天然ガス市場で60億ドルにおよぶ大損を出したヘッジファンド、アマランス・アドバイザーズとは対照的なのが、ヒューストンに本拠地を構えるケンタウルス・エネルギーだ。ファンドマネージャーは、今年32才のジョン・アーノルド氏、ここまでの成績は+200%だから、間違いなく投資者は喜んでいることだろう。
エネルギーを専門に投機するケンタウルスだから、もちろん天然ガス市場にも参入している。「ケンタウルスは、アマランスの危機を感知していたと思います。ですから、苦しくなったアマランスのポジションを分析して、天然ガス市場で多大な利益を得た可能性があります」、とエネルギー・コンサルタントのアート・ゲルバー氏は言う。
2005年度も、ケンタウルスは優秀な成績を残している。この年、サイタデル・インベストメント・グループやリッチー・キャピタルがエネルギー市場で失敗しているが、ケンタウルスのリターンは+160%だった。2003年、2004年もずば抜けた結果だったから、トレーダー・マンスリー誌によれば、去年ファンドマネージャー、ジョン・アーノルド氏が稼いだボーナスと年俸は1億ドルに達している。
投資者は喜んでいるだろう、と記したが、ここ数年間、ケンタウルスは一切投資者を受け入れていない。そればかりか、投資者に資金を返し始め、最終的にはアーノルド氏の個人資金と、ごく限られた同僚の資金だけを運用することになるようだ。
どうしてアーノルド氏は、こんな素晴らしい成績を上げることができるのだろうか?多くのインタビューが申し込まれるが、先ず氏が承諾することはない。時おり、エネルギー業界専門誌に、アーノルド氏の談話が載ることがある。具体的なトレード方法に触れることはないが、「トレードのチャンスは、マーケットが妥当な価格から大きく離れた時に起きる」、ということだ。
アーノルド氏は、ヘッジファンド業界のスターであることは間違いない。極端にマスコミを避けているから、氏の私生活が話題になることはない。しかし、ダウジョーンズ社から、こんな報道があった。
ジョン・アーノルド氏は、ヒューストンにある「ドッグウッズ」という名前で知られる、歴史的な建物を購入した。すぐ隣にはバイユー・ベンドと呼ばれる、ヒューストンの美術館が所有する建物もあり、素晴らしい内装で有名だ。しかし、アーノルド氏は「ドッグウッズ」の取り壊しを始めた。言うまでもなく、市民たちから反感を買うことになる。
アメリカの歴史を壊した、表向きにはそんな理由で氏に反対しているが、本音は全く違う。アーノルド氏は、以前エンロンのエネルギー・トレーダーだったのだ。腐敗の象徴エンロン破綻で、従業員たちは401Kに積み上げてきた老後の資金を全て失った。アーノルド氏が購入した物件は、以前のエンロン役員たちが住んでいた高級住宅街の隣だったのだ。これでは反感を買っても仕方ない。