US Market Recap

強かったセクター、嫌われたセクター

夏休み最後の連休が終わり、明日から本格的な秋の相場が始まる。今日もハリケーン・カトリーナの被害が中心に報道されているが、簡単に先週のマーケットの様子を復習してみよう。

買われたセクター

1、ユティリティ(電気ガス)指数
2、日本指数
3、ヘルスケア指数
4、オイル指数
5、エネルギー指数

売られたセクター

1、ケミカル(化学)指数
2、航空会社指数
3、保険指数
4、銀行指数
5、ディスクドライブ指数

今週注目される経済指数

9月6日

ISMサービス業指数

ハリケーンで注目を浴びるカナダ

ハリケーン・カトリーナと言うと、直ぐに高騰するガソリンに話が行ってしまうが、意外に話題にならないのが被害を受けたルイジアナの港だ。この規模はニューヨークやロサンゼルスの港を上回り、全米ナンバー1の貿易港というタイトルを持っている。全世界を見渡すと、ルイジアナは香港、上海、ロッテルダム、そしてシンガポールに次いで大きな貿易港だ。

約15%の米国輸出品は南ルイジアナ港を通るわけだが、中西部で生産されるトウモロコシ、大豆、麦などの農産物のほとんどはルイジアナ港に集まる。いつ正常に港が操業できるか分からないが、こんな状況がいくつかの投資チャンスを生み出した。

全米一の港に起きた災難で恩恵を受けるのはどこか。ここで俄然と注目を浴びたのがカナダだ。オイル、材木の輸出で知られるカナダだが、先ず下の日足チャートを見てほしい。

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カナダ・インデックスファンド(EWC)と呼ばれる、カナダの株に投資をするファンドだ。普通のミューチュアルファンドと違い、EWCはアメリカン証券取引所に上場されているから、株と同様に売買することができる。

約1週間ほど横ばいしていたが、刻一刻と報道されるハリケーン被害のjニュースが、EWCをブレイクアウトさせたようだ。貿易国カナダとしての魅力もあるが、やはり何と言ってもオイルが一番の買い材料になっている。アメリカはサウジアラビアから最もオイルを輸入していると思っている人が多いが、実際はカナダがナンバー1だ。地理的に見てもカナダは隣国、中東のような政治不安も無い。今回のハリケーンで、カナダからのオイル輸入は更に増えることだろう。

もう一つ覚えておきたいのは、大豆製造加工業のジャイアント、Bunge社だ。広報担当のデブ・サイデル氏の話によれば、Bunge社のルイジアナにある大豆処理工場が受けた被害は最小限だが、停電のため操業できない状態だという。しかし、問題は肝心な労働者たちが、いつ工場に戻ってくるのかが全く分からないことだ。秋の収穫も近い。港周辺の回復が大幅に遅れるようなら、大豆だけでなく農産物の値段が大きく上がることだろう。オイル高、ガソリン高、次は食料品、嫌な秋になりそうだ。

連休のアメリカ、しかし半数は職場へ向かう

アメリカの失業率が4.9%に下がった。ここ4年間で最低の水準と報道されていたが、そんなことを聞くと、アメリカ経済は絶好調のように思えてしまう。そこで、もう少し詳しく4.9%の内容を見てみよう。先ず性別の失業率だが、男性は4.3%、女性は4.4%だ。人種別なら、白人は4.2%、黒人9.6%、そしてヒスパニック系は5.8%になる。最悪なのは10代の若者たちだ。なんと16.5%を記録している。

今回発表された失業率には、まだハリケーン・カトリーナの影響が含まれていない。エコノミストやアナリストに言われなくとも、報道される映像を見れば、多数の人たちが職を失ったことが分かる。あそこまで建物が破壊されてしまったのだから、一週間や二週間で職場に復帰するのは無理だ。ジョージア州立大学のラジーブ・ダーワン氏は、「ニューオーリンズは前例のない経済的ダメージを受けました。人々が実際に仕事に戻るまでには少なくとも三ヶ月、長ければ9ヶ月以上の時間がかかることでしょう」、と述べている。

グローバルインサイト社、フィル・ホプキンス氏によれば、ハリケーン前のニューオーリンズ地域失業率は4.9%だったが、この数字が25%に跳ね上がっても全く不思議でないと言う。被害のあった三州、ルイジアナ、ミシシッピ、そしてアラバマを総合すると、約100万人の失業者が予測されている。

ハリケーンが直撃した州の経済的大惨事は明瞭だが、アメリカ全体の経済に、どの程度の影響を及ぼすのだろうか。第3四半期のGDP(国内総生産)は+3.9%から+3.6%に減る、というアナリストの見方が一般的だが、金利動向になると簡単に意見が一致しない。マーケットストラテジストのリズ・アン・ソンダース氏は、「9月20日の会議でまた金利が引き上げられることは、だれもが予測していたのですが、このハリケーンで金利据え置きの可能性が出てきました」、と語る。

さて、9月5日(月)はレイバー・デー(労働者の日)でアメリカは連休になるが、最後にCNNからのニュースを紹介しよう。1100人を対象に調べたところ、42%はレイバー・デーを返上して働くという。約半分の人たちが職場へ向かうわけだが、なぜわざわざ祭日に仕事をするのだろうか。答えは、上司に言われたからではない。少しでも昇進昇格を早めたい、というのが理由だ。

眠る巨大睡眠薬マーケット

8時間は要らない。せめて6時間、いや5時間でもいいから毎晩ぐっすりと寝てみたい。バロンズ誌によれば、アメリカには6千万人の不眠症に悩む人たちがいる。およそ三分の一が医師に診てもらっているが、実際に処方せんが出ているのは、そのうちの半分だ。

「不眠症治療の処方薬マーケットには大きな可能性があります。正に眠れる巨人です」、と経済記者のヨアンナ・ベネット氏は言う。ベビーブーム世代の人たちが、次々と不眠症に苦しむ年齢に達し、処方薬の需要は2010年までに倍以上になる可能性が高い。証券アナリストのディーパック・カンナ氏も、「現在20億ドルほどの不眠症処方薬マーケットですが、向こう3、4年間で40億ドルに届くと思われます。安全そして効果的な新薬が開発されるなら、その製薬会社は大きく成長することでしょう」、と述べている。

不眠症患者には睡眠薬が処方せんとして出されるが、睡眠薬の問題はカンナ氏が指摘するように安全性だ。常用性の強い睡眠薬は規制薬物の一つに分類され、多数の医師もこれを患者に与えることを好まない。現在アメリカで最も使用されている睡眠薬は、サノフィ・アベンティス社のアンビエンだ。1993年から販売が開始されたアンビエンは、従来の薬より副作用が少ない。IMSヘルス社の話によれば、2004年、アンビエンの売上は19億ドルを記録し、これは米国睡眠薬マーケットの9割を占めている。

しかし、「来年アンビエンの特許が時間切れになります。ノーブランドの安い薬品に門戸が開かれるのです」、とベネット氏は強調する。さらにアナリスト、トリシア・ベーリー氏の言葉を付け加えよう。「アンビエンが特に優れた薬だったわけではありません。ただ他社が無視していた患者のニーズに応えただけです。」次のアンビエンを目指して、多くの製薬会社がこのマーケットに参加してくるわけだが、どの会社が有望なのだろうか。ベネット氏の意見を聞いてみよう。

「二社あります。まず武田薬品のロゼレムです。先月米国FDAから許可が下りましたが、不眠症治療薬として初めて規制薬物に属さない薬品です。もうひとつは、セプラコア社(SEPR)のルネスタです。データの不足が原因ですが、米食品医薬品局(FDA)はアンビエンの使用期間を10日間までに限定しました。しかし、ルネスタには6ヶ月間という長期服用が認められたのです。」

武田が勝つか、それともセプラコアか。もちろん、大手メルクやファイザーも黙っているはずがない。安全で常用性の無い睡眠薬、そんな薬を浅い眠りの中で、不眠症患者たちは夢みていることだろう。

不景気に陥る可能性は20%

堤防が崩れ、ニューオーリンズ市は大洪水となってしまった。まるで沈んで行く船のようだが、州知事は全住民に対して、ニューオーリンズからの立ち退きを命じた。人口48万におよぶ市民の80%は、既に週末、市を去ったが、まだスーパードームなどの200カ所に6万人以上が避難している。特に2万人を保護するスーパードームでは停電に続いて水洗トイレが故障し、人々の不満が高まっている。

一般的にハリケーンなどの自然現象が引き起こす被害は短期的なものだが、今回のカトリーナは例外のようだ。既にメキシコ湾にある92%のオイル掘削がストップし、いつ正常な操業を開始できるかの見通しがついていない。シェブロン社の話によれば、海底石油掘削装置のダメージを把握するだけでも今週末までかかってしまうらしい。

もちろん、ストップしたのは石油掘削だけではない。10%の製油所も停止してしまった。1ガロン(3.785リットル)2ドル62セントが、先週までの全米平均ガソリン価格だったが、次々と3ドルを突破するガソリンスタンドが現れている。オイル価格情報サービスのベン・ブロックウェル氏は、「ほぼ間違いなく、ガソリンは4ドルに達することでしょう」、と述べている。

1ガロン3ドル50セント以上は、米国経済不景気への引き金になる、との見方があるが、ナリマン・ベラベッシュ(グローバル・インサイト社チーフエコノミスト)の話を聞いてみよう。「最悪のシナリオを想定した場合ですが、ガソリンは1ガロン当たり3ドル50セントほどの状態が、向こう4カ月から6カ月間続くと思われます。そうなると、第4四半期GDP(国内総生産)の伸び率は±0%です。不景気に陥る可能性は20%程です。」

どちらにしても夏休み最後の連休を週末に控え、年間を通してガソリン消費量が大きく増える時期だ。米政府は今朝、備蓄石油の貸し出しを発表したが、これが週末までに間に合うわけがない。一時的にオイル価格上昇を止める効果はあるかもしれないが、今のアメリカには肝心な製油能力が欠けている。そろそろ秋、暖房用の灯油も必要になってくる。エネルギー節約が叫ばれているが、それよりも皆で暖冬を祈った方が良いかもしれない。

今も生きる相場師リバモアの知恵

ザ・ボーイ・プランジャーの異名で恐れられた相場師、ジェシー・リバモア。1929年、空売りで1億ドルの利益を上げた話は有名だ。自宅からオンライントレードが当たり前になった今日この頃だが、現代にも通用するリバモアの言葉を紹介しよう。

1、株投機は世界で最も魅力的なゲームだ。しかし怠惰な人、感情をコントロールできない人、それに手っ取り早く儲けようなどと思っている人は、絶対に利益を上げることはできない。

2、マーケットとあなたの考えが一致するまで売買を実行してはいけない。マーケットが動いてからでは遅すぎる、と思うかもしれないが、それはあなたの考えが正しかったことの証明になる。言い換えれば、投機には忍耐が必要だ。

3、現在の持ち株に損が出ているなら、買い増しをしてはいけない。それは単に損害を大きくするだけだ。

4、レジスタンスのほとんど無い銘柄を選べ。なんと言っても、トレンドは最大の味方だ。

5、賢い投機家は、決してマーケットに逆らうことはない。マーケットは常に正しく、間違っているのは私たちの相場観だ。

6、値動きにはパターンがあり、それは何度も繰り返される。マーケットは人間が作るものであり、時代が変わっても、人間心理が変わることはない。

7、思惑が外れたら直ぐ手仕舞うことだ。損の穴埋めには、二倍の労力がかかる。

最後に金融ジャーナリスト、ジム・ワイコフ氏を引用しよう。「リバモアの成功は内部情報のおかげだ、と言う人たちがいますが、それは全く見当違いです。リバモアは人間心理を読むことを知っていたのです。株価は常に動きますが、それに反応する人間は、いつも同様な行動を示します。リバモアの全盛期から100年近い年月が経ちましたが、今日も相変わらず大衆は同じ間違いを繰り返しているのです。」

注意を払いたい株価と指標の不一致

史上最悪の被害になるのでは、そんなニュースが主流だったが、嬉しいことにハリケーンカトリーナは既に勢力をカテゴリー2まで落としている。株なら人気アナリストの格下げで、とどめを刺すことができるのだが、相手がハリケーンではそうも行かない。避難された方々の無事を祈りたい。

マーケットが始まる30分ほど前に、投資アドバイザーのギャリー・カルトバウム氏がこんな事を言った。「毎朝マーケットのテクニカルレポートや、大手証券アナリストのコメントに目を通すのですが、どれを読んでも同じことが書かれています。皆、口を揃えて弱気なのです。これが何を意味するか一々説明する必要は無いと思いますが、このように意見があまりに片寄っている時は注意です。」

終了まで約2時間残っているが、ここまでの動きをダウ指数の10分足チャートで見てみよう。

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オイル瞬時70ドル突破、ハリケーンの被害は300億ドルに達しそう、こんなニュースを受けて、マーケットは売り手優勢のスタートを切った。ここで注目してほしいのは、ダウ指数の安値とストキャスティクの関係だ。寄付でつけた安値2は、先週金曜の安値1よりも低い。1の安値でストキャスティクはAの位置にあり、今朝の安値2ではBの位置だ。

AとBを注意して見ると分かるのだが、ダウ指数は下げたにもかかわらず、ストキャスティクは逆に上がっている。指数は安値を2で記録したのだから、普通ならストキャスティクもBはAよりも低くならなければならない。正にダウ指数と、ストキャスティクの動きが不一致になったわけだ。デイバージェンスと呼ばれる現象だが、これは反転のキッカケになることが多い。

ニュースばかりに気を取られると感情的になってしまうが、株価と指標を組み合わせて、冷静に売買することが大切だ。ストキャスティクだけに限らず、指標にはMACDやRSIなどもある。値動きを追うだけでは騙されやすいから、何か一つ指標を使ってみるのも一案だろう。

ファンダメンタル分析だけでは勝てない!

銀行家のようになるな。そう語るのは、ユニークな株投資入門書で人気のデービッド・ガードナー氏だ。正確な情報とデータを基に、利益を着実に上げる銀行家だが、あまりにも安全を重視するため、まず大きく儲けることはない。リスクを最小限におさえようとするから、どうしても保守的な投資姿勢になってしまうわけだ。

ウィリアム・オニール氏の名前を聞かれた方もいると思うが、氏の考案したCANSLIMは銀行家の冷静さに、計算された冒険を加えた、個人投資家に向いた優れた長期株投資方法だ。このCANSLIMの成績を見てみると、1998年1月から、2005年6月末までに859%の利益を上げている。

CANSLIMの一字一字は、特定の投資アイディアを表す頭文字だ。Cは現在の四半期収益を示す。ポイントは、今期収益が前年度同時期を、少なくとも18%から25%以上上回っていなければならない。オニール氏によれば、大上昇を展開する株は、コンスタントに30%から40%の伸びを記録しているとのことだ。

Aは年間全体を通しての一株収益を表す。第1四半期は良かったが、第2と第3はダメ、そして第4四半期はブレークイーブン。こんな会社には投資してはいけない。過去三年間のデータを調べて、毎年25%以上の収益成長がある会社を選ぶことだ。

Nは新製品や新技術を示す。例を挙げれば、アップルのiPod、古い例ならマイクロソフトのウィンドウズだ。たとえ小さな会社でも、画期的な製品が大企業の生存を脅かすこともある。常にニュースをチェックして、最先端技術には敏感であってほしい。新製品や新技術以外にも、経営陣一掃といったニュースにも注意を払いたい。

Sは株の需給状態、Lはトップか、それとも遅れ組かといった企業の業界内での位置、Iは機関投資家の参入状況を表す。最後のMは、現在のマーケット方向だ。どんなに素晴らしい銘柄を発見しても、マーケット全体が下げ基調なら買ってはいけない。もちろん弱い相場でも上がるものは上がるが、問題は上昇に力を欠くことだ。先ず材料を集める。そしてチャートで方向を確認してから出動しよう。

 

 

ドルの運命を握る不動産とオイル

今週のトップニュースは何ですか、そんな質問をCNNのレポーターが街を行く人々に尋ねた結果、半分以上の回答は、上昇の続くオイルだったという。さきほど連邦準備理事会議長、グリーンスパン氏のコメントが放映されたが、氏が最も心配している物の一つは不動産バブルのようだ。このオイルと不動産がドルの運命を握る、と語るのはフォーレックスキャピタル社でチーフストラテジストを務める、キャッシー・リーン女史だ。さっそく話を聞いてみよう。

「今年は米ドルが好調です。1月からドルはユーロに対して12%、日本円に対して5%、そして英国ポンドに対しては7%の上げです。短期金利の上昇、好転する製造業、そして堅調な雇用状況がドル高の主な原因です。しかし7月からの様子を見ると、ドルはピークに達したようです。

まったく衰えが見えないオイルですが、66ドルを記録した今、値段は40ドルまで下げそうだ、といった見方よりも80ドルに行く、といった見方の方が現実的です。また、人気の不動産市場には天井の兆しが見え始めています。強い個人消費は、好調な不動産が支えてきたわけですから、不動産の冷え込みは米国経済の減速につながります。言い換えれば、オイルと不動産が金利政策の鍵になります。

オイル価格が10ドル上がると、それはGDP(国内総生産)を0.4%減少させます。何だ、たったの0.4%か、そう言われる方もいると思いますが、大切なことはある条件を加えて考える必要があります。まだ8月、暑い日々が続いていますが、秋が来れば暖房のスイッチが押されます。ヒーター用の燃料は天然ガスが主流ですが、これもオイルと同様に値上がりが続いています。ですから、年末には個人消費が冷え込みそうです。

間違いなく、不動産バブルは弾けることでしょう。毎日のようにテレビでは不動産が話題になり、不動産の短期投資セミナーなども流行っています。天井です。通常不動産は米国経済の5%ほどですが、現在は何と50%に達しています。アリゾナ不動産47%上昇、サンフランシスコ住宅中間価格は72万ドル、そんなことばかりに気を取られますが、売りに出ている物件が大きく増え、需給関係が崩れ始めています。たとえばバージニア州では売り物件が26%の上昇、そしてマサチューセッツでは31%の上昇です。」

もしリーン女史の言うような展開になれば、たしかに米国経済は下向きになり、ドル安が訪れることだろう。最後に、歴史的な事実を加えておこう。2006年1月31日で、グリーンスパン氏は引退する。1970年以来、連邦準備理事議長就任の一年めは、経済的に厳しい年になる。1970年、バーンズ議長はベアマーケット、1979年ボルカー議長は二桁インフレ、そしてグリーンスパン氏は1987年、株式市場暴落を経験した。波乱な年がやって来そうだ。

ハワイ州政府の決断、需給関係を無視した愚策?

保育園の前に駐車していたバンから、約75ドル相当のガソリンが盗まれる。配達用に使っていた車3台から、約80ガロン(303リットル)のガソリンが盗まれる。地下タンクからガソリンをサイフォンで吸い取っていた男二人が、現行犯で逮捕される。どれも最近USAトゥデイで報道されたガソリン泥棒記事だが、値上がりの続くガソリンが原因になったことは言うまでもない。

日本ではあまり考えられないことだが、アメリカの車はガソリンが盗みやすい。日本の車なら、ガソリンの入れ口を覆ってある蓋は車内のレバーを使って開ける。しかし多くのアメリカ製の車は、簡単に外から開けることが可能だけでなく、ガスキャップにも鍵が無いから、サイフォンで楽々ガソリンを吸い取ることができる。こんな状況だから、USAトゥデイによれば、鍵付きガスキャップの売れ行きが好調だという。

全米最大の自動車部品店オートゾーンでは、先週1万個以上の鍵付きガスキャップが売れた。広報を担当するレイ・ポールマン氏は、「普通の週を60%以上超える売上です」、と述べている。他の大手自動車部品店、ペップボーイズ、それにアドバンスオートパーツでも、鍵付きガスキャップの販売数が上がっている。

生活必需品のガソリンだけに、消費者にとってこれ以上の値上がりは家計に響く。こんな状況を反映して、ハワイ州は卸売ガソリン価格に上限を設定した。現在ハワイにはシェブロンとテソロのオイル会社があるが、これら二社に対して州政府は、1ガロン2ドル15.78セント(2ドル67セント税込)の上限価格を通達した。もちろんオイル会社がそんな法律を歓迎するわけがない。シェブロン社は「卸売上限価格はハワイに有益でない」、そしてテソロ社は「需給関係を歪める」、と州政府に不満の声を上げている。

「これでハワイに正当ガソリン価格が戻ります」、といったフランク・ヤング氏のような意見も聞かれるが、意外と卸売価格上限設定に批判的な消費者も多い。フェライドゥン・フェシャラキ氏の言葉を引用しよう。「上限価格の設定は、賢いやり方ではありません。このような法律が通ったのでは、ハワイに進出しようなどという企業が無くなってしまいます。それだけではありません。現在ハワイで操業しているオイル会社が撤退してしまうかもしれません。」

はたして政府はどこまでビジネスに介入すべきか。あまりに規制が多いと、企業活動が鈍るだけでなく、上記フェシャラキ氏の言うように、企業誘致が困難になる。値段や価格は需給関係が決めるものであり、政府が人工的に操作するべきではない。卸売上限価格は9月4日から実施される。ハワイの将来はどうなるのだろうか。

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