けっきょく、米政府はリーマン・ブラザーズを救済しなかった。そして、バンク・オブ・アメリカに吸収合併されるという噂は、バンク・オブ・アメリカのメリル・リンチ買収で消え去り、リーマン・ブラザーズは破綻という最悪の結果になった。
これで、大手証券会社を政府が見放す筈が無い、という考えは単なる楽観論にすぎなかったことが証明され、こうなるとアメリカン・インターナショナル・グループ(保険会社)、そしてワシントン・ミューチュアル(銀行)もリーマン・ブラザーズを追って倒産になるかもしれない。
当然の疑問は、リーマン・ブラザーズを見捨てた、政府の判断は正しかったのだろうか?数カ月前、リーマン・ブラザーズよりも規模が小さい、ベアー・スターンズの救済に政府は乗り出した。米国第5位の証券会社を助けたのなら、なぜ全米4位のリーマン・ブラザーズを救済しなかったのだろうか?
ウォールストリート・ジャーナルは、こう書いている。
6カ月前、政府関係者にとって、ベアー・スターンズの予想以上に深刻な経営難は驚きのニュースであり、当時の混乱した金融市場を考慮すればベアーを倒産させるわけにはいかなかった。
現在の状況は、もちろん完全に落ち着いたと言うことはできないが、6カ月前とは違う。連銀は、窓口貸し出しを拡大していたから、金融機関は連銀から金を借りることができた。要するに、リーマン・ブラザーズには6カ月の時間があり、金融市場の変化で経営が突然悪化してしまったと言い訳することはできない。
ティム・ハーブ氏(オハイオ州立大学)も、政府の措置に賛成する一人だ。
リーマン・ブラザーズの社員、そして株主たちにとって破綻というのは悪いニュースだが、企業責任ということを考えると今回の政府の措置は正しかったと思う。政府は、ベアー・スターンズ、ファニー・メイ、そしてフレディ・マックを救済するという前例を作り、まるで保険会社になってしまったようだ。これでは、企業の経営陣に間違ったメッセージを送ってしまう。リーマン・ブラザーズを破綻させたことで、自分の失敗は自分で処理しろ、という政府からの明確なメッセージが企業の幹部に届いたことだろう。
どちらにしても、リーマン・ブラザーズの一件でまた金融市場は混乱状態に陥り、火曜(16日)の連邦公開市場委員会で、金利引下げが実施されるという見方が高まっている。バリー・リットホルツ氏(リットホルツ・リサーチ)の意見はこうだ。
アメリカン・インターナショナル・グループ、ワコビア、それにワシントン・ミューチュアルも危険な状態だが、とにかく私たちはリーマン・ブラザーズ破綻という第一のショック波動を乗り切った。連銀は金利を引き下げる必要はない。それよりも大事なのは、金利を2%に据え置いて、金融危機の終盤戦に備えて肝心な弾薬を保管しておくことだ。ここでの金利引下げは、15年間の景気低迷を経験した日本を真似るようなものだ。
リーマン・ブラザーズ (月足)
(情報源: http://blogs.wsj.com/economics/2008/09/15/the-government-stood-firm-was-it-the-right-call/
http://www.env-econ.net/2008/09/lehmans-moral-h.html
http://bigpicture.typepad.com/comments/2008/09/a-disasterous-r.html