社が抱える住宅ローン債権は5兆ドルにおよび、この金額は全米に存在する住宅ローン債権の約50%に相当する。もし両社、あるは一社が破綻するような事態が発生すれば、スランプの続く米国住宅市場の回復が大幅に遅れるだけでなく、他のセクターにも被害が広がり、米国を深刻な不景気に陥れる危険性がある。
ヘンリー・ポールソン氏(財務長官)は、直ぐに両社を国有化する計画は無い、と述べているが、マーケット関係者の声を聞いてみよう。
ブラッドレー・ボール氏(シティグループのアナリスト): 「ファニーメイ、フレディマックとも明らかに売られ過ぎであり、ここは買い場になる。今朝、フレディマックの経営陣から話を聞いたが、財務状況に大きな変化は無く、予定どおり資金も確保できるようだ。」 シティグループは、2005年11月以来、フレディマックの買いを推薦している。(現在、フレディマックは6ドル38セントで取引され、2005年11月の株価は60ドル台だった。)
ジョン・ナジャリアン氏(OptionMonster Inc ナジャリアン氏は、オプション・トレーダーとしても有名): 「両社の保有する、5兆ドルの住宅ローン債権をダメにするわけにはいかない。とうぜん政府が介入することになるが、その結果、両社の株価はゼロになることだろう。」
下記は、レックス・ナティング氏の、時事解説を要約したものだ。
ブッシュ政権は、二社が破綻する可能性は無いと言う。これは一大事だ。ここまでを振り返ると、大統領が予期していなかったことほど起きやすい、という傾向がある。例を挙げよう。
・予期していなかったベアー・スターンズの破綻。
・予期していなかった信用収縮。
・予期していなかった住宅市場のスランプ。
・予期していなかった、議会の共和党議員数の過半数割れ。
・予期していなかった、テロリストによるニューヨーク世界貿易センターの攻撃。
明らかに、ナティング氏の反ブッシュ姿勢が見えるが、要するにナジャリアン氏と同様に、フレディマックとファニーメイは国有化されるという結論だ。
では、国有化されれば問題は解決するのだろうか?もちろん、現時点では誰にも分からない。デービッド・マーケル氏(証券アナリスト)も指摘しているが、今回の事態は、ベアー・スターンズ(投資銀行)とは規模が全く違う。言い換えれば、連銀には、フレディマックとファニーメイを救う力が無いという事実だ。
(情報源: http://www.usatoday.com/money/economy/housing/2008-07-10-freddie-fannie_N.htm?loc=interstitialskip
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%a5%d5%a5%a1%a5%cb%a1%bc%a5%e1%a5%a4
http://bigpicture.typepad.com/comments/2008/07/uh-oh-bad-sign.html
http://seekingalpha.com/article/84524-don-t-panic-gse-edition?source=wildcard)
株の話、経済の話、何の話だろう?
今年ダウ指数は、14%ほどの伸びになるだろう、と予想していたジェーソン・トレナート氏(ストラテガス・リサーチ・パートナーズ)だったが、プラスマイナス0で終わることができればラッキーだ、と大きく見方を変えた。理由は、高騰する原油だ。
9月から開始された積極的な金利引下げ政策で、米国短期金利は、5.25%から2%まで大きく引き下げられた。これで、低迷する米国経済をジャンプスタートさせることができるはずだったが、上昇の止まらないエネルギー価格のお陰で、まだハッキリとした利下げ効果を見ることができない。
ファースト・アメリカン・ファンドの、デービッド・チャルプニック氏は、こう語っている。
「不景気を心配する人たちは減るどころか、逆に増えているのが現在の状態です。経済に活を入れるため、連銀は徹底した利下げを行ったわけですが、これは穀物や原油を大きく上昇させる原因になってしまいました。ガソリン、トウモロコシ、肉、と多くの物が高くなりましたから、消費者は家計のやりくりに大変です。現に、消費者信頼感指数は、1970年代以来初めて見る低レベルに落ち込んでいます。」
ファンドマネージャーの中には、連銀は金利を引き上げれるべきだ、と主張する人たちもいる。なぜなら、低金利でドル安が進み、原油や他の商品価格を急騰させてしまったためだ。
「前回の会議で、連銀は金利を据え置きましたが、0.25ポイントの利上げを実施するべきでした。そうすることで、連銀はインフレ問題に真剣に取り組んでいる姿を、消費者たちに見せることができました」、とマイケル・ファー氏(ファー・ミラー・アンド・ワシントン)は言う。
それでは、インフレ対策として、どんな物に投資したら良いだろうか?テクニカル分析で知られる、マイケル・カーン氏は、こう書いている。
インフレ対策として、金と銀の投資が一般的に選ばれるが、現在どちらも割高だ。インフレが進むと、国債が売られ利回りが上昇する。そんな状況で値上がりするのが、Rydex Juno Investor fund (RYJUX)、そしてProFunds Rising Rates Opportunity fund(RRPIX)の二つのミューチュアルファンドだ。
ミューチュアルファンドが嫌いな人なら、株と同様に取引できる、The UltraShort Lehman 20+ Year Treasury ProShares ETF(TBT)を利用すると良いだろう。この上場投信は、長期国債の利回りが上昇すると上がる仕組みになっている。(注:この上場投信は、取引が始まってからまだ日が浅く、一日の平均出来高も16万8000株程度だからトレードには向いていない。)
(情報源: http://www.usatoday.com/money/markets/2008-07-02-stocks-outlook_N.htm
http://www.marketwatch.com/news/story/alternatives-putting-your-cash-mattress/story.aspx?guid={A81F9050-1033-4C06-B7F6-31ABEA9D073C})
連休だ。独立記念日と言えば花火、ここ南カリフォルニアでは、ディズニーランドの花火が素晴らしい。しかし、私がよく覚えている花火は、飛行機の窓から見た花火だ。たまたま出張で、独立記念日の夜に飛行機に乗ったのだが、あれは印象的だった。
それでは、視点を変えて、S&P500指数の日足チャートを見てみよう。
今日も3月の高値に挑戦したが、買い手に最後の一押しがなく、結局そこを上回って終了することはできなかった。上昇が続いていただけに、一旦20日移動平均線付近まで利食われる可能性があるが、この高値圏でしばらく横ばいしてブレイクアウトの展開も考えられる。
次は、ナスダック100指数の日足チャートだ。
ギャップゾーン(A)が難関となり、パッとしない引け方となった。目立つ上ヒゲは売り圧力を示し、これもS&P500指数のように、上昇する20日移動平均線がテストされる可能性がある。
もう一つ、原油に連動する、ユナイテッド・ステーツ・オイル(USO)の日足チャートを見てみよう。
見事なダウントレンドだ。そろそろ下げ止まりだろう、と底値拾いを試した人たちは後悔していることだろう。下げ基調の株は、値戻しがある度に売られてしまうことを、明確に示すチャートだ。
ディズニーランドの花火