膨大な損が出ている、と大々的に報道されているが、いったいどのくらいの金額なのだろう?問題になっているのは、大手ヘッジファンドのアマランス・アドバイザーズだ。コネチカット州に本拠地を構え、上昇するエネルギー市場にうまく乗って、去年、アマランスは10億ドル以上の利益を上げた。しかし月曜(18日)、天然ガスの先物投機に失敗して、アマランスは30億ドルを超える損を出していることが判明した。ニューヨーク・タイムズから、要点を拾ってみよう。
アマランスの顧客リストは、年金基金、寄付基金、銀行、保険会社、そして大手証券会社で占められている。インベストメント・バンカーとして有名な、モルガン・スタンレーも約1億2400万ドル(6月30日時点)をアマランスに投資している。
92億5000万ドルに及ぶ資金を運用していたアマランスに、決定的な一打を与えたのは、先週展開された天然ガスの12%下落だ。こんな事実があったにもかかわらず、先週、チャールズ・ウィンクラー氏(アマランス最高業務責任者)はマンハッタンの高級レストランで、アマランスは今年25%の利益が出ている、と顧客に話していた。それから数日後、アマランスは大きな損を出している、という噂が顧客の耳に入った。
12月から下げ始めた天然ガス価格が、急ピッチに損を膨らませることになった最大の原因だ。歴史的に見ると、天然ガスは3月、4月頃から下げ始める傾向があるから、12月に下げ開始は珍しい。アマランスは、3月限と4月限の価格が大きく広がることを期待していたが、天然ガスの下落で、6週間前は2ドル50セントあった両月の差額が75セントまで下がってしまった。
トレーダーたちから事情説明を聞いた関係者の話によれば、実際の損額は予想以上に大きいという。しかし現時点では、どの程度の影響を顧客金融機関や市場へ与えるかを推測するのは難しい。
エネルギー市場で失敗を犯しているのは、もちろんアマランスだけではない。異常な暑さに襲われた今年の夏、天然ガスは急騰していたが、これを空売りしていたのがマザーロック・エネルギー・ファンドだ。最終的に、ファンドは25%の損を出して経営破たんに追い込まれた。
なぜヘッジファンドは天然ガス市場に参入するのだろうか?答えは高い値動き変動率だ。ヘッジファンドは、短期間で優れた成績を出すことが要求されるから、値動きの荒い天然ガスのような市場はヘッジファンドに狙われやすい。エネルギー・コンサルタントのアーサー・ゲルバー氏によれば、天然ガスの値段変動率は株式市場の5倍以上だという。
以上が要約だが、掲示板やチャットルームでは、こんな疑問が多い。「なぜ天然ガスに、ここまで大きく集中投資したのだろう?どうして直ぐ損切りができなかったのだろう?だれもトレーダーの売買を監視していなかったのだろうか?」どちらにしても、ミューチュアルファンドのような規制が無いヘッジファンドだけに、議会が乗り出してくるかもしれない。