修正された7000億ドルの金融安定化法案が金曜に可決されたが、とうぜん疑問になるのは、この法案で本当に米国経済は救われるのだろうか、というものだ。
そもそも、間違いを犯したのは我々庶民ではない。バカなことをしたウォール街の金融機関が悪いのだから、そんな会社など救済しないで倒産させてしまえばよいのだ、と相変わらず非難の声が絶えない。
話を戻そう。法案は米国を救うことができるだろうか?ニールズ・ジェンセン氏(アブソルート・リターン・パートナーズ)の意見を聞いてよう。
7000億ドルだけでは救済は無理だ。多くの人たちは、住宅ローン担保証券ばかりを見ているが、これは現在米国が直面している問題の一つにすぎない。金融機関による無謀なローンは住宅ローンに限られたことではなく、自動車ローンやクレジットカードにまで及んでいる。考えてみてほしい。これから、続々と自動車ローンの支払いが不可能になる消費者が増えたらどうなるだろうか?クレジットカードの支払いが遅れる人たちが急増したらどうなるだろうか?言うまでもなく、そんな事態が訪れれば、米国は第2の金融安定化法案が必要になる。同様なことがヨーロッパ諸国にも言える。多数の欧州銀行は、米国のように甘い基準で、膨大な金額を消費者に融資していた。
こんな状況だから、ヨーロッパのマーケット関係者たちは、先月発表されたプラス3.3%という、あまりにも強すぎる米国の第2四半期GDPを信じることができなかった。政府が偽造した数字だ、と決め付ける人たちもいたほどだが、これは簡単に説明できる。要するに、この数字は、第2四半期に1バレル101ドルから140ドルまで急騰した原油価格が反映されただけだから、実際の米国経済にはGDPが示すような力は無い。
明確なことは、アメリカは既に不景気であり、それにイギリスも不景気だ。フランスが不景気になるのは時間の問題であり、2009年の第1、第2四半期には、ヨーロッパ全体が不景気になっていることだろう。中国の輸出が、GDPを占める割合は2000年23%だったが、今年この数値は41%に上昇している。米国やヨーロッパの経済状態を考慮すれば、この調子で中国の輸出が伸びることは不可能であり、大幅に下落した中国株式市場は、その予想の正しさを認めている。
こんなことを言って後悔することになるかもしれないが、インフレの心配をする必要な無い。今日の金融危機が、インフレを効果的に退治してくれることだろう。おそらく、今日から1年後にはデフレが話題になっていると思う。
ということで、ジェンセン氏は世界的な不景気でインフレの心配が消えた今日、世界の中央銀行は利下げを実施するべきだと結論し、こう付け加えている。
「バーナンキ・ヘリコプターが、ドル紙幣をばら撒くために、そろそろ離陸することだろう。」
http://www.investmentpostcards.com/2008/10/07/the-helicopters-are-coming/)