「ウォール街」は好きな映画の一つだ、と臨床心理学者のアルデン・キャス氏は言う。パフォーマンス向上コーチとして、氏はヘッジファンド・マネージャーやトレーダーに、心理的な面からゴールの達成方法を指導している。更に、野球ファンの氏は、ヤンキースのアレックス・ロドリゲス選手を例にあげて、こんな話をしている。
8回二死満塁の場面で、一点を追うヤンキースは、強打者ロドリゲスがバッターボックスに立った。一発を期待するファンを裏切って、打球は平凡な二塁フライ。結局これがたたって、試合はヤンキースの敗戦で終了した。
野球の選手だけに限らず、私たちは、ここぞという重要な場面に直面することがある。勝負強い打者は「クラッチ・ヒッター」と呼ばれ、ファンを喜ばすものだが、トレーダーの陥る罠は、クラッチ・ヒッターをあまりにも意識しすぎることだ。
トレードの世界で、いつも重要な場面でヒットを打つことは不可能だ。それに、そのような現実的でない期待を自分にかけることは失望の原因になるだけでなく、必要の無いイライラ状態を引き起こすことにもなる。
現実を見てほしい。トップクラスの打者でも、10回打席に立てば7回は凡退だ。これは、トレーダーや投資家にも当てはめることができる。たとえ、あなたにどんなに経験があっても、トレードには好調なサイクルと、不調なサイクルがあることを事実として受け入れてほしい。
優秀なトレーダーでも、道理に合わない目標をたてて、自らパフォーマンスを崩してしまうことがある。そこで、次の点に注意してほしい。
・完全主義に陥らないこと。利益を上げる回数ではなく、トレードの質を重要視すること。一年を振り返ってみると、トレード利益のほとんどは、ごく限られたトレードから生まれている。
・シーズンは長い。またロドリゲス選手の例に戻るが、一度の凡退を必要以上に分析してはいけない。それは単に失望の度を大きくするだけだ。長いシーズン中には、とうぜんスランプもある。自分自身を信じて、今日の失敗は将来の成功につながることを覚えておこう。
・好調な波に乗っている時は、十分にそれを楽しむことも重要だ。更に、レバレッジを利用すれば、今までの損幅も低く抑えることができる。
パフォーマンス向上の専門家が、必ずしもトレードに好影響になるとは限らない。投資心理の研究家、ブレット・スティーンバーガー氏は、こんな実例をあげている。
何年か前、私は大手証券会社のトレーダーと話す機会があった。集中力に問題があると言うので、さっそく簡単な質問をしてみると、このトレーダーはトレード以外の状況でも、集中力に欠けていることが分かった。病院へ行って、詳しい健康診断を受けることを勧めたが、彼の集中力欠如は甲状腺機能の低下が原因だった。トレードコーチの助けを求める前に、先ず問題を正確に把握することが大切だ。
(上記は、http://traderfeed.blogspot.com/2007/04/what-you-should-think-about-before.htmlとhttp://www.thestreet.com/_tsccom/newsanalysis/investing/10349224.htmlを参考にしています。)