「トレードで成功するには現実を無視してはいけません」、と言うのはロス・フックで知られるベテラン・トレーダー、ジョー・ロス氏だ。私たちの意見とは無関係に、マーケットにはレジスタンスレベル、そしてサポートレベルなどが現実として存在する。どんなに威勢良く買いを入れても、直ぐ上にレジスタンスラインがあったら株は上がらない。遅かれ早かれ、トレーダーは間違いに気付くことになる。しかし、即座に持ち株を処分できなければ、これも現実を無視していることになる。ロス氏の話を続けよう。
「思惑が外れると、多くのトレーダーは適切な対応をすることができません。十分な分析をしたにもかかわらず、その結果が間違っていたことを認めるのは、決して嬉しいことではありません。自分をごまかすのはやめて、現実を直面してください。ただでさえトレードは難しいのですから、自分の意見を正当化することに時間をつぶすのではなく、値動きだけに注目してください。
私も中々マーケットを直視することができませんでした。そこで、一つ一つマーケットを無視した理由をノートに書いてみました。おかげで、本当の自分の姿を見ることができたようです。私のしていたことは、株価が自分の思った方向に動くことを強く希望しただけでした。いつも正しいのはマーケットだ、という言葉があるように、どんなに念じてもマーケットは自分の意思に関係なく動きます。私たちにできることは、マーケットに対する対応方法を変えることだけです。ああでもない、こうでもないと悩むのではなく、トレード技術を向上させるために時間は有効に使いたいものです。
思惑が外れてしまう原因を少し考えてみましょう。先ず、マーケット状況の変化があります。横ばい状態だったマーケットが、いきなりブレイクアウトなら、今までの手法は使えません。ベアマーケットのやり方を、ブルマーケットに適用できないことは誰でも知っています。しかしマーケットの変化、という現実が直面できないと損だけが大きくなっていきます。
不思議なことですが、トレーダーは良い結果を出していたにもかかわらず、他のトレード方法に乗り移ることがあります。それで更に利益が伸びれば問題はありませんが、多くの場合は失敗に終わります。うまくいっているなら、そう簡単にやり方を変えてはいけません。いったん手法を変え始めたら終わりがありませんから注意してください。」
トレード指導も行うロス氏は、こんなことも言う。「トレーダーという職に、引け目を感じている人が意外と多いのに驚きました。極端な例ですが、トレーダーはギャンブラーのようなものだから、世の中には何の益にもならない、というわけです。トレードで得た利益で家族を養い、そして教会などに寄付することは素晴らしいことです。参加者無しでは、マーケットは成り立ちません。トレーダーはマーケットを支える重要な一部です。」