アメリカ経済の70%を占めるのは消費者だ。だから、消費者が金を使わなくなると米国経済は落ち込んでしまう。もっともな意見に聞こえるが、「それは単なる神話です」、と言うのはトレンド・マクロリティクス社で、投資コンサルタントを務めるドナルド・ラスキン氏だ。いつも批判的な氏だが、少し説明を聞いてみよう。
「個人消費が冷え込むと米国経済も減速する、と信じている人たちが多いようです。現に、私のところへ相談に来る投資家も、それを疑いません。しかし困るのは、連銀までもが、その神話を信じているのです。たしかに、アメリカ経済の7割は個人消費と言われますが、だからどうしたというのでしょう?
真実は、生産者が100%のアメリカ経済です。考えてみてください。消費者が金を使いたくても、生産者が何も作らないならどうしようもありません。先ず物が生産され、そして個人消費の段階へ進みます。ですから、私たちは生産に目を向けなければいけません。アメリカは、十分に物やサービスを生産しているだろうか?そして、新規雇用も好転し、消費者の収入は上がっているだろうか?
なぜ皆、こうも心配なのでしょう?商務省から発表されたレポートを見てください。個人消費は10.2%の伸びを記録し、前回の+6.3%という高い数字を超えています。金額に直せば、2005年6月から2006年6月の間に、消費者は9兆2000億ドルの金を使いました。前年度を5550億ドル上回ったわけですが、この金はどこから来たのでしょう?言うまでもありませんが、それは労働によって得た金です。
多くの投資者はカン違いしています。過去3年間、個人消費が好調だったのは資産効果が原因、と思っています。住宅ブームで、家の値段が大きく上がりましたが、本当にこれが個人消費を大きく好転させたのでしょうか?資産効果に関する、こんなデータがあります。住宅の値段が100ドル上がると、個人消費が3ドル伸びます。ここ1年間で、アメリカの住宅市場は1兆7000億ドルの上昇です。その3%は510億ドルになります。しかし、実際の伸びは5550億ドルですから、資産効果だけで、個人消費の上昇を説明することはできません。
問題は連銀です。連銀も私たちと同じデータを持っていますが、下向きになった住宅市場が、個人消費を減速させ、米国経済成長も冷え込むだろう、と結論しています。事実は、個人消費に衰えはありません。米国経済は落ち込みません。2度連続で金利を据え置きましたが、これはインフレを悪化させます。手遅れになったところで、連銀は大幅に金利を上げることでしょう。もちろん、消費者には大打撃です。」