1987年、10月19日、投資家には忘れることのできない日だ。黒い月曜日、ダウ指数は508ポイントの暴落となり、一日で23%の価値を失った。「引っ切り無しに電話がかかってきました。泣いている人もいました」、と当時証券会社に勤務していたリンダ・ネイラー氏は言う。
暴落の時のように、センセーショナルな報道はされなかったが、2000年から約2年続いたベアマーケットも嫌な思い出だ。5000ドルを超えていたナスダック指数は1200ドルを割り、多数の口座が被害を受けた。特にひどかったのがインターネット銘柄だ。倒産する会社も続出したから、全資金を失う投資者も珍しくなかった。
「大きな損を出すのは、とてもつらいことです。しかし、現に株式市場には、良い時と悪い時の周期があります。私たち投資者にとって重要なことは、厳しい環境に耐えることができる準備をしておくことです」、とフール・ドット・コムのリチャード・ギボンズ氏は言う。バリュー株の長期投資を専門にする氏の話を、もう少し聞いてみよう。
「最初に言っておきたいことは、損を出すことは悪いことではありません。かすり傷なら直ぐ回復できますが、足を切断するような重症では、元に戻すことは無理です。ベアマーケットで重傷を受けた人たちには、ある共通点がありました。持ち株がハイテクノロジー銘柄に集中していたのです。
2000年のベアマーケットで、徹底的に叩かれたのはハイテク株です。例をあげましょう。IT企業のCAインクは、2000年1月、70ドルで取引されていましたが、2002年の7月には、たった7ドル50セントでした。通信機器で有名なノキアは、48ドルから10ドルに転落です。もし今日まで両銘柄を持っていても、CAインクは23ドル、そしてノキアは19ドルですから、2000年のレベルにはまだまだ手が届きません。
カン違いしてほしくないのは、ハイテク株は危険だ、と私は主張しているのではありません。指摘したいのは、資金を一つのセクターだけに集中させず、分散投資することの重要性です。バンガード社の不動産ファンドが2000年から2倍になったように、建築関連やエネルギー関連に資産を分散していれば、たとえハイテクが不調でも、口座全体が下がってしまうことはありません。」
ギボンズ氏は、更にこんな忠告をする。「アナリストの言うことを、単純に信じてはいけません。株式市場は慈善団体ではありません。アナリストは予想をするのが好きです。最近では、オイルは1バレル110ドルを突破する、というのがありましたが、実際は逆に下げています。
インターネットバブルが崩壊する寸前、アナリストたちはインターネット・キャピタル・グループは250ドルに達する、という予想を発表しました。今日の株価は、たったの9ドル70セントです。当然、口座に大きな穴を開けた投資者が多数いることでしょう。覚えておいてほしいのは、証券会社は、個人投資家の味方ではありません。」