US Market Recap

現金ポジション増大のミューチュアルファンド、マーケットは天井?

一昔前には考えられないことだったが、銀行でミューチュアルファンドが簡単に買えるようになった。(株は「買う」で構わないが、ファンドにはなぜか「購入」という言葉を使う人が多い。)もちろん低金利の世の中、定期預金だけでは客に逃げられてしまう。一口にファンドと言っても、たくさんの種類がある。銀行側の説明不足で、客との間にトラブルが生じることもあるようだが、預金だけの時代は過ぎ去ってしまった。少しでも良い金利が欲しい、そんな願いが発端となってミューチュアルファンド投資に踏み切るわけだ。

投資のプロ、ファンドマネージャーなら私たちより優れた成果を上げてくれるにちがいない。ファンド会社には豊富な情報、それに優秀なアナリストたちも揃っている。きっと私たちの資金(現金)を、有効に運用してくれるはずだ。そんな思いを込めて、大切な資金をファンドに移すのだが、AP通信の報道によれば、ファンドマネージャーたちは今、株投資ではなく現金保有率を増やしているという。言い方を替えれば、現在の株価に魅力が無いわけだ。

先月7月、メリルリンチの調べによると、一般的なミューチュアルファンドのポートフォリオ内における現金は、全体の4.1%を占める高水準に達している。特に興味深いのは、株と債券両方に投資をする、ミックス型ファンドマネージャーの投資姿勢だ。6月、18%のミックス型ファンドマネージャーたちは「現金優先」と述べていたが、7月、この数字は23%に跳ね上がっている。ほとんどのマネージャーたちは、世界的な景気上向きを予想しているのだが、実際の投資姿勢は控えめだ。

さらにAP通信によれば、小型株専門ファンドも同様に現金ポジションを増やしている。FPAキャピタルという小型株専門ファンドが例にあげられていたが、6月、このファンドが保有する現金の全ポートフォリオを占めた割合は29.8%だった。しかし7月、この比率は40%へと大きく膨れ上がった。チャーリー ボブリンスコイ氏(アリエルファンドマネージャー)を引用すれば、「現在のマーケット状況で、私たちが探し求める条件に当てはまる小型銘柄を見つけるのは、とても困難になっています」、ということだ。

それでは、即刻持ち株を処分するべきだろうか。もちろん、単にファンドの現金保有率が増えていることだけで、株を売ることは間違っている。今日のファンドマネージャーたちは、90年代の超強気な投資スタイルを棄て、正当評価額を中心にした慎重な投資スタイルを受け入れている。強気スタイルなら、マーケット上昇に伴い現金保有率はどんどん減っていく。しかし正当評価額が重要視されると、マーケットの大きな上昇は、現金保有率増加という結果につながる。現金を大量に抱えるミューチュアルファンド、買い資金は豊富に残っているわけだ。

文句なしだった7月、これからが本番だ!?

アメリカでは5月に株を売って、しばらくマーケットから離れることが正しい、と信じる投資家たちが多い。格言に詳しい方なら、Sell in May and go awayを思い出されることだろう。多数のファンドマネージャー、それに機関投資家たちが夏休みでマーケットからいなくなってしまう。だから相場は閑散としてしまうから、無理に投資などしないほうが良い、というわけだ。なんとなく一理有りそうな考え方だが、ここで先月7月のニューヨーク株式市場を振り返ってみよう。

決算報告がなんと言っても7月一番の話題だが、投資者たちは、5つの爆弾レポートに直面した。ゼネラルモータースは3セントの一株収益が見込まれていたのだが、結果はマイナス56セントというショッキングな数字を発表した。さらにシティバンクで知られるシティグループ、半導体関連のマイクロンテクノロジー、大手証券ゴールドマンサックス、そしてフィルムでお馴染みのコダックが次々と予想を下回る結果を報告した。

これだけ大手企業の悪い決算がそろえば、マーケットは下げたと思われるかもしれないが、ダウ指数は7月3.6%の伸びを見せた。一か月間で、これだけの上昇を記録したのは2004年の11月以来初めてだ。好調だったのはダウだけではない。SP500指数も、ほぼダウと同率の3.7%増となり、1997年以来最高の7月となった。注目したいのはナスダックだ。上昇率はダウやS&Pを大きく上回る6.3%の力強さを見せ、2003年12月に次ぐ快挙だ。こんなマーケットの活躍ぶりに、オークブルック社ジャナ サンプソン氏は「本当にビックリさせらる7月でした」、と述べている。

マーケットはこのまま順調に走り続けるのだろうか。度重なる短期金利の引き上げ、60ドル近辺で取り引きされる高価格なクルードオイル、それにロンドン爆破事件などの悪材料を、マーケットは難無く消化してきた。特にロンドンテロ事件直後、売り手たちの必死な空売りにもかかわらず、マーケットは簡単に回復してしまった。悪材料を跳ね返すマーケットは強い。上記のサンプソン氏は、「マーケットは6%から8%の上昇で、2005年を終了するでしょう」との見方だ。

強気論だけでは不公平、と思われる方のために、ニック サンダース氏の警戒論を記しておこう。「買いと売りを比較してみると、今は売りの方が有利だと思う。あまりにも安心しきっている投資者たちが多いが、こんな時に予期せぬ大きな下げが起きやすいものだ。こんなペースで主要株指数が上げ続けるのは無理であり、ここから買っていくための材料も不足している。それに国債市場のブレイクダウンを考慮すれば、ますます株は買いにくい。マーケットは最悪な状況で底を打ち、だれもが自信満々の時に天井を形成するものだ。」

夏相場、もう一つの楽しみ

あなたも次のグーグルをお探しだろうか。3倍近い儲けになったと自慢する人たちも珍しくないだけに、こんな銘柄を掘り当ててみたいものだ。できれば初期段階で買い入れて、順調に上がる株価を毎日楽しみたい。そんな株が簡単に見つかるわけがない、と諦める前にマイケル ブラッシュ氏の話を聞いてみよう。

暑い毎日が続いているが、この夏、第二のグーグルに投資できるチャンスがやってくる、とブラッシュ氏は言う。それもまだ取り引きが始まっていない新規公開株だ。グーグルと同じ業種に属するこの会社は、baiduドットコムと呼ばれ、baiduは百度と書く。ご察しのとおり、中国のサーチエンジン会社だ。2000年にビジネスを開始した百度は、約12ヶ月前に黒字経営となり、2005年第1四半期は550万ドルの利益を記録した。

グーグルをモデルに作られた百度は、ホームページを見て分かるように、ケバケバしさがなく簡素なデザインが特徴だ。広告が百度の収入源になり、利用者がサーチする度に、右端に広告が現れる仕組みになっている。もし利用者が広告をクリックすると、百度に広告主から料金が支払われるわけだ。アイリサーチ社の調べによれば、百度は現在中国で第二番めにヒット数の多いホームページだという。

こう書いてくると、百度の将来性は抜群に思われるかもしれないが、もちろん心配材料もある。まず第一にブラッシュ氏が指摘するのは、サーチエンジンは情報提供がメインになるという事実だ。西側諸国に対して、中国は開放的になったとはいうものの、完全なる言論の自由があるわけではない。そんな環境で、マイクロソフトやヤフーと競い合うことは大きなハードルになりそうだ。さらに、著作権侵害の問題もある。ビデオや音楽をダウンロードできるホームページ探しが、百度利用者の25%を占めているが、これらのホームページで販売されている商品は海賊版が多いという。

どちらにしても、中国のサーチエンジン市場は大きくなって行くことだろう。現在アメリカでインターネットを使用する人口は全人口の67.3%に相当する。しかし中国の場合、たったの7.3%にすぎない。アイリサーチ社の予測によれば、中国のインターネット人口は毎年24%の割合で伸びて行くようだ。baiduドットコム、夏の相場に楽しみが一つ増えた。

女性の給料が男性より低いのは性差別!?

キャリアウーマンという言葉も新鮮味がなくなった。ご存知のように、医師、エンジニア、公認会計士などの専門職についている女性をキャリアウーマンと呼ぶ。ヒラリー クリントン上院議員やコンドリーザ ライス国務長官などの例を見て分かるように、女性たちの政界進出もめざましい。女性の社会的地位が大きく向上し、いまさらアメリカで「男女平等」を叫ぶ人などいないと思われるかもしれないが、今日も性差別を訴える女性たちがいる。

ABCニュースの調べによれば、同じ職種につく男性と女性の労働賃金を比較すると、女性には男性より平均で25%低い賃金が支払われているという。コネチカット州選出の下院議員、ローサ デラウロ氏は「一生懸命働き、たとえどんなに大きな貢献をしても、女性は男性と平等な報酬を得ることは不可能なのです」と語る。また、フェミニスト運動に参加する女性たちも、男性と同レベルの学歴があっても、女性は男性と同等の給料が得られない、と怒りの声を上げている。

ここでABCニュースコメンテーター、ジョン ストッセル氏は面白い質問を投げかける。「女性の給料が男性より25%低いのなら、なぜ企業はわざわざ男性を雇う必要があるのでしょう。」この質問に回答したのは、全米女性協議会長のマーサ バーク氏だ。「企業は男性を雇うことが好きなのです。社員採用の決定権を持つのは、ほとんどの場合男性であり、企業イメージは男性をモデルに作られているのです。こんな実状ですから、当然会社側は男性から昇進させる結果になるわけです。」

バーク氏の見方に反論するのはウォーレン ファーレル氏だ。女性賃金が男性より低いのは「性差別」が原因ではない、と氏は過去15年間のデータをもとに主張する。「賃金の差は性差別によって生まれたものではありません。ある意味では、積極性が問題になっていると言えます。たとえば、一週間の平均労働時間を見ると、男性の方が女性より長く働いているのです。」さらにファーレル氏は、女性は職場の柔軟性を重要視する傾向があり、男性は職場環境よりも給料額に最大の関心があることを指摘している。

給料の良い仕事の多くは柔軟性に欠ける。週40時間労働が基準だが、高給取りの場合50時間、60時間など当たり前になっている。もちろん頻繁な出張もあり、自分のプライベートな時間を作ることは難しい。まさに家庭を犠牲にし、会社第一のビジネスマンの姿だ。性差別が賃金の差になるのではない。問題は、私たちに自分の全時間を企業に捧げることができるかどうかだ。

人民元切り上げは米国不動産に悪影響

不動産がまた経済ニュースのトップを飾っている。アメリカ国内の新築住宅販売件数(6月分)は、年間ペースで137万4千件の新記録を達成し、去年の同時期と比べると14%の上昇となった。相変わらず好調な勢いだが、5月と比較すると、新築住宅の全米中間価格は5.5%減少して21万4800ドルと報告されている。販売件数の堅調な伸びは、不動産ローン金利が5月の5.72%から5.58%に下落したのが最大の原因らしい。

行き過ぎな不動産価格に、警戒論を出すアドバイザーもいるが、はたしてどのくらい真剣に不動産投資者たちは聞いているのだろうか。今朝もこんな数字が発表されている。PMI社が全米50市を対象に調べたところ、向こう2年間で住宅価格が、50%以上の確率で下落しそうな市の数が2から6に増加した。もっとも危険性の高いのは、マサチューセッツ州ボストン市(55.3%)、ニューヨーク州ナソー市(54.0%)、そしてカリフォルニア州サンディエゴ市(52.8%)だ。

さて、先日の人民元切り上げニュースを覚えている方は多いと思うが、このニュースはアメリカ不動産にマイナスになる、とビル フレッケンスタイン氏(フレッケンスタインキャピタル社長)は言う。人民元切り上げの結果、中国そして他のアジア諸国はドル買い米国債買いに消極的になり、これは単にドル安を起こすだけでなく、米国不動産マーケットに悪影響を与えることになる、というのだが、もう少しフレッケン氏の話を聞いてみよう。

「どの程度ドルと米国債が売られるかの予想は現時点では難しいが、導入されるバスケット制度が問題になる。バスケットの中身はドル、ユーロ、円などの通貨が中心になり、事情に詳しい人たちの話を総合すると、バスケット内を占める通貨比率はドルが50%、そしてユーロと円がそれぞれ15%くらいになりそうだ。人民元切り上げという事実が起きてしまったいじょう、ドルに対して強気という姿勢をとることはできない。多額なアメリカ貿易赤字はドル買いによって穴埋めをするわけだが、バスケット制度導入で、アジア諸国が積極的にドルを買うことはないだろう。

ドルが下がれば、国債だけに限らず、不動産などのアメリカ国内投資の魅力がなくなる。それに金利上昇が続いている現状を考えれば、不動産市場への悪影響も時間の問題だ。繰り返すことになるが、まだはっきりしたバスケット制度が分からない現在、どんな速度でドル安が進むかを予測するのは不可能だ。」こんなフレッケン氏の意見だが、「ドルがダメなら金(ゴールド)だ!」、そんな声も聞こえてくる。

環境を破壊するシーツの取り替え

夏休みをアメリカで、そんな計画のある人たちも多いことだろう。西海岸ならハリウッド、ディズニーランド、シーワールド、野球ファンには大リーグ、と見物場所はたくさんある。時差ボケに悩む方もいるかもしれないが、無事に楽しい一日を終えホテルの部屋に戻る。暑いシャワーを浴びパジャマに着替える。明日もスケジュールがつまっている。電気を消してベッドにもぐりこむわけだが、このホテルにまつわる話をUSAトゥデイから紹介しよう。

毎年100日近い時間を、ホテルで過ごすバーバラ ヒューバーマンさんは憤慨している。「とんでもない話です。一晩200ドル以上も払っているのですから、毎日シーツを取り替えてくれるのは当たり前のことです。」シーツはもちろんベッドのシーツのことだが、最近アメリカでは毎日シーツを替えてくれるホテルが減っている。たとえ自分だけしか寝ていないと分かっていても、客の立場なら洗濯された清潔なシーツで毎晩寝たいのではないだろうか。

ホテル側は、ヒューバーマンさんのような客はごく少数だと言う。ほとんどの宿泊者はシーツの取り替えに関してさほど気にすることはなく、毎日の取り替えが希望なら、あらかじめフロントに頼んでおけばよいことらしい。しかしヒューバーマンさんは、そのような回答では満足しない。「忙しい時は、シーツのことなど忘れてしまいます。実際にあったことですが、夜遅く部屋に戻って、シーツが取り替えられていないことに気がつきました。さっそくフロントに電話しましたが、時間帯が悪いという理由で断られました。」

25のホテルを対象にUSAトゥデイが調べたところ、11は毎日シーツを取り替え、9は週に数回、5は各地域のホテルによって頻繁度は異なると回答している。客からの要望があれば、毎日無料で替えるというのは全てのホテルに共通だ。どちらにしても、毎日きれいなシーツの時代は終わろうとしている。ハイアットホテル副社長、ギャリー ドーレンズさんは「宿泊者にとって、毎日のシーツ取り替えは重要な問題でないことは明確です。取り替え頻繁度の減少は、ホテル業界にとって当然のことになるでしょう」と述べている。

コスト削減が毎日シーツを替えない大きな理由だが、ホテル側にはもう一つの言い訳がある。実は思わぬ団体から、シーツ取り替え頻繁度を減らすことに大賛成を得た。グリーンピースという、環境保護運動に懸命なグループをご存知だろうか。このグループが毎日のシーツ取り替えに反対していたのだが、その理由はこうだ。毎日シーツを替えることは、毎日シーツを洗うことにつながる。洗濯には水という大切な資源が浪費される。おまけに洗濯によって排水される水は環境汚染の原因になる。なるほど、汚いシーツは環境保護に大きな手助けになるわけか。

アメリカ不動産手数料は高すぎる!?

値上がりの激しいフロリダでは、不動産のデイトレードをした人たちがいるそうだ。まさに不動産バブルと言うしかない。今朝発表された6月分の全米中古住宅販売件数は、アナリストの予想(年間ペース715万件)を超える733万件だった。中古住宅の中間価格は21万9000ドルにおよび、これは去年同時期を14.7%上回る1980年以来最高の伸びとなった。リアルターズ社チーフエコノミスト、デービッド レリア氏は「そろそろ販売件数も頭打ちになると思っていたのですが、今日の結果に、また驚かされています」と述べている。

不動産バブル懸念は、連邦準備理事会議長、アラン グリーンスパン氏の証言にも見ることができる。「不動産ブームで住宅価格の上昇が続いているが、特に一定の地域では、もはやこのような値上がり率を維持することは不可能な状態になっている。」さて最近一年間で値上がりが極端なのはフロリダ州ブラデントン市(+45.6%)、フロリダ州サラサト市(+36%)、フロリダ州ウエストパームビーチ市(+35.9%)、そしてフロリダ州フォートローダーデール市(+31.8%)だ。(下手な株よりいいな、、、)

大人気の不動産だが、ニュースコメンテーター、バンビ フランシスコ氏は少し違った角度から不動産市場を見ている。「今日の不動産価格は、あまりにも大きく正当評価額から離れすぎだろうか?そろそろ不動産バブルは弾けるのだろうか?そんな話題で一日中討論することもできますが、はっきり言えることは高すぎる不動産手数料です。」フランシスコ氏の話をもっと聞いてみよう。

不動産の売買には5%から6%の手数料がかかる。インターネットの発達で、様々な業種の手数料が下がっているにもかかわらず、不動産手数料はまったく変わっていない。たとえば航空券だが、プライスラインドットコムやエクスペディアなどを通してオンラインで買えば、航空券にかかる手数料は5ドルから7ドルの間だ。以前は旅行代理店に一枚50ドルの手数料を払っていたのだから、インターネットのおかげで航空券が安くなった。

シカゴ大学のエコノミスト、スティーブン レビット氏は、今日の不動産ブローカーは以前インターネット株を煽った証券会社のようだと言う。2000年、ほとんどジャンク(がらくた、ゴミ)同然と知りながら、証券アナリストたちは希望に溢れたインターネット株の推奨レポートを作り上げた。レビット氏の言葉を借りれば、不動産ブローカーの持つ豊富な情報は客のために使われるのではなく、客たちに無言の圧力を与えるために利用されているようだ。

航空券だけに限らず、オンライン証券の普及で株式売買手数料も大幅に下がった。証券マンに頼まなくても、インターネットのおかげで株の情報入手が簡単になった。不動産だけが、いつまでも昔のままであっていいはずがない。それでは、不動産手数料はどれくらいが妥当だろう。一時間50ドルがレビット氏の回答だが、これは50万ドルの物件を売ると2千ドル相当になり、現行の2万5千ドルとは大きな違いだ。

アナリストに逆らう銘柄を探せ!

思わずアクビが出てしまうような退屈な株を買え、と言うのはセス ジェーソン氏だ。人気株は新製品、高収益、アナリストによる格上げなどの大衆を魅了する話題に溢れているから買い手に不自由するようなことはない。買いが買いを呼び、株価はトントン拍子に上がって行く。押せ押せムードがピークに達すると、大きく正当評価額を上回った株に、アナリストから格下げの一声が発せられる。一転して人気銘柄は売り物一色となり、株価は非情な下げを展開する。だから退屈な株を買え、というのがジェーソン氏の言い分だ。

たしかに人気銘柄は、私たちが発見する頃には割高になっていることが多く、ジェーソン氏の言うように差し迫る格下げの危険性がある。できることなら、大衆が動く前に安く買って高く売りたい。どうやったら、現在割安で値上がりの見込める株を見つけることができるのだろう。割安株だけを狙った投資方法はvalue investing(価値投資)と呼ばれるが、その方法をハリー ドマッシュ氏から説明しもらおう。

割安銘柄のほとんどは株価がパッとしない。話題性に乏しいしから、ジェーソン氏が言う「退屈な株」ということになる。アナリストの「売り推奨」がパッとしない株価原因になっていることが多いから、割安株を見つけるには、まず「売り推奨」の出ている銘柄を探すことから始める。ついでに調べてほしいのが空売り残だ。と言っても、単に買い戻されずに残っている株数がどのくらいあるかを知るだけでは意味がない。一日の平均出来高を参考にして、空売りされた株数を全部買い戻すために必要な日数を計算してみよう。銘柄によっては2週間以上の時間を要するほどまでに売り叩かれていることがあるが、基準になるのは6日以上だ。

株価も重要な要素だ。ミューチュアルファンドや機関投資家がマーケットの主役だが、彼らは5ドル以下の低位株に手を出すことはめったにない。ファンドによっては10ドル以上の株だけを対象にするから、原則として一ケタの株は避けよう。また、機関投資家たちが保有する株数を、発行済み株数と比較することも大切だ。機関投資家の助け抜きで、大きな株価上昇は期待できない。明確な基準はないが、発行済み株数の50%以上が機関投資家たちに保有されていることが好ましい。

次の条件に首をかしげる方もいると思うが、株価チャート(日足)は上向き(アップトレンド)なものを選ぼう。大量な空売り残を抱え、おまけに売り推奨も出ている株が上向きのはずがないと反論されそうだが、最後にいくつか上記条件を全て揃えた銘柄を記しておこう。UAP Holding(UAP)、Tupperware(TUP)、VistaCare(VSTA)、Moody’s(MCO)、Advent Software(ADVS)。

感情を殺せば株で儲けることができるのか?

つい欲に目がくらんでしまい、という形で話が始まれば、失敗談と思ってまず間違いない。ウォールストリートという映画の中で、ゴードン ゲッコーは「欲は良いものだ」と言ったが、一般的には欲張った株投資を警告する声が多い。よく耳にする言葉に、「株価を支配するのは欲と恐怖だ」、というものがある。今朝の話題から好例をあげるとすれば、グーグル(GOOG)が最適だろう。

決算発表後、グーグル最高経営責任者のエリック シュミット氏は、「第3四半期は、投資者の方々が期待しているような高い結果を出すのは難しい」と語った。こんな事を聞かされては、恐怖におびえるまでは行かなくとも、不安になって株を投げてしまう。しかし、プルーデンシャル証券からの話を信じるなら、投資者の態度は正反対になる。プルーデンシャルは「今朝の下げは良い買いチャンス」と述べただけでなく、グーグルの目標株価を400ドルに引き上げた。欲に走って買いを入れた投資者もいることだろう。

お分かりのように、投資者に欲や恐怖を与える大きな原因の一つは、テレビやインターネットを通じて入ってくるニュースだ。自分の持ち株が人気アナリストによって格下げ。こんなニュースなら動揺のあまり、寄り付き早々に株を投げ売ってしまうことだろう。完全に感情だけに支配され、肝心な論理的思考を失ってしまった結果だ。それでは、感情を抑えることができれば、株で儲けることができるのだろうか。こんな面白い報告がある。

普通の知能指数と論理的思考能力は有るが、感情をつかさどる脳の部分に支障のある大人を使って、投資テストが行われた。この実験はカーネギーメロン大学、スタンフォード大学、そしてアイオア大学からの研究者たちによって実施された。15人が実験対象になったわけだが、これら15人に共通していることは恐怖や不安といった基本的な感情が、脳障害のために抑制されてしまっていることだ。

テスト結果は、脳障害を持つ人たちの方が、一般の人たちよりも投資テストの成績が良かった。恐怖や不安を感じることがない脳障害者たちは、危険度の高い投資に対してまったく躊躇することがなく、ギャンブル的と思える投資もスンナリとすることができた。その一方、普通の大人たちは各投資場面で衝動的になり、最終的な口座残高は脳障害者に劣るものとなった。やはり感情をコントロールすることは、成功する投資者になるために欠かせない要素のようだ。

たえず次のプレイを狙うトレーダーたち

イーベイ(eBay)の好決算、人民元の通貨バスケット制導入、ロンドン地下鉄爆弾事件、大きなヘッドラインを完全に消化することなくマーケットはスタートを切った。あらゆるニュースを売買材料にしようと忙しいトレーダーたちだが、分かりやすいのは卑劣な爆弾事件だ。こんな時は警備関連銘柄が注目される。はたしてどうなったのか。

一口に警備関連といっても代表的な銘柄だけで12以上あるが、人気のあるのはアーモア(AH)というフロリダに本社を置く会社だ。警官用の防弾チョッキや防弾プレート、それに指紋を使った身分証明システムなどの多種にわたる製品を開発、そして販売している。

5分足チャートを見てみよう。

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寄り付きは、わずかに高かった程度で、アーモアは簡単に売り崩されてしまった。まだ憶えておられる方も多いと思うが、二週間前に起きた爆破事件の時は、マーケットは弱い開始だったが、最終的には反発ラリーを展開して高値引けとなった。そんな記憶が、アーモアを不振にさせたのだろう。

しかし見込みのないものなら、なぜアーモアにAのところで買いが入ったのだろう。割安感が発生したからだ、といったつまらない回答をすることもできるが、それは下のチャートで説明できる。

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上は60分足だが、Aは7月15日の安値と今日の高値で計算すると、ちょうど半値戻しのレベルだったわけだ。トレーダーたちはいつも次の買い場、売り場を探し求めている。一つだけのタイムフレームに縛られるのではなく、時折り60分足や120分足なども見てみよう。

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