アメリカの経済は、思っている以上に悪くなりそうだ、と考え直す人たちが増えている。100ドルを突破した原油、それにガソリンの値上がりが悪影響になるのは言うまでもないが、今回指摘されているのは物価ではなく、変化が明確になった消費者の態度だ。説明しよう。
ほとんどの消費者にとって、月々の支払いの中で、最も大きいのは住宅ローンだ。夫婦共稼ぎで、毎月コツコツと返済、という言葉があるくらいだから、住宅ローンは最優先された支払い、と言っても良いだろう。
しかし、USA TODAYの報道によると、今日の米国消費者が最優先している支払いは、もはや住宅ローンではなくクレジットカードだ。ファイナンシャル・コンサルタントの、アン・エステス氏は、こう語っている。
こんな現象は、いままで見たことがありません。住宅ローンを払わずに、クレジットカードの支払いを優先し続ければ、とうぜん家が差し押さえになる危険があります。それにもかかわらず、クレジットカードを優先させる理由は、現金の乏しい消費者は、クレジットカードを失うわけにはいかないのです。
景気の良い頃は、家具、テレビ、コンピュータなどの購入にクレジットカードが利用された。しかし、経済の落ち込みが顕著になった今日、消費者たちは、スーパーマーケットでの買い物などの生活必需品に、クレジットカードを頻繁に使い始めた。「失業、短縮された労働時間などが原因になって、収入の減る人たちが増えています。ですから消費者は、足りなくなった分を、クレジットカードで補っているのです」、とマーク・ザンディ氏(Moody's Economy.com)は言う。
ジェームズ・チェセン氏(米国銀行協会)は、こう述べている。
消費者に、住宅ローンの支払いか、それともクレジットカードの支払いか、と二者択一を迫れば、おそらくクレジットカードを選ぶことでしょう。支払いを怠って、クレジットカードが取り上げられてしまえば、食費や光熱費を払うことができなくなってしまいます。特に、既に住宅ローンが重荷になっている人なら、迷わずクレジットカードを選ぶと思います。
多くのアナリストは、こんな状態は長続きしない、と見ている。
多数の消費者が、クレジットカードの支払いが不可能になるのは、もはや時間の問題です。ようするに、住宅の支払いをが出来なくなり、家が差し押さえになるようなことが、クレジットカード業界で起きることになるのです。 ケン・マクエルダウニー氏(Consumer Action)
これからは、このような例が急増する可能性がある。
フィリス・コールマンさん(50才): 変動金利型住宅ローンの金利が大きく上がり、コールマンさんは、月々の支払いにクレジットカードを利用し始めた。数カ月間は何とかやりくりしたが、クレジットカードを、限度額まで使い切ってしまった。もちろん、住宅ローンはこれで払えなくなり、家は差し押さえられた。現在、コールマンさんは、クレジットカードの支払いも不可能になっている。
(参考にしたサイト:http://www.usatoday.com/money/perfi/credit/2008-02-28-credit-cards_N.htm)