オクラホマ州にタルサという街がある。観光客で賑わうようなところではないから、タルサと聞いても、ほとんどの人は何の景色も頭に浮かんでこないことだろう。しかし、この街が先月30日、世界のオイル市場を一時的に混乱させた。
5月30日、午前10時14分(米国東海岸時間)、KOTV(タルサのテレビ局)は、インターネット上でオクラホマ州にある製油所の火災を報道した。さっそく、オイルの先物市場には買いが殺到し、あっと言う間に原油価格は40セントの上昇となった。しかし、これは完全な誤報だった。落雷による火災と報道されていたようだが、いかに今日の社会が、インターネットに依存しているかを示す好例だ。
さて、中国ではチャットルームが投資者の間で大人気だという。この株は3倍になりそうだ、これは少なくとも倍になるだろう、といった誇大広告のような内容なのだが、ロイターの報道によれば、情報の正確性など、投資者たちはほとんど気にしていないようだ。
こんな実例が挙げられていた。
I Love Italyと名乗るチャットルーム参加者が、CNメタル・エンジニアリングの魅力的な将来性を語り始めた。すると、「私は、この株が80元に行くまでは手放さない」と他の投資者も賛成してきた。翌日、CNメタルは一日の値幅制限に相当する、10%のストップ高となった。
ミューチュアルファンドや、ヘッジファンドが米国マーケットの主役だが、中国は個人投資家がマーケットの80%を握っている。新聞、テレビ、ラジオなどから、多くの中国人投資家たちは株の情報を得ているが、それらは国の役人によって検閲されたものだ。しかし、チャットルームの会話は検閲がほとんど皆無の状態だから、情報の新鮮さが、中国人投資家たちを魅了したようだ。
先日、前連銀議長グリーンスパン氏が、あまりにも過熱している中国株式市場に関するコメントを発表した。一時的にマーケットは下げ方向になったが、チャットルームには、次々と国粋主義的な意見を述べる人たちが集まり始めた。「グリーンスパンは、中国の長期将来性を分かっていない。我々には、まだ有り余るほどの投資資金が残っている。」
ご存知のように、2月の急落から、中国市場は簡単に回復し大きなラリーを展開した。グリーンスパン氏だけに限らず、中国株の行き過ぎを指摘するアメリカのアナリストは多い。しかし、チャットルームでは、こんな意見が主流だ。「そんな外国人たちの策略に騙されてはいけない。ここでの売りは間違いであり、買いがあくまでも基本だ。」どうやら、強気論者は更に強気になったようだ。
(参考にしたサイト: http://www.boston.com/business/markets/articles/2007/05/30/website_error_rocks_global_oil_markets/