株が少しでも下がろうものなら、ここが天井だ、といった叫びが嫌でも聞こえてくる。しかし、株と違って国債が話題になることは滅多にない。現に、国債市場の下げは、既に2カ月以上も前に始まり、最近のニュースを見ていると、国債は突如として急落した、とカン違いしてしまう。
皆さんは、国債のブルマーケットを覚えているだろうか?1981年9月、10年物利回りは15.84%もあったが、2003年の6月には、3.10%まで下げていた。この間の、国債価格値上がりと支払われた利子を含めると、国債が生み出した利益は1281%になる。年間平均に換算すると12.8%になり、13.6%のリターンを記録した株に、ほぼ匹敵する成績だ。
今日のように、利回りが上昇する環境では、国債専門ミューチュアルファンドの価格(ネット・アセット・バリュー)は下落する。著名ファンドマネージャー、ダン・ファス氏の話によれば、国債利回りの急騰は、抵当市場のテクニカル的要素が、大きな原因になったと言う。しかし、こんな状態も、ほぼ終わりに近づいたということだ。更に氏は、長期金利の上昇で、米国経済が減速することになるから、夏の終わり頃には、国債利回りが下がる、という見方もしている。
国債の利回りは、住宅ローン金利に大きな影響を与える。先週、30年固定金利型住宅ローンは6.53%だったが、今週、その金利は6.74%に上がっている。これで、低迷する住宅市場の回復が遅れることは間違いない。「低調な春の住宅販売数だっただけに、長期金利の上昇は、住宅市場に大きな圧力を与えることでしょう」、とアメリカン・センチュリー・ファンドのジム・キーガン氏は述べている。
住宅市場は、米国経済の重要な部分であるだけに、住宅価格の下落は、個人消費を鈍らせることになりそうだ。もし、これが原因で経済が衰え始めると、国債の需要が増えて、その結果国債価格が上昇する。なぜなら、経済が下降する局面では、企業収益が減り、株投資の魅力が薄れるためだ。
しかし、長期的に見ると、国債利回りは上げ方向だ、とファス、そしてキーガン両氏は述べている。膨大な赤字を抱えるアメリカは、国債を売って資金を調達しているが、世界的に金利が上がる今日、極端に利回りを下げることはできない。
それでは、私たち個人投資家は、どうするべきだろうか?10年物のように、長期国債ほど価格変動率が高くなる。逆に、2年物のように、短期国債の価格変動率は低い。しかし、利回りは10年物が5.23%、2年物が5.09%と、ほとんど差がないから、個人投資家には、短期国債への投資を勧める。
(参考にしたサイト: http://www.usatoday.com/money/perfi/columnist/waggon/2007-06-15-short-term-bonds_N.htm
http://money.cnn.com/2007/06/15/markets/bondyields/index.htm?postversion=2007061512)