グロース氏の返答はこうだ。
懐疑的になるのは当然のことだと思います。しかし、実際に発表される、住宅販売件数などのデータに不審な点があるのではありません。問題は、アナリストの予想です。データを都合よく解釈して、意図的に明るい見方を発表していますから、マスコミはもっと注意を払って、彼らの言うことを報道しなくてはいけません。
アメリカで住宅が売れた場合、管轄の郡役所に、売れた値段を報告することが、法律によって義務付けられている。だから、役所に行って過去の販売価格を調べれば、どのように価格が推移しているかが分かる。しかし、全米不動産業協会のアナリストを例に挙げたように、役所の記録だからといって単純に鵜呑みしてはいけない。
こんな、ウォールストリート・ジャーナル紙の報道がある。要点だけ抜粋してみよう。
・役所の記録によれば、KBホームはデンバー近郊にある新築タウンホームを、19万6000ドルで今年1月販売した。しかし、当然これは記録に載っていないが、KBホームは第三者に2万7600ドルの現金を支払い、結局この金はタウンホーム購入者の手に入っている。だから正確に言えば、販売価格は19万6000ドルではなく16万8400ドルだ。
・数カ月前、ワシントン州のタコマでは、こんなことが起きている。届けられた住宅価格は47万9000ドルだが、建築業者は販売促進策として、2万ドル相当のハーレーダビッドソンを付けた。しかし、購入者はオートバイに興味は無かったため、住宅価格を2万ドル下げることになった。ようするに、実際の販売価格は、届けられた値段より2万ドル低かったわけだ。
まだ他の例が記されているが、住宅市場のスランプで、業者はあの手この手を使って物件を売ろうとしている。どの程度の頻度で、事実上の販売価格と、役所に届けられた価格の違いが発生しているかは分からない、とウォールストリート・ジャーナル紙は記しているが、既にこのような弊害が起きている。
物件価格を見積もる方法として、AVMというコンピュータプログラムが利用されている。これは、最近売られた物件価格(役所に届けられた価格)や、他の条件を合わせて住宅の評価額を算出するものだ。このプログラムを使って、上記したデンバー近郊にある新築タウンホームを見積もってみると、19万1274ドルという結果が出てくる。住宅市場の不振が続き、届けられた19万6000ドルより低い額だが、それでも事実上販売された値段より約14%高い。
暑い寒い、高い低い、と物事には二つの顔があるが、不動産業界は建て前と本音が、かなりはっきりしているようだ。付け加えれば、業者が住宅購入者に現金を払った場合、そのことは関係した住宅ローン会社に報告されなくてはいけない。
(参考にしたサイト: http://www.slate.com/id/2180063