ほとんどの経済学者たちは、金利引下げは銀行の貸し渋りに対する直接的な解決方法ではないから、利下げが直ぐに好結果となって表れることは無いと言う。しかし、金利引下げは金融市場に心理的な好影響となるから、いったん銀行が積極的に金を貸し始めれば、消費者は低金利で資金を得ることが可能になり、長引く景気低迷を防ぐことができると見られている。
ピーター・コーハン氏(ザ・コーハン・レター)は、こう書いている。
この金融危機を乗り切るために、バーナンキ連邦準備制度理事会議長がしたことは、単にヘリコプターから大量のドル紙幣をばら撒くことだ。マーケットは、既に0.5ポイントの金利引下げを織り込んでいるから、利下げが実施されないとダウ指数は大幅に下げることだろう。
しかし、ここでの利下げに、どんな意味があるのだろうか?現在、30年住宅ローンの利子は、FF金利が5.25%だった2007年夏の6.45%と変わりはない。ポール・クルーグマン氏(ノーベル経済学賞受賞者)によれば、この相変わらず高い住宅ローンの利子は、米政府が経営危機に陥った政府系住宅金融会社ファニーメイ、そしてフレディマックの債務を100%バックアップすることを保証しなかったためだという。
マーケット関係者によっては、0.5ポイントではなくて、利下げ幅は0.25ポイントになるという見方をしているが、私は、ここでの利下げは無駄なことだと思う。金利引下げという大切な武器は、次の緊急事態まで保管されるべきものであり、今ここで1%まで下げてしまったのでは、もうこれ以上の引き下げが出来なくなってしまう。
11月の大統領選挙が目前となったが、次期大統領が就任するのは、来年1月になってからだ。もしブッシュ大統領が、国民の経済的な苦しみを本当に理解しているなら、11月5日、選挙が終わりしだい次の大統領が即刻金融危機問題に取り組むべきだと思う。
明らかに、コーハン氏は反ブッシュだ。氏のように、政府に対して怒りや不満を表明する人が増えているが、こういう諦めムードの消費者も増えている。
「誰が大統領になっても、向こう数年間、アメリカは暗い経済状態を経験することになるだろう。アメリカは、既に国家の未来を使い切ってしまった。製造業は海外へ逃げ、アメリカに残っているのはサービス業だけだ。サービス業だけで、国が繁栄することはありえない。米国は物を生産する重要性を見直して、今のような貿易赤字国家から、貿易黒字国家にならなければいけない。しかし悲しいことだが、それが実現されることはないだろう。」 sgentilejrさん