(asahi.comから )
「経済産業省の北畑隆生事務次官は9日の記者会見で、原油高騰で途上国や国内の運輸や農漁業者が苦境に陥るなか、『投機筋など金融関係者は巨額の利益を得ている』と批判。『3週間前の会見では割り切れないと言ったが、今や怒りに近いものを感じる』と述べ、怒りの矛先を米系証券大手の投資行動に向けた。
ゴールドマン・サックスは5月、国際指標である米国産WTI原油の先物価格について、08年下半期の予測を1バレル107ドルから141ドルに上方修正。5日後、初めて130ドルを突破した。モルガン・スタンレーは今月5日発表のリポートで、7月上旬に150ドルまで上昇する可能性を示唆。6日の相場は140ドル近くまで急騰した。
北畑次官は、両社の行動を『投資して有利な情報を流している』と疑問視。『何でももうければいいというウォール街の資本主義の悪い面が出ている。経産省は基礎的な価格水準は60ドルと言い続けたい』と力説した。 」
http://www.asahi.com/business/update/0609/TKY200806090164.html?ref=rss
北畑次官に賛成する人も多いことだろう。ここで紹介したいのは、バリー・リットホルツ氏(リットホルツ・リサーチ)に送られた、ロブ・フレイム氏(読者)からのメールだ。
ご存知のように、投機家たちのお陰で、自分の持ち株や自宅の値段が上がることに不平を言う人はいない。しかし、もちろん異論の余地はあるが、最近の原油の急騰は投機家たちの責任であり、政府はこのような無責任な投機を取り締まるべきだ、という怒りに満ちた声が聞こえてくる。
深呼吸して冷静に考えてみよう。株式市場の歴史を振り返った場合、投機熱によって、異常なレベルまで買い煽られた株は、どんな結末が待っていただろうか?最終的には大きく売られて、妥当な水準まで下がったはずだ。住宅ブームにも同様なことが言える。住宅バブルで、物件は法外なレベルまで買われたが、結局バブルは弾けて、今日の住宅市場はスランプ状態だ。
単なる投機熱で価格が上昇しているなら、遅かれ早かれ、必ず価格の修正がやって来る。しかし、価格の上昇が単なる投機熱ではなく、商品の需給バランスなどのファンダメンタル的な要素が原因なら、価格上昇を投機家の責任にするべきではない。
今日の原油高が、単なる投機の結果なら、原油価格が下がるのは時間の問題だ。原油高を投機家の責任にしてしまうのは簡単なことだが、そうすることで、肝心なファンダメンタル的要素を見落としてしまう。責任を投機家になすりつけるのではなく、油田の開発や、政府のエネルギー・ポリシーを再検討することが大切だ。
北畑隆生事務次官
(参考にしたサイト:http://bigpicture.typepad.com/comments/2008/06/on-speculators.html)