一昔前には考えられないことだったが、銀行でミューチュアルファンドが簡単に買えるようになった。(株は「買う」で構わないが、ファンドにはなぜか「購入」という言葉を使う人が多い。)もちろん低金利の世の中、定期預金だけでは客に逃げられてしまう。一口にファンドと言っても、たくさんの種類がある。銀行側の説明不足で、客との間にトラブルが生じることもあるようだが、預金だけの時代は過ぎ去ってしまった。少しでも良い金利が欲しい、そんな願いが発端となってミューチュアルファンド投資に踏み切るわけだ。
投資のプロ、ファンドマネージャーなら私たちより優れた成果を上げてくれるにちがいない。ファンド会社には豊富な情報、それに優秀なアナリストたちも揃っている。きっと私たちの資金(現金)を、有効に運用してくれるはずだ。そんな思いを込めて、大切な資金をファンドに移すのだが、AP通信の報道によれば、ファンドマネージャーたちは今、株投資ではなく現金保有率を増やしているという。言い方を替えれば、現在の株価に魅力が無いわけだ。
先月7月、メリルリンチの調べによると、一般的なミューチュアルファンドのポートフォリオ内における現金は、全体の4.1%を占める高水準に達している。特に興味深いのは、株と債券両方に投資をする、ミックス型ファンドマネージャーの投資姿勢だ。6月、18%のミックス型ファンドマネージャーたちは「現金優先」と述べていたが、7月、この数字は23%に跳ね上がっている。ほとんどのマネージャーたちは、世界的な景気上向きを予想しているのだが、実際の投資姿勢は控えめだ。
さらにAP通信によれば、小型株専門ファンドも同様に現金ポジションを増やしている。FPAキャピタルという小型株専門ファンドが例にあげられていたが、6月、このファンドが保有する現金の全ポートフォリオを占めた割合は29.8%だった。しかし7月、この比率は40%へと大きく膨れ上がった。チャーリー ボブリンスコイ氏(アリエルファンドマネージャー)を引用すれば、「現在のマーケット状況で、私たちが探し求める条件に当てはまる小型銘柄を見つけるのは、とても困難になっています」、ということだ。
それでは、即刻持ち株を処分するべきだろうか。もちろん、単にファンドの現金保有率が増えていることだけで、株を売ることは間違っている。今日のファンドマネージャーたちは、90年代の超強気な投資スタイルを棄て、正当評価額を中心にした慎重な投資スタイルを受け入れている。強気スタイルなら、マーケット上昇に伴い現金保有率はどんどん減っていく。しかし正当評価額が重要視されると、マーケットの大きな上昇は、現金保有率増加という結果につながる。現金を大量に抱えるミューチュアルファンド、買い資金は豊富に残っているわけだ。