ヘッジファンドの黄金時代は終わった、と経済コラムニストのデービッド・ワイドナー氏は言う。「先ず、カン違いしてほしくないのは、私はロン・インサナ氏を侮辱しているわけではありません。株式番組のコメンテーターとして、氏の冷静な意見は、多くの視聴者に有益であったことは間違いありません。しかし、インサナ氏がヘッジファンドを始める、というニュースを聞いた今日、投資者はヘッジファンドから資金を引き上げる時が来たように思われます。」
最近では、天然ガス市場で大きな損を出したアマランス・アドバイザーズが話題だが、ヘッジファンド・リサーチ社の報告によれば、2005年1月以来2600の新ヘッジファンドが誕生している。いくら何でも異常な増え方だ。ワイドナー氏の話に戻ろう。
「株式コメンテーターが本業を離れてヘッジファンドを始めるのですから、今の証券業界は、お祭り気分にひたっています。もちろん、ヘッジファンドが無くなってしまうことはありません。これからもヘッジファンドは、優秀なトレーダーたちに活躍の場を与えることになるでしょう。それに、ヘッジファンドは1兆2000億ドルを超える巨大産業です。
ナラガンセット・マネージメントLP、ベガ・アセット・マネージメント、パイレート・キャピタル、そしてアマランス・アドバイザーズなどの名前をあげることができますが、どれも投機に失敗して多大な損を出しました。シーバート・ファイナンシャルの創始者、ミュリエル・シーバート氏は、こう述べています。「ヘッジファンドによる積極的なレバレッジの利用は、株式市場や先物市場に大きな脅威になっている。年金ファンド資金もヘッジファンドに流れているが、これは株式市場にとって警戒シグナルだ。」
適切なレバレッジ利用は投資に効果的ですが、シーバート氏が言うように、攻撃的なレバレッジ利用をするヘッジファンドが失敗すると、損額は膨大なものになります。これはマーケットに悪影響を与えるだけでなく、場合によっては政府からの助けが必要になりますから、納税者にも被害を及ぼします。
有能なトレーダーが、ヘッジファンドに引き抜かれています。各証券会社は破格なボーナスや年俸を提示して、やり手トレーダーだけでなく、平均的トレーダーの流出防止に懸命です。全く人気の衰えないヘッジファンド、というイメージがありますが、SACキャピタル・アドバイザーの創始者、スティーブ・コーエン氏によれば、機関投資家たちは、以前のようにヘッジファンドを積極的に利用しなくなったようです。
コーエン氏は更に、個人資産家たちも従来のヘッジファンドに興味を失い始め、プライベート・エクイティ(未公開株式)などに資金を移していることを指摘しています。どちらにしても、これだけヘッジファンドの数が膨れ上がった今日、以前のように、50%、80%といった成績を出すことが難しくなったことは事実です。」