米下院の金融安定化法案の否決を受けて、LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)が、史上最高の6.875%に跳ね上がった。それも、一晩で3.388%から6.875%への上昇だから尋常な上げ方ではない。
ロンドンという名前で他人事のように聞こえてしまうが、この金利上昇は、米国市民に嬉しくないニュースだ。多くの金融機関は、LIBORを指標にして学生ローン、住宅担保ローン、クレジットカード、中小企業向けローンの金利を決定しているから、LIBOR金利の上昇はアメリカの家庭に直接的な影響を与える。
しかし、議会通過は、ほぼ間違いないと見られていた金融安定化法案は、なぜ否決されてしまったのだろうか?ワシントンポストのコラムで、ベン・パーシング氏は、こう説明している。
1、ブッシュ政権は、国民に正確な情報を伝えることを怠った。7000億ドルという膨大な数字ばかりがクローズアップされ、実際にはそれ以下の金額で済む可能性があり、使われる税金の一部も国民に戻ってくることに関しては、ほとんど伝えられていなかった。
2、選挙を控える議員たちは、有権者に不人気な金融安定化法案に賛成したくなかった。「私は、この法案を通過させたくなかったのですが、深刻な現状を考えると賛成するしかなかったのです。」こんなことを有権者の前で言おうものなら、おそらく再選は難しくなるだろう。
3、国民の支持率が下がっているブッシュ大統領には、議員たちを説得するだけの力が無かった。それに、年末で任期も終わりだ。大統領に立候補しているマケイン、オバマ両氏も法案に賛成していたが、ブッシュ大統領と同様に、議員たちを説得するだけの力は無かった。要するに、現在のワシントンには、真のリーダーが存在しない。
4、簡単に言ってしまえば、議員たちは、この法案が嫌いだった。保守派議員から見れば、この法案は税金の浪費であり、更に自由市場の理念に反するものだ。リベラル派の議員たちも、ウォール街だけを救済するような法案には賛成したくなかった。
5、議論の最後に、党派的発言をした下院議長が悪い、と両党の主要議員は語っている。
ウォール街が完全に悪役になってしまったが、否決された法案を修正して、何らかの金融安定化法案を可決しないと、LIBOR金利の大幅上昇で分かるように、結果的には消費者が被害を受けることになる。
キャシー・リーエン氏(DailyFX.com)は、こう語っている。
「ウォール街の過ちを、国民の税金で穴埋めするのは間違っている、という意見はもっともです。しかし、アメリカを長い不景気から守りたいなら、どうしてもウォール街を救う必要があります。」
(情報源: http://tradermike.net/2008/09/credit_markets_are_still_tight/
http://voices.washingtonpost.com/capitol-briefing/2008/09/why_the_bailout_bill_failed.html
http://seekingalpha.com/article/97928-the-main-street-wall-street-bout-round-two)