どちらを信じたらよいのだろうか?高値を更新した株式市場を信じるなら、アメリカ経済は急激な後退に陥ることなく、安定成長が期待できる。しかし、相変わらず短期金利を下回る国債は不景気を予測している。どちらが正しいのだろうか?経済コラムニスト、キャロライン・バウム氏の意見を聞いてみよう。
住宅市場が最盛期を過ぎた今日、いまだに明るい材料は企業収益だ。第2四半期の成長率は、前年度同時期を18.5%上回り、最近4年間の平均成長率を、やや超えている。更に、2001年の不景気時代から計算すれば、GDP(国内総生産)は29%の伸びにすぎないが、企業収益は二倍に膨れ上がっている。
「企業収益は、米国経済の方向を決定する重要な指標です」、とエコノミストのゲール・フォスラー氏は言う。「アメリカが不況に陥る前には、企業収益の下降が3四半期から7四半期連続で起こります。ですから、現状を見る限り、アメリカが直ぐ不景気に襲われる可能性はありません。一つ指摘しておきましょう。金融セクターはまだ大丈夫ですが、それ以外のセクターは頭打ちです。」
第2四半期、金融セクター以外の業種は、成長率が第1四半期を3.6%下回った。2005年、ハリケーン・カトリーナの時を除けば、企業収益が下がったのは、2003年の第1四半期以来初めてだ。
もし、逆利回り曲線が正しいなら、米国経済は平均以下の成長率期間を迎えることになる。とすれば、株も低迷するはずだ。しかし、ITGホーニック社のエコノミスト、ボブ・バーベラ氏は、「株と国債の両方が好調になることは、決して矛盾していることではありません」、と言う。
「経済が減速する中間サイクルでは、よくこのような現象が起きます。連銀は金利引き上げを終了させ、これは国債買いの原因になり、利回りが下がります。株式市場は、経済の下降には目を向けず、金利引き上げ終了=金利引下げ、ということに注目しますから、これは買い材料になります。」
多くのエコノミストは、現在の逆利回り曲線を問題にしない。世界的、特にアジアの国々が豊になり、有り余る資金を抱えるようになった。高い利回りを得ることよりも、安全な投資場所として、アメリカの国債が選ばれ、膨大な資金が流入した。これが低利回りの最大の原因であり、今日の逆利回り曲線は不景気を予測していない、というわけだ。
ダウは高値を更新したが、アメリカの株はまだ割安、と言う外国投資家たちもいる。過去5年間、S&P500指数は、たった25%上昇しただけだ。80ある世界の主要株式指数の中で、S&P500は下から10番以内に入る低迷指数だ。